それでは、どうぞ
時折遭遇したモンスターを相手取りながら、致命の鋸を腰に差し無骨な棍棒を持って森の中を駆け抜ける。
事前に少し調べた情報からエリアボスの存在を知っていたジョシュアは試し斬りの後に耐久値温存の為に致命の鋸の使用を制限し、代わりにオークがドロップした武器である獣の棍でモンスターを撲殺していた。
「そい」
「プキュ!?」
体を捻ってからの打撃は軽いモンスターならは一撃で吹き飛ばす威力を叩き出す。
駆ける途中に一度だけレベルアップのファンファーレが聞こえたが、それを気に留めずスルーして進み続けた所でジョシュアは目的地のセカンディルが見える……つまりは跳梁跋扈の森を抜けた先まで到達した。
「ん、漸く森じゃなくなった」
遠くにはセカンディルらしき街の建造物が見えるが、それよりも目立つのは目の前の存在。
「フシュルルルルル……」
跳梁跋扈の森と向こうの平野を分かつように存在する渓谷に掛かる橋、その前に陣取るように1体の大蛇がとぐろを巻いて鎮座していた。
『エリアボス・貪食の大蛇
推奨レベル10 推奨人数3人』
「中々、強そうなのが来た」
今まで戦ってきたモンスターの中でも一際強さがヒシヒシと伝わってくる存在にジョシュアの笑みが深くなる。
向こうが獲物を見定めるようにこちらをじっと見つめ、ジョシュアもそれから目を逸らさないように視線を返した。
「…………」
「…………」
チロチロと細長い舌を撓らせる大蛇へと一歩一歩歩み寄って行く。
獣の棍はインベントリに仕舞い込んて抜き放つは致命の鋸、傾き始めようとしている太陽の光を反射する刃は鋭く輝いていた。
「フシュルルルルル……」
剣を軽く握ってリラックスし、自然体のまま
「ふふっ」
ふわりと浮かべた笑みは変わらず、段々と踏みしめる足の速さが上がっていく。
「ん、殺し合う。貴方は僕を噛み殺して僕は貴方を斬り殺す、そう難しい話じゃない。けど、心が躍る事を……期待してる」
ジョシュアがニコリと笑って言い切った瞬間、貪食の大蛇がその大樹のような身体を撓らせて一気にピンと引き伸ばす。
その速度は先程まで蹂躙していたゴブリンやオークとは比べ物にならず、その威力と攻撃範囲は言うまでもなく強大だった。
「ん、《タップステップ》」
しかし幾度もの戦いを経験してきたジョシュアにとっては焦る必要もない状況、冷静にスキルを使用し、丸呑みにせんと迫る大蛇を軽く往なして横を通る肉体に対し刃を振り上げる。
「《パワースラッシュ》」
「ジュッ!?」
直剣と同等のサイズを誇る頑丈な鋸の振り下ろしはその形状とスキルの補正も相まってか硬い鱗を突き破って肉体にダメージを与えた。
痛みに呻く大蛇を他所に、ジョシュアは続け様に発生させた弱点にスキルを交えた連撃を叩き込んでいく。
「ふんふんふんふんふん」
「ギュルアッ!!」
黙ってやられる訳にはいかないとばかりに大蛇は尾を鞭のようにしならせて己の敵目掛けて叩きつける。
HPと耐久の関係上実質オワタ式のジョシュアは流石に攻撃チャンスはここまでだと見切りをつけ跳んでその場から離れるが、その勢いを殺すことなく再び懐に入りこまんと即座に駆け出した。
(ッ!)
噛みつこうとする大蛇の頭の下を潜り抜け、そのまま攻撃しようとしたその時、ジョシュアの視界の端に大蛇の尾が見える。
一見先程の物理攻撃が行われるだけのように見えるが、尾の先がこちらに向いている為その可能性は薄い。
ただ身体を撓らせた余韻の可能性もあったが、ジョシュアは先程から鳴っている頭の中の警鐘に従ってフェイントを交えて回避に専念し始める。
ビシャッ!
「ッ、ビンゴ!」
急ブレーキをかけて地面を蹴るように方向転換した瞬間、先程までの進行方向へ尾の先から毒々しい液体が放たれた。
「ん、蛇と毒はセット………少し意外な場所だったけど」
所謂排泄物と称される物を被せられかけた事にジト目になるものの、気を取り直して大蛇の地団駄をスルリと避けていく。
時にはスライディング、時にはムーンサルト、そして時には鋸によるパリィで攻撃を往なしながら着実にダメージを与えるジョシュアの姿は一種の舞の型のようである。
「……ふふっ」
思わずといった様子で溢れる笑みを抑えることはせず、ただひたすらに避けて斬ってを繰り返すこと数分。
ちょこまかと動きながら決して無視できない傷を与え続ける存在に痺れを切らしたのか、大蛇がその大きな身体を急速に動かし無茶苦茶に暴れ始めた。
「よっ、ほっ、ぬっ」
それでも脅威は取り除けない。
それどころか段々と大蛇の動きに対応し始めたのか、より一層避け方が軽くそして洗練されていく。
終いには縦横無尽に己の身体すら足場にして舞い踊る始末、大蛇からしたら大層不服に違いない。
「シャァァァァッ!」
大蛇は少し敵との距離を離した所で力を溜め、一気に解き放って丸呑みにせんとアギトを開く。
「えいや」
しかしそれも予知していたかのように高く跳んだジョシュアは下を通る大蛇の毛を左手で鷲掴む。
大蛇の勢いに振り回されながらもしっかりと握り締めた手で身体を引き寄せ、そのまま鱗を足掛かりに蛇の側面に立つような姿勢になった。
「もうそろそろ始めてから2時間経つし、一旦休憩したいからさっさと沈める」
蛇らしい縦割れの虹彩がジョシュアの目線とぶつかり合う。
水晶のように光を反射する大蛇の瞳には、太陽を背に鋭く、細かい刃の鋸を突き刺ささんとするジョシュアが映っていた。
「ありがとう、楽しかった」
囁きと共に放たれた今持てる全ての力を用いた刺突は大蛇の瞳を貫き、そのまま反対側まで貫通したのだった。
出身の関係上向こう側からレベルアップの為の経験値達が突っ込んで来るのでレベルアップが早かったのと、プレイヤー自身の能力が戦闘方面に極振りされていた結果がこれである。
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……