それでは、どうぞ。
「■■………!?」
唐突な膝が突き刺さり、頭部に大ダメージを受けたフィクサーは崩れ落ちるように地面に膝を付く。
「《ベストステップ》」
更には崩れ落ちるフィクサーを足場に、後方で体制を立て直していた他のフィクサー達に向かって跳び出してゆくジョシュア。
足場にするには不安定にも程があるが、そこは一度だけどんな状況の場所でも完璧な跳躍が出来るスキルである《ベストステップ》でカバー、《八艘跳び》の効果がまだ継続して上昇している跳躍力を遺憾無く発揮して残る2人へと肉薄していく。
「■■■■■■!」
だがしかし、敵もただ見ている訳では無い。縦に並ぶ2人のフィクサーも迎撃の為に鞄の取手を握り締め、向かってくるジョシュアを叩き落さんと武器を振りかぶった。
何かの機能を用いたのか、翡翠色の電気が迸り駆動音を響かせながら変形しハンマーのようになった鞄が跳んできていた敵に迫り、
「よっ、と」
「■…?」
空中を跳ねたジョシュアに軽々と回避された。
「《空翔乱気》ッ!」
「■■!?」
《ムーンジャンパー》が進化したスキルである《スカイウォーカー》、その効果は俗に言う「二段ジャンプ」。
ジョシュアは空を踏んで翻り、その勢いのまま攻撃を空振った敵の上を通り過ぎるとその後頭部目掛けて空中のみで発動出来る《空翔乱気》を叩き込んだ。
ヒット時に爆発の如き暴風を巻き起こして大きく体勢を崩させながらノックバックを引き起こすスキルをモロに食らったフィクサーは床に顔面から叩きつけられ気絶した。
「一人目」
そこを見逃す道理などあるわけなく、着地したジョシュアは直ぐ様倒れ伏したフィクサーの胴体目掛けて渾身の振り下ろしをぶちかまして本に還す。
それと同時に後ろから迫ってくる気配を感じ振り返れば、待機していたもう1人のフィクサーが床を蹴って跳んでいた。
「■■!」
「ッ!?っと、いい蹴り!」
俗に言うライダーキックの要領で放たれた蹴りを間にファイアーバットをねじ込んで防ぐジョシュアだったが、予想以上の威力に若干後退する。
驚きつつも直ぐに体勢を立て直して蹴りを入れてきたフィクサーを押し払い観察し始めたジョシュアは、その見た目以上で並外れた威力の一撃の理由を察して納得したような表情になる。
「そりゃそうか、君らは運び屋だもんね。脚力が高いのはある意味当然だね」
今の一瞬、翻ったコートから見えたのは足に装着した外骨格のような装置。見た目からして脚力を強化するような代物なのだろう。
バチバチとエネルギーを迸らせる鞄を構えてコチラを伺うフィクサーを前に、ジョシュアは改めてニコリと微笑んだ。
「ギア上げよっか、《光の種》」
ジョシュアの身体から光の粒子が現れると同時に筋力と敏捷の数値が上昇する。
「うらッ!」
「■■■!」
残り2回となった《八艘跳び》の効果も用いて一歩踏み出すと同時に前方へ跳び、急激に加速しながら先程のお返しと言わんばかりに肉薄すると共に蹴りを叩き込む。
だがその一撃は《デリバリーキャリア》に阻まれ、更には迸るエネルギーによるものか僅かにダメージを負うが、ここで終わる訳には行かないとジョシュアは着地と同時に片足を軸に体を回転、
「《崩々壊撃》ッ!!」
ガギンッ!!
「■■!?」
しっかりと腰の入った振り抜きはクリーンヒットし、盾のように構えていた鞄ごとフィクサーは大きく後方へとかっ飛ばされ地面に叩きつけられた。
鞄自体には傷一つついてはいないものの衝撃まで吸収してくれる訳では無いのか、床に転がるフィクサーは痛みに悶えるように蹲っている。
「幻想響唄」
そんな様子を眺めながらバットを一度ベルトに付けられていたホルダーに納めて右手に槍型のEGOである『彼方の欠片』を呼び出す。
器用に片手で回転させながら新体操のバトンのように上に放り投げた後、それを逆手持ちで受け止めたジョシュアはそのまま姿勢を変えたかと思えば、
「ん、《空穿ち》」
何の躊躇も無く投擲した。
螺旋のエフェクトを伴い一直線に飛ぶ槍はぎこちなく体を起こそうとしていたフィクサーの顔面をぶち抜くように突き刺さりそのまま床に縫い止める。
まぁ流石に生身の状態で頭部を貫通して生き長らえる事は不可能だった為そのフィクサーも光る頁と化して宙に消えた。
「さてと、《スケートフット》」
「■■!」
「もっと殺気隠しなよッと」
投げ終えた後の残心も欠かさずフィクサーが消える様子見届けたジョシュアはそのまま背後から迫っていた生き残りの攻撃をぬるりとしたステップで難なく回避、アイススケートのように円を描いて素早く背後に回ると共にがら空きになった脇腹目掛けて蹴りを食らわせる。
「■■■!?」
「ん、逃さない」
無防備な所へダメージを与えられ、先程顔面に食らった時の蓄積もあり振り向く事すら出来ず倒れ込みながら逃れようとするが、どうやら微笑んだのは幸運の女神ではなく死神だったようだ。
倒れ込もうとした所で首を鷲掴んだジョシュアは優しく微笑みながら力任せに上へ放り投げる。
「ありがとね、中々楽しめた」
そして、数m上で上昇を止めそのまま頭から落下してくるフィクサーを前に拳を握り締めて腕を引き絞り、
「《豪雨乱撃》」
文字通り豪雨のような拳の連撃を食らわせた。
「ん、ちょっと脆かったけど、これより上の人と戦えるのが楽しみになった」
「お疲れ様なのですジョシュア様!」
そう率直な感想を述べながらジョシュアは地面に落ちた本を拾い上げて少しだけ付いた埃を払う。
近付いてくるオルトと言葉を交わしながら改めて腰を据えて読み込んで見れば、色々と興味深い情報を得られた。
「へぇ、あの鞄………デリバリーキャリアって大剣にもなるんだ」
「他にも様々な形態があったはずなのです!ワタクシは普段使いしておりませんので詳細までは知らないのですが、3課の方と戦った際には複数のアームが飛び出して複雑な攻撃をしてきた覚えがあるのです」
「ん、それは気になるけど……どうやら6課の段階だとその機能に制限掛かってるみたい、残念」
そう言いつつも先程の接待で取得した本達を燃やしてページを抽出する。目的であるコアページはきっちり入手し装備する為のバトルページもそれなりの数確保できたジョシュアはホクホク顔で早速装備した。
「おぉ、少し体が軽いかも。結構色々付いてるのに」
「お似合いなのです!」
暗いクリーム色のジャンパーとジーンズから一転、翡翠色のコートと白黒のテックウェア制服を身に纏ったジョシュアは立ち上がって動きを確認してみる。
クルリと回ればコートの裾がポニーテールと共に靡いてふわりと舞い、足の外側に取り付けられブーツと繋がったパワードスーツが露出した。
しかしながら外見のような拘束感は無く、むしろ以前よりも格段に足を動かしやすくなった感覚がある。
そんな風に軽く足を上げたりジャンプしたりと調子を確かめていると、不意にコアページを変えた時点から既に肩に掛けていた次元鞄から駆動音がし始めた。
《『デリバリーキャリア』起動確認、ポルードニツァ、セキュリティモードを解除》
「ん、喋った」
「ほほう!成る程成る程、これがデリバリーキャリアに搭載されている人工知能、というやつなのですね!」
何処かにスピーカーが内蔵されていたのか、無機質な機械音声を発し始めた『デリバリーキャリア』にジョシュアは目を見開き、元々本で知っていたオルトは興味深そうに観察する。
「ジョシュア様、北部ヂェーヴィチ協会の皆様はデリバリーキャリアに搭載されたサポートAIの『ポルードニツァ』と共に仕事をこなしていたそうなのです。配達だけに限らず、戦闘の補助までしてくれたのだとか!」
「ふーん……」
《現在地取得……
何やら周囲の状況把握をしようとして尽く失敗している音声を垂れ流す人工知能に対し、ジョシュアは対話を試みる。
「ポルードニツァ、お話してもいい?」
《担当者反応……
しかしながら返ってくるのはどこまでも機械じみた言語化をされた状況把握の結果報告のみ。
どうやらAIと言っても、感情のような物は一切なくただひたすらに情報の演算と機械の管理のみを担当する代物のようだ。
「……もしかしてこっちからの言葉には反応しないのかな」
《あなたの生体反応の登録を行います。デリバリーキャリアから展開された機器に手を翳して下さい》
「ん、わかった」
ようやくジョシュアへ反応したかと思えば、デリバリーキャリアの側面からタッチパネルが現れ、さっさとしろと言わんばかりに光って自己主張する。
素直に指示に従いタッチパネルに掌をペタリとくっつければ、スキャンするような挙動の駆動音のみが辺りに響き渡っていた。
《生体反応登録中…………完了、只今よりあなたのサポートを行います。迅速なる配達を期待しております》
「んー……まぁそもそも配達物どころか管轄してたであろうヂェーヴィチ協会も無いんだけど……まぁいっか、宜しくね」
一方的な機械音声になんとも言えぬ表情になりつつも、ジョシュアは新たな装備に期待を込めてポンポンとボディを叩くのだった。
『デリバリーキャリア』のサポートAIであるポルードニツァくんは『都市』の規則に引っかからぬよう簡素な作りになってます。
何でまぁアンジェラのように感情を取得する可能性は改造でもしない限り一切無いです。
まぁ配達中に歌歌ってくれたりおいしいお店教えてくれたりしてくれる個体も居るらしいので割と個体差激しいんでしょうね。
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……