司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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オリジナルの幻想体も考えたりしてますが、そんなもの無くとも原作のボリュームだけで話が上手く纏まってしまう。
凄いなプロムン。




それでは、どうぞ


呪いを斬り裂き貫いて

「      」ギギギギ

「ん、ちょっと待たせたかな」

 

登場時よりもボロボロになった『誰も泣かぬように』と向かい合うジョシュア。千切れたお札の破片や元々至る所にあった血痕も相まってかなり痛々しい姿ではあるものの、幻想体特有の異質な気配は絶えることはなくジョシュアに存在をヒシヒシと伝えていた。

 

「ラストスパートなんだ、遠慮はしないよ。幻想告解、幻想拘束、幻想着火、幻想響唄、幻想潜灯」

 

両手の武器をインベントリに仕舞ったジョシュアが一言告げる度に体にギフトが現れる。赤黒く神聖な気配のする茨の冠、身体を縛り上げる黒い革の拘束具、タバコのように燻る煤けたマッチ、子供の落書きのようなハート型のブローチ、そして手元に現れる1本の錨型の槍。

 

「侵蝕はしないようにお願いね」

 

取り分け強い力を感じる槍にそう願いながら構え、目の前の敵を見据える。向こうからも木を軋ませながら腕を振り上げる音が聞こえ、今か今と解き放たれる瞬間を待っている

更に今出来るバフスキルを点火し調子が最高潮に登ったその時、

 

「     !」ガッシャン!

「《八艘跳び》ッ!」

 

ジョシュアと『誰も泣かぬように』は同時に行動を起こした。

引き絞った弓矢が放たれたが如き速さで振り下ろされた人形の腕から逃れるように後方へ跳び更に壁を蹴って跳ね回るように部屋の中を駆け回るジョシュア。

『誰も泣かぬように』もそれを捉えんと木の床板を割り御札をぐしゃぐしゃにした腕を更に振り回す。

 

「そこ、《ワンショット・アーツ》!」

「     !」メキャッ

 

隙間を縫うように頭部に踵落としを食らわせ更に木人形の肩を足場に真上へ跳んだジョシュアは自身のギリギリ下を通る腕を『盲目』で弾きながら滞空、回転しながら落下してそのままの勢いを生かして槍を頭に突き刺した。

 

「     !?」

「おっと、そう簡単には振り落とされないから」

 

体を振り回して自身の体に傷を付ける存在を落とそうとする『誰も泣かぬように』だったが、それに対しジョシュアは首の部分に足を絡ませ体を固定、更にモンスターに乗ってしがみつく際に補正が入る《エンゲージロデオ》を使用して投げ飛ばされないように対策を取る。

 

「少しは、大人しくしなよ!《ドリル・ピアッサー》!」

「     !?」

 

そしてジョシュアは一度抜き取った槍を螺旋のエフェクトと共に再び頭部に突き刺した。

声はないものの叫んで居るような動作を取った木人形が激しく身を振るうが、ジョシュアが離れたのは螺旋状の攻撃エフェクトが終了した後のことだった。

 

「っと、ふぃー、巨人の相手はあんましたことないから楽しいなぁ!」

「     !」

 

難なく着地して槍をパフォーマンスのように振り回しながら満面の笑みを浮かべるジョシュアの姿は堂々としており、EGOギフトも合わさって異質さも漂わせながらも強者としての風格が現れていた。

完全に脅威だと判断したのか確実に潰そうと己に迫る木人形を前にしても喜悦の混じった笑みを浮かべるのを止めず、ただ自然体で立っている。

 

「うん、まぁ結構頭グチャグチャにしたからね、ヘイトがこっち向くのも仕方ないよね。

 

 

というわけでやっちゃえオルト」

 

「《集中発射(コンセントレイト・ファイア)》ッ!!」

 

ヂュリンッ!!!

 

瞬間、部屋の角にて待機していたオルトの銃剣から同時に飛び出した2発の銃弾が『誰も泣かぬように』の背中に直撃。着弾と同時に背中が凍り付いたかと思えば即座にその全てを跡形もなく粉々にする程の衝撃が部屋を震わせた。

 

「    !?」

「ッ!《集点突》!」

 

体勢を崩すどころかその巨体が床から離れて宙を舞う程の一撃を予想出来る筈もなく、隙を突かれた『誰も泣かぬように』は全身のお札を弾けさせながら倒れ込もうとし、いきなり自分を押し潰そうとする木人形に目を見開くジョシュアはそれを迎え撃つように刺突スキルを発動させる。

 

そして胴体の中心に『盲目』が突き刺さった後、世界は暗転したのだった。

 

 

 

 

 

 

「あっぶなかった………」

「も、申し訳無いのですジョシュア様!少々威力が強すぎて……大丈夫なのです?」

「あぁうん、大丈夫、ギリギリ仕留められた……結構ヒヤヒヤしたなぁ、楽しかった」

 

己の命が終わる寸前だった状況に興奮冷め止まないジョシュアはポアポアと頰を染めながら息を整える。

そうして落ち着いた後、自分達が札だらけの扉の前に立っている事に気が付いた。

 

「んー……道は後ろにもあるけど暗い、何も見えない」

「それにしても床から天井までお札と血でびっしりなのです。何故こんな状態に……?」

 

扉の周囲だけ蝋燭で照らされ、後ろにある筈の廊下の先は闇と同化している。更には目の前の扉に近くなるほど増えていくお札と血痕。この先に何かありますと言わんばかりの様子だが、肝心の扉は札の貼られたしめ縄で塞がれていた。

 

「えい」

 

しかしその程度の事を今更気にする質でもないジョシュアは即座に未だ手に握っていた『盲目』を振るい縄を断ち切った。

張力が無くなり重力に従って垂れ下がった縄を退かしてオルトと共に両開きの扉を開けると、この空間の主は直ぐに見つかった。

 

「 」ギシ……ギシ……

 

蝋燭1、2本が灯るだけで薄暗く、至る所にお札が貼り巡らされている部屋の真ん中にて、『誰も泣かぬように』は不自然なポーズをとって固定されていた。木人形であれば本来動かないのが自然ではあるのだが、幻想体という存在に常識を当てはめようとする行為が無駄だと理解すれば普通にスルー出来る事である。

 

「ん〜……」

「およよ、これは……?」

 

しかしながら、この空間は核となる『誰も泣かぬように』の本質を映すもの。その筈なのだが当の本人は何かによって縛られている。

 

「……このお札、絵柄が微妙に違う」

「ほぇ?」

「ん、ここ見て」

 

そう言いながら指し示したのは幻想体の足付近に貼られたお札とその直ぐ近くの床に貼られたお札。一見すると違いが無いように思えるのだが、よくよく見てみると幻想体に貼られた方が稚拙ながらも文字鮮明で床の方はどこか滲んで居るように見えた。

 

「何だが、子供が書いたような印象が……でも何故このような違いがあるのです?」

「んー……恐らく幻想体の原動力と束縛してる力の違い?」

 

ぼんやりと考えながらもどこか確信したように、動かない木人形の元へと歩み寄るジョシュア。

 

「言うなれば『呪い』と『願い』……かな。どっちも人が他の物に向ける感情だけど、真逆のものでしょ?」

「ではこの部屋は?」

「この幻想体が抱える矛盾を現した場所、かな。まぁ偉そうに言ってるけどただの推測だし、当てずっぽうだけど」

 

そう言いながらが幻想体の足元の床に屈んで貼り付いたお札を1枚剥がす。頭上の人形がギシリと大きく軋んだ気がした。

 

「てるてる坊主しかり丑の刻参りしかり、人形は古来から人間の代行を務めてるから。たがら願いも背負うし呪いも背負う」

 

更に1枚、もう1枚と剥がしていると、部屋に有った燭台に燃え残っていた蝋燭に少しずつ火が灯る。

 

「だからそのどちらも背負ってしまったこの子は少しでもそれを果たそうと近くの人間に代行を頼む。けれどもそれは返って来るもの、因果が結ばれてしまった以上他人が肩代わりする事は出来ない。この子に集まった願い(呪い)を果たせるのはこの子だけ。お札が傷付いたら破裂するのは込められた呪い(願い)にお札が耐えられ無くなったからかもね」

 

床のお札を剥ぎ終えて今度は壁に差し掛かり、文字の滲んでいるお札を剥いでゆく。真ん中に居た『誰も泣かぬように』から聞こえる軋む音は大きくなり、燭台の炎は更に明るく強くなる。

 

「だから僕らが出来るのは、こうして少しでも楽にしてあげる事だと思う。思いで動く人形なら、違う感情に縛られるかもしれないからね」

 

そうして集められた……推定呪いが込められたお札が巨大な束のようになった頃には、部屋は影など殆ど見られない程燭台によって明るく照らされていた。

 

「さて、これどうしよ。これ破くと多分呪いぶち撒けられて僕死ぬし」

「部屋の外で燃やすのです?一応火種の用意はしてあるのです!」

「まぁそれが無難……んぅ?」

「       」ギシ

 

顔を上げればいつの間にか自由の身となった『誰も泣かぬように』が立っていた。体躯はジョシュアの2〜3倍ほどあるのだが威圧感等は無く、ただゆっくりと手を伸ばしてきた。

ふと手元を見れば元から存在していなかったかのようにお札は消えており、その代わりと言わんばかりに幻想体から何かを渡された。

 

「これは……『誰も泣かぬように』にそっくりなのです」

「お札は付いてないけど……僕用の?」

「    」ギシギシ

 

そう尋ねるも、『誰も泣かぬように』は軋む音を返すのみでその真意は測れない。

人形とはそういうものなのだ。

 

 

 

 

 

狭かった木製の部屋から、苔むした壁のある遺跡の大広間の中に戻ったジョシュア達。

受け取った筈の小さな木人形は無くなっていたが、そのかわりと言わんばかりに目の前にお札が張り巡らされた古ぼけた丸太のような『誰も泣かぬように』の核が残されていた。

 

「ん、そういえばなんやかんやトドメ貰っちゃったけど、良い狙撃だった。というか吹き飛び方がアンチマテリアルライフルを至近距離で食らった時のそれだったけどどうやったの?」

「親指の組織内で製造されていた氷結弾とロジックアトリエという工房で作られた高速粉砕弾の同時発射なのです!氷結弾は相手を凍てつかせて世界に縛り付け、高速粉砕弾は銃弾自体に施された機構の力で並外れた威力を叩き出すのです!」

「あのデカさの木人形ぶっ飛ばすレベルは流石に予想してなかった。どこで用意したの?」

「『図書館』のショップコーナーで揃えた逸品なのです。『図書館』に残された『都市』の記録の品物ならリソースを注ぎ込めば特殊な物を除けば手に入れられるのです」

 

エヘンと胸をはるオルトだったが、ふと何を思い出したかのように急激にテンションを下落させる。

 

「ただ、1つ問題もございまして……」

「ん、やりすぎるとアンジェラに怒られる?」

「い、いえ、そういう訳ではなく……実を言えば、『都市』では銃弾は大変高価なものだったそうなので、その分かかるリソース量も大変多く………普通の弾丸はコアページの効果で補充出来ますがあまり強い弾丸は頻繁には使えないのです」

「まぁ僕が使わせたようなものだし、半分ぐらいなら出すけど?」

 

何の気なしにそう言ったものの、返って来たのは全力の遠慮だった。

 

「だ、大丈夫なのです!ワタクシ自身が用意し自らの意思で使用したものなのです!リソースの補充方法も戦闘記録に繰り返し挑んで手に入れた本をマーニに変えているので心配も無用なのです!」

「ん〜…じゃあせめて値段だけでも教えて?僕も使う機会があるかもしれないし」

 

これから先、戦闘記録と戦い自分も弾丸を使うコアページを入手した際の事も考えて後学のためにオルトに問いかけるジョシュア。暫くの間、非常に言いにくそうに口をモゴモゴさせていたオルトは観念したように口を開いた。

 

「ひょ、氷結弾が50万マーニ、ロジックアトリエ製高速粉砕弾が……1つ、200万マーニなのです……」

「……………スゥー、そっかぁ」

 

何とも気まずい空気が流れ、一先ず値段の事は聞かなかった事にして、『誰も泣かぬように』の核をインベントリに入れて歩き出す。遺跡の出口に近づくにつれ先程の空間よりも緑の侵蝕範囲が広くなり、やがて光の射す場所まで進むと完全に自然豊かな山の麓に出た。

 

 

「ややっ!見えました、あそこがシクセンベルトなのです!」

「ん、取り敢えず街に入ったら武器屋行こう。流石にそろそろ修理しとかなきゃ……あ、本屋とか魔導書店にも寄る?」

「是非!」




シャンフロの銃やEGOの銃はMPで装填する魔法銃か異次元から勝手に装填されるコスモガンだから根本的な弾切れとは無縁だぞ!
けどコアページに付随する銃で使用する特殊弾丸は図書館で購入する必要があるぞ!特殊弾丸の値段は一番安いのでも一発10万マーニ位!ボッタクリかな?
因みにこうなってるのは参考にしている値段がクッソ高い税金まで含まれてるからだぞ!もう税金を納める先も存在しないのに変な話だね!

因みにトップクラスに高級なロジックアトリエ製高速粉砕弾がどんぐらい強いかと言うと、物理攻撃が通るエリアボスなら弱点部位に一発ぶち当てるだけでほぼ瀕死になるレベルだよ!人にぶち当てたら木っ端微塵だね!

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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