それでは、どうぞ
「ぐえんッ」ガパ
一鳴きした後、大きく口を開けた『泣きヒキガエル』は舌を射出する。散開したジョシュア達は難なくそれを避けたものの出された舌は引き戻される事無く壁に張り付き、俗に言うフックショットのような要領で巨体を移動させた。
ドムドムドムドム!
「ほっ、よつ、とぉっ!!」
「ん、もうちょっと自分の身体大切にしなよ」
その勢いのまま、まるで思い切り投げられた高反発ゴムボールの如くいつの間にか地底湖から切り替わっていた青い粘液が撒き散らされた洞窟内を跳ね回る『泣きヒキガエル』。よくよく見てみると薄く波打つ青いバリアのような物に丸く覆われているのが見えたが、それにしても自身の身体を酷使している気がしなくもない……というかどういう原理かは知らないが横から見て若干楕円型だった体は真ん丸になっており、完全に自分をボールとして扱っている。
しかしその程度でジョシュア達が動揺することも無く、弾むボールの隙間を縫うように回避し観察を続けてゆく。
「ぐぇん?……ぐぇん」
青い膜が弾けると共に勢いが無くなった『泣きヒキガエル』は特に大したダメージを与えられ無かった事に首……が無いに等しいので体を捻って不思議そうにしながらも再び鳴き、今度はカエルらしくジャンプした。
「!オルト、目玉が来る!」
「承知なのです!」
巨大な目玉が一瞬で体内に収納されると同時にその目玉が移動したかのように背中が膨らんだ後、スリングショットの要領なのかはたまた体内の筋肉を利用してるのかは皆目見当も付かないが猛スピードで目玉が射出された。
キモカワと言えなくもない感じの姿が一気にキモいの方に傾倒したがそんな事を気にする余裕も無く、器用に別々の標的に向けて発射された目玉をジョシュアとオルトは触れないよう回避した。
「《燃焼ファイアーバット》ッ」
「でりゃりゃりゃりゃ!」
叩きつけ地面を割った目玉が引き戻される前にそれぞれの得物を振るう司書補達。
目という本来であれば生物の弱点になり得る部位なので身体に直接攻撃するよりもダメージは入りそうだが、如何せん当の本蛙がその弱点をぶん回して武器にしてる為少々微妙な所である。
事実、何か怯むアクションがあっても良い筈なのだが『泣きヒキガエル』はケロッとした様子で目玉を繋がった神経で引き戻し、空中で縦に一回転して再びジョシュア達目掛けて叩きつけてきた。
「っ、とと。いいね、結構タフそうだしあの見た目にしては意外と機敏」
「しかしどうするのです?攻撃の回避はユメの時よりかは余裕がありますが、『崇高な誓い』でもあまりダメージが入ってるようには見えないのです」
「んー……いや、このまま目玉メインに攻撃、あの舌と本体の伸し掛かりにも警戒。もしかしたら痛覚が無いからあんな無鉄砲なのかも」
「なるほど、堪えた様子が無いのもその為なのですね」
「ただの推測だけど、ねッ」
叩きつけられた目玉目掛けて燃え盛るバットを振るい、その身を焦がさんと炎を移す。先程まで水に入って居たのと涙に濡れて居るからか火傷をした様子は無いが、若干乾燥はしたようだ。
「幻想体もドライアイとかになったりするのかな?」
「ぐぇん」
そんの疑問を抱きつつも容赦なく燃え盛るバットで可能な限り連撃を食らわせていれば数秒後に目は回収されてしまった。
「もうちょっと殴りたかった。もうこっちから行こうかな」
「ジョシュア様!突貫なさるのなら援護するのです!」
「ん、それじゃあフォローお願い。幻想告解」
軽くオルトと空いた左手に『懺悔』を呼び出しながらジョシュアは着地したばかりの『泣きヒキガエル』目掛けて走り出す。
「葬儀は未だ成されぬまま……」
後方で待機するオルトは先程まで蝶を撃ち出していた『崇高な誓い』にMPを注ぎ込み
「今ここに、《厳格なる哀悼》をッ!」
リ"ィィンッ!
引き金を引く速さが限界を超え16発分の鈴のような銃声が一回に重なったかと錯覚してしまうほどの二丁拳銃の早撃ちは全て『泣きヒキガエル』の眉間に命中し、反応の鈍かったカエルモドキが初めて仰け反り怯んだ様子を見せる。
その隙を逃さず懐に入り込んだジョシュアは右手のファイアーバットと左手の『懺悔』をしっかりと握り込み、思い切り踏み込んで2本を振るった。
「《崩々壊撃》」
踏み込んだ足は地面を砕き、エフェクトを伴って振り上げられた一撃は『泣きヒキガエル』の腹に突き刺さって若干ながらその巨体を浮かせた。「ぐぃ」と、鳴き声とはまた違うような声を聞き取ると同時に次のスキルを点火する。
「《ブラッドハーム》、《ニトロビート》、《光の種》」
HPを3割削り全ステータスを微増させる《ブラッドハーム》、HPが削れた状態でのみ筋力と敏捷を上昇させる《ニトロビート》、そしていつもの《光の種》を筋力に割り振り発動、そして
「《スカルシェイカー》ッ!」
「ぐぇんッ!?」
諸々の強化を重ねた芯を震わす一撃は、体の捻りを利用した振り被りの力も上乗せしてクリーンヒットした。
顎に該当する部分をぶち抜いた打撃は耐性等関係なく『泣きヒキガエル』の意識を揺らし、その巨体は退いたジョシュアが先程までいた所へうつ伏せに倒れた。
「仕留めるよオルト、幻想響唄」
「承知したのです!幻想落涙!」
スタンした幻想体を前にオルトは『崇高な誓い』をギフトと思わしき棺桶に変換し『鋭利な涙の剣』を取り出して自身にバフをかけながら跳躍、ジョシュアはファイアーバットをインベントリに収納しつつ『懺悔』をギフトに変換、そして『宇宙の欠片』から受け取った槍型のEGO……『彼方の欠片』を握り込んだ。
「《スポットマーキング》、からの《集点突》」
手始めに穂先が細長いハートのようになった複雑な色合いの槍である『彼方の欠片』を目の前の幻想体の眉間へと突き立てれば、俗に言うターゲットマークのような印が浮かび上がる。立て続けにそこへスキルを発動させた一突きを与えれば、通常時よりも激しいヒット音を響かせた。
「オルト、弱点作った!ここ狙って!」
「はいなのです!《悲哀の涙》!」
「ぐぇッ!?」
ジョシュアが横に退くと同時に細剣と共に流星となったオルトが『泣きヒキガエル』の眉間に直撃した。
「ジョシュア様!」
「はいきた、いってらっしゃい!」
攻撃の反動で空中に放り出された相方目掛けて槍を横薙ぎに振るい、オルトはそれを足場に再度弱点目掛けて跳んでゆき、
「これでおしまいなのです!《突き刺さる絶望》!」
先程の流星の如きエフェクトがより濃く暗くなりながら螺旋を描き、『泣きヒキガエル』を真正面から貫いた。
「ぐ、ぐぇ………」
そして世界は暗転する。
《厳格なる哀悼》
『崇高な誓い』との同調が可能になった段階で解放される、二丁の拳銃からそれぞれ8発ずつ計16発の弾丸を一度に対象に撃ち込む魔法。
2発に16発分が込められているのではなく16発分の射撃動作を時間を曖昧にして2発分以内に強制的に収めている。原理?生と死は時間を超越した概念だからね。
細かい照準の変更も可能となっており、オルトの場合その16発全てを別々の標的に命中させることが可能。
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……