それでは、どうぞ
「《残酷な支度》、《先導指揮》、《アクセル》、《光の種》敏捷強化」
仕切り直しとなった瞬間、ジョシュアは己が持つバフスキルを点火する。
自身の攻撃に《出血》付与効果を追加する《残酷な支度》、自身を含めたパーティーメンバーの被ダメージを一定割合カットする《先導指揮》の2つはバトルページの装備で習得しており、それらも出し惜しみせず併用する。
「■■■■■」
「甘い踏み込み、そんなんじゃ直ぐに狩れちゃうよ」
改めて武器を振るう相手。しっかりと武器の特製を活かし速さの乗った刺突が繰り出されるが、それはジョシュアに届くことは無く空を切った。
槍の刺突よりも速く身体をズラし、敵に肉薄したジョシュアは相手が反応する前に右手のリッパーナイフをコンパクトに振るう。
「《集点突》」
螺旋のようなエフェクトと共に連続的にダメージを与える《スパイラルエッジ》とは真逆の、ただ一点への一撃を極限にまで引き上げる刺突系スキルである《集点突》は光となってリッパーナイフと共に進み、突き出された瞬間に全てを抉り取る矢となって飛び出した。
相手は僅かに身を捩らせて後退したものの、その凶刃を避けるには足りなかったようで振るわれたリッパーナイフは見事に肩に突き刺さった。
「はい、先ずは一人目」
槍等の長柄の武器の弱点は零距離での対抗手段に乏しい事だ。故に少し動けば体が触れ合う程に近づかれたこの状況で、肩を刺し貫かれたこの状況で、敵に対して何かをするには余りにも余裕も手段も足りなかった。
「《スパイラルエッジ》」
逆手持ちに切り替えられていた致命の包丁が螺旋状のエフェクトを纏いながらモザイクで隠された顔面目掛けて突き出され、見事なまでに刺し貫かれる。
普通、シャンフロ世界においてはエネミー等に対して刃を突き立てればほんの少し刺さるか表面に傷が残るだけで身体を両断したり貫通するほど深く刺さるのはユニークモンスターによる攻撃位で早々無い事である。
しかしながら今ジョシュアが成したのは頭を頭蓋骨ごと刺し
「良いね、リアルで、楽しい」
しかしそれを気にすること無くビクリと身体を跳ねさせて固まった敵に刺さった包丁達を両腕を開くように横薙ぎにして抜き払ったと同時に近くに光る頁が散らばる。一人目を仕留めたジョシュアは包丁を握り直して次の獲物を見定めて走り出した。
「ちぇすとー」
「■■■!?」
残り2人の内、手負いのフィクサーに向かって気の抜けるような声と共に飛び蹴りをかまして吹き飛ばしそのままコチラに振り返ったもう一人に向かって刃を突き立てんとする為に振るう。
仲間がやられたバット持ちのフィクサーも黙って見ている訳では無くキチンと対応するように殴打を繰り出してジョシュアが操る2本の包丁とぶつかり合い、甲高い金属の衝突音を響かせる。
「ん、短剣で鍔迫り合いはなぁ…」
「■■■!」
「だからこうする」
武器の重量の差によって若干押されるジョシュアだったが、押しつぶされる前にバットを受け止めていた包丁を少しずつ傾け始めた。
数秒後、力の込め続けられたバットは包丁の刃を滑るように流れて行き、そのまま床に先端が叩きつけられる。
突然バランスが崩れたフィクサーが晒した隙に差し込むように包丁で腕を3回ほど斬り裂けば、その傷口から赤黒いポリゴンが大量に放出され始める。
「《シュートヴェイン》」
「■■■!!」
「ちょっと待っててね」
背後から迫っていた槍持ちのフィクサーに振り向きもせず致命の包丁を投げつけ、その場から退こうとする未だ腕からポリゴンを垂れ流すフィクサーに再び肉薄して足を払う。
「2人目」
地面に足が着く瞬間に蹴られたこともあってか呆気なく床に転がせた相手の腹に膝を突き刺すような勢いで馬乗りになり、そのままリッパーナイフを逆手持ちにし身体を捻りながら喉を横から刺し貫いた。
「あとは……ってあれ?」
2人目が光る頁の破片となって消えたのを確認すると同時に残りの一人も仕留めようと振り返れば、とっくに限界だったのかそれとも投擲がクリティカルを出したのか既にその姿は他の2人と同様に頁となって消えていた。
「………まぁいいや。これで終わりじゃ無いだろうし」
バット持ちを仕留めた姿勢から立ち上がり、ポツンと残っていた致命の包丁の元まで歩み寄りながらそう呟く。
まだあの表紙に描かれた武器を持つ人物が一切出てこなかった事から『ユン事務所』の時と同様に追加人員が来ると予想していたが、その推測の答えとなる存在は直ぐに現れた。
「■■■」
「■■■■!!」
「■■」
相も変わらずその顔はモザイクが掛かって見えないものの、その手元にある武器は明らかに先程の3名の物よりも存在感を増していた。
「ん……試運転には丁度良いかな」
そろそろ接待が折り返しに入ろうとしていた時、本に囲まれ黙々と文字を追っていたオルトは一人納得したように内容を頭の中で反芻していた。
「ふむむ……成る程、ユメ様達はこのような事情故にあの世界を作り出したと。『夢見る流れ』様と似ていると思いましたが……実験の被験者、という点においては同じなのですね。そこに込められた意味と意志は大きく異なるようなのです」
今彼がその手に持つのは先程アンジェラによって製本されたばかりである『夢貪る濁流』の本。
既にこの本に封じられた幻想体から認められているからか向こう側から何かしら干渉を仕掛けてくることもなく、ただひたすらにその内容を紐解き続ける。
紡がれていたのは『夢貪る濁流』……それを構成するに至った、非人道的な実験を施され続けた外の世界を夢見る子供たちの話。
明るい空、綺麗な海を望み、人工的な蛍光灯、無機質で淀んだ世界しか見れずに目を閉ざされた彼女達の精神の現れがあの姿だったのだろうか。
普通の感性を持つものならば表現の悍ましさ故に文字を追えずに本を閉じようとする程の代物だが、オルトはただひたすら真剣に読み進めていく。
「ユメ、借りるよ」
そしてここにそんな過去を持つ彼女等から預けられた力が解放される。
「幻想潜灯」
両手の包丁をしまい込んで右手を水平に伸ばした先、紡がれた言葉は世界の現実を書き換えて一本の槍を顕現させる。
「『E.G.O 盲目』……ん?おぉ……?」
しかし変化は槍の出現に留まらず、右腕の袖から侵食するようにジョシュアの姿が切り替わり始めた。
血で汚れたコックコートから一変、『夢貪る濁流』の姿をデザインに取り入れた薄く鱗のような模様のあるロングコートとスーツが身体を覆い、ジョシュアへ力を流し込んでいく。
「………いいね」
不思議な感覚に襲われるが、それすらも受け入れて笑いながらジョシュアは敵へと向き直り槍を振り回して突き付ける。穂先と柄の先端は錨のような形を成し、柄には蛍光灯が埋め込まれたようなデザインの槍は振るうと共に水飛沫を上げる。
どういう原理なのかは分からない、だが確かに『夢貪る濁流』の力は断片だとしても確かに存在感を放っていた。
E.G.Oには同調率とその段階があります。
武器とギフトは初期からありますが、防具に関してはある程度使い続けるかそのE.G.Oの元になる幻想体との縁を強くしなければ出せません。
更に上の段階に解放される物は察せられる所もあるかもしれませんね
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……