司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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書いてたら『宇宙の欠片』くんが妙に可愛くなりました。
コレもうどっちが幻想体か分かんねぇです。




それでは、どうぞ


エコーは異界の使者と共に

「おぉ、中々……メルヘンって云うにはちょっと不気味かな」

 

5回目となる世界の塗り替えの感覚が過ぎてから周囲を見回せば、そこにあったのは世界全てがクレヨンで塗られたような景色だった。だだっ広い地面から空に至るまで黒色で塗りつぶされ、空に浮かんでいるのは星ではなく巨大なピンクと赤で構成された歪んだ手描きのハート。おおよそまともな世界とは言い難い物だった。

 

しかしそれらも気にならない程に存在感を放つ物が1つ。

 

「で、もう居るんだよなぁ……」

『………』

 

 

幻想体(アブノーマリティ)

『宇宙の欠片と遭遇しました』

 

 

今まではある程度探索してから現れていた幻想体が普通に棒立ちでジョシュアの近くに立っていた。それはもう差も当然のような姿だった。

ビジュアルとしては世界と同じように黒のクレヨンで塗りつぶした上に歪なハートが描かれたかのような真ん丸な体に手足のように生える4本の触手、そして先端にハートの付いた頭頂部の触角が付いている。

暇そうにユラユラと揺れているその存在……『宇宙の欠片』はジョシュアに気が付くと正面?からこちらに向き直った。

 

ガパァ

 

「おぉう」

 

次の瞬間、頭頂部の触角らしき物の先端にあったハートが花のように開き、内側からパニックホラー物のクリーチャーのような口が現れた。

こういうホラーゲームありそうだなと考えつつジョシュアはインベントリから獣石爪を取り出し装備するとファイティングポーズを取って動きを観察し始めた。

 

『………』スゥー

「……ッ!」

 

そして触角先の口が息を吸い込むような動作を取ったと同時にジョシュアは後方へ目掛けて思い切り跳ぶ。

そして数瞬の後、

 

縺薙s縺ォ縺。縺ッ(■■■■■)!!!』

「うぉあッ」

 

『宇宙の欠片』の口からこの世の物とは思えない言葉の咆哮が放たれた。

ズキリと頭に痛みが走り、何とか着地しながら体勢を整えたジョシュアは警戒が増したように敵を睨みつける。

 

「結構離れたのにダメージ入った……何か頭痛いし、音が届くなら射程範囲?」

 

チラリと横を見れば表示されたHPバーがオレンジ色に変化していた。そもそもHPを一切伸ばしていない為攻撃を受ければ直ぐに瀕死になりかけるのも仕方ないのだが、アレが防げないとなると少々厳しい戦いを強いられる事になるだろう。

 

「ん、関係無し」

 

ならばその前に潰せばいいだけのこと。そう笑い、片足を引いて姿勢を低くしたジョシュアはそのまま地面を蹴って『宇宙の欠片』へと肉薄した。

 

「あれ?」

『………!?』

 

何故か動かない『宇宙の欠片』に対し、《ラダーブロー》をぶちかませば、案外軽いのかフィニッシュのアッパーで大きく後方へと何と殴り飛ばされていった。

 

「えぇ……何で避けなかったんだろ?」

 

よくよく考えれば一度吠えただけでそれ以外は向こう側から何かしらのアクションは無かったなと思い返しながら困惑するジョシュアは油断せずのっそり起き上がる『宇宙の欠片』を観察し続ける。

プルプルと震えているようにも見える『宇宙の欠片』はズンズンとまるで「怒っています」と言わんばかりに細い触手のような脚でこちらに歩み寄って来ており、ここに来てようやくジョシュアに向けての戦意のような物が感じ取れた。

 

「ん、さっきのあれってもしかして文字通りの挨拶?にしては攻撃的すぎるけど」

 

コミュニケーションにしては些か過激すぎやしないかと思いながらこちらからも近づいて行けば、『宇宙の欠片』はその長い触腕を振り上げ原理の分からぬ方法で長さを伸ばしながら突きを繰り出した。

 

「ほいっと」

 

しかしその程度なら他のゲームで経験済み、《パリングプロテクト》で難なく弾き返せばもう片方の触腕で薙ぎ払うようにしならせて来るものの、身体を反らし上を通過させて回避する。

 

「《旋風脚》、っと…っぅ!?」

(莉翫?險?闡峨?縺薙s縺ォ縺。(■■は■■■ち■■)繧上▲縺ヲ諢丞袖縺ェ繧薙□縺(■■■な■■■))

 

奇妙なバランスを保ちながら回転蹴りを見舞うが今度はしっかりと受け止めら反撃も放って来た。それは頬をスレスレを掠りながら通って行き、ほんの少し擦り傷みたいな形の傷を残す程度であった筈なのだが、ジョシュアの頭に先程の咆哮と同じような頭痛が走ると同時に何かゴチャゴチャしたものが脳内に流れた。

 

「ッ、シィッ!!」

 

攻撃の本質が物理ではなく精神への干渉だと言うことにたどり着くまでそう時間は必要なく、インファイトを行っていたジョシュアは即座に次々と迫る触腕への対処に集中する。先程よりも心なしか色合いが暗くなった『宇宙の欠片』も段々と堅くなって行く防御を破ろうと何度も何度も触腕を叩きつけ突き刺そうとするが、戦いという行為に対する慣れなのか一向に破れる気配がない。

 

莉墓婿縺ェ縺(■■な■)』ガパァ

「ッ、もっかい来る!」

 

痺れを切らしたのか再び頭頂部のハートが開き、口が空気を吸い溜めるような動作に移る。先程の咆哮をするつもりのようだ。

 

「やらせは、しないッ!」

『縺ッ!?』

 

それに対してジョシュアが取った行動は、装備していた獣石爪を口目掛けて投擲することだった。

手を離れた獣石爪は発声しようとした瞬間に花のように開かれた『宇宙の欠片』の丸い口へスッポリ収まり、鋭い爪の先が深く食い込んで引っかかっていた。

見るからにワタワタしだした『宇宙の欠片』が慌てて上部の口から異物を取り出そうと躍起になってる隙にジョシュアはその体を蹴って反動を用いて勢い良く離れる。

 

「今は丁度良いのがないし……壊れないことを祈るしか無いかな

 

幻想着火」

 

着地と同時にボソリと呟いたジョシュアの口元に燻ったマッチが咥えられ、全身が焚火のように炎を宿す。

その勢いは世辞にも強いとは言えないが、それでも今ジョシュアに与えられた力は生半可な物では無かった。

 

「《シュートヴェイン》ッ!」

 

燻りのような炎はジョシュアの手から獣石爪へと伝わり、そのまま剛速球が放たれた。

そして弾丸の如く飛んで行った獣石爪が見事『宇宙の欠片』に命中した瞬間、

 

チュドンッ!!

 

黒ばかりの世界に太陽の如き輝きが生まれた。

 

『〜〜〜〜ッ!?』

 

爆発で生じた黒煙の中から吹っ飛ばされ数回バウンドしながら地面に叩きつけられた『宇宙の欠片』は行動を潰された挙句強力な衝撃が襲ってきたという正に踏んだり蹴ったりな現状に混乱しているようで顔も表情も見た目からは分からないが困惑の感情が見て取れた。

そしてヨロヨロと立ち上がった『宇宙の欠片』が復帰してから最初に認識したのは、

 

「ちぇすとー」

 

気の抜けた掛け声と共に黒煙を突き破る勢いの飛び蹴りをかましてくるジョシュアだった。

 

 

チュドンッ!!




『宇宙の欠片』くんが言ってた(伝えた)言葉リスト

『こんにちわ!』
(今のはこんにちわって意味なんだけど)
『仕方ない』
『こッ!?』

結論:ホントに挨拶したかっただけ

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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