それでは、どうぞ
「……むっ」
あの後、数分おきに追加で鮭が釣れる事3回、いい加減引っかからないかなぁと思いながら仕掛けを揺らしていたジョシュアの釣竿に一際大きな力が掛かった。
「オルト、戦闘準備。デカいのが来た。」
「!、承知したのです!!」
水場ということもあって本を出せない為、お気に入りのパイプの手入れをしていたオルトは呼び掛けに即座に反応し両手に『崇高な誓い』を装備する。
それを横目で確認しつつ、己を水中に引きずり込まんとする力に対抗するジョシュアはしっかりと足を踏み直すとそのまま背負い投げのように掛かった獲物を引っ張り上げた。
ザッパン!!
「キュリアァァァァァァァッ!!」
「ん、ビンゴ!」
「おっきな海蛇なのです!」
糸先の仕掛けに掛かったライブスタイドサーモンを捕食する形で引っ張られた巨大海蛇……ライブスタイド・レイクサーペントは水生生物らしい構造の身体であるのにも関わらず陸に着地した後は機敏に動いて姿勢を整えると敵対存在だと理解出来る小さな生物達に敵意を向けてくる。
今までのフィールドにいたモンスターとは一味違いそうな強さがヒシヒシと感じられ、ジョシュアの口元には自然と笑みが浮かべられていく。
思い切り楽しもうと、戦闘態勢に入ろうとしたその時、
ザッパンッ!
「キシャアァァァァァァッ!!」
「ギュリアッ!?!?」
「んッ!?」
「およよッ!?」
再び水面が弾け、戦闘態勢に入っていた海蛇の頭が赤い鋏によって捕らえられた。突然の攻撃に回避しようとする動きすら出来ず、暴れ回って抵抗しようとしても海蛇を挟む鋏はびくともしていなかった。
「こ、今度はでっかいロブスターなのです!?」
「ッ!、多分アレ、先輩が言ってた経験値稼ぎ用のモンスターを餌にしてる硬い奴!」
「な、成る程!でしたらワタクシの『崇高な誓い』の出番なのです!」
「ん、幸先良いね。最初っから強いのと戦える」
巨大なロブスター……ライブスタイド・デストロブスターは挟んだライブスタイド・レイクサーペントの頭を何の障害もなく切り落とし、そのまま口元に運んで貪り食らった。
「あ、素材なくなっちゃう……まいっか、また釣ればいいし」
折角新しいモンスターと戦えたのにその機会が遠のいた事に落ち込みつつも、新たに訪れた更なる脅威に笑みが深まってゆく。
コアページのバットだけじゃ足りないなとインベントリから別の武器を取り出そうとしながら気合を入れ直した、
その時だった。
ザッパァンッ!!!
「ぐえん」
ドグシャッ!
「ギシャアッ!?」
「ふ、ふぇぇぇ!?何かもう1体来たのです〜!?」
「え、何アレ……というかこの気配って」
更に激しく水飛沫を上げながら水面を爆発させたかの如く弾けさせ、カエルのような何かが飛び出しそのまま落下先のロブスターを押し潰した。
慌てふためく1羽と困惑で目を丸くする1人を他所に、下敷きになったロブスターは先程海蛇の首元を切断した時の堂々とした姿から一転、必死に藻掻いて抜け出そうとし始めるのだが上に乗ったカエルモドキは一切動じた様子も無くマイペースに「ぐえん、ぐえん」と妙に耳に残る声で鳴いていた。
「ぐえん」
「ん、こんな風にも出てくるんだ………名前そのまま過ぎない?」
「び、ビックリしたのです……!」
「ぐえん、ぐえん」
「ギュ、ギュリィ……!」
「……ぐえん」
ガパァ ドシュッ!
「ギッ………」
相変わらずマイペースに鳴く幻想体だったが自らの下で藻掻き続ける存在が邪魔だと感じたのか、自身の体躯を大きく超える位に口を開きその身体に見合った特大サイズの舌を銃弾の如き速さで発射しロブスターの頭部を砕いて絶命させる。
「あ、折角また強そうなのが来たのに……」
「そ、そんな事言ってる場合じゃ無いのです!?」
「ん、ごめんごめん」
2度も強そうなモンスターと戦う機会を目の前で失ったジョシュアは今度こそショボンと肩を落とすが、ワタワタしてるオルトの呼び掛けに応えて武器を構え目の前の幻想体に向けた。
「ぐえん、ぐえん」
乗っていたロブスターがポリゴンと化し消えて地面に着地する『泣きヒキガエル』はマイペースに鳴いて巨大な瞳をギョロギョロと忙しなく動かしている。何とも気の抜ける姿なのだが、先程の舌攻撃の威力を考えると油断は出来ない。
「ぐえん、ぐえん、ぐえん………」
何度か鳴いてからピタリと止まり身体から大きく飛び出した目玉の虹彩をジョシュア達に向ける。全体的に丸っこいが、その体躯のサイズはジョシュアの2倍近い高さを誇り得も言えぬ威圧感があった。
「…………」
「…………」
「…………」
しばらくの間見つめ合う人間と兎と両生類。この幻想体がどのような能力があるのか把握出来てない司書補達は観察の為に先手を譲ろうと待っているのだが、向こうも何を考えているのか良く分からない顔のまま動かない。
そんななんとも言えぬ沈黙が空間を支配し始めたその時、徐ろに『泣きヒキガエル』が動き出した。
「ゔぅぅゔ」
両目をバラバラの方向に動かしながらなんだか呻くような声を出し身体をプルプルと震わせる。
先程のような伸し掛かりか、それとも頭を砕いて見せた舌攻撃か、警戒を高めて足に力を込めた瞬間、
「ぐえんッ」
「んえ?」
「ほよ?」
『泣きヒキガエル』の巨大な目玉が、細い糸のような器官を除き身体から完全に離れた。
勢い良く射出された目玉に呆気に取られた司書補達だったが、直ぐに正気を取り戻したジョシュアが傍らのオルトを抱えるとモーニングスターかのように振り回されて速度が付けられた目玉をもう片方の手で握ったバットで《パリングプロテクト》を発動し弾き返した。
「ん、眼球ってそんな扱いしていい部位じゃないと思う。まぁパワー凄いし満足出来そう」
「あ、ありがとうございますなのですジョシュア様!」
「お礼は後、というかちょっと厄介な事になりそうかな」
「厄介な事?」
目玉を弾き返した方の腕を見て若干苦い笑みを浮かべた後、何かを払うようにバットを握った腕を振るうジョシュア。
「多分、攻撃に触れた時点でデバフがかかる。この分だと多分ユメの装備と同じ沈潜かな、動きが鈍いしスキルのリキャストタイムの減り方が遅い」
「ややっ!であれば回避優先、なのですね!」
「そうだね、オルトはそのまま二丁拳銃で連射お願い。僕はヘイト溜めて回避タンクするから」
「………もしや真正面から殴り合いたいから請け負おうとしてるのです?」
「否定はしない……駄目だった?」
「いえいえ、なんとも頼もしいと思っただけなのです!ではではいざ参るのです、ジョシュア様!」
ジョシュアとオルトの表情に既に困惑は無く、強敵へと挑む好戦的な物へと変化していく。
ぐえん、と一鳴きした『泣きヒキガエル』もそれを感じとったのか身体をブルリと震わせ、目線がギョロリと敵と認識した存在へと向けられたのだった。
オルトが有するEGO
普段使い
『鋭利な涙の剣』、『魔弾』、『崇高な誓い』
時折使う
『氷のかけら』、『銀河』、『レティシア』
ほぼ使わない
『蒼の傷跡』
奥の手
『星の音』
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……