司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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他小説の執筆や仕事でかなり遅れました。
暫くは遅れそうです。




それでは、どうぞ


暴れる魚に首は無し

「ーーーー!」

 

「威嚇してるね。コポコポ言ってるようにしか聞こえないけど」

「手のような鰭を大きく広げているのです。コポコポ言ってるようにしか聞こえないですけど」

 

大河の端、一際大きな足場の上で相対する魚ではあるが生物と呼んで良いのか分からない存在は己の存在を誇示するように体を広げながら声を出し、威嚇する。

しかしながら発声器官は頭部ごと無くなっている為、ただひたすらに何かの液体をコポコポ言わせながら撒き散らすだけになってしまっていた。

 

「ポルードニツァ、デリバリーキャリアは起動しなくていいからエネルギーを骨格の出力に回して」

『了解、脚部外骨格出力上昇します』

 

そんなどこか締まらない状況の中、巡るエネルギーが増加したことで駆動音を鳴らす脚部の機械のサポートを受け、ジョシュアは前へ駆け出した。

 

「ーーーーー!」ブォン!

「当たらないよ、っと」

 

接敵と同時に横薙ぎに鰭を振るう『断首魚』、その単調だが強力な一撃を無言で発動した《八艘跳び》のバフを受けた跳躍で回避したジョシュアはそのまま方向転換し背を向けた『断首魚』に向き直る。

 

「幻想拘束、幻想潜灯、幻想響唄、幻想泣鳴、幻想積札」

「幻想哀悼!幻想落涙!幻想贈笑!」

 

EGOギフトが全身に展開されていくのを感じながら手に握り込むのは道中にも使っていた片手剣型のEGOである『4本目のマッチの火』。効果はピーキーで刃も鋭いと言えるものではないものの、その刃にて燻る火は刺した肉を焼き焦がすには十分過ぎる物だろう。

 

「《満月刃》」

「今ここに《厳格なる哀悼》を!」

「ーーーーー!!」

 

肩からオルトが跳躍したのを確認し、それと同時に回転斬りの要領でEGOを振るい、無防備な背中に一太刀浴びせる。

更にはオルトが目にも留まらぬ早撃ちで追撃し、そのダメージに『断首魚』はたまらず仰け反った。

 

「わぁ可愛い帽子、それもEGO?」

「レティシア、という可愛らしい人形の魔女様からプレゼントされた一品なのです!」

 

声にならない悲鳴のようなものを出している『断首魚』を他所に、身に付けたEGOギフトを見せて自慢げに胸を張るオルト。

なんともファンシーで可愛らしいデザインの帽子は小さいウサギであるオルトに似合って居るが、気になる点が一つ。

 

「何ていうか、大人っぽいパイプとは合わないね、雰囲気が主に」

「確かに可憐な少女の帽子とハードボイルドな猟師とではイメージに差がありすぎるのは確かなのです。しかし武器形態ならば!」

 

オルトは手元の二丁拳銃を棺型のギフトに変換して背負うと、お気に入りでよく咥えている青を基調としたパイプと揃うことで違和感を発していた帽子を手に取って意識を向ける。

次の瞬間、帽子は一度頁に分解された後即座に再構成され銃の形をとった。

 

「このようにスマートなライフルとなるのです!」

「オルトって銃好きだよね」

「生物とは超高速で飛ぶ物質が重要器官を貫けば死ぬものなのです!一番手っ取り早いのは銃なのです!」

「ん、道理だね、分かりやすくて大変よろしい」

 

大変物騒な理論を満面の笑みで宣うオルトと割と本気で同意するジョシュア。オルトの師匠がEGOを通じてウンウンと頷いている気配もする。

そんなツッコミなど存在しない空間は、数秒も経たないうちに幻想体の尻尾の薙ぎ払いによって霧散した。

 

「ーーーー!!」

「ん、ダイナミック。だけど大振りだね」

「先程見せたあの赤い激流を使う様子は無いのです。もしや溜めが必要なのやも」

「まぁ明らかに貯水タンクっぽい所が萎んでるから仕方ないか」

 

ちゃんと正面から首無し魚を見れば腹部は赤い水風船のような物になっていることが分かる。更にはその内側は若干渦巻いており、その部分の内部は液体である事も察せられた。

河豚のような物かと考察しながら、いつの間にか水の中のような切り替わっていた空間を滑るように移動してくる断首魚の連撃を、ジョシュアは次々といなしていく。

 

「《セツナノミキリ》」

「ーーー!?」

 

先程の戦闘で《パリングプロテクト》から進化したスキル、相手の攻撃が放たれるよりも先に自分の攻撃を当てる事で強制的に瞬間的な硬直を生じさせる《セツナノミキリ》。

腕のように肥大化した鰭の叩き付けが振り下ろされようとした所で迎え撃つ様に剣の斬り上げを当てた事でビクリと固まった『断首魚』に対し、ジョシュアは地面を踏み締めて剣を振り下ろした。

 

「《無尽連斬》ッ!」

「〜〜~ッ!!」

 

炎を伴った連撃は『断首魚』の腹部に存在する赤い水の袋を直撃し、丁度急所だったのか頭部が無くなった首から叫び声のような物が出てくる。

しかしながら相手はエリアボスを瞬殺出来る化け物、痛みに悶えコポコポと水音を零しながらも反撃の為に左右両方の鰭を蚊を潰すかよう敵を肉片へと変貌させんと振るった。

ページスキルの《クイックステップ》で叩き潰される寸前の所で身を翻し回避に成功したジョシュアは、目の前で起きた拍手の重い音に舌を巻きながらも伸ばされた鰭に追撃を加えてゆく。

 

「やっぱりタフだね幻想体は!殴り甲斐があって大変よろしい!」

「ーーーー!!」

「《先導指揮》、《た耐える》!」

 

体を捻って繰り出される尻尾の薙ぎ払いを防御力へのバフと相手に『麻痺』の状態異常を与えるパリィスキルで凌ぐ。

体格差の関係上弾かれたのはジョシュアだったがダメージは殆ど無かったようだ。

 

「オルト!」

「《サプライズプレゼント》ッ!!」

「ーーッ!?」

 

『断首魚』はジョシュアに完全にヘイトを向け、追撃を加えようとその見た目とは裏腹に中々に機敏な動きで迫るものの、それに対しオルトがライフルを発砲。

意識外からの銃撃に反応できず、外皮では無く肉が露わになった首の断面に叩き込まれた銃弾は着弾と共に張り付き、数秒後にパーティーで鳴らすクラッカーのように音を立てて紙テープを撒き散らしながら弾けて衝撃をダイレクトに伝えていた。

 

「ジョシュア様!今なのです!」

「強制スタン?有り難いね!」

 

先程の連撃でも止まる様子のなかった『断首魚』の身体が銃弾の破裂と同時にピタリと止まる。

明確な隙を晒した敵へ、ジョシュアは燻る火種を伴った剣を握り込んで一閃を放った。

 

「《一振両断》ッ!!」

 

 

 

 

 

オルトが有するEGOの一つである『レティシア』、元となった幻想体と同じ名を冠するそれが秘める力は「プレゼント」であった。

主装備である『崇高な誓い』や『鋭利な涙の剣』、そしてソロ状態でのみ解禁することにしているもう一つのEGO、そのいずれもが大変攻撃的な能力をしているのに対し『レティシア』の能力は味方の回復やバフ、敵へのデバフや強制スタンといった完全援護特化。

無論銃としての性能も高いのが、そのメインとなる能力は1人で活かしきるには些か難しかったEGO。

 

「《ギミックボックス》!」

 

しかし今はジョシュアという信頼できる前衛が居る。

強い相手であろうと臆するどころか笑みを浮かべて積極的に挑みかかる、ヴォーパル魂の体現者のような気の合う相方にオルトの心はウキウキと沸き立っていた。

 

「ジョシュア様、受けるのです!《フレンドハート》!」

「っと、バフも出来るんだその銃弾、凄いね」

「防御と回復、幻想体の妨害は全てワタクシにお任せを!ジョシュア様は攻撃に専念して欲しいのです!」

「ん、了解。任せるよ」

 

 

 

 

「さぁて、どう攻めようか……」

『………振るえ』

「ん?」

 

何故かやる気MAXのオルトに首を傾げつつも目の前でこちらの様子を伺う『断首魚』を前に、どういうふうに戦おうかと楽しげに思考を巡らせるジョシュアの脳内に突如として声が響く。

 

 

「良いの?」

『構わない、今のお前なら、呑み込まない』

「………そっか、じゃあ遠慮なく」

 

伝わった意思を尊重し、手の中の剣をマッチ型のギフトへと変換する。

そしてそれを口に咥えると今度は体を縛っていたベルトを解いて握り締めた。

 

「借りるよ、幻想拘束」

 

改めて唱えた詠唱に呼応するかのようにベルトは独りでに動き出しジョシュアの全身へと纏わりつく。

身に纏っていた白と翡翠を上書きするようにくすんだベージュのコートが現れ、その上から拘束具が体を縛り付ける。

 

「『E.G.O 後悔』」

 

手の中に現れたのはハンマーではなく打撃部が鎖で繋がれたフレイル。

ぶらんと揺れる歪な形の金属塊からはそれまでよりもより物々しい気配を発しており、見るだけでも込められている憤怒が感じ取れるような気がした。

 

「スー、フー………ぶっ潰す」

 

ジョシュアの全身が描き換わった後、開かれた瞳は剣呑で吐かれた息は重かった。




EGO同調のメリット
・ステータスが爆上がりする
・同調時にのみ使用できる強力なスキルがある
・同調が解除される代わりに一度だけ確定で食いしばりが発生する

デメリット
・そもそもEGOページをくれる幻想体と友好関係を築かないと使わせて貰えない
・適正レベルより低いと問答無用で侵蝕が起こる




・適正レベルでも使用時、精神構造へ影響を及ぼし幻想体の性格に近付く

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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