いやまぁ二つ名が『裏ボス』なんで仕方ないかもしれませんが。
それでは、どうぞ
「■■■■■!」
「■■■」
ジョシュアが振った槍から飛び散った水飛沫が床を濡らしたのが皮切りとなったのか、武器を構えて様子を伺っていた3人の内それぞれ大剣とバットを持った2人がコチラに向かって走り出す。
先行したバット持ちのフィクサーが手に力を込めるとバットの模様から炎が噴き出しそのままの勢いのまま跳びかかり、それと合わせるようにもう一人が大剣を振るわんとする姿勢を見せた。
「《襲いかかる濁流》」
しかしそれらの前に突如として高波が現れる。
ジョシュアが地面をかするように振るった槍の軌跡から噴水のように出てきた水は襲いかかる2人を飲み込み、そのまま押し返して退かせた。
「ん、最初からフルスロットルで行こうか」
そう言ってジョシュアは『盲目』を両手で持つと穂先を斜め下にして腰を落としそのまま床を蹴る。最初に掛けたバフは既に切れている筈なのだが、その動きは明らかに先程よりもキレが増し洗練されており一瞬で押し返した大剣のフィクサーの前に辿り着いた。
「■■■■」
「甘い、《集点突》」
表現こそ見えないものの身体を僅かばかりに硬直させたのを見る限り敵の迫る速さに動揺している様で、若干遅れながら大剣を間に差し込もうとするがそれよりも先にジョシュアが刺突を放つ。軌跡にエフェクトと水飛沫を残し、身体に迫るそれを防ぐ手立てはそのフィクサーには無く…
「■■!?」
「……ん、外した。心臓狙ったのに」
容赦無く刺突が当たった脇腹を抉った。
余程鋭かったのかそれともスキルによって威力と範囲が大きくなっていたのか分からないが、当てた部位を大きく失った大剣のフィクサーは蹈鞴を踏みながら不安定そうに後ろへと退いた。
大ダメージには変わりないのだが、その一撃を当てた筈のジョシュアは何処か不満そうにしながら槍を持つ自分の手を見下ろしてから傍らにステータス画面を開く。
「やっぱり、身体能力関係が軒並み上がってる」
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体力 20 魔力 10
スタミナ 85
筋力 55 (+70) 敏捷 65(100) (+70)
器用 35(55) (+30) 技量 35(55) (+30)
耐久力 1(131) (+500) 幸運 60 (−20)
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「ヤッパ」
身に纏う形となったEGOの効果、それは外付けのステータスだった。突如として倍増したステータスに振り回されながらもジョシュアはそれはもう楽しそうに言葉を零して笑った。
「早めに慣れないと…なッ」
「■■…■■■!!」
「■■!」
己の状態を確認するジョシュアはステータス画面を閉じると即座に槍を振り抜き、まるで予想していたかのように背後と側面から迫っていた直剣と燃え盛るバットを弾く。
バット持ちの方は床から足が離れていた故に弾かれた反動で強制的に後退したが、直剣持ちのフィクサーはそれを読んでいたかのように衝撃を流し続けざまに直剣を振るう。
「ん、良い、他2人より明らかに戦いへの慣れがある。上司だったりする?」
すかさず槍を体に引き寄せ盾にして横薙ぎの一撃を柄で受け止める。普通の槍なら少し歪んだりするかもしれないがこのEGOはそんな柔らかさとは無縁のようで、激しく鋭い衝突音を立ててぶつかり合った。
「《た耐える》」
「■■■■」
「そいやッ」
負けたのは直剣の方だった。ただ受け止めるのではく衝突と同時に押し返した事で大きく弾かれた直剣に引っ張られたフィクサーは身体を大きく仰け反らせる。剣を持つ手が緩んでいることから反動で痺れも来ているようで
その隙を逃す訳も無く、ジョシュアは相手が体勢を整える前に身体を捻り上から刃を叩きつけるように槍を振り下ろした。
「ん、いい感じに入った」
宙を裂いて薙いだ槍は袈裟斬りの形で目の前の敵に命中し、肩から腰にかけて深い傷を残す。ポリゴンを溢れ出させながら蹌踉めくフィクサーを庇う為に走ってくる他の2人が視界の端に見えたが、それよりも先にジョシュアは動いていた。
「足元注意だよ」
ザパンッ
「■■……?」
深手を負ったフィクサーが退こうとするがその咄嗟の行動に何故か足が重くなり動きが一拍遅れる。違和感を覚えて足元を見るように頭を動かせば、床はいつの間にか足首が浸かるまでの水が張っていた。
「やっぱりEGOって無茶苦茶だね。スキル1つだけでこんな風にしちゃうんだから……まぁいいや、やるなら存分にやるだけ、《濁流》」
水は絶え間なく波打ってその場に立つ者達の足を抑え付け、更には激しい水流も加わり移動するどころか立つことすらままならなくなり始める。
そんな荒れ模様が繰り広げられる中、ジョシュアはただ一人何とも無さそうに革靴を鳴らしながら床を歩く。
「呑まれて、灯もなく沈んでゆく
そんな最期は如何?」
槍をフラッグのように振り回せばその度に波が生まれて敵を飲み込んで戦場をグチャグチャに掻き回す。その上波に揉まれる度に抵抗する力自体を奪われているような様子が見える。
ジョシュアはそれを前に微笑むと振り回していた槍を止め、徐ろに波が荒れ狂う水面へと踏み出し、その上をまるでスケートのように滑走し始めた。
「1人……いや、4人目」
「■■……!!」
敵がもがく中、一人悠々自適に戦場を走り繰り出した刺突はいつの間にか目の前にいた直剣のフィクサーの心臓を捉え、向こう側まで刺し貫く。対処さえ許されなかった敵は力なく膝を床に付け、そのまま光る頁の断片となって消えていった。
「■■!?」
「■■■■!!!」
それを見せられた残り2人は見るからに激昂した様子になり、無理矢理波を押し切ろうと藻掻きだす。
自身の武器を振り回して波に逆らいどうにか床に両足をつけることが出来た時、彼らの周囲には淡く光る蛍光灯が幾つも浮かんでいた。
「砕けろ」
ジョシュアのその一言を皮切りに、波に攫われた蛍光灯がバキリと音を立てヒビ割れてその際に発生した翡翠色の衝撃波が近場の2人を襲う。
「■■……!」
「■■■■!?」
既に深手を負っていた大剣のフィクサーはその衝撃に耐えきれず、蹌踉めいた後に力尽きて倒れ込みながら頁となりそのまま床に触れること無く消えてしまう。その光景を前に最後の一人となったバットのフィクサーは動揺したようにその場に立ち止まってしまう。
「戦場でそれはダメだよ」
呆れを含んだ言葉が周囲に響き、それに反応した最後の一人が周囲を見回す。しかし視界に入るのは荒れ狂う波ばかり、武器に炎を宿し振り回しても直ぐに己を飲み込む大量の水にかき消された。
それでもなお自分を置いていった2人の仇を取ろうと敵を探るフィクサーは、
「ラスト、一人ッ!」
天から重力に身を任せて落ちてきたジョシュアの突き出した槍に脳天から貫かれる、という形で他のフィクサー達と同じ結末を辿ることになったのだった。
E.G.O 『盲目』
武器種:槍 or 特殊アクセサリー
《同調時》+胴、腰、足装備(特殊防具)
陽の光、青い海、自由な世界を望みながらもその果てに目を閉ざされて夢が潰えてしまった子供達の自我の断片を抽出し物体化させた代物。槍の中で輝く蛍光灯はかつて彼等が見続けた部屋の中を照らす光の形だった。暗闇の中を泳ぎ続ける姿は、泳ぎ回る魚達を自由になった理想の己と重ね合わせた結果なのだろうか。
このE.G.Oの装備時、以下の能力を得る。
・周囲に漂流物を召喚。
漂流物は召喚者の意思で破裂させることが可能で、破壊時周囲にダメージ判定のある衝撃波が発生する。
・HPを10%消費し、60秒間クリティカル威力及び発生率を上昇させる。
《同調時》
・周囲10mの地面を水面状態へと変化させる。水面は判定のある波を自由に形成することができこのE.G.O装備者は水面を滑走可能。
このE.G.O装備者以外が水に接触時、《沈潜》を付与する。
筋力+30 敏捷+30
《同調時》筋力+40 敏捷+40 器用+30
技量+30 耐久+500 幸運−20
特殊デバフ 《沈潜》
沈潜付与効果のあるスキルや攻撃で付与される。
《沈潜》付与後一定時間、移動速度及びMP、スタミナの低下、スキルの再使用時間増加。
というわけで『盲目』の能力は「デバフ効果のある波の展開」と「破裂する蛍光灯の生成」、そしてほぼ描写してないので分かりづらいですが「クリティカルの発生、威力上昇」です。
ついでに《同調》はページの主の幻想体と縁を深めた結果解放される機能でEGO防具の使用が可能になり、より多くのステータスへの恩恵が得られます。EGOの《同調》は一度に1つだけですが、ギフトや武器は同時に使用可能なのでかなりのぶっ壊れです。
まぁ代償が無いとは言ってませんが。
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……