司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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ん、メインヒロイン




それでは、どうぞ


幼馴染は青春の擬人化

「ん、こないだ振り。まぁ先週も電話はしたけど」

『そうですね!結婚して下さい!』

「その話は君が高校卒業してからね」

『むぅ、残念です。ならお付き合いして下さい!』

「そっちもせめて高校入ってからね。流石に中学生と付き合うのは世間が許してくれないから……高校生も少し不安だけど」

『あと1年も待てないです!もっと沢山お兄さんとお出かけしたいです!』

 

突然の告白は女の子の特権と言わんばかりに好意を告げる通話先の少女……紅音のワタワタとした主張に思わずジョシュアの顔に苦笑が浮かぶ。しかしそこに含まれるのは気まずさでは無く愛おしい物を見る時のような優しさのように感じられる。

 

「僕もそうだけど、仕事もあるから」

『また昔みたいに一緒にランニングとか、鬼ごっことか!』

「長期休みの時にまたやろうよ。楽しみにしてるから」

『はい!約束です!』

 

少しばかりいじけたような雰囲気は一瞬で弾け跳んだように無くなり、互いに笑いが溢れる。そんな優しいやり取りを交わしながら紫亜は話題を振る。

 

「それで、調子はどう?怪我とかはしてない?」

『はい!全く問題無いですよ!』

「なら良かった。来週の大会差し入れ持ってくね。他に応援に来るのは何人位?」

『お父さんとお母さんと陸上部の皆です!えぇっと……大体8人位ですね』

「ん、分かった……そうだ、大会の後ってどうする?恐らく泊まりがけだろうけど、春休みだしそのまま観光する?」

『今のところその予定ですね!まだ何処に行くかは決めてませんけど』

「良ければ案内する、友達も連れておいで。あ、費用はこっちで持つから」

『ホントですか!?あ、でもホテルとかは2泊分しか取らないからあんまり時間無いかもしれません……』

「僕が誘ってる訳だし宿泊費とかもこっちで出す。先生とかご両親にも確認を取らないとだけど」

『すぐに確認してきます!!』

 

電話の向こうからダッダッダッと走る音が若干ながら聞こえてくる状態で暫く待っていると再び電話から声が聞こえてくる。しかしそれは先程電話を離した紅音とは違う低い物だった。

 

『もしもし、紫亜くんか?』

「あ、どうもせん…紅史さん」

『暫く振りだな、元気にしてたか?』

「えぇ、お陰様で仕事も順調です」

『あぁ、確かにこの間見た雑誌に載ってたな。紅音、君の出てる雑誌集めてるから俺もよく見るんだ。中学校でもよく話題になってるらしいぞ』

「ん、少しむず痒いですね。デビューして1年位なのでまだまだ未熟だと思いますけど…」

『何を言ってるんだ、君の努力あってこそだろう』

「マネージャーさんや先輩の指導の賜物です」

 

落ち着いた声質とは裏腹に気さくで優しさが伝わってくる声色に紫亜もつい沢山話してしまう。小学校時代の恩師でもある相手と他愛もない会話を交わした後、早速本題に入る。

 

「それで、観光の件についてですが」

『あぁ、俺達としてもとても有り難いし是非と言いたい所なんだが……その、大丈夫なのか?』

「?何がですか?」

『出費の話だ。予定としては大会前日から2泊するんだが……君の予定ではもう1泊分を出そうとしてくれているんだろう?しかも観光の旅費まで……流石にそこまで世話になるのも悪いと思ってなぁ』

「親の勧めで昔からやってた投資の方で稼ぎすぎてちょっと税金とか諸々で取られそうで……数十万位なら痛手にもならずに出せるのでご心配なく。というか寧ろ使わせてくださいお願いします」

『凄いセリフだな』

「自分の食費で大分使ってるはずなんですけどね」

 

目を閉じながら自身の持つ複数の口座の通帳に刻まれた数字を思い返す。モデルとしての稼ぎを除いても一家族を余裕で養える位の稼ぎが毎月舞い込んで来る為、紫亜の体質的な理由で高くなった食費を自分で負担したとしても特に変化の無い金額に資産家の一族の一人として生まれながらも割と庶民的な金銭感覚を持っている紫亜にとって日々増えていくそれに喜びよりも若干困惑が勝るのである。

 

『まぁ、そういう事なら世話になるかな』

「なんならお二人の宿泊費も僕が出しましょうか?」

『流石にそこまでしてもらうのは申し訳ない!自分達の分は自分達で出すから子供達に使ってやってくれ』

「ふむ、そうですか……承知しました。他の子供達と顧問の先生の方がどうするか決まったらまたご連絡ください」

『あぁ、出来るだけ直ぐに返す。おっと、紅音が速く代わって欲しいみたいだから俺はこれで失礼するぞ』

「えぇ、奥さんにも宜しくお伝え下さい」

 

相変わらず善い人だった事に安堵しつつ、電話の向こうの微妙に聞こえないやり取りを聞いていると元気な声が再び聞こえてきた。

 

『代わりました!』

「ん、おかえり紅音」

『皆のグループチャットで伝えたら驚いてました!』

「まぁそれはそうだろうね」

『あ、皆にお兄さんのことお付き合いしてる人って紹介していいですか?』

「うん、ダメ」

『何でぇ!?』

「下手すれば僕が捕まりかねないから……僕だって嬉しくない訳じゃないけど、仕事は辞めたくないから……」

『えへへ…嬉しいだなんてそんな……!』

「聞いてる?」

 

激しい感情の変化も自分への好意によるものだと考えれば少し気恥ずかしいが、成人男性と女子中学生と言葉にすると途端に犯罪的な響きになるという事実が紫亜を現実に引き戻す。まぁ並んだ時の見た目はほぼ姉妹でしかないのだが、紫亜は妙に自己評価が低いのだ。

 

「取り敢えず、親戚の人って事にしとこう」

『むぅ、わかりました!』

「ごめんね」

『あ、でも大丈夫ですかね?』

「?」

『お兄さん、私の学校で大人気ですよ?私が皆に見せて回ったのもありますけど皆お兄さんの大ファンです!』

「………ん、そっかぁ。まぁ、僕の事は当日まで言わないようにね」

『さぷりめんと、ってやつですね!』

「多分サプライズの事だろうけど、そう言う事」

 

今一自覚は無いものの、自身の知名度が上がっているという事実に少し気恥ずかしさと嬉しさを感じていると不意に通話先の紅音の声が小さくなった。

 

『でも、ちょっとワガママ言っちゃうんですけど……』

「ん、どしたの?」

『友達とかお母さんとお父さんと一緒に遊ぶのも楽しみなんですけど……大会で頑張ったら、お兄さんと2人で、お出かけしたいなって』

「………ん」

『だめですか……?』

 

内緒話のように出されたおねだりに紫亜は言葉を詰まらせる。先程までまでの活発さは鳴りを潜め、雨に濡れた子犬のように寂しそうにこちらを見上げてくるのを幻視してしまう程だが、なんというかこう、魔性的な何かを感じさせる。

しかしながら紫亜の頭の中を占めるのは体調への心配だった。

 

「大会の次の日は身体休めて欲しいし……その次の日の朝、一緒にお散歩しよっか」

『っ、はい!約束ですよ!』

「指切りのおまじないは出来ないけども、必ずね」

 

取り敢えず、大会翌日はゆっくり出来る場所に連れていこうかと思案しながらも、話し足りない二人は話題を共通の趣味であるゲームに変えて通話を続ける。

 

「そういえばこの前新しくゲーム買ったって言ってたけど、どんなのだったっけ?」

『えーっと、『スリリングファーム』っていうゲームです!ワゴンで500円で売ってました!』

「あぁ、アレ買ったんだ。面白い?」

『はい!この前なんてとってもデッカイキリンさんが私の畑の近くに来てました!』

「……農作物全部吹っ飛ばされたりしてない?確かそのキリン体温調節の為に嵐発生させる筈なんだけど」

『あ、だから畑の一部がめくれ上がってたんですね!近く通り過ぎて行っちゃったので接触出来なかったですけど結構可愛かったです!』

「そっかぁ」

 

話題になったゲームである『スリリングファーム』、実はゲーム友達であるサンラクから勧められて紫亜もプレイしたことがあるのだが、その内容はかなりカオスな物である。

タイトルに『ファーム』とある通りこのゲームの分類は農業酪農シュミレーションなのだが、もっと詳しく言えば「災害の如き被害を出してくる鬼畜害獣(草食)共から畑等を守り抜きながらジョウロ片手に牧場を経営する」ゲームなのだ。

 

『この間やっとBランク取れたんですよ!』

「凄いね、僕牧場に来た動物との戦闘に夢中になって畑の管理疎かにしちゃいがちだからスコア上がりづらいんだよなぁ。獣相手の戦闘シュミレーションとしては滅茶苦茶楽しいんだけど」

 

一応『スリリングファーム』の目標は「品質の高い作物や農産物を出荷してスコアを稼ぐ」というもので、その為にプレイヤー達ら作物を蹂躙する害獣共を命懸けで撃退するのだが、我らが戦闘狂ジョシュア=サンはその撃退をメインに楽しむという本筋から大分逸れた楽しみ方をしている。農業シュミレーションとは一体なんだろうか問いたくなるが、効率的に害獣を屠る方法を確立しそれを惜しみなく公表しているので『スリリングファーム』のプレイヤーからの認知度や人気は高かったりする。

 

「あ、集団で来る猪は先頭を罠と自分の攻撃で止めると後続が勝手に交通事故起こすから対処楽になる」

『そうなんですね、早速試してみます!』

「まぁ罠仕掛けても金属の匂いに気付いて積極的に解除してくる狐も居るから、仕掛けるならトラバサミじゃなくて下に竹槍仕込んだ落とし穴の方が良い。ゼピュラ・ジラとかウルカヌ・ファント来たら全部意味なくなるけど」

『なるほど!この間作った柵が根元から倒されてたのも狐さんのせいだったんですね!』

「あ、柵が木製なら多分狐じゃなくてビーバーだと思う。恐らくその後水不足にでもなったんじゃない?」

『なんでわかったんですか!?』

「同じことされたから。まぁその後作ってたダムごと爆破したけど」

 

基本的に家畜以外の獣畜生は敵であり、説得等は無意味なので初手住み処を潰すのはよく使われる手である。なおこの時ちゃんと群れを全滅させないと生き残りが超絶強化されてこちらの家を潰し返されるので注意が必要。

紫亜は割と早い段階でビーバーの巣を破壊し根こそぎ狩ったので被害は軽微だったが、対処が遅くなってから巣を破壊すると洪水が起きて甚大な被害が出る事が報告されている。

 

「余裕が出来たら一緒にゲームしようか。安売りされてるタイプのゲームなら友達から勧められて何個か持ってるから、もしかしたら同じやつもあるかも」

『分かりました!持ってるゲームの写真送りますね!』

 

そんな風に楽しい会話は続いていった。

 

取り敢えず、通話が終了したのは2時間後だったと言うことをここに記しておく。




この世界での紅音ちゃんの初恋は近所に住んでた紫亜くんです。
まだ病弱かつ田舎に引っ越す前に事故に遭いそうだった紅音を紫亜が助ける形で出会い、交流が始まりました。
その後色々あって紅音が引っ越した先の町にジョシュアも数年間滞在することになり、そこで更に親睦を深めたり互いに脳を焼いたりした結果、無意識に積もっていた恋心が爆発し「好き!!(挨拶)」になりました。

因みにこの世界における紅音ちゃんの両親の名前は紅史(あかし)さんと風音(かざね)さんです。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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