司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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どうあがいてもジョシュアくんのスペックが怪物に寄って行ってしまいますが、もう諦めて無双させても良いでしょうか?
良いですか?
良いですね
良いか

ヨシ!(現場猫)


それでは、どうぞ


舞う札と杖は盾で止まらず

「ん、まずは景気付け」

 

新たに現れた3人に対し、取り出していた呪いの札を投擲する。本来であれば紙製の札は投げられたとしてもその場に散らばるだけの筈だが、呪いの効力なのかピンと張った状態でナイフのように飛んでいく。

 

「ん、やっぱり防ぐよね。君達は守ることに特化してる訳だ」

 

しかしそのお札は身体に命中する前に彼らの持つツヴァイヘンダーによって打ち落とされるか盾のように構えたそれに防がれてしまう。

それを見たジョシュアはおー、と声を漏らしながら手に持っていた『低いなきごえ』をギフトに変換しパチパチと拍手していた。

 

「でもごめんね、それ不正解」

 

何ともまぁ呑気な様子から一変、額にあった『紅籍』のギフトを剥がすと同時に武器へ変形させ、戦闘杖となったEGOを感触を確かめるように振り回してから構える。

相対するフィクサー達は斬り落とそうとしたお札達が何故か剣に巻き付くように貼り付き、更にはガードで受け止めた筈のお札が身体の方に転移しており、その事実に困惑した様子が伺えた。

 

「《同調》もしてみたいけど、今はまだお預けかな」

「■■■■」

「ん、もう良い?」

 

お札を打ち落とそうとして貼り付かれたツヴァイヘンダーを持つリーダーらしき人物が何やら指示を出して残る2人もお札の処理を放棄して武器を両手で構えた。

どうやらお札の対処よりも敵の排除を優先したようでこちらに敵意が向けられてきたが、ジョシュアは待ってましたと言わんばかりに杖を脇に挟みながら片手で抱え持ち腰を落として前傾姿勢になる。

 

「ん、《八艘跳び》」

 

そのままスキルを点火すれば足首辺りを光の輪が囲み、跳躍力が大きく上昇した脚を踏み出して前へ跳ぶ。

 

「■■!?」

「ぶっとべ」

 

一瞬で敵が己の頭上に移動したことに驚きの声らしき物を上げるコートフィクサーをジョシュアは踵落としの要領で後頭部を蹴り飛ばす。

その反動で翻った状態から怪物じみた本能による身体操作で何事も無かった様に着地すると、そのまま杖の端を持って片足を軸にもう片方の足を伸ばして体を回転させて周囲を薙ぎ払った。

2人のうち、ツインテールのフィクサーは咄嗟に身を引いてギリギリつま先を掠めただけで済んだのだが、もう一人は回避も防御も間に合わず足を取られて転ばされる。

 

「そぉれッ!!」

「■■■!?」

 

回転の勢いを止め、思い切り伸ばした方の足を再び曲げて床を踏み軸だった足と共に伸ばしながら立ち上がり、その勢いと共に下から斜め上に杖を振り抜いた。

軽く撓り刃は付いていないにも関わらず空気を裂くような一撃は体勢を崩したフィクサーの胴体を捉えて、大きく後方へと吹き飛ばして床に転がした。

 

「■■■■!」ガキンッ!!

「ッと、いいね、良い一撃」

 

杖を振り抜いた所に迫ってきたツインテールのフィクサーの振り下ろしをジョシュアは姿勢を整えながら水平に構えた『紅籍』で受け止める。両端からそれぞれ1/4程度の場所を握って真ん中部分でツヴァイヘンダーと鍔迫り合いをしていると、背後から殺気を感じて行動を起こす。

 

「■■■!?」

「殺気はもっと隠しなよッ!」

「■■!」

 

片方の腕だけ力を緩め、鍔迫り合いで掛かっていた力を左に受け流し、自由になった杖を右手だけで後ろに向かって振るう。

ジョシュアを背中から突き刺そうとしていたツヴァイヘンダーを弾き、そのまま器用に持ち替えてコートのフィクサーの胴体に杖の端を槍のように突き立てた。

 

ベタベタベタベタ

 

「■■!?」

「ん、こんな感じなんだ」

 

瞬間、ジョシュアのインベントリから勝手に出て来た呪いの札が相手へと殺到し、あっという間に全身に貼り付いた。どうやら「突き」という動作で杖を当てると自分が溜めていた呪いの札が全部移る仕様のようだ。

見ただけでも既に10枚以上の札が貼り付いたフィクサーは力を奪われたかのようにたたらを踏んで後退していき、代わりと言わんばかりにに先程受け流したツインテールのフィクサーが横薙ぎに剣を振るった。

 

「ん、力はあるけど鋭さはそこまで……ほいっと」

 

しかし、その一撃は杖で絡め取るようにいなされ空いた胴体に前蹴りが突き刺さったのだった。

 

 

 

 

杖術、というものがある。

日本で生まれた武術の一種であり、言葉の通り身の丈に合わせた杖を操り相手を打ち倒す為の技術、特に護身術等に用いられる技術である。

 

そんな杖術を表現する言葉の1つに、「突けば槍、払えば薙刀、持たば太刀」という物がある。

ようは様々な武器を用いた武術の要素を取り入れそれを自由に扱うのが杖術なのだ。

 

そしてここにいるのは戦いという行為への適正が限界を超えた存在。

そこに更に杖術を行使出来る程度の杖も用意する。

 

 

するとどうなるだろうか、その結果がこれである

 

 

「1234…そこッ!」

 

一拍置いて3人がかりで斬り掛かってきた敵を素早い持ち替え等を活かして斬撃をいなし、流れるように打突を叩き込むジョシュア。

先程まででもも1対3の状況で圧倒していたにも関わらず、杖さばきは更に洗練され相手の隙を射抜くように連続攻撃を喰らわせ纏めて突き飛ばした。

 

「横からの突きは刃の腹を叩けば良し、勢いを利用して前を薙ぎつつ後ろで胴体を突いて……」

 

口に出した行動は悉く実現し、連携の取れている筈の攻撃を踊るように避けて弾いて反撃してゆく。

一応補足しておくが、ジョシュア自身は武術の経験はゲームでやった位でキチンと履修したことは殆ど無い。ましてや杖術なんて知識があるだけである。

 

「んい、来ないの?ならコッチから行く」

「■■!?」

 

警戒してジリジリと距離を保ち始めた者達のうち、一番近かったフィクサーへ徐ろに歩み寄り始めたかと思った次の瞬間、ワープでもしたのかという勢いで肉薄したジョシュアは構えられたツヴァイヘンダーを手首に打突を当てることで取り落とさせ、無防備になった体を乱雑なのようにも見えるほどに振り回される杖で絶え間なく殴りつける。

その速さは打撃音がほぼ連なる程であり、更には『紅籍』の固有能力とも言える呪いの札が貼り付いた端に杖の殴打で破裂し衝撃波を発生させてゆく。

 

「■■………」

「はい4と、5人目ッ!」

「■■!?」

 

あっという間に体力を削られたフィクサーは攻撃を受けていた姿勢で崩れるように頁に還り、更には背後からジョシュアを止めようと迫っていたツインテールのフィクサーへ振り向きながら長尺の杖を逆手持ちで槍のように顔面へと突き立てる。

確かにヒットした感触がしたと同時に、首を圧し折るレベルの一撃をモロに食らった相手も頁に還ったのを確認した後、ジョシュアは既に手慣れたように杖を新体操のバトンのように回転させて弄んでいた。

 

「ん~、やっぱ槍とは勝手が違うね」

 

そう楽しそうに笑うジョシュアは残った一人にビシリと杖を向ける。その動作は凛としており、何処からどう見ても手慣れている者のそれであった。

 

ジョシュアが生まれ持った闘争の才能は反射神経やリアルでの身体能力など多岐に渡るが、その中でも恐ろしいとも言える物の一つが「適応力」である。

偏に適応力と言っても色々とあるが、ジョシュアの場合戦闘における事象全てを本能で処理して動作を最適化している、つまるところ戦ってる最中は無意識内に絶え間なく進化し続けるのだ。

知識がある程度で使った事がない戦闘杖を初見で使いこなしているのもその性質を本能で理解し体が勝手に最適化しているからという反則気味な理由がある。

因みにそれら諸々の反動が慢性的に湧き出し続ける戦闘欲だったり、これが覚醒したきっかけがあったりするのだが今回は割愛する。

 

「■■、■■■………!」

「多分化け物が〜、とか言ってるのかな」

 

貼り付いた札だらけのフィクサーが何かを吠えているが、声はノイズに変換され表情すらモザイクで隠されていた為中身が何なのかは想像する事しか出来ない。まぁ大体合ってるだろうと考えながらゆっくりと歩み寄り、

 

「褒め言葉だよ」

 

敵の悪態に笑顔で返したジョシュアがヤケクソ気味に振るわれたツヴァイヘンダーを軽く弾いて逸らしトン、と『紅籍』で小突いた瞬間、

 

ガァンッッッ!!

 

「■■!?」

 

金属で出来た物体同士を激しく打ち付け合った時のような音が周囲に響くと共に、相手フィクサーの内側から何かが破裂するような衝撃が走る。

内側からボロボロにされ、更には連鎖的に体中に溜まりに溜まっていた呪いの札も破裂した事で極大なダメージを負い、武器を持つ事すら出来ないまま倒れ伏した

 

「《振動爆破》に《振動反響》……コレも中々便利そうだね」

 

淡く光っていたネックレスの能力に感心して目を輝かせるジョシュアだったが、倒れ伏したリーダー格らしきフィクサーが僅かながら動こうとしてるのを見つけると徐ろに歩み寄って眼前になる所で足を止めた。

 

「ありがとう、EGOの試運転に付き合ってくれて」

 

餞別だとと言わんばかりにばら撒かれた呪いの札を纏めて貫くように放たれた逆手での打突は、倒れ伏した敵の頭部を破壊した。

 

 

VICTORY

 

南部ツヴァイ協会6課 接待完了

 

 

 

 

 

 

「あー、楽しかったぁ………」

 

今日は満足したのか、少しアイテムを買い足してログアウトした紫亜は幸せそうにVRゴーグルを外した姿勢のままベットに体を預けていた。

余韻に浸るのもそこそこに体を起こしてベットから離れたその時、パソコンのデスクに置いておいた携帯が鳴る。

 

ピッ

「ん、もしもし上条です」

『もしもし、お兄さんですか?』

「そうだよ紅音」

 

コール音を止めて電話に出ると向こうから聞こえてきたのは大変元気な少女の声。

 

『皆1泊追加しても大丈夫だそうです!先生も許可してくれました!』

「ん、それはよかった。確か明日には会場近くのホテルに行くんだっけ?」

『そうですね!部活の友達の皆も一緒です!』

「まぁ今日と明日はちゃんと体休めてね。大会でちゃんとベスト出せるように」

『勿論です!』

 

フンスフンスと気合十分な様子に心配は無用かなと思いつつ、万が一の事が無いよう祈って置く。それはさておき話題はメインである大会から、それが終わった後の休暇についてにシフトしていた。

 

『えへへ、お兄さんとのお出掛けも楽しみです』

「あ、大会の次の日夢の国連れて行くつもり何だけどもランドかシーかどっちが良いか皆で相談してね」

『!!はい!分かりました!』

 

住む場所の関係上早々行く機会のない場所に目を輝かせているのが分かるほどに興奮した様子の紅音に笑みを零した紫亜だったが、ふと気になった事が出来たので一応聞いてみる。

 

「そういえば、大会当日ってお昼ご飯とかどうするの?お弁当注文してたり……」

『……………ほへ?』

「してないみたいだね」

 

数秒固まり、気の抜けた声が返ってきた辺りで察した紫亜を他所に電話の向こうでワタワタと慌てる気配がし始める。

 

『そ、そうでした!予選突破したら決勝は午後からだから……!』

「それもこっちで用意しようか?」

『ほ、ホントですか!?でもお金かかっちゃいますし……』

「大丈夫大丈夫。自分の分用意するついでだし、紅音の応援に来てくれる友達の分も作っちゃうね」

『うー……はい!分かりました!皆にもちゃんと伝えておきます!』

「ん、お願い」

 

何だか悔しそうな大切な妹分に苦笑いを零しながらも、紫亜は何処か満たされたように笑うのだった。

 

 

 

 

 

『それで、どんなお弁当を注文するんですか?』

「いや、自分で作るけど」

『お兄さんの手料理!?すっごく気になります!!』

「ん、楽しみにしててね」




Q.結局ジョシュアの戦闘スタイルって?
A.経験と勘と化け物スペックで全部を薙ぎ倒していく完全フィーリング型。戦闘中に得た情報すらも本能の部分で処理して動きを最適化する為、エンジンが温まる前に仕留めるか完全な意識外からの不意打ちをしないと止められなくなる。
尚殺気に対してオートで反撃する模様。


Q.つまり?
A.ギリギリ人の範疇で魔虚羅やってる。
 何が怖いって現実でも似たようなのが出来る事

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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