司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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地震云々が心配ですね。




それでは、どうぞ


装備のススメ 前

「ん、満足」

「やー、戦った戦った。流石に100連戦はキチィわ」

 

数時間後、100本組手を終えた2人はその場に仰向けになって倒れていた。流石にノンストップで戦い続けた為か動く気力も無いのだろうがその表情には確かな充足感が現れていた。

 

「つーか髪の毛の演算利用して一本一本に攻撃判定乗せるとかバカだろ。首の下から腰まで全部消し飛んだんだが?」

「偶然見つけたし、あれ何故か自分にも当たるから振り回した髪の毛が自分の背中とかに当たれば自滅する」

「マジ?諸刃の剣じゃん」

「ん、実際最後のラウンド残った体力ミリだった。リーチの確保は僕みたいな長髪のアバターが良いだろうけどサンラクみたいな感じなら頭突きが安全に強化されると思う」

 

のっそりと起き上がりながら質問に答えるジョシュアとは対照的に新たなバグの可能性と活用法を示されたサンラクはガバリと一息に起き上がった。

 

「!そうか、髪の毛に攻撃判定を乗せられるなら………!おーい、お前らも検証手伝えー!」

「そう言うと思ってもう始めてっぞー!」

「ん、仕事が速い。流石このゲームをやり込む好事家達」

 

観客がいた所を見れば、既に何組かが対戦を始めており、ジョシュアの技を再現しようと研究が始まっていた。

尚、髪の毛が無いアバターを使ってるプレイヤーは端で寂しそうに体育座りしている。

 

「そういや、さっき電話で言ってた今やってるゲームって何なんだ?」

「『シャングリラ・フロンティア』、君がいつもやってるクソゲー達の対極にある神ゲー。始めたばかりだけど、戦闘面は中々満足出来そうな感じ。自分のやりたいスタイルでやれそう」

「ほへ〜、あのバトルジャンキーがそう言うレベルねぇ」

「興味ある?」

 

『シャンフロ』の名前を聞いて反応を示すサンラクの顔を下から覗き込んで首を傾げる。しかし、当の本人は突っ立って顎に手を当てたまま何とも言えぬ表情で考え込んでいるようだ。

 

「んにゃ、名前ぐらいは聞いたことあっけどやりたいかって言われるとなぁ………」

「そっか……僕はそろそろ戻るけどサンラクは?」

「お前の見つけたバグの検証に付き合ってもう少しストレス発散したら『フェアクソ』の攻略戻るわ」

「ん、分かった。それじゃ」

「おーう………あ、そうだジョシュア、新しいバグ技の名前考えてけよ。一応第1発見者お前なんだから」

「ん〜………じゃあ頭に攻撃判定生やすから『クラウン』で」

「王冠を武器だと思ってらっしゃる?」

「だってだいたい尖ってるし……あと自滅する姿が滑稽になりそうだから道化の意味も込めてる」

 

それじゃまたね、と言い残してログアウトしていったゲーム友達を見送ったサンラクは、その場で先程の会話を頭の中で反芻させる。

 

「………『シャンフロ』か、異常なレベルの戦闘狂が()()()で高評価を叩きつけるってのはちと気になるな」

 

生粋のクソゲーハンターが神ゲーにほんの少しでも興味を抱いた、歴史的瞬間であった。

 

 

 

 

「ん、帰還」

 

『便秘』からログアウトした紫亜は少しだけ休憩を入れた後再び『シャンフロ』にログインする。

最後に休んだセカンディルの宿屋の一室で目覚めて体を起こし、まずは自分のステータスを開いた。

 

「この際、光の種は気にしないで行こう。うだうだ悩んでてもしょうがないし、多分向こうからイベントが突っ込んでくる」

 

未だに意味不明なスキルに見切りをつけ、気を取りなおして貪食の大蛇戦まで終えて手に入れたステータスポイント15pt.を振り分ける。

とは言ってもそのうちの2/3はスタミナ、残りは俊敏に突っ込んだ為、紙装甲であることには変わりはないのだが。

 

「装備を整えて……あとドロップアイテムの整理」

 

立ち上がって窓の外を見れば、もうすぐ太陽が夕陽へと切り替わりそうな位に傾いている。

さっさと新しいエリアでの戦いを求めるジョシュアは宿屋の受付に向かって礼を述べた後、そのまま街に繰り出した。

 

「ん、まずは道具を揃えよう」

 

数時間前に確認した道具屋へトテトテと小走りで向かうジョシュア。

何故か周りのプレイヤーやNPCからの目線を感じるものの、新しいモンスターへの興味しか頭にない彼にとっては些事である。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

建物の扉を開けば内側に付いたベルがカランカランと音を立てる。店員らしき女性NPCが挨拶をすれば、それに釣られた店内のプレイヤー達も入口を見る。

 

「な、なぁ、あの子可愛くね?ちょっと声掛けて…」

「おいおい気が早すぎんだろ、ネカマの可能性もあんだろ」

「わー、可愛いアバターだなぁ」 

 

「あの子……」

「あぁ……」

 

プレイヤー達からはアバターの見た目への注目、NPC達からはほんの少しばかりの畏怖とも言えるような感情を向けられるが当の本人はのほほんと受付へと駆け寄る。

 

「ん、ここはモンスターのドロップアイテム売れる?」

「はい、大丈夫ですよ~。あ、ですけどゴブリンの手斧とかはご遠慮してますので……」

「そこら辺は投げ物として使ってたら壊れたからもう無い。売りたいのはこっち」

 

インベントリを操作し、受付の机の上に2つのアイテムを実体化させる。

螺旋の入った角と真っ白な牙を見た店員はほぅ、と意外そうに目を丸くしながらそのアイテムを丁寧に手に取った。

 

「アルミラージの角にレッサーウルフの牙……ふむ、状態が大変よろしいですね。これなら角の方はお一つ3000マーニ、牙の方はお一つ2000マーニで買い取らせて頂きます」

「ならそれぞれ20個ずつ売りたい」

「承知しました」

 

テキパキと取引は成されて行き、品物を受け取った店員は袋に入った多量の金貨を差し出した。

 

「こちら10万マーニになります。ご確認を」

「ん、ありがとう。ついでに回復ポーションとかも欲しい」

「でしたらこちら等は……」

 

「……なぁ、アルミラージの角ってドロップ率どれぐらいだっけ?」

「ええっと……SF-Zooの検証じゃ大体20%?あと戦闘中に角と何かが強く衝突したらほぼ0%位までドロップ率が下がるらしいが……」

「角の攻撃盾で防いでもアウトじゃねぇのそれ」

 

実際問題、『シャンフロ』ではアルミラージの角等といった部位のドロップアイテムはモンスターがどのように倒されるかによって変化する。

つまるところ、「アルミラージの角」を確保するにはアルミラージの攻撃を全て避けるか気付かれない内に頭以外を狙って仕留める必要があるのだ。

ある程度レベルを上げ、適正のあるビルド構築であれば割と苦でもない作業なのだが、彼らの目線の先にいるのはあからさまに初期装備のプレイヤーである。

 

「マナポーションは一応3本、それと……」

「……お客様、実はオススメの商品があるのですが、ご覧になりますか?」

「んぅ?」

 

商品の売買の最中、突然店員が他のプレイヤーやNPCに聞こえない程度の声量で話し掛けて来る。

先程までやり取りをしていた相手からの突然の囁きにジョシュアは宙に浮かぶ画面から商品を選ぶ手を止めて目をパチクリと瞬かせて相手を見る。

不思議そうに首を傾げる客を前にしても営業スマイルを崩さぬ店員は一つのアイテムを提示した。

 

「これは?」

「こちらはサードレマとの間にある沼荒野、そのエリアでの移動を補助してくれるアイテムとなっております。少々値は張りますが、効果は保証致しますよ」

 

その話を聞いてか、ジョシュアはそのまま目の前に浮かぶ画面に視線を向ける。

 

 

『導路のミサンガ』

魔物の素材を糸にし、魔法陣を編み込みながら作られたミサンガ。

行きたい場所に辿り着く過程をサポートする効果がある。

込められた願いは絶えず、消えることは無いだろう。

 

効果:敏捷+10、オフロード判定のフィールドでの移動速度を30%上昇

 

 

「ん、買わせてもらう」

「お一つ4万マーニになりますが、大丈夫ですか?」

「問題ない、他のアイテムも一緒にお願い」

「はい、お買い上げありがとうございます。貴方の冒険の助けになることを切に願います」

 

効果を見て理解した瞬間に即決した。

試しにアクセサリー枠に装備してステータスを見ればしっかりと反映もされていた。

何処に装備されたのだろうと自分の身体を見れば、足首に紫と緑の糸で紡がれたミサンガが巻き付いているのが確認出来る。

 

「いい買い物した」

「またのご来店、お待ちしております」

「ん、また来る」

 

お淑やかに頭を下げる店員に対して手を振ってジョシュアは店を出る。

先程よりも確かに軽くなった足取りを感じながら、武器屋目指して街を歩いている最中、ふと日陰になって暗くなった路地裏の入口が目に入った。

 

「………?」

 

段々とスピードダウンし後ろ歩きで通り過ぎた場所に戻っても特に変わった様子は見受けられない。

強いて言うのであれば、夕方に差し掛かったせいで建物の影がより濃くなり、視認性が悪くなっている位だろうか。

しかし、ジョシュアは何か引っ掛かる物を感じたのか導かれるようにその路地裏へと足を運んだのだった。

 

「………」

 

表通りとは打って変わって静まり返った路地裏には自分以外の人間の気配は微塵もない。

しかしそれでいて纏められた資材等といった生活感を感じるものはそこかしこに存在している。

何故かどことなく疎外感を覚える陰の世界をキョロキョロと見渡しながら歩くこと数分、辿り着いたのは何の変哲もない行き止まりだった。

 

「ん……気のせい?」

 

よく目を凝らしてもそこにあるのは3方を壁に囲まれた薄暗い空間のみで、それ以上語るものは何も無い。

直感に従った結果なんの成果も無かった事に首を傾げながらジョシュアは表通りに戻ろうと身体を反転させる。

 

パサ

 

「ッ!」

 

異音に反応し即座に振り向けば、路地の行き止まりにポツンと黒い紙のような何かが落ちていた。

警戒しながら近づいて拾い上げてみれば、それが封筒であることが分かる。

 

「……『図書館への招待状』?」

 

金の装飾が入った高級そうな封筒をマジマジと見つめていればアイテム習得画面が現れるが、操作して詳細を見たジョシュアは更に首を傾げた。

 

 

『図書館への招待状』

とある図書館へと入る許可を得た者のみに送られる招待状。

貴方の望む本を必ずご用意致しましょう。

 

 

説明が説明の役割を放棄したそれを見て暫く固まっていたジョシュアだったが、一先ずは当初の目的地である武器屋を目指す為にインベントリ内に封筒を仕舞い込むのであった。




「導路のミサンガ」
→セカンディルの道具屋限定商品。モンスターの素材を一度に5万マーニ分以上卸すと1/3の確率で購入可能に
(3回条件を満たせば確実に購入出来るようになる)

要は店員に「お、コイツ実力者やな」って思わせたら勝ち
ジョシュアは出身の「戦帰り」の効果補正が乗った+規定額の倍の取引をした事で確定演出になりました

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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