何かカワイイなと思わせたら私の勝ちです。対戦宜しくお願いします。
それでは、どうぞ
飛び蹴りが突き刺さり、爆発が起きる。それがジョシュアが世界の暗転の前に見た最後の景色だった。
「ん、食い縛りが無ければ即死だった」
現在、ジョシュアは何処とも分からない場所に大の字で寝っ転がって星空を見ていた。
地面の感触は固く冷えており、首を動かして見てみれば無機質な黒曜石のような物を削って平坦にしてあるように感じられる。
視界の端に映る真っ赤なHPバーの警告を消すためにインベントリからフラスコじみた容器に入った回復ポーションを取り出してがぶ飲みしつつ探索のために立ち上がった。
「ここは……何処だろ」
改めて周囲を見回せば、そこは渡り廊下のような場所だったようで横には満天の星空が広がっていた。というより見える場所に地平線という物が存在せず、今立っている足場と落ちるのを防止する柵を除けば上下左右360°全てに星の輝きが見えた。
「宇宙の中かぁ」
ある種の恐怖を煽りそうな光景ではあるものの、この程度で怯えるほどジョシュアのSAN値は低くない。
そのままマイペースに星を観測しながら無限に続いていそうな真っ黒な廊下を歩いていれば、不意に前方に何かの気配を感じ取る。
「あ」
『…………』
そこには先程ボッコボコにした『宇宙の欠片』が佇んでいた。顔などの位置は分からないものの廊下の柵に触腕を置き、星を眺めているような姿勢である事は分かる。
どう声をかければ良いのか分からないジョシュアが足を止めると向こうもこちらに気付いたようで頭頂部のハートをこちらに向けた。
「あ、ストップ、声を出すのは勘弁して欲しい」
『…………』シュン
再び開かれようとした口はジョシュアの制止によって閉じたまま萎れるように逆さまになった。分かりやすく落ち込む姿を見せる『宇宙の欠片』になんだか申し訳なく思いつつ、ジョシュアは片方の触腕を握手するように握り口を開く。
「声として聞くと僕が死にかねない。だからさっきやったみたいに触腕を通して頭に語りかけてみて」
『………!』
(……
「ッつぅ!?……OK、HPは減ってない、これで行こう。というかこっちの言葉は分かるんだね」
(
触腕を通して言語が伝えられる最中、常に頭の中身を無理やり捻り拗られるような感覚に襲われながらも死にはしないとそのまま話を続ける。
正直話すのも億劫になる痛みの連鎖だが、目の前の存在を理解する為ならばジョシュアからすれば止める理由など存在しない。
「恐らく、情報の処理能力も記憶容量も君から大きく劣ってるんだと思う。だから情報が過多に詰め込まれた言語は聞き取れないし無理やり脳が理解しようとしてダメージが発生する。だからこうして意味を直接叩き込めば、頭痛はするけどダメージはない……んだと、思う」
(
「正直ッ、今の僕の方が異常なのかもね……!」
己の考察を語り納得したような返事も来るが、その返事が紡がれる時にも絶え間なく脳をぐちゃぐちゃに斬り刻まれる感覚が流れ、顔を青褪めさせ冷や汗を垂れ流しながら何とか微笑みを作って会話を続ける。
ここまで精神的に追い詰められてもなお手を離さないのは最早意地なのだろうか。
「あぁ、少し慣れてきたかも」
(…………
その言葉を最後に、『宇宙の欠片』は一度沈黙する。ジョシュアが和らいでいく頭痛の感覚に一息ついて深呼吸し終えたその時、再びジョシュアの頭に言葉が流れてくる。
(……記憶。探査。単語。会話。可能。)
「わぉ」
し聞こえてきたのは意味を無理やり当てはめて理解させられた宇宙言語ではなく、なじみの深い日本語だった。単語のみを区切って話すという若干不便な形ではあるものの、苦痛の無いコミュニケーション手段を手に入れたのはとてつもない収穫と言えるだろう。
(会話。悠久。懐古。)
「ん、凄い」
胸を張るような動作をする『宇宙の欠片』にジョシュアは素直に感心して拍手を送る。
「取り敢えず、色々と質問していい?」
(了承。)
(以上。)
「ん〜、一先ずこんなとこかな」
色々と質問し始めてから数十分後、現時点で判明したのは
・『宇宙の欠片』はただひたすらに自分達へ知識を授けようとしていた事
・理由は「それが定められた運命だから」とのこと
・昔は狭い収容室のような所で管理されていた事
・収容室のあった場所が崩壊した後、こうしてこの世界にいる事
・この状態になってから詳しくは分からないが少なくとも一万年以上は経っている事
である。
「ずっとここにいるのって疲れない?」
(否定。環境。適応。不要。気楽。追記。時間。経過。我等。関係。皆無。)
「んー……本の中って幻想体が過ごしやすい空間になってるって事?というより、時間経過が関係ないって……なんかそういう上位存在だったりするのかな」
確かクトゥルフ神話にそういう神居たな、と最早普通に会話するまでに慣れており友人のように共に柵に腰掛けて話していたジョシュア。頭の中で整理しきれないので
(長期。会話。最初。)
「ん、収容されてた時は話して無かったの?」
(否定。会話。成立。追記。談合。発狂。等意。)
「あぁ、僕みたいに長時間話せる人が居なかったんだ……でもなんでだろ、今こうして話せてるのに」
(…………)
不思議そうに隣に座る幻想体に問いかければ少しばかり考え込むように沈黙し、再び触腕を通して語りかけ始めた。
(推察。)
「ん、どうしたの」
(汝等。異星。末裔。)
「……?確かに君からすれば異星の住人だろうけど」
(収容。研究。封印。人間。現在。相違。過多。
推察。一度。世界。「話しすぎよ」
パッ
「んぅッ!?」ドサッ
「全く……やる気があるのは構わないけど余計な事はしないでちょうだい。プロテクトが間に合わなかったら危なかったわ」
「……アンジェラ?」
星空だらけの暗い空間から突如として文字通り緑豊かな図書館の芸術エリアに腰掛けた姿勢のまま空中に放り出されたジョシュアは、話を聞くのに集中しすぎて対応しきれず音を立てて床に倒れた。
呆れ顔のアンジェラがしゃがみ込んだのを見て起き上がると、そのままデコピンを貰う。
「いで」
「貴方、予想以上に才能があるのね。ここまで幻想体と深く関わって一切狂った様子がないなんて……いや、元から感性がそっち寄りなのかしら」
「そっち寄りって?」
「幻想体寄り」
「…………どう反応していいか分からない」
「褒めてないのは確かね」
「ん(抗議)」
アンジェラは頬を膨らませるジョシュアを無視して傍らに落ちた『宇宙の欠片』の本を拾い上げると中に挟まった1枚の光るページを抜き取りジョシュアに差し出す。
「しかしまぁ、一番恐ろしいのはここまで幻想体に気に入られる才覚ね。何をしたらここまで協力的になるのかしら」
「何をって……会話?」
「それで幻想体の危険性を抑えられたら苦労はしてないわ」
「でもホントにそれぐらいしかしてない。ちゃんと向き合えば割としっかり返してくれる」
「………ホント、あの会社に居たら便利そうな人材だったわね貴方」
頁を受け取って呑気に性能を見ているジョシュアは己の行動がアンジェラにとってどれだけ異端か気付いていない。普通であれば殺し合った異常存在にそう積極的に関わりに行くのは本能的に避ける物だと思うのだが、他ゲームで日常的にやってるジョシュアからすればそうおかしなことでは無いのだろう。
尤も、それを知らず幻想体を良く知るアンジェラからすればイカれた奴という認識になるのも仕方ないのだが。
「あ、そうだアンジェラ、伝言がある」
「伝言?」
「セツナからアンジェラに、『ウェザエモンが変成してるかもしれない』って」
「…………はぁ、面倒な事になったわね。ねじれたかそれとも………一番厄介なのは覚醒だった時かしら」
そして更に齎された情報にアンジェラは思わず溜息を吐いき、アレコレ思考を巡らせ後辿り着いた答えを口に出す。
「ジョシュア」
「ん、何?」
「貴方はあの男、ウェザエモンに挑むつもりなのよね?」
「ん、先輩に誘われたから。何回も戦ってるらしいし、戦略も立ててると思う」
「ならそいつにも言っておきなさい。貴方が関わった時点で、既に事前情報なんて役に立たないわ」
指を突きつけ、真正面から見詰める。その瞳の中には、人間らしい強い意志と何処か人外らしい諦観が混ざって居るように見えた。
「EGOを積極的に使い続けなさい。親和性が高くなれば自ずと幻想体から力を授けに来るから」
「ん、ユメみたいに?」
「例えランクが低くとも、あの世界のモンスターとは一線を画す奴らなの。ただ導かれるままに振り回すだけにならないよう、精々気を付けなさい」
「分かった」
「言いたいことはそれぐらいよ。用事があるならさっさと行きなさい」
忠告を受け取り立ち上がったジョシュアだったが、少し困ったような微笑みを返してとある場所を指差す。
「そうしたいのは山々だけど………
オルト、あの状態から動きそうに無いんだよね」
「………………………………」ホンヨミウサギー
「……筋金入りの本の虫よね、ホント」
『宇宙の欠片』くんとの交流に必要なもの
・常に頭の中を回転ノコギリで切り刻まれてるような感覚がある中でも会話が出来る精神力
・自分がダメージを受けない方向へと導くコミュ力
・こちらの話を聞かない時にぶん殴って黙らせる為の武力
この3つがあれば『宇宙の欠片』くんと仲良くお話が出来るぞ!
頭痛はゲームに設定されている筈の感覚フィードバック無効を貫通してマジの痛みが来る可能性があるので注意しよう!
ジョシュアくんはリアルの方で頭痛では無いけど同等の奴を食らった経験があるから耐えれるだけで普通の人にはキツすぎるので真似しないでね!
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……