司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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早く書きたいシーンも多いし他のキャラとかヒロインも出したいけど描写も出来るだけ丁寧にしたい…難しいです。




それでは、どうぞ


樹海窟は豊かに彩られ

「…………」

 

ファーコートのフードを深く被り、未だ多くの人間で賑わう夕方のサードレマの街を不審者一歩手前の人間が1人、スタスタと歩いていた。

 

「なぁあの装備って……」

「こないだの娘か……?」

 

市街地の大通りにはプレイヤーも数多く存在しており、異質で目立つその人物…ジョシュアに意識が向けられていた。しかし当の本人は特に気にも留めず早足で目的地に向かっていく。

 

(ジョシュア様、狭いのです……)

(ごめんね、流石にこれを人前に晒すと何かしら干渉してくる人が居るだろうから……)

 

侵蝕による暴走から1日経ったがその副作用の症状は未だ継続しており、不自然なグラデーションを形成する髪と黒く染まり虹彩が蛍光色になった瞳、首元から覗く黒い鱗を隠すように最早デフォルトになった『テイン』のコアページのファーコートのフードを深く被り直す。

その後頭部にはオルトが肩車のような形でしがみついており、圧迫されて苦しそうな声を出していた。

 

(所で今日はどちらまで……?)

(一昨日の先輩との約束の待ち合わせ場所、千紫万紅の樹海窟)

 

ジョシュアは手の表面の変化も見せないようにポケットにてを突っ込んでひたすらに目的地へと歩みを進めていく。

そうして人通りの少なくなっていく道を通って行けばやがて整備の跡がありつつも植物に侵食されているトンネルの入り口まで辿り着き、立ち止まる事無くその中へと入って行った。

 

「ん、緑が生い茂ってる」

「そ、そうなのです?今のワタクシからは見えないのです…」

 

少し暗いトンネルの石造り壁は段々と植物が占める割合が高くなっていき、最終的には視界全てが自然物へと塗り替わった。

上を見ても下を見ても人工物は一切無く、周囲には足元を埋め尽くさんとする色とりどりで数え切れない程の種類の花の絨毯、遠くにまで続く森を越えた樹海、それらが天井や壁に生えている自発的に光る苔に照らされて幻想的な雰囲気すら感じられる。

深く被ったフード越しでも分かる名前通りの千紫万紅の景色に圧倒されつつも、「あの苔どういう原理で発光してるんだろ」と若干方向性の違う事を考えながら暫く樹海の中を散策していると前方に花に紛れて見覚えのある人影が見えた。

 

「お、ちゃんと時間通りに来たみたいだね、感心感心」

「ん、一昨日ぶり先輩」

 

インベントリの整理をしていたのか、空中に画面を開いて操作していた待ち合わせ相手であるペンシルゴンはジョシュアに気付くとインベントリ画面を消して身体を向ける。しかし深くフード被る姿を怪訝に思ったのか眉をひそめて首を傾げた。

 

「なーんか随分縮こまってるみたいだけどなんかあった?」

「ん……まぁ人少ないしそろそろいっか。あ、オルトも居るよ」

「ぷはっ、どうもなのですペンシルゴン様……ややっ!ここは初めて来ましたがここまで緑豊かとは!」

 

キョロキョロと見回し、人の気配が無いのを確認してからジョシュアは視界を狭めていたフードを取り払う。

押さえつけられていたオルトは漸く解放されて周囲の景色に目を輝かせていたが、ペンシルゴンは明らかに様変わりしたジョシュアの姿を前に顔を引き攣らせた。

 

「うわッ、何それ昨日の今日で何があったらそうなんの?」

「ユニークシナリオ関係で手に入れた装備に事故みたいな形で侵蝕された。詳しくは歩きながらでいい?」

「えぇ………」

 

 

 

 

「EGO、ねぇ」

「先輩って初期からやってるんだったよね。聞いた事あったりする?」

「全く、さっぱり、微塵とも。いや、使用者に干渉してくる装備って点では心当たりはあるけどそんな名称の代物じゃないし、そもそも使ったプレイヤーをそんな風にするなんて話は聞かないかなぁ」

 

花の絨毯を踏みしめながら1羽と2人は樹海窟の中を進んでいく。

 

「まぁ似たようなのがそんなホイホイあったらこの世界あっという間に滅びそうだし、無いなら無いで別にいいかな」

「そんなヤバいの?その幻想体ってやつ」

「強さはピンキリだしまだ関わったのは数体位だけど、僕が体験した中で一番強かったのは周囲の世界ごと塗り替えて水中にしてきた。直ぐにギミックに対応しないと溺死する」

「もしEGOに侵蝕しきってしまうと、元となった幻想体の成り損ないが生まれてしまうのです。もし街中で侵蝕暴走が起きてしまうと考えると……」

「オーケー、秘匿必須案件ね」

 

明らかな厄介事の香りに今の情報を心の奥に仕舞い込む。会話をすればするほど己の知らない情報をドンドンこぼしつつも肝心なところは殆ど明かさない後輩に「素でこういう所あるからなぁ」と思いつつも有益になりそうなものを引き出すために約束を交わしつつ会話を続ける。

 

「まぁ先輩が喋らなかったら広まることもないし、そもそも知っても辿り着けるかどうか怪しいけど」

「確か資格がどうとか言ってたっけ、そもそもとっかかりの部分が現段階じゃ君しか辿り着いて無いってのがなぁ……オルトちゃん以外の関係者って居ないの?」

「ワタクシが把握している中で館長様以外だと、お父様とあと…あ、あの方位かと」

「もしかしてビナー?」

「ホエッ!?」

 

ジョシュアの口からその名前が出た瞬間、口をモゴモゴさせていたビクンッと身体を跳ねさせたオルト。突如として慌て出したオルトの様子に目を丸くする2人に、本人は気づいて居ないようだ。

 

「なななな、何故あの方の事を……!?もしや、既にジョシュア様も被害を……?」

「そんなにビビる事ある?ひたすらに言い回しがクドい人とは思ったけど、普通に会話しただけだったよ」

「そ、そんな……!?ビナー様が戯れで手を出さないなんて……!?」

 

ピシャーンッ、という効果音が聞こえそうな程にショックを受けた様子のオルトは不思議そうに自分をみる相方の目線に耐えきれず、ゴニョゴニョと自身が挙動不審になっている理由を語りだす。

 

「な、なんというか、その……率直に言えばビナー様は人が苦しむ様を娯楽と認識されている節がありまして……暇つぶしと称して戦闘記録に割り込んでお相手の皆様をこう、残虐な方法で蹂躙されたりするので……少々、なんというか、そのぉ……」

「まぁうん、言いたいことは分かった」

 

全力で目を逸らしつつも言い淀むオルトに思わず苦笑いを零す開拓者2人。ジョシュアは本人と言葉を交わした時に感じた若干の悪寒と何故か沸き立った戦闘欲の理由を察し落ち着かせるためにオルトのフワフワの頭を撫で始めた。

 

「随分と愉快なNPC達と絡んでるみたいだね?」

「ん、シャンフロ楽しい」

「それは何より……っと!」

 

会話の途中、突如して飛来した巨大なハナカマキリが2人と1羽目掛けて襲いかかって来るも、近くにいたペンシルゴンは特に焦ることも無くインベントリから一本の黄金の槍を呼び出し、振るわれた鎌に対して真っ向から突き出す。

本来であれば弾かれ合う筈なのだが、ペンシルゴンの放った一突きは蟷螂の鎌を飴細工のように壊しながら刺し貫き、動揺して仰け反ったモンスターに対して更にスキルによる雨のような刺突を食らわせた。

 

「「おぉ〜」」

「この森結構ハイド系モンスター多いんだよねぇ、これがまた結構面倒くさいの何の」

「その割にはなんてことなさそうに対処してるけど」

「お見事な槍捌きなのです!」

「そりゃまぁ私レベルカンストしてるし。ステータスの暴力とレベルダウンで鍛えたスキルフル活用してるからこんぐらいの奇襲どうとでも出来るって訳」

 

モンスターがポリゴンとなって霧散する光景を前にジョシュアとオルトはマイペースに拍手しながらペンシルゴンを迎える。

どうやら金になるドロップアイテムが拾えたようで若干機嫌の良さそうな様子だったが、ふと何かを思いついたような表情で口を開く。

 

「そうだジョシュアくん、オルトちゃん、次のモンスターの相手は君らがやってみてよ。バトルスタイルがどんなもんか見ときたいし」

「ん、了解。新モンスター楽しみ」

「ワタクシも張り切っていくのです!」

 

戦闘行為を即座に許諾したその時、虫が空を飛ぶ時特有の羽音が周囲に響く。全員がその方向が見れば、先程の蟷螂など比にならない巨体のカブトムシがすぐ近くに着地し敵意を示してきた。

 

「おっ、よりにもよってクアッドビートルか…このモンスターこんなに気性荒かったっけ?こっちから手出さない限り見向きもしないで蜜舐めてるはずなんだけど」

「多分僕の出身のせい、自分より高いレベルのモンスターからのヘイトが向けられやすいらしいから。入る経験値も減るけど代わりにスキルがレベルアップしやすくなる」

「そんなんあったの!?……いや、あからさまなデメリット効果がある奴は避けられやすいし、第一あの馬鹿みたいな数ある出身の中じゃ流し読み位しかされないだろうから情報が無いのも仕方ないか」

「僕からしたらメリットでしか無い」

「相変わらずのバトルジャンキーだね全く、初対面の時結構ビビったんだけど?」

「ん、事情は知らなかったけど結果的に先輩を守ったんだから許して」

 

呆れを含んだ笑いに対する返答は困り顔で行われ、そのまま流れるように戦闘に移行しようと思考を巡らせる。

 

「そう言えばオルトってコアページ使わないの?」

「むむっ、確かにジョシュア様の前では使用したことは無かったのですね。ではお披露目も兼ねて本日はそちらの装備で援護致すのです!」

 

フンスフンスと張り切っているオルトが徐ろに1枚のコアページを自らに反映する。瞬間、光る頁の群れに包まれたかと思えば司書補としてのコートから黒いスーツと鮮明な青を基調とし白のラインと剣とマントのエンブレが刻まれたマント、そしてツバの広い青のハットへと服装が切り替わったオルトが現れた。

 

「ふふん、決闘代行を主な生業とするフィクサー組織、『センク協会』の4課の方の頁なのです!」

「へぇ、決闘代行、4課まであるって事はそれなりに需要あったの?」

「記載を見るに暴力による解決が一番手っ取り早いと言うのがあの場所での共通認識なので、契約を通した決闘というのは正式かつ最も速い事態の終結方法だと思うのです」

「暴力云々は同意するけど、決闘が正式なのは物騒だね。僕好みだけども」

「……ごめん、何の話?」

「ユニークシナリオ関係の話。これ以上の話は余り出来ない……というか、

 

 

 

『そうそう、『都市』については今のこの世界においては禁則事項に近い事だから余り口外しないことを勧めるわ。世界から抹消されても良いのなら話は別だけど』

 

 

 

うん、世界にぶっ殺されるから話せない」

「ホントに何の話してんの?」

「まぁそれはそのうち。ん、それじゃ殺ってくる、幻想告解、幻想拘束、幻想着火」

 

『図書館』で手に入れた情報ばかりの会話で蚊帳の外にされるペンシルゴンはさておき、ジョシュアは安全に扱えるであろうEGO3種を呼び出し、『後悔』を手元にそれ以外をギフトにして身に着ける。オルトも腰に差されていた繊細なデザインが施されたレイピアを抜き放ち戦闘態勢に入っていた。

 

「ではでは参るのですジョシュア様!」

「さぁ楽しもうか、直ぐにくたばったりしないでね?」

 




アンジェラの言葉については色々な意味が含まれてます。
取り敢えず『今』は『都市』に関する情報をばら撒けば消される可能性が高いです。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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