司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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シャンフロでのEGOの能力は元の幻想体かそのEGOをちゃんと踏襲した物に出来るだけしたいと思ってます。




それでは、どうぞ


鳴き声纏い盾を叩く

「ん、早速やる」

 

フンスフンスと張り切って戦闘エリアの中心に立つジョシュアが『南部ツヴァイ協会 6課』の本を宙に掲げる。

その動作を皮切りに本の形で保存されていた記録が解凍、放出され飛び出して行くページ達は光となって空間へと溶け込んでいった。

溢れ出る頁の嵐が視界を埋めたのは一瞬だけだったものの、それでも戦闘の駒を用意するには十分だったようでジョシュアから5m程離れた場所に3人の人影がいつの間にか現れていた。

 

「ん、全員青いジャンパー。この前戦った『街灯事務所』より纏まりがある……協会もフィクサーの組織って書いてあったけど、事務所の上が協会って事かな?」

 

こちらを認識したのか、大型武器……ツヴァイヘンダーを構える人影達を他所に情報を纏めながら考察してゆき、一段落すると同時にニコリと微笑んだ。

 

「ならこの前の人等より強いよね、幻想泣鳴」

 

伸ばした右手の中に先程確認したばかりのEGOを呼び出す。青い目玉が特徴的な巨大なハンマーをしっかりと掴み取り、両手で握り込んで構えた。

 

「さぁ行こうかカエルくん、早速力を使わせてね」

『ぐぇん』

「ん、ありがと」

 

自分に取り込んだ頁を通し、幻想体の自我と同調を開始する。

EGOから何かが流れ込む感覚がし始め、それと同時にEGOを掴む手から上書きされるように姿が変わる。

クリーム色のようなファージャンパーは暗い灰色と青が混ざった岩石のような装甲を持つ鎧へと変化してゆき、最後に肩の部分にあの『泣きヒキガエル』の眼球のような意匠が目を開くように現れた。

 

「ん、いいね。とってもいい」

 

腰に巻かれた群青の布が靡き、そこから青い粘液が垂れ、頭も岩で出来たような髪飾りによって彩られる。

しかし鎧に重さを感じる事はなく、己の一部となったそれはむしろジョシュアへ力を与えていた。

全能感というほどの物でもないが元から高かったテンションに高揚感が出されたような気が……したかと思えば逆にその感情が抑制されてゆく。

 

「…………なんだろ、何か落ち着いたな」

 

ふとした瞬間に憂鬱な感情も流れ込もうとするが、それをジョシュアの戦闘への昂りが打ち消して±少し+位のテンションで維持された。

 

「これが『低いなきごえ』と同調する代償なのかな……まぁいいや楽しめそうだし、慣れたらどうって事無いでしょ」

 

先程よりも落ち着きが増えた物の依然高揚感は残ったまま、口元に浮かぶ笑みに陰りは無い。

そうして準備を終えたと同時に向こうのフィクサー達が動き出した。

 

「■■■■」

「よっ、と!」

 

先陣を切ったクリーム色の髪のフィクサーが振り下ろしてきたツヴァイヘンダーが迫るものの、それを難なく『低いなきごえ』で弾き返す。それに追撃を叩き込もうと構えるジョシュアだったが、それよりも先に後方にいたフィクサーによる追撃の突きが放たれた。

 

「へぇ、連携が取れてる、ねッ!」

 

攻撃に入る前にそれを体をズラすだけで避け、その胴体をハンマーを手放した右手で殴り飛ばす。

吹っ飛っ飛ばした相手は一旦置いておいて、こちらの様子を伺ったままの最後の一人を視界に入れつつ武器を弾いた先陣のフィクサーに肉薄した。

 

「《崩々壊撃》ッ!」

 

床を踏み抜く勢いで放たれた一撃は間に差し込まれたツヴァイヘンダーごと相手を大きく後方へと殴り飛ばし床に転がす。

 

「はい次ッ!」

「■■■■■!」

「■■■■!」

「分かりやすいね、シィッ!」

 

フォローに入るように迫ってきた2人をスイングで纏めて弾きそのまま最初に様子を伺っていた方へと跳んで振り下ろす。直撃こそしなかったものの、勢いと力が合わさったスタンプは体勢を崩すには十分だった。

 

「逃がすか」

「■■■、■■■」

「ふッ!」

 

地面に頭を置いたハンマーを軸にぐるりと回りたたらを踏んだ相手の足を払ってからその胴体を踏みつける。何やら呻いているが、そんな事知らんと言わんばかりに再び構えた『低いなきごえ』を頭部目掛けて振り下ろした。

 

ガギィンッ!!

 

「おっと」

「■■■■!」

 

そのまま通れば即死するであろう巨大な槌による押し潰しの一撃、それを阻んだのは横からフルスイングで叩きつけられたツヴァイヘンダーだった。

無手で殴り飛ばされたフィクサーがいつの間にか肉薄し、力の限りハンマーの側面をぶっ叩く事で頭への直撃コースだった軌道を逸らしたことで、『低いなきごえ』は床へと叩きつけられた。

 

「ん、僕を仕留めるよりも仲間の救助を優先……前の人等は各個撃破だったからそういう行動パターン知らないや。まぁ検証する気はないけど……《旋風脚》」

「■■!?」

 

大剣を振り切って無防備になったフィクサーの背中にハンマーから手を離したジョシュアの回し蹴りが突き刺さる。

 

「更にそこから切り返して来ないと、次の手が無い大振りは狙って下さいって言ってるような物」

「■■!?」

「あ、ゴメン踏んじゃった。ついでにちょっと試させて、《押し寄せる憂鬱》」

「■■■■■!!?」

 

踏み切って回転蹴りを決めた後、先程踏み付けで捕らえたフィクサーの上に着地しついでと言わんばかりにハンマーを握ってEGOの固有スキルを発動させる。頭のすぐ横にあったハンマーはジョシュアの命令を聞き入れ、瞳を模った部分から弾けるように粘液が溢れ出した。

真正面から引っ被ったフィクサーはその場から逃れようとするものの、その動きは先程と比べるまでもなく鈍く気力が感じられなかった。

 

「直感的に頭の中に説明流れ込んで来た時は戸惑ったけど、カエルくん自体の能力はこういう形で使えるわけか……ん、他の皆のEGOスキルも楽しみ」

 

バゴンッ!!

 

触れるだけで虚脱感や憂鬱を与える粘液は、相対した時こそ厄介だったが使う側に立てばかなり有用な物である。

半分動きを封じたフィクサーを片足で踏みつけてジタバタする様子を確認、大体の予測をつけながら用済みと言わんばかりにそのままハンマーを振り抜いて頭部をゴルフボールの如くかっ飛ばした。

無慈悲にも光る頁へと還った一人目を直ぐに意識から追い出し、続く獲物を見定める為にじっと残る2人のフィクサーを観察し始める。

 

(武装は2人ともツヴァイヘンダー……いや、片方は腰にメイスみたいなのが見える。アレ奪ったらそのまま使えるかな?)

 

腰に提げている古いタイプの街灯のような打撃武器に目をつけ、そのままコツ、コツ、と音を立てて歩み寄っていく。

この得体の知れなさに意思のない記録でしかない筈のフィクサー達も警戒心を露わにしてツヴァイヘンダーを構えていた。

 

「どーちーらーにーしーよーうーかーなー♪」

 

眼球の如きデザインのハンマーを肩に担ぎ美しい満面の笑みを浮かべながらこちらへゆっくり歩いてくる鎧の戦士。何ともまぁチグハグな姿だが、これはこれで様になっていた。

だがしかし相対してる敵からすれば恐怖が圧倒的に勝るのか、残ったフィクサー達は武器を構えながら後退って行く。

 

「んー………よし、《ブラットハーム》、《ニトロビート》、《光の種》敏捷強化」

 

こちらに斬りかからず待ちの構えを取る敵に少しだけ考え込んでいたジョシュアだったが、ふと思考を止めるとそれと同時に自身の持つバフスキルを点火、担いでいたハンマーを両手で握り込むと姿勢を低くして足に力を込めた。

 

「幻想響唄、幻想積札、幻想拘束」

 

胸元に付けられるブローチ、額に貼られる札、口元に巻き付く拘束具、その全てから力を受けながらジョシュアは地面を蹴る。

 

「!■■■!?」

「遅い、よッ!」

 

10m程度はあった距離は一瞬で詰められ、メイスを携えたフィクサーが動揺する間もなくジョシュアはハンマーを斜めに振り抜いて直撃させる。

巨大な質量を叩きつけられた敵は衝撃をいなせず床を転がるが、逃さんと言わんばかりに追撃は行われた。

 

「」

 

相手からは青い眼球が迫って来るように見えたであろうハンマーの突き出しを胴体にモロに食らったフィクサーはビクリと体を震わせた後、力が抜けたように手足が地面に横たえると同時に頁へと還った。その際腰のメイスを掠め取ろうとしたがその前に頁への還元に巻き込まれて消えていった。

 

「あれま残念……さぁて、あとひとりッ」

「■■!」

「イイね、仲間が死んでも戦意がある」

 

背後から斬り掛かってきた残る一人のフィクサーの攻撃を回転の勢いで振り抜いたハンマーで弾き返す。

 

「《クイックステップ》」

「■■!?」

「けどそれだけじゃあ足りないなぁ」

 

姿勢を崩したクリーム色の髪のフィクサーに対し、スライド移動するかのような勢いで肉薄し懐に入り込んで振りかぶる。向こうが驚きか動揺が声を漏らしていたが、生憎ジョシュアからすればノイズに変換されて意味を察することは難しい。

 

尤も、何を言おうが既にやる事は決まって覆らないのだが。

 

「ぶっ、飛べ!!」

 

スキルこそ使用してないものの、放たれた一撃は弾いた時の勢いと腰の入った会心の物だった。

横薙ぎの一撃は弾き返されたツヴァイに両手を引っ張られガラ空きになった胴体に突き刺さり、ほぼ床と平行になって殴り飛ばされたフィクサーはフィールドを囲むように置いてあった本棚と衝突、そのまま床へ落ちながら頁へと還されたのだった。

 

「あ、本棚に突っ込んだら本が……あれ無事だ、ふっしぎー」

 

かなりの勢いでぶつけられたにも関わらず何かしらの力が働いて一切も動いていない事実を「不思議」の一言で片付け、振り切った構えを説いてハンマーを担ぐ。

流石にこれで終わりじゃあ無いだろうと考えていると、先程フィクサー達が現れた方向から再び気配を感じ取り口元に笑みを浮かべた。

 

「ん、ちょっと物足りないって考えてたとこ」

 

新たに現れた者達の先頭に立つ、体格からして男性だろう人物は他の者達のジャンパーと同じデザインに仕立てられたのコートを纏っていた。そのコートの男が背負っていたツヴァイヘンダーを抜き放ってから後の2人も武器を取る。

 

「……成る程、貴方が6課の……課長、で良いのかな?」

「■■■■■」

「ん、ゴメン、何言ってるのか分からない」

 

こちらに何かを言っているようだが、ジョシュアに届くことは無い。あくまでもこれは記録、長い年月と共にあり人格自体は無いに等しいただのコピーされたシステムのようなものでしか無い。

故に言葉は不要なのである。

 

「第2ラウンド、さぁ行こうか」

 

そう言いながらが、ジョシュアは自身が取得したお札を取り出しつつもうっそりと笑みを浮かべた。




※主人公です

《クイックステップ》
ツヴァイ協会フィクサーの本から入手出来るバトルページ
両足をついている状態ならばどの方向へも短距離の高速水平移動が出来る。一応ホバー移動ではなく自動で足捌きを補助してくれるスキル。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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