あー、ドンキ村が焼ける音ぉ〜!
それでは、どうぞ
「みんな〜、只今戻りました〜!」
「あ、決勝進出者のご帰還よ!出迎えなさい!」
「おーうおかえり〜!」
「すごかったね、ダントツトップだったよ」
予選を終えて数十分後、クールダウンも終えて休憩しに帰ってきた紅音を迎えたのはテンションの上がった面々。友人の女子の熱烈なハグでワチャワチャした後、それを微笑ましく見守っていた両親の元へパタパタと近づいていく。
「お父さん、お母さん!どうでしたかどうでしたか!?」
「すごかったぞ、紅音。プロの陸上選手にも引けを取らないんじゃないか?」
「この調子なら優勝も夢じゃないわね♪」
「えへへッ!」
真っ直ぐな賛辞に照れくさそうにしつつも喜ぶ紅音。
「お疲れ、隠岐さん。午後からの決勝に向けてコンディション整えられるよう気を付けてね」
「はい、先生!所でお兄さんは何処に?」
「ああ、上条くんなら……」
「ん、お待たせしました」
先生からのアドバイスもそこそこに一番会いたい相手を探せば、そのタイミングを見計らっかのように紫亜が大荷物を抱えて戻ってきていた。
「あ!もしかしてお弁当ですか!?」
「ん、そう。もうじき良い頃合いだし、車に積んでたの持ってきた」
「ごめんね上条くん、ホントならこっちで注文とかしておくべきだったんだけど……」
「お構いなく、自分の分を用意するついでなので。取り敢えず机置くの手伝って下さい」
特に何の苦も無く大量の荷物を抱えつつ手に持った折り畳み式の机を差し出され受け取る先生。
少しよろめくのをスルーして割り振られたエリアに敷かれたブルーシートの上に置かれたのはかなり大きなサイズのクーラーボックスと保冷バックだった。
「にしてもでっけぇクーラーボックスっすね……そっちの保冷バックも何リットル入るんすか?」
「確か50L位かな、結構多めに用意したから。あ、テーブル組み立てて貰えると嬉しい」
「了解っす!」
「はい!」
指示に従って少し組み立てに苦戦してる先生の元に手伝いに行く少年達。
一先ず保冷バックの方から皿などを取り出し始める紫亜をじっと見つめていた紅音だったが、ふと傍らに目をやり首を傾げる。
「あ、そういえば一つ聞きたいんですが美奈ちゃんは何故横に?もし体調が悪いなら救急車を呼ばないと!」
「あー……あのね、紅音。普通はね、めっちゃ美人な憧れの人にとっても良い声で囁かれながら頭優しくポンポンされたらああなるのよ」
「んな!?私以外にそんな事を……!むう、浮気じゃないですかお兄さん!」
「あ、そっち!?」
かわいく嫉妬して頰を膨らませながら紫亜に詰め寄る紅音。しかしながら本人からすれば落とし物を拾って軽く注意をしたら突然熱を出して倒れてしまったので取り敢えず横抱きにして安静に寝かせただけなので何が浮気判定に引っかかったのかよくわかってない。
一先ず己をポコポコと叩く妹分に向き直って落ち着ける為、昔からやっているように優しく頭に手を置いた。
「よしよし、よく頑張ったね」
「ムフー……!」
「紅音…アンタそれで良いの?」
「うぅん……?」
「あ、起きた」
そんな一幕もありながら、それぞれに箸や紙皿、飲み物用のコップも行き渡った所でヤケにデカいクーラーボックスを弄って中に入れていた物を取り出した。
「取り敢えずどん」
「おお、重箱……」
「お正月の御節以外で初めて見た気がする……」
「更にどん」
「うおっ!?」
「もういっちょどん」
「わ、わぁ……」
「はいラストどん」
置かれた4つの重箱。そのどれもが3段重ねになっており、それの蓋を開ければ豪華なおかずや握り飯等が詰められていた。
「沢山ですね!」
「わぁ、美味しそう……!」
「というより……なんか、多くない?」
「食い切れるかなこれ……」
「ん、好きな分だけで良い。デザートもあるし、残ったらあとは僕が平らげるから」
「いや上条くんモデルやってるんだから食事量とか調節しないと……」
「まぁ取り敢えず、紫亜くんに感謝して頂こうじゃないか」
あまりにも豪勢なメニューに目を丸くする者達を正気に戻したのは紫亜との関わりが深い紅史だった。
まぁご馳走を前にいつまでも呆けている場合ではないなと、テーブルを囲んだ面々は手を合わせる。
「「「「「いただきまーす!」」」」」
「「「「いただきます」」」」
食前の挨拶を終え、早速各々が好きな料理を取って一口食す。
「ん~!おいひぃれす!」
「うんまッ!?」
「おぉ、サックサクだ…!」
「握り飯何種類あんだこれ……?うわうまっ!?」
「ハンバーグおいひぃ……」
「ふむ、しっかりと下拵えがしてあるな。この御浸しもいい出来だ」
「お米もちゃんといい具合に炊けてるわね。口の中でちゃんとほどけるし、もう私の腕も抜かされちゃったかしら?」
「あ、何か凄い安心する味だなぁ……」
「ん、好評そうでよかった」
子供達は目を輝かせて次々と皿に料理を取って頬張り始め、大人達はしみじみと料理味わっている。そのどれもが好意的な感想を漏らしており、それを聞いた紫亜は若干自慢げにしながらも静かに胸を撫で下ろしていた。
「普段の弁当にも入れて欲しいなぁ……紫亜さん紫亜さん、このドコのメーカーの奴ですか?」
「ん?いや、僕が作ったやつだけど」
「え、うぇぇッ!?」
「冷凍は便利だけど量がアレだから今回は使ってないよ。揚げ物は纏めて出来るし」
量が量なので冷凍よりも普通の食材の方が安上がりだし美味しくなると語る紫亜だったが、それを聞いた紅音を除いた子供達はピシリと固まっていた。
「マジか……紫亜さんの手作り……」
「大丈夫?これクラスの皆にバレたら僕ら殺されない?」
「大丈夫……とも言い切れないわね、うん」
紅音による布教により、クラスどころか学校全体で紫亜ファンをしてるような環境。しかも重度の者もいる為、もし彼らに「紫亜ちゃんに手料理振る舞って貰いました〜」何て宣えばどうなるか。
そうだね、
「どうかしたんですか皆?もっと食べましょうよ!」
「「「「……まいっか、いただきまーす!」」」」
だがしかし、目の前に出された料理と善意でこれを出してくれた紫亜に罪はない。
最悪の未来を考えるのを辞めながら沢山の料理に舌鼓を打つのであった。
「そういえば一つ聞きたいんですけど……大丈夫です?」
「んぐ……どうしたの?」
昼食を初めて暫くして、程々に食べるスピードも落ち着き始めた頃に問いかけられた紫亜は口に含んでいた米をお茶で流し込んで返答した。
「いや、さっき観客席から帽子落とした時のアレってどうやったのかなぁって気になったので……」
「そうっすよ!あの高さの壁をババッて!マジカッコよかったっす!」
「ん、ありがと。けど、「どうやった」って聞かれても「パワーに物を言わせて」としか言えない……そうだ」
少し考えてから紫亜は4人の前に差し出すように腕を伸ばした。
「えーっと?」
「1回腕の辺り触ってみて」
突然の指示に困惑を隠しきれない4人だったが、一先ず指示通りに手を伸ばす。
無論、憧れのモデルの腕に触れるという行為に恐れを感じて若干時間は掛かったものの、恐る恐る触れた4人が感じたのは普通の人間の腕を握った時の感触だった。
「まぁ、うん……」
「なんか少し硬いっすけど普通の腕っすね」
「うわぁ、肌スベッスベ…!?」
「めっちゃ肌モッチモチなんですけど……!?」
「後でおすすめの教えるね。じゃあ1回離して…フッ」
くすぐったいのを我慢しつつ、一度離れて貰った紫亜は一息で気合を入れて拳を握る。だがしかし、見た目的には腕に大して変化はない。
「もう一回触ってみて」
「じゃあ失礼して……!?」
再び差し出された腕に触れた瞬間、子供達の脳裏に浮かび上がったイメージは微動だにしない金属の棒だった。
「硬ッ…!?」
「え、何これ鉄?」
「これぜってぇ何か仕込んでんだろ…?」
「力入れただけだよ」
困惑しきった顔で感想を零す子供達に対して紫亜は悪戯が成功したと言わんばかりにクスクスと笑う。その様子を見ていた大人達も、紫亜の腕を掴んでいるのをみて納得したような表情で笑っていた。
「初めて知ったら驚くわよね」
「確か、ミオスタチン関連筋肉肥大だったかな」
「その亜種的な感じですね。本来なら滅茶苦茶ムキムキになる疾患ですけど、僕の場合は筋肉量が常人の何倍にもなった上で圧縮されて見た目がこうなってます」
「圧縮?」
「ん、圧縮。一応僕体重90キロ位あるし」
「「「「!?」」」」
その一言で4人の視線が一斉に紫亜の方へと向く。どう見ても華奢という評価にしかならなそうな線の細さで、体重が100キロ近くあるなど到底信じられない。
因みに童顔と見た目の華奢さとポヤッとした雰囲気から勘違いされやすいが実際の身長は170cmと割とあったりする。初対面だとよく驚かれるとは本人の談である。
そんな驚愕の視線を受けながらも、紫亜はケロッとした顔で新しいおにぎりを頬張った。
「筋肉は脂肪より重いからね。しかも圧縮されてるからその分体積に対する重量が増える」
「いや、でも最初触った時は普通の腕だったっすよ?」
「力入れてない筋肉は基本的に柔らかいから、ずっと硬いままだったら生活出来ないよ」
そう言いながら腕に込めていた力を抜いて引っ込める。
「まぁそんな理由で人の何倍も力があるし、この症状全身に出てるから脚力もそれなりにあるよ」
「お兄さん、本気出したら私より速いですもんね」
「マジで!?」
ずっと皆が触っている方とは反対側の腕に寄りかかってふにふにしながら料理を堪能していた紅音の一言で更にギョッと目を丸くする。普通の女子なら兎も角、ついさっき圧倒的な走りを見せた陸上部のエースと比較してもそれを超えるとは信じられないようである。
そんな中、彼らの顧問は過去を思い出しているのか遠い目をしながら口を開いた。
「皆、体育祭覚えてるかな?」
「え?うん、それがどうしたの先生?」
「多分心当たりあると思うんだが……徒競走のレコードタイム、男子の方がなんかとんでもない記録だったろ?」
「まぁ何か世界陸上の選手のレコードタイムより速えみたいな事言ってんのは聞きましたけど…」
「その記録保持者」
苦笑いで指差した先に居る紫亜は無言でピースしながら卵焼きをもぐもぐしていた。
「懐かしいですね、もうすぐ6年前ですか」
「3年生の頃の体育祭、君の無双状態だったからね〜……」
食べていた物を飲み込んで目線を上に向けて懐古すれば、脳裏に浮かぶのは自分がぶっちぎり1位でゴールテープを切る瞬間。
それと同時にその後に空腹でショモショモ顔になる所まで思い出して微妙な表情になる。
「ただこの体質のせいで死ぬほど燃費が悪い。脂肪として溜まる筈の分も筋肉の生成と維持に使われるせいでこの体質が本格化してからすぐにお腹が空く。全力の出力は凄いけどそれに対してガソリンの容量が足りない」
そうぼやきながらもミニ春巻きを頬張るのを止めない紫亜。己の手を握って開くのを繰り返すのをじっと見つめたかと思えば肩を落としながら新しくミニとんかつを噛みちぎった。
「しかもそれでも食べるのを止めると筋肉が落ちて痩せるんだよね。だから僕の場合、体型維持の為に食べないといけない。モデルって割と体力使うし余計にね」
「いやそれでもいくら食べても太らないって、世の中の女子が知ったら敵に回りますよ?」
「先輩からも似たような事言われたけど、これに関しては体質だからなぁ」
紅音が横から「あーん」と言いながら差し出した楊枝にさされた唐揚げを頬張りながらそう宣う紫亜の姿にはある種の説得力があった。というかさっきから何かしら食べ続けておりそれが途切れたのは話す時位である。
「それにしても美味いっすね、店出せるんじゃないっすか?」
「それなりに出来る自負はあるけど僕もまだまだだよ。料理の先生には一生勝てる気がしないし」
「いやいや、これでまだまだとか言われたら私どうなっちゃうのよ……」
「……私もお料理勉強しようかな……」
謙遜する紫亜に対して何とも言えぬ敗北感を抱く女子2人。
「あら、私としてはとっても良い出来だと思うわよ?ちゃんと『お弁当』として最適な調理が出来てるし、栄養もちゃんと考えられてる。言う事無しの100点ね」
「ん、ありがとうございます先生」
「「先生すぐそこにいた!?」」
即座にスススと風音の元へ近づき、料理の指南のお願いをしてる女子たちを他所に男子たちと紅音は一先ず段々と減ってきている弁当の中身を確保するために無言で箸を動かすのだった。
「まぁデザートもあるしお腹いっぱい食べてね」
「はーい!」
「うっす!」
「遠慮なくいただきます!」
紫亜ちゃんの肉体は見た目こそ華奢な乙女ですが実際は圧縮された筋肉の塊です。
簡単に表すと鬼滅の刃の「捌倍娘」みたいな感じです。
それとは別枠で闘争の才能もあるわけで、その結果何か1人だけ刃牙の世界にいます。
天音永遠と魚臣慧は165cmなので実は2人より背が高かったり
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……