異論は認めます。
それでは、どうぞ
「おっ、と……ん、倒したみたい。良いトドメだった」
「いえいえ、ジョシュア様のフォローの賜物なのです」
暗転からの移動も既に慣れ、隣に立つ相手と談笑しながら周囲を観察する。景色は光る地底湖によりほのかに照らされていた元の風景からどのような光源で周囲が捉えられているか分からない暗くじっとりした洞窟に一変しており、至る所に原料不明の青い粘液が散らばっていた。強いて言うのであれば、先程まで戦っていた『泣きヒキガエル』の目から溢れていた体液に類似している気がしなくもない。
「……触れても特に何も無し。強いて言うのであればヌルヌルしてるぐらい?」
「もしや、これはあの幻想体の涙に該当する物質なのでは?先程の攻撃の際、目玉を振り回すときにも散らばるのが見えた気がするのです。」
「『泣きヒキガエル』って名前が付けられる位だからなぁ……だとしたらなんで泣いてるのかって話になるけど」
触れていた粘液を払って立ち上がり、一先ず自分達がいた場所から歩いてゆく。
幸い別れ道になっているような場所はなく、ただひたすら一本道になっていた為迷う事は無かった。
「ぐぇん、ぐぇん」
「ん、この声……」
「あの幻想体のものなのです」
「ってことは近くにいるかな」
進む途中、洞窟内を反響する声がジョシュア達の耳に入って来る。戦闘中にもマイペースに鳴いていた為妙に頭に残っており、その声の主の存在を特定するのに要した時間は1秒程度だった。
気にせず歩いていけば鳴き声は段々と大きくなり、やがて若干大きな空間に出ると目的の存在がその中央に鎮座していた。
「ん、いた」
「ぐぇん、ぐぇん………ぐぇん、ぐぇん」
あちこちに見られた青い粘液で出来た一際大きな水溜りの上で『泣きヒキガエル』は鳴いている。
こちらの存在に気付いたのか一瞬だけギョロリと目玉をこちらに向けたものの、直ぐに興味を向けるのを止めて再び鳴き始めた。
「むむぅ……向こうから何かしらのアクションがあると思って居たのですが……」
「ん〜……オルト、押して駄目なら引いてみる」
「およよ?」
敵意のない存在を一方的に攻撃する趣味などないジョシュアが選んだのは待機だった。粘液のない場所をキョロキョロと探し丁度良い所があったのか、そこに腰を下ろした。
「一先ず、満足するまで鳴いてもらおう。おいでオルト」
「成る程、でしたらお邪魔するのです。」
オルトもジョシュアに招かれ胡座をかいた所にスッポリ収まるように座る。
「ぐぇん、ぐぇん」
1人と1羽の傾聴者が出来ても、それすら意識に入れていないかのように、ひたすら、ただひたすらに『泣きヒキガエル』は
「ぐぇん、ぐぇん」
果たしてその意味は何なのか、ただの動物としての本能的習慣なのか、それとも内側に抱えた憂鬱や悲哀を解消するための行為なのか、傍から聞くだけのジョシュアとオルトには分からない。
「ぐぇん、ぐぇん」
だが1つわかるのは、この
「ぐぇん」
「…………」
「…………」
「…………ん?」
静かに聞くのに徹してから何分経ったか、もしかしたら何十分かもしれないと考えながらぼんやりと待っていたジョシュアだったが、ふと気がつくと既に『泣きヒキガエル』は鳴くのを止めておりぺちぺちと短い手足でこちらに寄ってきていた。
「ん、満足出来た?」
「ぐぇん」
『泣きヒキガエル』は大きな目をパチクリとさせながらジョシュアからの問いかけに鳴き声で答える。
どうやら言葉は伝わるらしく、少し撫でてみても拒むことなく受け入れていた。
「ぐぇ」パカ スー
此処からどう交流しようかとジョシュアが思考を巡らせようとしたのと同時に、『泣きヒキガエル』は徐ろに口を軽く開き舌をゆっくり差し出す。
攻撃の意思は無かった為一先ず舌の方を見てみれば、粘液濡れの丸いナニカが堂々と乗っていた。
「……君の目玉?」
「それにしては随分サイズが、縮ん、で……」
「ん、どしたのオル、ト……?」
その舌に乗せられた物体は、誰がどう見ても「眼球」と答える代物だった。
手にとって見れば涙のように流していた体液に濡れているので体内から出したのだと分かるのだが、それと同時にふと顔を上げたオルトの声が尻すぼみになっていく。
それに釣られてジョシュアも顔を上げ、『泣きヒキガエル』の顔を見てピシリと固まった
「ぐぇん」
なんてこと無さそうに鳴く『泣きヒキガエル』、その右目が最初から何も無かったかのように抉られていたのである。
揃って手元の目玉と右目部分を二度見三度見するジョシュア達を他所に、当の本蛙はじっと残った目でこちらを見詰めるのみで特に痛がる素振りもない。
暫くの間思考が停止していたものの何とか復帰したジョシュアはこの贈り物の意味を捉えようと必死に頭を回し始める。
「……、…えーっと、友好の証、ってこと?」
「ぐぇん」
「あ、合ってるんだ……自分で右目抉って大丈夫なの?いやまぁあんな振り回してるなら今更だろうけど」
漸く出せた結論に対し『泣きヒキガエル』は瞬きと鳴き声で返答する。
いつの間にかジョシュア達の前に座り込んでいた『泣きヒキガエル』は渡した目玉を懐に入れたのを確認した後、再び鳴き始める。
そこに込められているのは、友達が出来た喜びなのだろうか。
驚きに支配されて固まるジョシュアとオルトが間瞬きすると、いつの間にか辺りの景色は地底湖に戻っていた。
前と違う部分を上げるとするならば、目の前に卵のような形の幻想体の核があることだろう。
『泣きヒキガエル』の目玉をそのまま落とし込んだようなデザインのそれを一先ず回収し、ついでに辺りにほんの少し散らばっていた海蛇とロブスターの素材を回収したジョシュア達は揃って伸びをした。
「ふぅ………ん〜、これ以上釣りをする気分じゃ無いや。今日はもう進んじゃおう」
「ふむ、でしたらエリアボスに挑むということで?」
「ん、そゆこと。オルトは行けそう?」
「問題無いのです!」
色々あり過ぎて釣りどころでは無くなっていた為か今更更にフィッシングするのもアレだと感じたジョシュアはオルトをファーの部分にしがみつかせて元来たトンネルを駆け上る。
滑り台状ではあるものの幸い端に足場になりそうな部分があったので元の位置に戻るのに特に苦労は無かった。
「さて、と、じゃあとっととエリアボスに行こうか」
「はいなのです!」
「ちぇすと〜」
「なのです〜」
蹂躙だった。
すんごく気が抜ける掛け声だし本人達もゆる~くやってるのが分かるのだが、如何せんその結果生まれているのがこの
道中、襲ってきた無機物系モンスターの群れを悉く沈めてドロップアイテムをかっさらう。そんな風に何の障害もないと言わんばかりの様子で地下に向かって探索していると、段々と敵の数が少ない部分へと差し掛かった。
「……ん、雰囲気変わった。ボスエリアかな?」
足元や周囲の壁の荒廃具合が進み、所々に緑が見える。出口も近いようで空気が変わった遺跡の中を進めば、やがて開けた空間に出る。
「おや、もしやあれが……?」
「ん、多分ここのボスのルイン・キーパー……なんだろうけど」
自分達が入ってきた所の丁度反対側にある、恐らくこのエリアの出口であろう扉の前、そこに1体のゴーレムが鎮座していた。5m程にもなる巨体の表面には苔が生え、明らかに朽ち果てているような姿なのだが、威圧感は上の無機物系モンスター達を遥かに凌ぐ物だった。
……だったのだが。
「今日は幻想体祭りだなぁ」
「お仕事を遂行出来るのはきっと良いことなのです!」
「ん、まぁオルトの言う通りかもね」
現在、ジョシュア達が戦闘エリアの範囲に入っても、そのゴーレム……ルイン・キーパーは動かない……否、
体中に貼られたこの場の雰囲気にそぐわない黄色の御札はルイン・キーパーがギシギシと絡繰を動かそうとする度に光り、その行動を抑える。
「……いや、もう居たんだ。ルイン・キーパーが大きくて気付かなかった」
何かを察したジョシュアがシームレスに湖沼の太刀を取り出したその時、
バギンッ!!
動けなかったルイン・キーパーが背後から潰すように殴られ、それと同時に張り付いた御札が爆発、その体を砕いて機能を完全に停止しさせられながら哀れにもバラバラの破片となって散らばる。
「…………」
そしてルイン・キーパーの丁度背後に居た、御札の主が姿を現した。
前回登場したのに紹介出来なかったのでここで解説
〇E.G.O 『彼方の欠片』
武器種:槍or特殊アクセサリー(胸)
遥か遠く、人間の理解の及ばない領域より知恵を授けるべく訪れた探訪者の自我の断片を抽出し物体化させた代物。穂先を形作る歪なハートは感情を司る心臓のシンボルという認識で作られた友好の証らしい。だがしかし、まともに彼らと同じ地平に立つ事は不可能に近いものであり、彼方からの唄を理解するのは即ち二度と正気へと戻らない事と同義である。
このE.G.Oの装備時、攻撃を加える度に対象へ1%ずつ蓄積する型のスタン耐性低下と防御力低下を付与する。(持続30秒 最大50%)
MP+40 技量+10
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
-
いる
-
いらない
-
セルマァ……