そろそろ1年前から更新してない作品の続きの構想が固まりそうなのです少し投稿頻度が落ちるかもしれません。
それでは、どうぞ
スーサイドスピラーレ
防御等を全て捨てて攻撃とスピードに全振りした極端なレアモンスター。
その身体に備わる機能の全てを「速く泳ぐこと」に適応させた結果、大河の急流の中でもなんら影響等無いように自由に泳ぎ回れるようになった怪魚である。
その突貫力は並大抵の金属では防ぐ事が出来ない程に鋭く、遮るもの全てを食い千切って獲物を仕留める。
更には本気モードに入ると文字通り身を削り体を細くして死にかけながら相手に回転しながら突貫、仕留めた相手を食して回復する性質を持っている。
まさしく『攻撃極振り』を体現しているようなモンスターであり、その自ら死にゆく性質も相まって平均寿命も短い。
だがしかし
もし、長い間息絶える事なく生き永らえ続け、多くの獲物を食して続けた個体が居たとしたら?
もし、身を削ると共に何度も体を再生し、他の同族とは比べ物にならない程の再生力を得たら?
その答えがこのモンスター……
スーサイドスピラーレ"
「オルト、レイピアメインでお願い」
「了解したのです!幻想落涙!」
装備するコアページを《南部センク協会4課》にしたオルトは手元に呼び出した夜空のようなレイピアを構え、先を行くジョシュアの後に続くように走り出した。
「Shark!!」
「《パリングプロテクト》!」
「《フラッシュレイン》ッ!」
バチバチとエネルギーを迸らせる次元鞄を振りかぶり、突っ込んでくるスーサイドスピラーレに合わせるように一歩踏み込んで引き絞った鈍器を振り抜いて弾き返す。
勢いを反射され宙を舞う途中下から光の雨が突き刺さり、身削り鮫は牙の並ぶ口の端を歪ませながら空中で暴れて刃を凌いだ。
岩の足場に尾を打ち付けて体を跳ね上げ水中に戻り、回転しながら加速して再び獲物に食らいつかんと牙を剥いて水面から飛び出す。
「ポルー、ハンマーモード」
『承認、《デリバリーキャリア》、ハンマーモード起動』
「《スカルシェイカー》ッ!」
「Shaaッ!?」
一歩前に出たジョシュアはデリバリーキャリアの取手を握り込むと、その先端をハンマーの頭のように変型させながら回転しながら迫る鮫の顎を打撃でぶち抜く。破裂エネルギーが伴った内側を揺らす一撃にスーサイドスピラーレは思わず呻くような声を漏らした。
「なんだよそのロマン溢れるかっちょいい武器は!?鞄から変型する所とかもう男子の夢詰め込まれてんだろ……!」
「気にする所そこなんですか!?」
少年の心が疼き目を輝かせる天首領をよそに、宙で一回転して足場にまた叩き付けられた鮫を続け様にデリバリーキャリアで餅つきのようにぶん殴り続けるジョシュア。
「ッ!Sharkッ!!」
「《た耐える》《戦闘準備》」
流石にやられっぱなしなわけもなく、鮫が抵抗の為にブレイクダンスのように身体を捩り鞭のように叩き付けられようとする尻尾を冷静にハンマー型になったデリバリーキャリアの柄の部分で受け止める。
バチッという電気が迸る音と共に互いに弾かれたジョシュアとスーサイドスピラーレは仕切り直しだと言わんばかりにそれぞれのフィールドに着地及び着水した。
「元気だなぁ……所であのモンスターの名前って分かる?」
「あぁ、確かスーサイドスピラーレっつう奴で、このエリア限定で出現するレアモンスターの筈なんだが……あんな硬い個体は初めてだな、あの威力なら多少は明確にダメージ表示が出るぞ」
「特殊個体かな?何にせよ強そうで良かった、思う存分楽しめそう」
「ワォ、もしかして滅茶苦茶ワクワクしてたりする?」
「してないって言ったら嘘になる、ダメだった?」
「いんや、なんともまぁ頼もしいと思っただけだ、っと!こっち来たか!」
先程の一撃で強敵の気配を明確に感じ取ってニコニコになるジョシュア。
それを見て呆れと面白さが混じった笑いを見せた天首領だったが、再び突撃してきた身削り鮫に対して剣を構え直し、
「そこか!【
「Sharkッ!?」
剣聖の固有魔法の一つ、超威力の斬撃を解き放った。
「おー、すごい威力」
「ふむふむ、天首領様もジョシュア様にも劣らぬヴォーパル魂を感じるのです!」
「これでも修正前剣聖の一人なんでな。だがあの野郎
直撃したように思われた一撃だったが、僅かばかりに身を捩らせて被害を最小限にさせていたようで身削り鮫は着水した後も張り切って泳ぎ続けていた。
「Shaaaaaark………!」
「チィッ、もう鰭再生したか」
「戦い慣れしてるねあの鮫」
「アンタが言ってた特殊個体ってのも強ち間違いじゃねぇのかもな。どっちかってーと歴戦個体か?」
そんな風にザッパザッパと水面から飛び出しながらスーサイドスピラーレを観察していると、ギッとコチラを睨みつけたかと思えば急激に回転し始める。
「Shaaaaark………!」
「ッ!さっきのアレやる気かッ!?おいメルメル!ありったけのバフ寄越してくれ!それと俺の後ろから出るなよ!」
「は、はい!」
「ジョシュア!オルト!範囲攻撃への対処は出来っか!?」
「ん、無問題」
「ご安心を!」
「あいよ!」
焦りを見せた天首領の指示に従い攻撃に備えたタイミング、それと同時に図ったかのように跳んだスーサイドスピラーレは空中にて自身の身体の回転を更に回転させ、
「Shaaaaark!!」
自身の身体を細かく切り離し、鋭い断片を花火の如く撒き散らした。
「《空翔乱気》」
「《獣鏖無尽》ッ!!」
「【
向かってくる肉片に対しジョシュアは跳びながら次元鞄を振るって暴風を巻き起こし、オルトはレイピアを振るって向かってくる尽くを切り刻み、天首領は背中に少女を庇いながら操っていた剣と手に持った剣の動きを同期させ片っ端から防ぎ叩き落した。
「ヒュー……あっぶねぇ。やるなお前ら!他のパーティーメンバーは不意打ちでコレやられちまって半壊しちまったんだがな」
「そっちこそ、すごいねその剣ファンネル」
「おうとも!ま、俺が操作できる本数はあんま多くないんだけどな、こんぐらいなら余裕で出来るぜ」
ジョシュアの賛辞に天首領はニカッと笑って返し浮かせた剣を流れるように操作して見せる。
そんなやり取りの最中、ジッとモンスターを観察していたオルトが声を上げた。
「ジョシュア様!あのモンスター、既に身体が回復してるのです!」
「ん?…ホントだ、あんな身体爆散させたのにもう殆ど元に……」
オルトの指摘した通り、言葉のまんま身を削って飛び道具として用いた身体は何事もなかったかのように綺麗に治っていた。
先程よりも心なしかスピードが速くなった気がする魚を目で追いかけていたジョシュアはふと目を細めて眉をひそめた。
「……なんか細くなってない?」
「……んー、そうか?」
天首領も空いている左手で陽の光を遮りながら目を細めるが、大量の水飛沫と標的が高速で動くせいで観察しようにも困難すぎた。
「わっかりづれぇ……」
「あ、あの、確かに最初エンカウントした姿より少しほっそりしてる感じが…します」
「お、マジか!」
「回復は出来るけどリソースが有限なのかな」
おずおずと提出された情報を元に相手の性質を考察していく。
そして叩き出された結論は非常にシンプル。
「ダメージは蓄積してるって訳だな、畳み掛けっか!」
「ん、了解」
『戦闘開始より一定時間経過、《デリバリーキャリア》出力、上昇します』
「……ん?」
気合を入れようととデリバリーキャリアを握り直した所で何故かポルードニツァの音声が流れる。
操作した覚えのないジョシュアが不思議そうにデリバリーキャリアを見つめているとふとオルトが何かを思い出したかのように振り返りつつ口を開く。
「そうでしたジョシュア様、一つお伝えし忘れていたのです」
「ん、何?」
「《デリバリーキャリア》、及び搭載された《ポルードニツァ》は戦闘が長引くごとに放出する破裂エネルギーの量を増大させ、最終的には配達を遮る敵を屠る為に大規模な爆発を起こすそうなのです」
「……それ、人が居た場合は?」
「使用者ごと問答無用で処されるのです。デリバリーキャリアだけが無傷で残る仕様なのそうなのです」
「よーし死ぬ前に終わらせよう。ポルードニツァ、剣モードは大丈夫?」
『検討中……承認、エネルギー解放第二段階である為一時的にナイフモードの使用を許可。《デリバリーキャリア》、ナイフモード起動』
何故か制限時間が追加された。
しかも失敗すれば自分どころか周囲全てを巻き込むという中々に無茶苦茶な事を言われたものの、やることは変わらない為冷静に準備を終わらせてゆく。
「何か色々物騒なこと言ってたが大丈夫か?」
「ん、早めにぶっ倒さないといけない理由が出来た。仕留めるの手伝って」
「OK、ヘイトは俺が引き受けっからアンタら一撃ぶち込む準備しときなッ!」
そう言って意気揚々と走り出した天首領は宙に浮かせていた2本の剣を周囲を泳ぐスーサイドスピラーレへと差し向けた。
「オラ!三枚おろしにしてやっからこっち来いや!」
「!!Shaaaarkッ!」
「そーだ、テメェの獲物は此処にいるぞ!」
ちょっかいを掛けられたスーサイドスピラーレは即座に方向を反転、挑発してきた相手を噛み殺そうと回転しながら水から飛び出した。
「《マサクル・バイト》、《
鮫の鋭い牙が閉じられた時にそこに開拓者は居らず、天首領は蛇のように曲がりくねった軌道で横を抜けながら手に持った蒼刃の直剣でスキルを発動し、その無防備な横腹に叩き付ける。
追撃と言わんばかりに周囲に漂っていた2本の剣が意思を持ったかのように標的を切り刻み、鮫は苦しそうに身を捩らせた。
「やっぱオレは至近距離で剣振ってる方が性に合ってるんだよなぁ!ホラお魚さんよ、悔しかったらジタバタ暴れるこったな!」
「Shaッ、Sharkッ!!」
「《アンガジェマン》ッ!」
「Sharkッ!?」
先程も見せた破壊力抜群の地団駄が始まろうとしたその時、間に入り込んだオルトの振るうレイピアとスーサイドスピラーレの振り下ろした尾がぶつかり合い、明らかに重量が優っているであろう尾の方が力負けして弾かれる。
その事実に一瞬だけ入った身削り鮫の思考の空白、それを捉えたオルトは着地と同時に足場を蹴り、その身体の下へと入り込んで武器を振るった。
「天首領様、上からお願いするのです!《パレストラフォント》ォッ!!」
「あいよ分かったぁッ!《無影月刃》ッ!」
「《ブラッドハーム》、《ニトロビート》、《ウェポンライト》」
一人と一羽が攻撃で身削り鮫の気を引いていたその時、ジョシュアは次々とバフを点火し始めていた。
「ポルードニツァ、エネルギーは脚力の強化に回して」
『承認、強化外装、出力強化します』
「メルメルさん…でいいのかな。バフお願い出来る?出来れば筋力と敏捷」
「わ、分かりました!"私はいま此処に……」
「幻想拘束、幻想着火、幻想潜灯、幻想響唄、幻想泣鳴」
指示を出された少女が詠唱に集中し始めた所で更にステータスを上乗せしていくジョシュア。
胴体に黒革の拘束具、口元に燻るマッチ、頭に制帽、首に瞳のようなブローチ、胸にハートのバッチ。
全身にチグハグなアクセサリーが付いた所で、仕上げと言わんばかりに自身でも未だ正体の掴めないスキルを発動した。
「《光の種》 筋力強化」
「【
「ん、ありがとう。じゃあ行ってくるッ!」
身体を捻り、大きなナイフとなったデリバリーキャリアを構えたジョシュアの姿は多種多様なバフによった脚力でもってその場から消えた。
そして迫る驚異の気配にスーサイドスピラーレが気付く頃には既にジョシュアは眼前まで迫っており、
「Shaッ!?」
「《崩壊ナイフ》!」
翡翠の一閃が身削り鮫の頭から尾鰭までを横一文字に切り裂いた。
『モンスター
『討伐対象:スーサイドスピラーレ"
『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』
『称号【廻リ砕キ食ミ進ム】を獲得しました』
『称号【歩みを止める事勿れ】を獲得しました』
『
【
効果:発動後、現存の体力を1まで削った後、使用者に10層の障壁を展開する。障壁は一定ダメージで破れるが、枚数が減少する度に使用者の筋力、敏捷、器用、技量に上昇補正をかける。継続時間は10分。
短命の定めにある同族の中でより前へと突き進み、遂には身を削る事すら己を強くする事象に至らしめた強者の誇りの証。
汝、歩みを止める事勿れ。
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
-
いる
-
いらない
-
セルマァ……