司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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ナイトレイン楽しっ!



それでは、どうぞ


目覚めの音は彼方より

「ん」

 

数日振りとなる『シャンフロ』世界の目覚めは『図書館』の休憩スペースからである。遠く遠くに見える天井にふと手を伸ばしてみると、視界に入った手の甲は人間らしいすべすべの肌が存在していた。どうやら侵蝕の症状はアンジェラの言う通り一過性のものだったらしい。

 

「おや、お目覚めかな」

「あ、ビナー」

 

体を起こしベッドから降りると、何故か近くの円形テーブルの席に腰掛けたビナーの姿があった。彼女の前にはソーサーが置かれており、手にはティーカップが握られている。

ゆっくりとカップを置き手招きしたビナーに素直に従えば、茶葉の香りが鼻腔を擽る。

 

「もしかして紅茶?」

「私の好物の1つでね、目覚めの一杯は如何かな?」

 

ビナーが空いた方の手で指を杖のように振るえば、ジョシュアの前の椅子が見えない力で引かれる。どのような思惑があるのかも見えないが、殺気などは一切感じない。

 

「ん、いただく」

 

ジョシュアが選んだのは、施しを受ける事だった。引かれた椅子に座り、目の前の紅茶を淹れられたカップを持ち、ゆっくりと楽しむように味わいながら流し込む。

 

『味覚制限が一部解除されました』

 

「……香りがいい、甘い酸味がある。これは柑橘……いやどっちかって言うとマスカット?」

「ほう、一口でブレンドを当てるか。修羅の如き出自かと思っていたが存外教養を持ち得ているな。生まれから富の恩恵を得られる環境にあったか」

「まぁ、結構裕福な方だって自覚はある」

 

紅茶と舌が触れた瞬間、口内に広がる豊かな香りに目をパチクリと瞬かせる。通常であれば大雑把にしか味を伝えてこない筈の舌は確かに現実に近い感覚で紅茶の味を脳へと伝えていた。

しっかりと味わい述べられた感想に満足したのか、ビナーも自身の分の紅茶を飲みながら話題を振った

 

「しかし難儀なものだな、お前の抱え抑えるそれを生かすには窮屈だろうに」

「……それでも、僕が僕である事を嫌だと思ったことは無いよ。貴女だって今の立場は嫌いじゃないんでしょ?」

「ふむ、確かに今の私は既に過去の延長線上には居らぬ者だ。愉快な物を見られると言うのは否定せんがね」

 

問答に対し眉を潜め意趣返しも織り混ぜながら返してもビナーは涼しい顔で笑う。今までのやり取りで言葉で勝てる気が一切しなくなったのか、ジョシュアは諦めたように肩を落として紅茶に目線をやる。

 

「この紅茶も図書館の力で出したの?それとも外の世界のもの?」

「あぁ、これか。記録の断片から抽出した茶葉は質は善いのだが些か変化に欠けるものでな、永く沈む間に揃えていた物は概ね味わい尽くして飽きてしまった。いくら唯人より逸脱しようがこうも放り出されては叶わないのだよ」

「もしかして、ビナーも外の世界に出てたりするの?」

「空虚な暇の慰みにな、世界に楔を射たれた哀れな怪物達を観測するのは中々面白いぞ」

 

クツクツと趣味の悪い笑い方をするビナー。彼女の言う「楔を射たれた」とは何の隠喩なのか等、疑問は尽きやしないがそれを答えてくれるほど向こうも殊勝な訳もないだろう。

諸々を思考の外に放り出し、一先ず罪のない紅茶を堪能することにした。

 

「ご馳走様、美味しかった」

「お粗末様、また振る舞ってやろう。」

「機会があれば次はお茶菓子でも持ってくる」

 

社交辞令交じりの挨拶もソコソコに休憩室を立ち去るジョシュア。その背中を見送り、自身の分の紅茶を飲み干したビナーはほぅ、といきを吐く。

 

「嘘吐きめ、闘気は愚直なまでに鋭利だと云うのに」

 

そう吐き捨てるように呟いたビナーの口元には悍ましい笑みが浮かべられていた。

 

 

 

 

「はぁ……一回、殺し合ってみたいなぁ」

 

溜息を零し、普通の声色でそんな物騒な事を呟きながら図書館を歩く。特に当てもなくふらりと行ったことのない緑を基調としたエリアに立ち入ってみれば、そこには本の整理を行うオルトの姿があった。

 

「おはよ、オルト」

「ジョシュア様!数日ぶりなのです!あ、少々お待ちを、館長様から頼まれた本の整理がもうすぐ終わるのです!」

 

そう言いながらテキパキと背中の背負子に積まれた本を棚に納めてゆくオルト。宣言通り一分もしないうちに作業は終わり、背負子をインベントリに仕舞ってジョシュアへと向き直る。

 

「今日はどうなさるご予定で?」

「ん、取り敢えず今やるべきは力を付ける事。そのついでに街を巡って幻想体探し。今のところ知り合いの拠点があるニーネスヒルに寄りたいかな」

「でしたら向かうべきルートは神代の鐡遺跡なのです!」

「ん、丁度良いかな。レベリング出来る場所もあるみたいだし、確認しときたい」

 

本日の予定を合わせる最中、ふと周囲を見回すジョシュア。

 

「そういえばここってどういうエリア?最近使ってる総記と大分雰囲気違うけど」

「ここは芸術関係の書物を納めているのです!例えばこの『立体物の表現の変遷』や『神代における芸術』といった物も置いてありまして〜……」

 

傍らの本棚から数冊取り出し、それを開きながらジョシュアに見せてくる。渡された本のうち一冊を開けばしっかりと中身のある内容が記されていた。

 

(凄いな、内容とかに一切の矛盾が無いし不自然な文章とかコピペされたような場所も無い。ホントに人に書かれた本って感じがする)

 

作られた世界のただのオブジェクトに過ぎないそれにすら、狂気とも言えるほどの作り込みが成されている事に感心している最中も、オルトの本語りは止まることを知らなかった。

 

「……〜という訳なのです!」

「良いね、今度時間作って色々読み漁ってみようかな。もしかしたら神代以外に『都市』についての話もあるかも……ん?」

 

オルトが引き続き語る中、ふと本から顔を上げたジョシュアの視界に一冊の本が入る。

無意識のうちに手を伸ばして本棚から取り出し、その表紙を自分の方へ向ければタイトルと共に落書きのようなイラストが目に映った。

 

「これ……幻想体の本?」

 

描かれていたのは黒く塗りつぶされた背景に色とりどりのハートが浮かぶ景色。そして肝心のタイトル部分には『宇宙の欠片』と記載されていた。

 

「………」チラッ

「〜で、しかもここなんかは特に〜………」

 

どうしたものかとオルトに視線を向けるが、当の本兎は自分に向けて語りながらガッツリ読書をするというトンデモなく器用なことをし始めていた。というか恐らく既にジョシュアが幻想体の本を手に取った事さえ気付いて居ないであろうレベルでのめり込んでいる。最早口が動いているだけだろう。

 

「……ん、まぁいっか」

 

しかし、何かに一度のめり込むと暫く帰って来れない感覚はジョシュアにも分かりみに溢れる事象なので大人しく退く事に決める。

取り敢えず、目下の解決すべき案件は手元の本についでなのだ。

 

「……アンジェラ居ないけどやっていいのかな?」

 

キョロキョロと周囲を見回してみるが、何処からともなくアンジェラが現れるという事もなく、一先ずジョシュアは本を持って開けた場所へ移動する。ついには喋る事すらせず完全に本を読むのに集中し始めたオルトを巻き込まないようそっと離れ、今までやって来たように本を開いた。

 

 

 

『あなたはその曲に出会います。魅惑的にあなたに近づいてきます...』




小ネタ
もしジョシュア+αがポケモンだったら?

・ジョシュア→ザシアン
 弟持ち、剣使い、くそつよ。
 え、ザシアンは姉?うるせぇ見た目は問題ねぇ!

・ユラ→レックウザ(常時メガ)
 ザマゼンタってキャラじゃないよこの子は。
 存在自体がチートに近い何か。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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