ホンルの感情が大きく揺れ動く姿とかお出しされたら性癖が壊される人が大量に出そう
それでは、どうぞ
「ふぅ………ん〜、使い過ぎは良くない」
接待を終え、その報酬である何冊もの本を確認しながら地面に落ちていた『街灯事務所』の本を拾い上げるジョシュアは悩みながら自分の腕を見る。
変更したばかりだった白いコックコートは見る影もなく、何処か鱗っぽさのある光沢で彩られたロングコートの袖が目に入り、何処か困ったように微笑見ながら手触りを確かめる。
彼は「一方的な蹂躙」ではなく「殺し合い」の方が好みであり、その点において対人戦に於いてはとてつもないアドバンテージをとれるこの装備を使うことに躊躇いを感じているのだろう。
そんな事を考えながらEGOを解除し、元の姿に戻ろうとする。
バキンッ
「…………ん?」
その時だった。
「がっ、アガッ!?」
突如として何かが割れたような音と共に、頭の中と心臓付近に鋭い痛みが走る。通常の頭痛等とはまるで違う、麻酔も無しに身体を抉られたような感覚にジョシュアはその場に膝を付き、胸と頭を思い切り押さえつけながら息を荒げ始めた。
「ハーッ、ハーッ……あ、うぐぁっ」
呆然と床だけを視界に収めながらも息を整えようと試みるも、それよりも先に体に走る痛みが思考を支配する。暑さによるものとは全く違う汗が全身を伝う中、ふと床についた左手を見れば、そこに己の体は無く既に別の何かへと置き換わった成れの果てが存在していた。
「ッ……!シィッ!!」
そして勝手に動こうとする左腕を変異していない右足のホルダーに納められていた包丁を抜き取って刺し貫き床に縫い止める。しかし変化はそれすらも意に介さず段々とジョシュアの体を蝕み始め体の主導権を奪おうとしていた。
「ジョシュア様〜、何やら大きな物音がッ………ジョ、ジョシュア様!?そのお姿は一体!?」
「オ、ルト……ッ!」
段々とグラついてきた視界の端にただならぬ雰囲気を感じ取って読書を中断してきたオルトが映るが、今のジョシュアには一言二言でも言葉を交わす余裕は無い。
故に
「ごめん、殺してッ!」
そう端的に打開策を告げ、己から飛び出そうとするナニカを抑え付ける事に神経を注ぐ。
「ッ!幻想哀悼ッ」
思考の切り替えの速さと躊躇の無さはこの図書館にて鍛えられたのかはたまた元から持ち得ていた物なのかは不明だが、相方に自身の殺害を頼まれたオルトは異常事態であると判断を下し即座に愛銃を召喚、そのまま銃口を向け
「今ここに、《厳格なる哀悼》をッ」
「かふっ……」
オルトの握る『崇高な誓い』から残弾が無くなるまで連射された蝶の弾丸は徐々に奇形に飲み込まれそうになっていたジョシュアを寸分違わず撃ち抜き、その命を吸い取っていく。
その弾幕は十秒も経たないうちに止み、オルトは気力を急激に使った為か肩で息をする。
「ふぅ、ふぅ、ま、間に合ったのです…」
幻想に飲まれかけた被害者はその結末を迎える前に安楽死に誘われる事となったのだ。
「っあ……、はぁ……焦った、滅茶苦茶焦った」
最後にセーブしていた図書館の休憩スペースのベットに蘇ったジョシュアはノロノロと起き上がり大きく息を吐いた。
開拓者としての特徴であるリスポーンを利用して無理矢理異常を抑える、というジョシュアは目論見は成功したようで、先程までの体が創り変わる感覚や脳を劈く痛みは既に無い。
「やっぱり、暫く封印かなぁ」
先程とは違った理由で、このEGOの使用に躊躇いを感じるようになる。
起こした身体を再びベットに預けて天井目掛けて伸ばした手の甲には、人間としては有り得ない鱗が疎らに生えていた。
「ん、というわけで説明求む」
「求むのです!」
突然の暴走から漸く平静を取り戻せたジョシュア達はこの現象に心当たりがあるであろう『図書館』の主の元へと足を運ぶ。
何の突拍子も無く己が書き換えられていく感覚は表現し難い程の物だったのが顰められたジョシュアの眉間からも伺えたが、若干怒気も含められた説明を受けたアンジェラも目を丸くして驚いた様子だった。
「もうその同調段階まで行ってたのね。ここに来て数年経つオルトでもまだだったからもう暫く後かと思ってたわ」
素直に感心した、と言わんばかりの声色の言葉に呆気にとられる1人と1羽。わざと隠していた、等という事は無いと知って警戒を解いたジョシュアは話の続きを促す。
「やっぱりアレが何か知ってるんだ」
「えぇ、私自ら体験したこともあるし、幻想体絡みなら侵蝕で間違いないわね」
「侵蝕……なのです?確か何時ぞやに読んだ書籍にそんな記載が…」
頭を捻って昔読んだ本の内容を思い出そうとするオルトだったが、いくら記憶力が良くても今まで本の量を考えると少し難しいようで中々答えは出てこない。
「そもそも貴方達が扱うEGOは幻想体の自我の殻、っていう話はしたわよね」
「ん、確かにそれは最初に聞いた」
「厳密には自我の殻の断片、頁になったものは更にその破片みたいな物よ。幻想体そのものから特異点で抽出したEGOよりかは少し性能は劣るわ」
「ほよ?これで劣っているのですか?」
「安定性が欠けてる、って言うのが正しいわね。本来であれば抽出物を精製した物を装備として仕立てるのだけどそれは切り出した力そのもの、それを装備という形で出力してるだもの」
「魔力みたいな形の無いパワーを無理矢理服とか武器にしてるってこと?」
「その認識で良いわ」
「不思議な装備」という認識で扱っていた物だか、俗に言う不発弾のような危険物の類かと認識を変える。
ただ納得出来ない部分もあるのか、頭を捻り続けていたオルトは口を開いた。
「しかし、ジョシュア様が先程怪物へと変貌しようとしていたのは何故なのです?ワタクシやジョシュア様が他のEGOを使用した際にはあのような事は起きなかったのですが……」
「EGOとの同調率とそれを受け止める器の問題よ。ここについては私の確認と説明不足もあったけれど、EGOは強く同調することでより力を引き出せるの」
「あぁ、確かに同調って欄が……あったあった。ん、それでそれがどうしたの?」
インベントリからEGOの頁を取り出し説明欄を確認、単語の意味から大体どういった物なのかは予測出来るが『同調』の仕組みまでは分からない。
「1つ貴方達に質問するわ。貴方は、他人の自我を自由に操れる?」
「無理」
「不可能なのです」
「それが答えよ」
「ふむむ……?」
「……………………強く同調したら、自分の自我がEGOと繋がる?」
「答えは出た?」
「恐らく、だけど」
暫く思考を口から零しながら考え込み、自身の中で考えを固めてゆく。幻想体というこの世界に置いても異質な存在達とその力の断片の全貌を把握するどころか一部に触れている程度でしかない為憶測に過ぎやしないが、それでもある程度の仮説は立てられた。
「アンジェラの言う器は僕の身体の事で、同調したことでEGOっていう『他人の自我』が僕の中に流れ込んだけど、それ受け止めるだけのスペックが僕に無かったから『僕の自我』を押しのけて身体をその『他人の自我』の持ち主の物に変化させた……ってこと?」
「変化じゃなくて侵蝕だけど、殆ど正解ね。やるじゃない」
たどたどしくもジョシュアが出した答えに拍手が贈られる。
「今回の場合は『夢貪る濁流』のEGOに込められた自我の強さに身体が耐えきれず貴方を蝕んだのよ。貴方の体に残ってる鱗とか髪の先が染まってるのはその後遺症ね。もう今は残滓でしか無いでしょうし貴方自身の自我に淘汰されて数日位で戻る筈よ」
「精神じゃなくて身体の問題かぁ」
「案外、精神は身体に引っ張られる物よ。貴方の場合精神が頑強なお陰である程度抗えたみたいだけど」
思い返されるのは先程の暴走。言う事を聞かない身体を無事な部分を活かして床に縫い止めるという手段を取っていたが、本来であればそれすらも許されないようだ。
「ふむむ……しかしそれではおいそれと扱えなくなってしまうのです。器を鍛える方法はあるのですよね?」
「とても簡単よ、レベルを上げなさい」
「ん、シンプル」
提示された解決策は非常にゲームらしいシステムによるものだった。
一瞬「NPCが『レベル上げ』なんて概念知ってるのか?」という思考が過ったがそちらは些事かとスルーした。
「程度とEGOの強さにもよるけど、多分オルト位の強さなら『夢貪る濁流』のEGOと同調もギリギリ問題無く扱えると思うわ」
「そうだったのです!?」
「……つまりLv.90台じゃないと無理と。先は長そう」
「使いたいなら同調しなきゃ良いだけよ。まぁ向こうが張り切って勝手にしてきた場合は不可抗力でしょうけど」
「あ、ホントは選べるんだ」
「言ったでしょう『他人の自我』って。主導権は向こう側にあるの、文字通り『夢貪る濁流』の『
そうアンジェラが締めくくった後、程よい時間になったのを確認したジョシュアは断りを入れてその場を離れる。
揺れる金髪のポニーテールの先は黒と蛍光の緑によって染められ、戻らぬまま。
「そういえば館長様、ワタクシに力を授けて下さった皆様のEGOとの同調は出来ないのです?皆様とは良い関係を築けていると考えていたのですが……」
「恐らく可能でしょうけど、まだ完全に扱えはしないって向こうが判断してるんでしょうね。貴方が主武装にしてるEGOの幻想体は精神が成熟してるから、力が暴走しないように自重してるんじゃないかしら」
「およよ、皆様のお心遣いだったのですね」
張り切って力を貸すためにEGOを通して同調したら結果的に殺しちゃった『夢貪る濁流』ちゃん
『ひぃん……………』
はい、というわけでEGOのデメリット『侵蝕暴走』です。
EGO同調はレベルが足りてないと使用後同調を切った瞬間に侵蝕が発生します。この時点で死亡が確定し、侵蝕された本人はEGOの元の幻想体の成り損ないへと変貌し自我が抜けるか討たれるまで暴れます。
厳密に条件を述べると、WAWクラスEGOとの同調で侵蝕されない為にはLv.80以上であることが絶対です。
尚AlephクラスEGOは低レベルなら普通に使用するどころか触れただけで侵蝕が発生する模様。
正直現在のジョシュアではWAWクラスEGOでも長時間使用すると侵蝕される可能性アリ
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……