外側やキャラだけですが、一応タグも追加しておきます。
それでは、どうぞ
「「「「ログボ天誅ッ!!」」」」
「ん、甘い」
『遠き日のセツナ』とのやり取りがあった日から2日、仕事やら何やらでゲームをする暇が無かった紫亜は段々と溜まっていた闘争欲の発散の為に『幕末』の世界にジョシュアとして降り立っていた。
あいも変わらずこの世界に目覚めた瞬間から迫ってくる刀に自然と上がる口角を抑えることはせず、ただ流れるように周囲の敵を斬り倒す。
「げぇっ!?裏ボスさぁびゃっ!?」
「喋る暇があったら刀を振らないと。ん、そこ」
「「なにぃっ!?」」
胴体を真っ二つにした者達の更に後ろにいたプレイヤーがジョシュアの姿を認識して狼狽えた隙も逃さず、即座に頭から何の変哲もない刀でかち割るとそのまま左右から迫っていた忍者のように頭巾で頭を覆ったプレイヤーを見もせずに回し蹴りで迎撃する。
装備に隠密効果でもあるのか蹴り飛ばした際にも音がしなかったがジョシュアからすれば稚拙なものだった。
「音の消し方が不自然過ぎる。風の音まで消えたらそこに何かあるって言ってるようなものっ」
「おぐぅッ!?」
得物を蹴りで弾かれて姿勢を崩した忍者もどき2人のうち片方の腹に刀の柄を埋め込む勢いで突き刺し、それでえづいた隙にいつの間にかもう片方の手に握った小刀を首目掛けて振るう。
その何処か禍々しい妖しさも感じる黒曜石の刃は何の抵抗もなく肉を裂くとそのまま骨すらも綺麗な断面を残すほど鋭く切断し、そのままそのプレイヤーの首を跳ね飛ばした。
「ん、久々に使ったけと相変わらずイカれた切れ味」
「兄弟の仇討ち天ちゅッ!?」
「天誅」
背後より振るわれた刀を右手の刀で受け流すとそのまま小刀の袈裟斬りで2分割する。刃渡りは切断物の3分の2程度しか無い筈なのだが、何かの作用かはたまたジョシュアの技量が成り立たせているのかその範囲よりも明らかに斬り傷の範囲は広かった。
小刀の刃を空に翳せば黒曜石特有の輝きが少し眩しく感じる。
「さ………やろっか」
そう言いながらニコリと微笑むと、先ずコチラの様子を建物の角から伺っているプレイヤー目掛けて黒曜石の小刀を投げつけた。
数分後、周囲のプレイヤーは根こそぎ殺ってしまったのか静まり返り、刃毀れのない刀と少し欠けた小刀を持ったジョシュアは何処を目指そうかと目覚めた路地裏をテコテコ歩き始める。
「竹林の方行って竹槍撃ち落とす練習……いや火薬庫か団子屋に突っ込んでみようかな、それとも新選組に……」
物騒な襲撃計画を立てながらジョシュアは刃毀れした小刀を宙を裂くように振るう。
一見意味の無さそうな行動に見えるが、その効果は直ぐに『小刀の刃が修復される』という形で現れた。
「ん〜ん〜ん〜♪」
機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら歩くジョシュアが握るこの小刀は『幕末』内で開催されたイベントの1つである「刀匠祭 -妖刀乱舞-」にて
「でも久し振りに銃とかの相手もしたいなぁ。シャンフロでも銃持ちの戦闘記録とかありそうだし」
イベント中山林エリアで偶然見つけた黒曜石で刃を大量に作り、それを用いて天誅し他プレイヤーの血を吸わせてから砕けた刃を溶かして1つに圧縮し刀状に形成し直し研磨、自身の手の骨を砕き形成し直して作った柄を付けた妖刀「流転輪廻」。
刃渡りの短さがハンデにならない素材由来の簡単に肉を裂く切れ味、割れたとしても血の意志によって無限に繋ぎ合わされる刃、そして手元から離れても数秒後に縁を紡がれた持ち主の手元へと帰ってくる生物の如き帰巣本能。つまるところ無限に使える投げナイフである。
「あ、そうだあの人は……よし、ログインしてる。面白そうなの増えてないかな」
そんな危険物を手で弄びながら歩いていたジョシュアはふと足を止め
両方に軒先が見える路地裏の隙間からは曇り空が覗いていたがそれとは対照的にルンルン気分で一跳びで屋根に降り立ったジョシュアは目的地目掛けて移動し始める。
「ん、通りすがり天誅」
「「「アバーッ!?」」」
無論、道中の侍達は天誅するのがこの世界に於いての常識である。
「えい、えーっと拠点は確かココらへんに……あ、いた」
「あん?」
屋根伝いで目的地まで突っ走って十数分後、途中30人程度撫で斬りにしながら辿り着いたのは沢山の長屋が並ぶ城下町エリア。
その一角にて戦いの音を察知したジョシュアが屋根の上から覗いていたプレイヤーを後ろから声を出す前に仕留めて路地を覗き込むと、丁度下での戦闘も終わりを迎えていたのか胴体を横薙ぎに切られたプレイヤーが消滅し、残った1人が手に持った刀の血を払うような動作をしていた。
普通に声を出した為下のプレイヤーは警戒するように振り返って屋根を見たが、ジョシュアの姿を捉えた瞬間剣呑な殺気は霧散した。
「なんだ、ジョシュアの坊主じゃねえか。まぁた刀狙いの奴かと思っちまった」
「ん、久し振り村正さん。新しいのある?」
「丁度さっき出来た奴を試し切りしてたとこだ、ほれ」
乗馬袴と白い上着を身に着けた赤毛の男……村正と呼ばれた男は幕末の中でも「裏ボス」と称されるトップクラスの危険人物を前にしても動揺することもなく、それどころか得物としていた一本の刀を屋根から降りてきた相手に投げ渡した。
一方で難なくそれを受け止め精査し始めたジョシュアも特に敵意を見せることは無く、ただ友人のような距離感で話し始める。
「ん、中々いい出来……
「柄はこれから作るんだよ。芸術品なら兎も角、流石に数回斬って駄目になるもんに柄拵えるにゃ時間が勿体ねぇ。お前さんの妖刀みたく直ぐに切れ味と刃が戻るんなら話は別だがな」
「そんなもんなんだ。というか試し切りって巻藁とかでやるものじゃなかったっけ」
「そもそも巻藁使われてんのは硬さが人間に近いからだ。現に昔の試斬は罪人の死体でやってたしな。この世界じゃ向こう側から突っ込んでくれるからわざわざ用意する必要もねぇし楽だぞ」
「動く巻藁かぁ」
随分な物言いだがこの世界においては特に問題にはなり得ない話なので置いといて、先程まで乱戦の中で集中狙いされていた際に使用されていた未完成の刀を改めて見る。
使い手が良かったのかはたまた性能が良いのか、歪み一つないそれは幕末内では数人程度しか存在していない
「で、これ幾ら?見た目の割に軽いし振りやすい」
「リハビリがてら打った数打ちだからな、1両……や、5000文でいい」
「村正さんの刀なら2両でも安いぐらいだけど」
「ジョシュアの坊主はお得意様なんでな、まだ幾つか拵えた刀の試用手伝ってくれりゃそれでいい」
「ん、わかった。交渉成立」
「おうおう、面白そうな話が聞こえてきたから覗いてみりゃぁ裏ボスと刀工様が揃い踏みとはなぁ?」
やんややんやと値段交渉をしていたその時、他の人間が存在していなかった路地に1人の男の声が響く。
それに反応した2人がそちらを見れば特徴的な空色の羽織が目に入り、村正はウゲッ、と顔を歪めた。
「チィッ……あぁ勇者様かい、何用だ」
「おいおい、オレぁただそこにいる裏ボスと同じように刀の買い付けに来ただけだぜ?そんな目線向けないでくれよ」
「お宅の部下が調査だの何だの言って押し入って来たの忘れた訳じゃねぇぞ。まぁ全員貯めてた試作品の試斬用の巻藁にしちまったが」
「そりゃあオレの管轄外だ。悪く思わないでくれ」
カラカラと笑う新選組局長……当千に対し、片や面倒くさそうな顔を隠しもせず、片やペコリと頭を下げて挨拶をする。対応はかなり対照的だった。
「当千さん、いつも弟がお世話になってます」
「ほれ見ろ、若いのに礼儀正しさで負けてんぞ」
「生憎手前に対する礼儀なんざ知ったこっちゃねぇよ。俺はただ満足するまで刀が打ちてぇだけ、邪魔しねぇなら誰でも客だ」
「じゃあ俺も客だな」
「会った瞬間にウザ絡みしてくる奴を客として見てねぇよ」
「……………」
「……………」
ポンポンと飛び交う会話も束の間、その様子を何となく静観してるジョシュアを置いて互いに黙り込む鍛治師と新選組局長。
そして数秒後、
「なぁら仕方ねぇよなぁ!?部下共に倣ってお前の持ってる刀全部差し押さえしてやるよボンクラァッ!!」
「やぁってみろやエセ役人がッ!丁度妖刀の素材が欲しかった所だ、手前の血寄越せやボケナスッ!」
感情の爆発と共にインベントリから取り出した刀をそれぞれ抜き放ち、
「「天誅ッ!!」」
己の技術を乗せた一撃を振るい、大きく火花が散る程のぶつかり合いとギャリギャリと音を鳴らす鍔迫り合いが始まった。
「ッ、チィッ!」
「オラどうしたよ鍛治師サマ?そんなもんかよ!」
「うるっさいわこんのバカ力!」
鍔迫り合いは僅かの間拮抗したものの、鍛造の為にステータス調節をした為か若干筋力が劣る村正が押され始めた。そのまま押し込もうとする相手の思惑通りになるのが気に入らないのか、わざと手元の力を抜いて刀の向きを流して斬撃をずらす。
即座に返す刀で手を狙い、それを柄で殴って止める。
体を翻して下から袈裟斬りを放ち、その刃を横から叩いて弾き飛ばす。
数秒の間に目にも止まらぬ応酬が行われ、割って入るのも憚れる程の景色を作り出されていた。
だが、忘れてはならない。
「ねぇ、僕の前でそんな楽しそうな事するって事は、
僕も
ココに居るのは殺し合いが大好物な怪物である。
「天誅」
「「ッ!」」
割って入ったジョシュアが垂れ流した濃密な殺気に反応し、互いの首を狙った斬撃を放とうとした2人が即座に後ろに跳んで退く。
そして、その2人の頭部が数瞬前まであった部分に一閃を見舞ったものの、特に手応えが返って来なかったジョシュアはその事実に嬉しそうな笑みを浮かべて顔を上げる。
「ん、楽しもうね、二人共」
「やっべ、完全に裏ボスのスイッチ入っちまった」
「ったく手前が来なきゃ商談だけで終わってたかもしれねぇってのによぉ」
「何言ってやがる。アイツが商談だけで済ます訳ねぇだろ」
「……それもそうだな」
蕩けるような微笑みはこの状況においては圧を増させる要因の1つにしかなり得ない。
だがしかし、この世界に身を置く時点でチャレンジャー側となった2人もまた程度は違うもののジョシュアと同じ
殺る気に満ち満ちた笑顔が自然と浮かんできた村正と当千は改めて己の得物を握り直して、怪物を討つ為に構えるのだった。
「刀匠祭 -妖刀乱舞-」
普段は殺し合いばかりの幕末の侍達が各々己好みの刀を作りそれのみでバトルロワイヤルを行うイベント。
普段とは一風変わったイベントだったが、プレイヤー達の評価はかなり高かった。
なんせ自身のプレイスタイルに合わせた物を作れる上、「妖刀」という大義名分を得た為かトンデモ能力を付ける事が出来た為自由度がアホの領域まで高いのだ。
尚材料もホントに何でも有りだった為自身の腕を芯にして呪物骨刀を作り出してたプレイヤーも居た。
スコアの計測方法は「鍛造した刀の性能」「バトロワでの成績」「どんだけロマンがあったか」
最後に関しては参加プレイヤーの投票によるものである。
上位の面々はこのイベントで作った刀をそのまま景品として受け取ることが出来、1位は今後の『幕末』内でも引き続き鍛造が可能になる「鍛治営業許可証」というアイテムが渡された。
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
-
いる
-
いらない
-
セルマァ……