それでは、どうぞ
「キュリアァァァァッ!?」
頭を刺し貫かれた大蛇は断末魔を残した後、盛大に弾け飛んで赤いポリゴンと鳴って消え去った。
投げ出されたジョシュアが見事な着地を披露したその時、何度も聞いたSEと共にレベルアップの表示が出てくる。
少し操作すれば、今回習得したスキルも並んでいた。
「ん、《一艘跳び》に《スクーピアス》……大蛇と戦う前に欲しかった」
片や跳躍力の上昇、片や発生の速い突き攻撃とあからさまに先程の戦闘内容が反映された2つのスキル、その下に並ぶ身体能力を上昇させるスキル《アクセル》……そして何よりもジョシュアの目を引いたのは最後のスキルだった。
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PN:ジョシュア
レベル:16
メイン職業:傭兵(片手剣使い)
サブ職業:無し
体力 20 魔力 10
スタミナ 60
筋力 40 敏捷 40
器用 20 技量 15
耐久力 1(15) 幸運 40
残りステータスPt. 15
装備
左:無し 右:致命の鋸
頭:無し
胴:皮の服 (耐久力+8)
腰:皮のベルト (耐久力+3)
脚:皮の靴 (耐久力+3)
3550マーニ
スキル
・スピンスラッシュ
・ナックルラッシュ
・旋脚
・オプレッションキック Lv.4
・フラッシュカウンター
・ループスラッシュ Lv.4
・パワースラッシュ Lv.5
・ウェポンスロー
・タップステップ
・インパクトノック
・一艘跳び
・スクーピアス
・アクセル Lv.1
・光の種 第零段階
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《インパクトノック》はボスにたどり着くまでに多くのモンスターを棍棒によるクリティカルで撲殺していた事、《アクセル》や《一艘跳び》は大蛇の攻撃を避けるために跳んだり動き回ったりした事、そして《スクーピアス》はトドメとなった突き攻撃に起因して習得した物なのは分かる。
しかし最後の《光の種》に関しては全く持って心当たりが一切無い。
・光の種 第零段階
人間には誰しも、自分だけの光を持っている。
一人ひとり、自分の居場所で物語をつづって、望みが叶えば存在に対する根を下ろすそうだ。
私たちの役目は植えるだけ。
それをどう芽吹かせるかは本人にかかってる。
効果:一定時間、指定したステータス一つを25%上昇させる
戦闘時のみ使用可能
「んー………?」
ホントに心当たりが無い。
スキルの内容は便利どころか中々にブッ壊れているのだが、何故こんな物が生えてきたのかが謎である上に何故かあるテキストが意味不明である。
取得条件は?第零段階とは?芽吹くとは一体何なのか?
「………取り敢えず街に行く」
色々な思考が頭を巡り、最終的にジョシュアが選んだのは「後回し」だった。
ドロップアイテムを回収した後、当初の目的地であるセカンディルに到達するために、渓谷に掛かる架け橋に一歩踏み出す。
「ん、いい天気」
太陽はまだ真上近くでこちらを照らす。
平原から吹く爽やかな風に当てられたジョシュアは意気揚々と駆け出したのだった。
「………あら、久々のお客様になるのかしら」
「ん、到着」
スッタカターと軽い足取りで第二の街、セカンディルの入口の門を通り過ぎたジョシュアは取り敢えずセーブポイントの更新の為に宿屋を探し始める。
もっとも、重要な施設は軒並みその建物の屋根辺りに電子的な表示がされているため、普通に探索していれば宿屋や武器屋等といったRPGでは定番の施設はすぐに見つける事が出来た。
「ん、きゅーけいする」
一通り街を散策していた最中、街中にいたプレイヤーからの視線を感じる事は何度かあったものの特に害意がある物でも無かった為全てスルーして宿屋に入っていったのだった。
「ねぇねぇ、今のプレイヤーめっちゃ可愛くなかった?」
「相当アバターの作り込みにこだわりがあるんだろうな。このゲーム、やろうと思えばいくらでも弄くれる位には自由だし……にしても、どっかで見たことある気がするんだよなぁ」
「あ、もしかしてモデルの上条紫亜じゃない?」
「上条……誰だっけ」
「知らない!?名前と容姿以外の情報が一切不明なミステリアスさと自然な可愛さを兼ね備えた最強天然系ゲキカワモデルのシアちゃんを!?」
「おぉう……どうした?」
「メンズもレディースも関係なく着こなす中性的な見た目、仕草一つ一つが可愛らしい小動物感、全ての要素が私達ファンの心を掴んで離さないあのシアちゃんを!?最早伝説と謳われる『トワ様』が直々にスカウトして、後輩にしたあのシアちゃんを知らないって言うの!?」
「勢いが、勢いが凄い……!」
「あー、ごめん、この子トワ様とシアちゃんの大ファンだから一度語りだすと止まらないんだよね」
「ん……収穫無し」
仮想世界から現実に帰って来た紫亜は部屋の中にある大型のパソコンの前に座ってキーボードを叩いていた。
画面に複数映っているのは攻略サイトや所謂「掲示板」と称されるネットで展開される電子掲示板、その中でもシャングリラ・フロンティアに関する内容が纏められた物だった。
「《光の種》に関する情報どころか単語すら出て来てない。もしかして相当レア?」
普段であればモデルの仕事のメールやそれ以外の仕事、そして戦闘主体のゲームの検索位でしか使われない、無駄に性能のよいパソコンをフル活用して情報収集をしているようだが、結果が思わしくなかったのかその整った顔の眉間にほんの少しシワを寄せる。
そのまま椅子の背もたれに身体を預けて天井を見上げていた紫亜だったが、不意に耳に入った音にそちらへ目線を向けた。
どうやら電話らしい。
ピッ
「ん、もしもし」
『おーうジョシュア、今暇?便秘で組手しようぜ』
鳴っているスマホを操作して耳に当てれば、スピーカーからは少年と大人の丁度中間辺りといった感じの声が聞こえてくる。
どうやらゲームのお誘いらしい。
「ん……分かった、丁度別のゲームでちょっと悩んでて気分転換がしたかったとこ」
『へー、あんたが頭を悩ませるゲームやるなんて珍し。自由に暴れられる奴しかやらないと思ってたわ』
「ん、とっても失礼。そっちこそつい最近手に入れたゲームの攻略に集中するって言ってたけど、どういう風の吹き回し?」
ナチュラルに罵倒された紫亜がそう切り返せば、向こう側の少年は一瞬黙ったかと思えば堰を切ったかように話し始めた。
『あんッのアバズレを持て囃さなきゃいけないストレスを別ゲーで発散したいんだよ……!ぬぁにが「邪神が〜」だ!てめぇの方がよっぽど邪悪だわゴミクズがァッ!』
「確か『フェアリア・クロニクル・オンライン』だっけ、名前ぐらいなら聞いたことある。プレイ数分でVR機器を床に叩きつけるレベルとかなんとか」
『味方のAIはクソのくせ敵の方のAIは悪辣だわ、テクスチャの関係で草原なのに溶岩ステージの判定食らうわ、序盤なのに何故かいる見えない高レベルモンスター共に嬲り殺されるわクソofクソの要素しかぬぇッ!』
うがぁぁぁっ!、と発狂するような声が電話越しに聞こえてくる。
今回は相当だ、と血の繋がった弟であるユラとはまた違った弟分のような存在に対し、紫亜は仕方がないと苦笑いを浮かべながら声を掛けた。
「ん、そういうことなら付き合う。
準備しておいで、サンラク」
紫亜は本名でモデル活動をしており、ファンの間では『シアちゃん』と呼ばれてます。ただ仕事を受ける頻度は低く、メディア露出も0に近いので年齢どころか性別すら一般的には知られてません。メンズファッション、レディースファッション関係無く仕事を受けてるのは本人的には女装も普通にファッションだと考えてるからです。
「ん、似合ってるならそれでいい」
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……