それでは、どうぞ
エリアボスである筈のルイン・キーパーの弾け跳んだ残骸を踏み潰しながらこちらへと近寄って来る幻想体、『誰も泣かぬように』。
最早それが名前で良いのか?と思ってしまう良く分からない名称を与えられたその人形は歩く度にギシギシと音を立てていた。
「藁人形……じゃないね、材質は木っぽい」
「何かしらの呪物が幻想体となったのですかね?」
「呪いの人形、ね……どっかの国にそんなのあったっけな。後で調べてみよ」
残骸を踏みしめる毎に「ここは自分の領域だ」と言わんばかりに周囲が朽ち果てた遺跡から血で文字が書かれたような御札が塗り潰すように貼り巡らされ、ついでのようにその御札が隅で山積みになった部屋へと変化していく。
ジョシュア達が踏みしめる地面も元の木の床が見えない程に御札で染められ、気味が悪いを通り越して最早笑いすら出てきそうだ。しかしそんな事気にも留めないジョシュアは慣れたように武器を構えた。
「さっきのルイン・キーパーの様子からして御札の付与が能力……御札の効果は『盲目』の蛍光灯と同じ破裂?発動条件は攻撃を食らった時として付与条件は……ん、オルト?」
静かに思考を巡らせていたジョシュアだったが、ふとオルトが何も喋らない事を不思議に思って横を見るとそこには司書補のコートとはまた違った臙脂色のコートと黒いスーツを身に纏い手には変わった部品の付いたボルトアクションライフルを握るオルトが居た。
「おぉ、銃剣。この前とは別のコアページ?」
「先日漸く入手出来た『親指』という組織のソルダートという階級の方のコアページなのです!一応『絶望の騎士』様にお手伝い頂いて試運転しましたが実践は初なのです!」
「ん、あの細剣の元になった人?スパーリング相手になってくれるんだ」
「大変お優しくお強い方なのです!では参りましょうジョシュア様!」
「さっきのカエルと同じように攻撃に当たらないよう注意してね」
「承知なのです!」
頭に被る中折れ帽を直し、銃剣を振るって調子を確かめるオルトに疲れは見えない。何とも頼もしい様子に笑みを溢すジョシュアは何も持たない左手に致命の鋸を呼び出す。
幻想体相手に常識が通用するかは分からないが木には鋸が有効だろう。
「 」ギギギギ バッ!
「《パリングプロテクト》」
「《戦闘準備》!」
そんなやり取りをしている間に近づいて来ていた木人形は軋む音を鳴らしながら見た目より機敏な動きでジョシュア達目掛けて両腕を叩きつける。
即座に反応した1人と1羽は様子を見ようとそれぞれ防御スキルで対応し、振り下ろされた腕を弾き返してダメージを凌ぐ。しかし、それと同時に『誰も泣かぬように』から剥がれ落ちた御札が意思を持ったかのように動き、攻撃を弾き返したジョシュア達に張り付いた。
「ん、強制効果……いや普通に剥がせるなこれ、」
立て続けに振り下ろされた腕を回避しつつ、貼り付いた御札の1枚を剥がして見ると少しばかり色が変化し『呪いの札』というアイテムとしてドロップした。
『呪いの札』
誰かの祈りが込められた血文字の御札。その御札に宿る呪いは移される度に強くなり、その持ち主に復讐の為の力を与える。
しかし欲張ってはいけない、呪いを背負う器には誰しも限界というものがあるのだ
効果:所有時、相手に与えるダメージが1枚につき1%増加する。
所有数10枚以上の場合、相手に与えるダメージが1枚につき2%低下する。
「移される度に、ねぇ?」
ざっとテキストを流し読みしたジョシュアは迫る殴打を《スケートフット》で避けて地面に流し、少しばかり距離を取る。それと同時に回収した御札を投げつければ、投げられた御札は着弾地点の『誰も泣かぬように』に再び貼り付いた。
「 」ブォンブォン
「ん、《一閃》」
人形の特性を生かし高速で回転する『誰も泣かぬように』の腕に対し払うように太刀による一撃を食らわせて軌道を逸らす。
更に己へ貼り付く御札の数に意識を割きつつも、ダメージを与える為にジョシュアは木人形に肉薄していく。
「《満月刃》」
「 !」
鋸による回転斬りは幻想体の胴体に直撃、細かい山になった刃が御札など関係ないと切り裂きながら木に食い込み削り取ってゆく。
ついでと言わんばかりにボロボロになった御札は破裂し、鋸による斬撃と合わせて結構なダメージになったようだ。
「呪いが解放されたのかな?まぁいいや、弱点作るの楽で便利!」
「 」ギギッ
「《灼熱推進》!」
そのまま連撃に入るジョシュアを煩わしく思ったのか己の体が削られてゆくのに怯む様子すら見せず殴ろうとする『誰も泣かぬように』だったが、その振り上げた腕に対し大ジャンプしたオルトの銃身の上の煙突のようなパーツから火を噴く銃剣による縦回転斬りが決まり、その行動もキャンセルされた。
「ジョシュア様!存分に刃を振るうのです!」
「すっごい銃だね、後で色々教えて!」
「無論なのです!っと、《ベストステップ》ッ!」
咄嗟に振り払うような動作をする腕を足場に幻想体の顔へ飛び銃剣を構えるオルト。それに合わせるようにジョシュアも足元で両手の刀と剣を構え、
「《無尽連斬》、《滅多斬り》」
「《獣鏖無尽》ッ!」
同時に尽きぬ斬撃の嵐を繰り出した。
「おりゃりゃりゃりゃりゃッ!!」
「シィッ!!」
「 」ギギッ
絶え間なく繰り出される斬撃は反撃しようと動かした人形の手を弾き、退こうとした人形の足を削って止め、体中に張り巡らされたお札を切り裂いて破裂させる。
途中、攻撃を弾いた判定を食らって体に呪いの札が貼り付く事もあったものの、『誰も泣かぬように』が防御姿勢を取ろうとした所をぶった斬った途端全ての御札が剥がれて色を変えて勝手に向こうに貼り付いてしまった。
どうやら、向こうもこちらの攻撃を防ぐという行為を取れば御札の所有権が移る仕組みだったらしい。
「 !」ブォンブォン
「ん、《クイックステップ》」
「《
2人のスタミナが尽きて斬撃の嵐が止むと同時に己を縫い止める物が無くなった木人形が腰の球体関節部分から上を高速回転させて纏わりつく存在を振り払う。
その予兆を感じていたジョシュアは地に足を着けた姿勢であればどのような状態でも指定方向へ高速移動出来る《クイックステップ》を用いて範囲外に逃げ、空中に居たオルトは目の前の木人形の顔面に対し手に持つ銃剣の銃口を向けた後、特殊な弾丸を射出する反動で攻撃しつつ大きく退く事に成功していた。
「ほいッ…ジョシュア様、お怪我は無いのです?」
「ん、問題なくピンピンしてる。オルトも器用なことやるね」
「うぅむ……そのお言葉は嬉しいのですが、如何せんあの回避行動にかかる値段を考えると少々微妙な思いなのです」
「値段?……っと、その話はまた後でお願いね」
オルトご何とも微妙そうな顔をする理由は気になるものの、相対する『誰も泣かぬように』は未だ健在である。心なしかお札が増え、纏う雰囲気も無機物的な物から明確な怒りを感じるものへと変貌していた。
「向こうももう追い詰められてるのかな」
「ラストスパート……であるのならば、ワタクシも出し惜しみはしないのです」
少しばかり悩んで居たオルトが決意したかのように懐に手を入れ何かを取り出す。
「ジョシュア様、1秒だけでもよろしいのでワタクシの存在を幻想体の意識から逸らして欲しいのです」
「ん、何するの?」
「ワタクシが幻想体の動きを止めるのです」
その手に握られていたのは冷気を発する青白い弾丸と紋様の刻まれた真っ白な弾丸。ボルトアクションで先程放った弾丸の薬莢を排出しそこに新たに2種の弾丸を込めて装填、ガチャンという音と共に準備が完了したその銃剣による狙撃の為にオルトは姿勢を整え始めた。
「ん、いいね、そういうの大好き」
シャンフロ劇場 ミニ!
〜同調可能なオルト保護者達+おチビ〜
『……何故俺のEGOは使わんのだ?』
『魔弾殿、貴方様のEGOウェポンの性質を考えるとあの新しい訪問者との連携に少々苦労すると思われる。それにあの子は貴方様のギフトを頻繁に口に咥える程に気に入っているではないか』
『しかしだな葬儀屋、俺の指導を最も生かせるのは俺の武器だとは思わないか?』
『分からなくもないが、その技術は私のEGOやあのコアページと称されている他者の殻を振るう時に発揮されている。無駄という訳ではあるまい』
『むぅ……』
『御二方共、あまり干渉してはなりませんよ』
『おや、騎士殿もこちらにいらしたか』
『………干渉はしていない』
『それでも、ふとした瞬間にあの子を侵蝕してしまうのは貴方達の望む所では無いでしょう。ここは大人しく見守るように………』
『あ、騎士のお姉ちゃん!お姉ちゃんがいつもやってるみたいにあのうさぎさんに少しパワーを分けたいの、やり方レティシアにも教えて教えて!』
『………おい、騎士』
『………騎士殿、貴女様も人の事を言えた義理では無いではないか』
『………過干渉でなければノーカンです』
『?』
オルトへの印象
魔弾さん→弟子 何故7発目が本に行く……?
葬儀さん→救済が必要のない生き生きとした子供
健やかに育て……
絶望さん→可愛い子供 護らなきゃ…(使命感)
おチビ→お友達のカワイイうさぎさん!
いつもとっても楽しそう!
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……