司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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仕事が増えて中々執筆時間が取れなくなって遅くなりました。
他の小説も全く進んで居ないので速く仕事が落ち着いて欲しいです。


それでは、どうぞ


水流割るは絶えぬ憤怒

「シィッ!!」

 

刃物による物と思われる傷や風化によって発生したであろう解れなどでズタボロになっているコートの裾を翻し勢い良く地面を蹴るジョシュア。

EGOから流れてくる力を受け入れ、自身の能力に上乗せしながら鎖についた金属塊をぶん回して目の前の敵に叩きつけた。

 

バゴンッ!!

 

「ーーーッ!?」

 

肉薄し振るわれた横殴りの一撃は『断首魚』の身体を大きく後方へと吹き飛ばした。

地面を転がりつつも体勢を立て直した『断首魚』も突如として起こった変化に警戒心を煽られたのか、飛ばされた先で様子を伺うような動作を見せる。

 

「ハァ……潰す、殴り潰す」

 

しかしジョシュアはそんな状態の変化など気にも留めず、一歩、また一歩とゆったりとした足取りで真っ直ぐ敵へと歩み寄る。

いや、正しくは「変化に気が付いていない」のだろうか、目の色が明らかに殺意に染まっておりとても正気とは思えない様子である。

それでもしっかりと自我は残っているのか、口元には好戦的な笑みが浮かべられていた。

 

「ーーーーッ!!」バッ!!

 

増大した戦意に充てられた『断首魚』が敵を潰さんと腹部の水袋を膨らませ思い切り宙へ跳ぶ。

着弾すると予測出来る地点にはジョシュアが立っており、ダメ押しと言わんばかりに縦回転を加えて強力なスタンプを叩き込もうとしていた。

一方でそれを見上げていたジョシュアが無言でフレイルの柄を万力の如く握り締めればそれに呼応するように鎖部分がピン、と真っ直ぐに伸びる。

 

「………いち、にの」

 

そして元のハンマーのようになったそれを両手で構えると、大地を踏みしめ深く腰を落とし身体を捻って振りかぶる。

空間が歪んでいると錯覚してしまいそうなほどに身体の芯から力を込める姿は、さながらいつ爆発するか分からない爆弾のようにも感じられた。

 

「〜ッ!!」

「さんッ!!!」

 

『断首魚』の水袋とジョシュアのハンマー、2つがそれぞれ最大限の威力を出せる形で解き放たれ、 

 

 

チュドンッ!!!!

 

 

爆音と共に大気を揺るがした。

 

ザッパーンッ!

 

「わわわわっ!?」

 

水流が足場にぶつかり上がっていた水飛沫を吹き飛ばし、少し離れた所にいたオルトも思わず腕で顔を庇う程の風を巻き起こした質量同士のぶつかり合い。

 

「ッ、っとと!」

「ッ!」

 

その勝負は互角という形で痛み分けとなり、互いに別方向へ弾かれて終わる。

 

「クッ、ハハッ!」

 

地面に身体を打ち付けられる寸前で受け身を取り姿勢を直して手に持ったフレイルの柄を地面に突き刺してブレーキをかける。

一瞬だけ止まり一呼吸置いた後、内側から噴き上がる怒りの感情を塗りつぶすように湧き出る喜びによって構成された光悦とした笑みを浮かべてフレイルをぶん回しながら駆け出した。

 

「ーーーーーッ!!」

 

そんなイカれた様子のジョシュアを見てか、『断首魚』も構えを変えた。

胸部の袋の内部が渦巻き始め、頭部の断面の体液がゴポゴポと沸くような様子を見せる。

 

「ッ!それがキミの切り札なんだ!いいね、使ってくれるぐらい脅威として見てくれて嬉しいなァッ!」

 

真っ向からジョシュアの頭に過ぎるのはワニの姿をしたエリアボスを一瞬で絶命させたあの一撃。

横に落ちる滝のような血の如き赤い水の奔流は、巨大のモンスターでさえ呑み込む程のそれは、体力等を一切最初から強化していないジョシュアがまともに受けてしまえば肉片すら残らず消し飛ばされてしまうだろう。

 

「アッハハハハハハハ!!」

 

まぁそれで怯むような精神性を持ち合わせて居るならば、こうも笑っていられる筈もない。

選んだのは真っ向勝負、EGOとの同調で若干下がった敏捷をバフスキルで無理矢理戻し、形は無くともEGOの内側で未だ作用し続けるコアページの外骨格による強化を存分に利用して距離を詰めてゆく。

 

「ッ!!」バッ!!

 

だが懐に入り込む前に『断首魚』のチャージが完了し、首の断面をコチラに向けた。

標準は迫る敵に固定、両鰭と尻尾でしっかりと地面を捉えて姿勢を低く、胸部の水袋では今か今かと放たれるのを待つ水が渦巻いている。

 

今まさに解放されんとする死の気配、

 

「アハッ!」

 

それでもジョシュアは足を止めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワタクシを忘れないで頂きたいのです!!」

 

 

今のジョシュアには何とも頼りになる相棒が居るのだから。

 

 

「《集中発射(コンセントレイト・ファイア)》ッ!!」

「ッ!?!?」

 

オルトの持つボルトアクションライフルから放たれた3重の弾丸は断面から発射されそうになった液体を穿つように首部に命中、発射モーションに移行していた所を強制的にキャンセルし大きな隙を晒させた。

 

「今なのですジョシュア様ッ!」

「パーフェクトだよオルト」

 

そんな絶好のチャンスを逃す筈もなく、ジョシュアは仰け反る『断首魚』の目の前まで迫ると地面を砕く勢いで踏み込んだ。

 

 

「《金属音》ッ!」

 

ヂュリンッ!!

 

「ーーッ!?」

 

 

下からすくい上げるように回転の勢いを乗せたフレイルを胴体にぶち当てれば、辺りに金属同士を思い切りような途轍もない騒音を撒き散らしながら標的へ途轍もない衝撃を喰らわせる。

 

膨らんでいた水袋は潰され破けて中身を撒き散らし、『断首魚』本体もとんでもない質量による殴打でカチ上げられた結果スタン状態を引き起こし、もがくことも出来ず地面に転がった。

 

「ハァァァァァ………」

 

だがそれを成した本人は、異常な様子で頭を押さえながら幽鬼のようにユラリユラリとしながら地面を踏みしめる。

 

「頭が軋む、脳が、滑らかに……けど」

 

同調した時から僅かに感じていた違和感、頭の中に発生し続けていた異様な痛みが顕著になっていく。

前に『盲目』や『低いなきごえ』と同調した際に精神へ直接干渉するような症状が出ていた為、これもそれと似たようなものだと見当をつけたジョシュアの歩みはゆっくりだが止まることはなく、

 

「こんなんじゃ、僕は、止まらない」

 

その顔には、ギラギラと輝く眼光が灯り続けていた。

 

ハァ、と一つ息を吐き、辿り着いた所で眼前で倒れ伏す敵を見下ろす。

普通のモンスターならば跡形もなく消し飛んでいても可笑しくない程の一撃だったが、部位破壊が発生しただけで胴体等は原型を留めている辺り幻想体という存在の頑丈さが伺い知れた。

だが、流石に弱点部位への銃撃の後に胴体にクリーンヒットを決められては早々起き上がる事も出来ないのだろう、ジョシュアが側に立ったとしても未だに起き上がることは叶わない。

 

「ありがとう、楽しかったよ」

 

その言葉と共にニコッと微笑んだ顔は可憐さに溢れている。

しかし内側では今も尚金属の軋むような痛みに対するストレスと同調した幻想体から湧き出続ける怒りが溜められ続けており、その影響なのかフレイルの塊部がギリ、ギリと頭に響く音を立てながら変形しながら膨張している。

 

そうして溜められた物で鉄塊が肥大化したフレイルの鎖が不自然なまでにピンと張り詰め、元のハンマーをそのまま巨大化させたような形へと変貌しきった所でジョシュアはおもむろに武器を振り上げ、

 

「《縛られた怒り》ッ!!」

 

全てを空間ごと砕き潰す一撃として振り下ろした。

 

 

 

 

 

そして世界は暗転する。




※レベルが十分なら同調時に侵蝕はされませんが、それとはまた別で幻想体ごとに異なる症状が出ます。

例)『低いなきごえ』→常に感情抑制
  『後悔』→頭痛と湧き出る怒り
  『盲目』→水の中に沈んでいくような孤独感

これらを戦闘時のテンションで塗り潰してるジョシュアが可笑しいだけで普通のプレイヤーならもう少し人格に変化が現れます。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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