シーチュンカワイイヤッター
それでは、どうぞ
機械が作動してから10分程経った頃、作業を終えた機械がジョシュアから離れて静止した。
「…………」
「ふむ、中々楽しめたな」
90dB以上はあったであろう叫び声を絶え間なく上げ続けていたジョシュアはグッタリと力無く手術台に体を預け、先程までの惨状を茶請けに紅茶を嗜んでいたビナーはその姿に拍手を送る。
どうやら満足行くエンターテイメントだったようだ。
「……よし、予測してた結果も出たわね。成功と言って良いかしら……ほらジョシュア、終わったわ」
「おそらきれい」
「……?上にあるのは天井だけよ?」
「おそらとってもきれい」
「……ダメね、すっかり意識が飛んでる。」
データが表示された画面を確認して満足したアンジェラがイヤーマフを外して未だ沈黙を続けていたジョシュアを揺さぶるが、返ってきたのはちゃらんぽらんな答え。
ぐでんぐでんに脱力し、口の端から涎を垂れ流しなから焦点の合っていない目で天井を見つめるジョシュアが復帰する様子は無かったので仕方なくアンジェラが手術台から引きずり落としてそのまま首根っこを引っ掴んで運び始めた。
一方、『図書館』に開かれていた地下への階段の入り口には、ジョシュアの地獄の責め苦を受け続けたような叫び声を聞き付けて大急ぎで来たオルトが階段を恐る恐る覗き込んでいた。
「い、一体これは……」
「おや、子兎じゃないか」
「び、ビビッビビビ、ビナー様……!?お、お久しぶりなのです……!」
「そう恐れる事は無い、私は君を直接傷つける気など毛頭無いとも」
「は、はいぃぃ……!」
ビナーの嗜好を心底恐れているオルトからすればその言葉すらも恐ろしいと感じるのかブルブルと小刻みに震えながらなんとか笑みを返す。
その様子を見たビナーは何とも愉快そうに笑って去っていき、オルトは安堵から肩を落としながら息を吐く。
「あら、オルト」
「か、館長様……って、ジョシュア様!?一体何があったのです!?」
「おそらめっちゃきれい」
「ジョシュア様ぁ!?」
そして続くように出て来たアンジェラが引き摺ってきた尋常ではない様子のジョシュアに再び度肝を抜かれることになったのだった。
「丁度良かったわ、少し実験に付き合ってもらってたんだけど終わった後にダウンしたのよ。休憩スペースにでも運ぶとこまではするから私の代わりに看ててちょうだい」
「わ、わかったのです!」
「……しぬかとおもった」
「体調は如何なのです?」
「ん……もう大丈夫、ありがとねオルト」
リスポーン地点である休憩スペースに戻されてから数分後、ようやくマトモな意識を取り戻したジョシュアは礼を述べつつのっそりと起き上がった。
「で、アンジェラは改造とか言ってたけどステータスは……ん?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━
PN:ジョシュア
レベル:39
メイン職業:司書補
サブ職業:傭兵(片手剣使い)
体力 30 魔力 10
スタミナ 90
筋力 55(85) 敏捷 65(85)
器用 35(65) 技量 35(45)
耐久力 1(171) 幸運 65
残りステータスPt.10
装備
左:無し 右:無し
頭:無し
胴:司書補の制服 (耐久力+70)
腰:司書補のベルト (耐久力+20)
脚:司書補の革靴 (耐久力+40)
アクセサリー:導路のミサンガ (俊敏+10)
コアページ:ルル (筋力+20 器用+20 耐久+30)
メイス 《ファイアーバット》
スキル
・満月刃
・豪雨乱撃
・旋風陣
・パリングプロテクト
・空穿ち
・スケートフット
・八艘跳び
・ドリル・ピアッサー
・光の種 第弐段階
・スカイウォーカー
・スカルシェイカー
・エッジクライム
・舞空撃 → 空翔乱気
・一閃 Lv.MAX
・ウェポンライト
・エンゲージロデオ → アブソリュートライド
・集点突 → 羅貫突
・ベストステップ
・ブラッドハーム
・ワンショット・アーツ Lv.6
・無尽連斬
・崩々壊撃
・ニトロビート Lv.3
・スポットマーキング Lv.4
・インファイト Lv.2
・スタッフブレイク New
・ラビットホップ New
・カタパルテット New
ページスキル
・燃焼ファイアーバット
・心構え
・クイックステップ Lv.3
・残酷な支度
・滅多斬り Lv.3
・た耐える Lv.2
・先導指揮
強化施術 (1/10)
・薬剤"prototype"投与 (コスト1)
(筋力+10 敏捷+10 器用+10
技量+10 耐久力+10)
━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ふーん、ほー……」
ステータスの欄の最後に新たな項目が追加され、そこに先程施されたであろう手術の結果が載っていた。
名前からして試験段階の代物であることが伺えるが、その効能はそこそこ有用そうな代物である。
………まぁあの拷問じみた激痛地獄に対して割に合わないなぁと思わなくもないが、10レベル分のステータスを実質デメリット無しで得られる上、これから更に高度な施術も受けられると考えれば間違いなくプラスだろう。
「あ、そういえばまだ前手に入れた本見てなかったけど……ん、やっぱり防御寄りのスキル多め」
残ってたりステータスポイントを体力と魔力に半分ずつ割り振りながら、今度は未確認だった本の確認を始める。
「そういえばこのページスキル前オルトが使ってたような……」
「はいなのです!『イサドラ』という方の本から入手出来る防御寄りのページスキルでして、使った際に自分を含め共に戦う者へ防御を強める力を配ることが出来るのです!」
「へぇ、パーティー組んで全員で使ったら面白いことになりそう」
そう言いながら説明を閲覧していたのは『戦闘準備』というページスキル。
とある世界では「防力団」と呼ばれる防御で攻撃をねじ伏せて体幹を削り取る集団を形成するに至った壊れスキルだが、少人数だと効果が重複しにくい為その真価が発揮されるのはまだ先の事だろう。
そんな事等微塵も知らないジョシュアは一通りの説明を流し読みし、最後に読んでいた本の表紙をジッと見つめながら、ふと疑問に思った事を呟く。
「『南部ツヴァイ協会6課』……『南部』ってことは北部とか西部とかもあるって事だよね。そもそも協会って何なのかも詳しく知らないけど」
「そこはワタクシにお任せを!『都市』の事に関してはこうして情報を纏めているのです!」
自信満々といった様子でオルトが取り出したのは一冊のノート。ジョシュアもちょくちょく見かけていたそれはどうやら情報整理の為のメモ帳だったようだ。
「まず『協会』とは、『都市』にてメジャーな職業であったフィクサー達を纏め上げる組織なのです!フィクサーの仕事は多岐に渡るため、それらを統括する為に『ハナ協会』を筆頭に13の協会が設立されたのです!」
「その一つがツヴァイ協会?」
「はいなのです!彼らは主に治安維持や警護を担当しておりまして、守りを重点とした戦いを得意としているのです!」
「ん、確かに今までの相手よりも攻撃の防ぎ方が違った気がする。まぁ全部ぶちのめしたけど」
脳裏に過ぎるのは先日の接待の記憶。
今までの戦闘記録のフィクサーや人物達よりも戦い方が堅実だった印象が残っていたが、満足出来たかと問われれば無言を貫く事になってしまう。
それは一旦置いといて、ジョシュアは引き続きオルトへ教えを請う。
「じゃあ南部とかはどういう意味なの?」
「そちらについては純粋に『都市』のどの方向にその支部が建てられているかが関係しているのです。『都市』は大変広かったそうで、本部と支部3つの計4つが東西南北にそれぞれ分かれているのです」
「成る程ね……違いは場所だけなの?」
「そうですね、例えば……コチラ!」
バッと宙を舞う1枚の頁はオルトへと吸い込まれ、そのまま刻まれた記録より殻を形成する。
やがて変化を終えれば、現代的なデザインの混じる立派な西洋風の騎士鎧に身を包んだオルトが立っていた
「西部ツヴァイ協会のフィクサーの方のコアページなのです!」
「おぉ〜、西洋騎士みたい。武器もグレートソードだし、現代的な南部とは結構違うんだね」
「装備だけでなく業務にもちょっとした違いがあったりするのです。ツヴァイの場合だと、南部ではこっそりと身辺警護をしたり哨戒したりなどがメインでしたが西部では自分から目立って盾となったりしていたそうなのです」
「その土地に応じてスキルツリーが変わった感じかな、もしかしてコアページの性能とかも?」
「勿論、各支部に特徴があって大変個性的なのです!」
背中に横向きに背負っていた身の丈の倍はあるであろうグレートソードを器用に抜き放って肩に担ぐオルトはフフンと胸を張る。
その様子に微笑ましさを感じながらも、ジョシュアの胸中には新たな存在へのワクワク感が生まれていた。
「ふーん……楽しみだなぁ、戦うの」
「現在のジョシュア様なら各協会の6課の方々に挑めるのです!実を言うと協会のフィクサーの方々は課が上がる事に大変お強くなって行きますし、1課……各協会のトップの方々はそれはもう!今の私1人では太刀打ち出来ない実力の方々なのです!」
「ん、俄然楽しみになってきた」
無意識のうちに口から笑みが溢れる。
もう先程の地獄も頭の片隅に追いやって、これから待ち受ける強敵がどんなものなのかを想像し、それをどう攻略するかを考えを巡らせる。
「あぁそうだオルト、一つ聞いていい?」
「およ、どうかしましたかジョシュア様?」
「さっき今の僕なら協会の6課フィクサーに挑めるって言ってたけど、向こうの世界に行く前に今からちょっと一冊分位やってみたいんだよね。何かオススメとかある?」
「オススメ、オススメ……ふむむ、何かご希望等はあるのです?」
「出来れば強い人達。あとは…移動能力が高いほうが良いかな」
「むむむ……強さとなれば挙がるのは統括を務めるハナ協会や暗殺特化のシ協会、戦争特化のリウ協会ですが移動能力となれば……やはりヂェーヴィチ協会なのです!」
「…ヂェーヴィチ?」
暗殺特化というおおよそ公的機関には似つかわしくない言葉に首を傾げつつ、聞き馴染みのない単語を繰り返す。
確かロシア辺りの言語だったっけと思いつつ、続きに耳を傾けた。
「主に貴重品や情報の運搬を業務としている方々なのです!近場同士での配達は一般の企業や大量のフィクサーが担当してるのですが、彼らは危険な場所を走破して品物を届けていたそうなのです」
「成る程……話を聞く限り『都市』は危険区域多そうだし、そういう専門の人達が居ても可笑しくない」
「移動能力ならば基本的に彼らの横に出る者は居なかったと思うのです」
ウンウンと頷きしみじみと語るオルトだが、ジョシュアにはそれよりも気になる部分がある。
「基本的?例外があるの?」
「勿論いらっしゃるのです。フィクサーの中でもトップクラスの1級……その中でもより秀でた存在は『特色』と呼ばれ、色を含んだ異名を冠していたそうなのです!」
「へぇ……例えばどんな人?」
「ワタクシが調べた中で一番有名だったのは『赤い霧』というフィクサーなのです。奇形の大剣を担ぎ、圧倒的な力と速さで敵を引き裂いてその通り名と同じように赤い霧を生じさせる、凄まじい強さを誇っていた方なのだそうです!何でも最強フィクサー論争では必ずと言って良いほど名前が挙がったとか」
「ん、1回で良いから戦ってみたい。図書館の戦闘記録に残ってたりしてないのかな」
「フッフッフ……ジョシュア様、その点はご心配無く」
不敵に笑う黒兎はバッとメモ帳を掲げる。
「実はジョシュア様がこの『図書館』に就職なさる前、一度色を冠したフィクサーの本を幾つか見かけた事があるのです!まぁ今も資格を有していないので戦闘記録の体験どころか閲覧も不可能だったのですが……」
「ッ!!…どんな表紙だった?」
「確か『藍色の老人』と『黄緑の乙女』、そして『紫の涙』という通り名だったと思うのです!」
「ん~、楽しみになってきた!」
現段階から挑むまではまだまだ遠いであろう強者達、彼ら彼女らへの戦意を滾らせつつも、一先ずオルトの案内で目的のヂェーヴィチ協会の本の元へと向かうのだった。
シャンフロ劇場 ミニ!
「そういえば協会の名前ってもしかして数字になってる?」
「ふむむ?ワタクシにはよくわからないのです」
「じゃあ名前わかってる協会言ってみて」
「えーっと……設立された順にハナ、ツヴァイ、トレス、シ、センク、リウ、セブン、エイト、ヂェーヴィチ、ディエーチ、ウーフィ、ドデカ、チナツトなのです!」
「うん、やっぱり数字だ。色んな言語混ざってるし英語2つ続いてるけど」
「ほよよ、そうなのですか?ジョシュア様は物知りなのですね」
「色々浅く知ってるだけ」
「しかしそれならばこの名前にも納得なのです。何でも協会は『都市』で必要だと判断された順に設立されたそうなので、それを分かりやすくしているのですね!」
「……その理論だと4番目に『暗殺』が必要だと判断されたって事?」
「…………」
「…………」
「ん、物騒!」
「なのです!」
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
-
いる
-
いらない
-
セルマァ……