司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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無事ホンルのサラジネも見れました。
言いたいことが沢山ありますが、取り敢えず締め括りが上手すぎで笑いました。
ホンルの尊厳破壊人格楽しみですね!



それでは、どうぞ


刀語り

「ん、楽しかった……あ、これ刀のお代。チップ含めて1両」

「そんないらねぇつってんだろうに…ったく、あいよ確かに。さっさと仕上げるから使ってたやつ寄越してくれ」

「はい」

 

あの後、その場にいたプレイヤー達を根こそぎ狩り尽くし、おかわりと言わんばかりに釣られてきたランカー達も笑顔で斬り刻んだジョシュアはドロップアイテムまみれになった大通りから村正が拠点にしている鍛冶場へと移動していた。

ジョシュアが戦闘中ずっと握っていた未完成の刀を受け取った村正は早速己の作品の状態を確認し始めて、苦笑いを零した。

 

「あの乱戦で銃弾斬り何回もやって刃毀れ1つ、か……相ッ変わらず凄まじいなお前さんは。というか柄無しでここまでやるとかどうなってんだ」

「ん、褒めても何も無い」

「事実言っただけだ、このバケモンが。あの勢いで戻ってくる妖刀足場にして無理やり方向転換とかイカれてんだろ。まぁあの無茶苦茶具合は嫌いじゃねぇけどよ」

 

「呼べば戻ってくる」という性質を利用して無法な切れ味の妖刀を投げては戻しを繰り返し、時折それを更に蹴り飛ばして対物ライフルが如き勢いで全てを貫いたり、戻ってくる勢いを壁として利用してアクロバティックに方向転換したりと、中々に頭の可笑しい使い方をちゃんと戦いの中で成立させている辺りからジョシュアの技量の異常さが伺えるが、その演舞が如き蹂躙に魅せられる者は後を絶たない。というかそれ目的でジョシュアに斬りかかる連中も居たりする、ランカーって呼ばれてたりする。

それは兎も角、僅かに欠けた部分を修復し再び研ぎ直す作業に入った村正を、作業場横の住居部分への上がり口に腰掛けながら眺めるジョシュア。

砥石と刀が擦れる音がひたすらに響く小屋の中、不意に村正が思い出したかのように刀から目を離さぬまま口を開く。

 

「そういや他の奴から聞いたんだが、お前さん幕末に来る頻度減らすんだってな」

「ん、まぁ引退する気はサラサラ無いけど」

「そりゃ手前みたいな戦闘狂いが『幕末』辞めるたぁ誰も思ってねぇよ。だがその理由を知りたがってる奴は何人も居やがる」

「別にユラも居るから混沌具合は大して変わらないと思うけど」

「自分が来た時の盛り上がり具合に自覚がねぇのかお前さんは………まぁいい、刀打つだけのオレにゃ関係ねぇか」

 

刀を刃を立てるようにしながら確認し研ぎの調整を行う動作に迷いは無く、そのまま斬る為の刃を仕立てるために時折水を掛けながら研いでいく。

 

「それを言ったら村正さんだって最近全くログインしてなかったけど。刀の買い付けに来れたの一ヶ月ぶりぐらいだし、リアルのお仕事忙しかった?」

「いんや、別に仕事はいつもと変わりゃしねぇよ。ただちょいと別のゲームで武器拵えてただけだ」

「別のゲーム?」

「おう、有名だから知ってると思うが『シャンフロ』って奴をな。鍛治作業が案外パパッと終わっちまうのがちと残念だが、『幕末』よりも想像通りに細かく作れるのが良い」

 

作業をしながらなんてこと無さそうに告げる村正に対し、ジョシュアは目をパチクリと瞬かせる。

 

「ん、村正さんも『シャンフロ』やってたんだ」

「あん?その言い草ってこたぁお前さんもやってんのか」

「うん、最近始めたばっかりだけど結構ハマりそう。難易度高そうなユニークシナリオも受注出来たし、暫くは退屈とは無縁になりそうかな」

「へぇ、そいつぁまた楽しそうなこって……うし、こんなもんだな」

 

ようやっと満足のいく出来になったのか、砥石から刀を離して軽く水を掛けた後に拭き取れば研磨を終えた刃が白く妖しく光る。何処か金属とは違う輝きが含まれているように感じるが、見た目からはその要因までは察することは出来ない。

そのまま柄等の作成に入るのか、何故かおどろおどろしい雰囲気の白鞘の刀が安置された大きな素材の保管場所から木材を選び取り、上がり口に腰掛けながら少し横に移動したジョシュアの隣から床板の上に茣蓙が敷かれた作業場へと上がってそのままその上に座り込んだ。

 

「武器を拵えたってことは『シャンフロ』でも鍛治師やってるの?」

「たりめぇだろ、オレから鍛冶取り上げちまったら殆ど何も残らねぇぞ」

「その割にはアクセサリーとか作れるし結構器用だと思うけど」

「自分で刀全部完成させてっからな、柄とか鍔作る過程で装飾とかは自然と覚える」

「毎度思うけど、本来日本刀ってパーツ毎に職人が居るものなんじゃないの?」

「まぁ普通はそうなんだがそれじゃあ面白くねぇ、やるならきっちり最後までってな」

「ふーん」

 

ゲームの補正故か現実では有り得ない速度で木材が加工され、ものの数分で柄と鞘の下地を仕立て上げた村正はそのまま素材を保管しているであろう鍵付きの箱をあけて中を弄り始める。明らかにヤバそうな気配がするが、村正は特に気にすること無く鞣された動物の革や組紐に瓢箪、ついでに器や刷毛と言った道具を取り出して傍らに置くと、手始めに柄に革を張り始めた。

 

「そういえば村正さんって『シャンフロ』で何処拠点にしてるの?」

「ニーネスヒルだ。つってもまぁ素材狩りであっちこっち行ってるから別に明確な訳じゃねぇけどな。しかも最近になって攻略クランからの勧誘が待ち伏せしてやがるから面倒くせぇし帰ってねぇ。確か、ボールナントカ……?」

「もしかして黒狼(ヴォルフ・シュバルツ)?」

「あー、そんな名前だったか。無駄に洒落た名前付けてんなとは思ったが、そこの幹部っぽい奴がまぁ煩いのなんの。素材持ってきて依頼さえすれば作ってやるっつってんのに聞きやしねぇで「傘下に入れ」だの何だの……いっぺん脳天から叩っ切っても良かったんだが、他所のゲームで『幕末』のノリで殺るのも野暮ってもんだろ?」

「それはそう」

 

思い返して呆れによる溜息を零しながらも組紐を巻いていく手つきは手慣れていた。弛まぬようキツく締められ紋様のようになった組紐を固定し、予め加工してあった鍔と共に茎を差し込んでゆく。

 

「あぁ、勢いでここまでやっちまったが何か要望か何かあるか?多少の変更は出来るが」

「んーん、好きに作っていいよ。仕上がり楽しみにしてるし」

「おう、ならこいつも使っちまうか」

 

殆ど形を成し、後は鞘を仕上げるのみとなった段階で取り出した瓢箪の口を塞いでいた封を取って中身を器に注ぎ入れる。普通の朱色の漆のようだが、そこに村正が顔料らしき物をパッパと振り入れるとその様子が変容する。

 

「ん、鮮やか」

 

炎のような朱色は明朝の朝日の光のように柔らかい物へと変わった。それを刷毛で鞘に塗布していけば、素朴な木の鞘はあっという間に1つの作品の如く輝きを放っているようにも見えた。

 

「うし、出来たぞ」

「ん、ありがとう。刀の銘は?」

「「旭」だ」

「いいね、暫くこれメインにしようかな」

「直ぐに使い潰してくれるなよ?まぁお前さんなら心配は要らねぇだろうが」

 

作業を終えた村正は鞘に刀を納め、軽い装飾を施してジョシュアに手渡した。鯉口を切って刃を出せば白刃が覗き、銘のように旭が覗いた瞬間を切り取ったように見えた。

その出来にうん、と1つ頷いたジョシュアは再び刀を鞘に収めて腰に差す。

 

「ありがとう村正さん。あ、これ前に言ってた素材、僕は要らないからあげる」

「あいよ、今後ともどうぞご贔屓に」

「ん……ん、ごめん、メール」

 

インベントリから何かの金属の原石を取り出して渡して去ろうとしたその時、ジョシュアの前に1つの表示が現れる。普段のプレイ中ではほぼ常に殺し合いの戦場に身を置いている状態なので気にも留めないのだが、村正の鍛冶場内は一種の停戦エリアのようになっている為一先ずその内容を確認し始める。

 

「あ、もうこんな時間、ちょっと試し斬りしたらログアウトしなきゃ」

「あん?まだ別に夕餉時でもねぇだろ、何か用事でもあんのか?」

「ん、まぁそんなとこ。幼馴染が部活の大会でこっち来るらしいから、それの確認みたいなものかな」

「へぇ?もしかしてこれかい」

 

一応村正とジョシュアは現実で知り合い……というか遠い親戚な為紫亜の性別も知っており、割と気安い仲だったりする。しかしそれでも小指を立ててコチラをからかうようにニヤリと笑う姿を若干ウザく感じたのか頬を膨らませながら答えた。

 

「別にそんなんじゃない、というか相手中学生だから僕が捕まる」

「そういえばこないだ20なったんだっけか、まぁ坊主なら大丈夫だろ」

「むぅ……無責任な大人」

「お前さんももう大人の一員だろうが」

「ん、なら坊主って言うの止めて」

「オレにとっちゃ坊主は坊主だ」

「…………おっさんくさい」

「うるせぇまだ26だ」

 

カラカラ笑いながら雑にジョシュアの頭をポンポンと叩く村正にジト目を向けて居たジョシュアだったが、これ以上話してものらりくらりと往なされてしまうと察してか息を吐いて踵を返した。

 

「ん、それじゃあまたね村正さん。刀ありがと」

「おーう、また良い素材あったらこっち寄越してくれ」

 

気安い挨拶を交わし、そのまま鍛冶場から出た瞬間、

 

「「「「天誅ッ!!」」」」

 

何処に隠れていたのか、屋根の上や長屋の影、挙句の果てにはオブジェクトととして置かれていた大きな木の桶の中からプレイヤーが飛び出して一斉に外に出たジョシュア目掛けて斬りかかる。

 

「ん、天誅」

 

それに応えて腰に差したばかりの「旭」を抜き放ったジョシュアは、とても良い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あー……楽しかった」

 

とりあえず向かってきたプレイヤーを根こそぎ刈り取ってログアウトした紫亜は寝転がっていたベッドの上で満足そうにうっとり微笑みながら息を吐く。

一先ず体をほぐしながら水分補給等をしていると、不意に机に置いていた携帯電話がコール音が鳴り震え始めた。

 

「ん、あの子だ」

 

表示された電話番号を見てふわりと笑みを零し、椅子に腰を落ち着けながらコール音を出し続ける携帯電話の画面を操作し耳に当てる。

 

「もしもし」

『あ、もしもし!お兄さんですか?』

「ん、紫亜で合ってるよ

 

 

 

紅音」

 

 




村正が『幕末』で鍛造した刀 (一例)

・「亡星」
 イベントで入手した隕鉄とその他最上級品質の金属類を混ぜ合わせた合金で作成した一振り。その刃は何かに照らされずとも星の瞬く夜空のように淡い光を宿しており、例え何人足りとも寄せ付けぬ城塞であってもその刃の流れを止めるには不足である。
本人曰く「深夜テンションの産物」とのことで、リアルで刀や包丁の修繕、鍛造依頼が重なり過ぎて三徹したフラストレーションが込められている。素材を詰め込み過ぎた結果、対象が何であれ関係なくぶった切れるというイカれ性能を宿したがその代償か5人がかりでようやく持ち上げられるレベルで重くなった。
ランカー及びジョシュアでも匙を投げ、プレイヤーが扱える代物では無いとのことで最強NPCの将軍に献上された。


・「餓渇」
 無縁仏の墓にすら納められなかった飢餓で死んだと思われる者の遺骨を芯に作った一振り。その刃はあらゆる物に飢えている、刃を納める鞘から血を啜り気力すら奪う程に。
……という大変危険な代物だが、所持してる者も対象になる為村正は「乾燥速くなるの助かるな」と専ら掻き集めた材料の加工過程で乾燥させる際に傍らに置いて水分を吸い取らせるという使い方をしてる。
良いのかそれで。

因みにその他素材の加工に使う小道具等もほぼほぼ妖刀の類だったりする。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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