司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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急に寒くなりましたね。
仕事もそこそこ忙しくなって筆が進みません。
まぁ書きたいシーンが沢山ありますしキャラ達を早く出したいので頑張って行きます。





それでは、どうぞ


街中にて潜むもの

「ん、店員さん」

 

『蛇の林檎』。

シャンフロ世界に存在する15の街全てに出店しているNPCカフェ、そのニーネスヒル支店にてジョシュアはテーブル席に着いてカウンターの向こうにいるマスターに声を掛けた。

 

「………ご注文は?」

「ん、ケーキセット3つと…オルトは?」

「ではワタクシは人参をいただきたいのです!」

「ある?……あるんだ、じゃあそれも。僕はコーヒーにするけど2人は?」

 

そう言いながらがメニュー表から顔を上げて前を見る。

ジョシュアが座る円状のテーブル席に用意された椅子は本人のものも含め3()()

 

「……あぁ、では私もコーヒーを貰おうかな」

「……えっと、では紅茶を…」

「ん、あ、精霊さんは?」

『私は良いわ、食べれないもの』

 

そこに座っているのは大変容姿の整った銀髪の修道女と爽やかな金髪碧眼の騎士……そしてその騎士の背後には神聖な雰囲気を漂わせる霊的存在が浮かんでいたであった。

 

 

 

 

事の経緯は一時間ほど前まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

エリアボスを押し退け現れた『断首魚』を倒しその核を回収したジョシュアは早速目的地であるニーネスヒルの入り口である巨大な門を潜り抜けて立派な城が中央に聳え立つ都市へと足を踏み入れていた。

 

「ん、流石首都、人が多いし建物も大きい」

(なのです!)

 

入ってすぐの大通り、大都市だったサードレマよりも更に活気に満ちた景色を前にジョシュアとそのコートの襟のファーに擬態したオルトは驚嘆の声を漏らす。

行き交うのは開拓者だけではなくこの世界の住人達もそこに生きているかのように存在しており、今更ながらゲームの中である事を忘れてしまいそうになる程に自然な景色にジョシュアは改めて感心していた。

 

(それではジョシュア様、最初はいかがなさるのです?道具の補充や武器の為に店に向かわれるのです?)

「ん?いや、先ずは目立たない場所探し」

(およ、それはまた何故?)

「『図書館』との行き来を人に見られると面倒だから早めに目星付けときたくて。それに……」

 

そこで言葉を止めてチラリと周囲を見回す。

軽く視界で捉えただけでも数十はあるであろう好奇の目線は真っ直ぐジョシュアに……正しくはジョシュアが身に纏う北部ヂェーヴィチ協会の制服に注がれていた。

ファンタジーチックなシャンフロの世界において現代風かつ機械的な装備はやはりというべきか異質なようで、NPC達からは不思議そうな、プレイヤー達からは様々な感情が混じった視線を向けられている。

 

 

「なぁあれって……」

「あぁ、多分掲示板の……」

「ウォッ、顔が良い……!」

「何だあの装備……?」

「ちくわ大明神」

 

 

「この格好結構浮いてるし、話し掛けられて足止めされる前に人が居ない行ってゆっくり散策したい」

(成る程確かに……しかしニーネスヒルの人口は他の街と比べ物にならないほどに多い筈なのです。そう簡単に人が)

「確か「蛇の林檎」は全部の街にあるって先輩が言ってたからそこ目指そう。マップも貰ってるから道は問題無いし、その後で本屋とかの店に寄る感じで良い?」

(承知したのです!)

 

向けられてくる目線をフル無視してジョシュアは軽やかに走り出す。

視界の端でコチラに近づいてくる者の気配もしたが、それよりも先に人混みに紛れながら路地裏の方へと潜り追跡を逃れた。

 

「『八艘跳び』」

 

そうして周囲の目が無くなった所で跳躍スキルを起動。

外骨格による強化もあってか壁を縦横無尽に跳ね回って駆けるように登り軽々と屋根の上へと到達、高いところからの眺めを楽しみながら移動を始める。

 

「ん、まぁゆっくり行こうか」

(なのです!)

 

 

 

 

 

 

 

 

『あつい……あつい………』

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、確かこの辺りに……ん、あった」

 

賑やかな街並みを見下ろしながら屋根の上を駆け回る事数分、店が立ち並ぶ大通りを離れ住人達が行き交う住宅街も過ぎ、やがて人気のない裏通りとも呼べる区域へと足を踏み入れたジョシュア。

遠くに聞こえる人々の営みの音を静かに反響させているのがより周辺の静けさを際立たせている道に降り立てば、目的地である「蛇の林檎」はすぐ目の前まで迫っていた。

 

「ホントに寂れた場所にあるのですね」

「隠れ家的な場所って言ってたし、目立たずに集合する場所としては丁度いい」

 

擬態を解いてジョシュアの頭にしがみつくような姿勢を取るオルトとそんな風に会話を交わす。

 

「……むむ?」

 

取り敢えず空腹ゲージも警告が鳴りそうな程度の所まで減って居るため腹拵えをしようとジョシュアが「蛇の林檎」へ入ろうとしたその時、突如としてオルトがピンと耳を立てた後ある方向を見てスンスンと鼻を鳴らし始めた。

 

「オルト、どうかした?」

「何やら焦げ臭い匂いが……それに金属同士がぶつかり合っているような音も……」

「本当?」

 

相方の言葉に従い自身でも聞き耳を立てて見るジョシュア。

しかしながら動物の嗅覚や聴覚でギリギリ引っかかった物は己の感覚で察知することは叶わなかった。

 

「…わからない、やっぱり聴覚と嗅覚の鋭さはウサギには勝てないな」

「ではワタクシが案内するのです!」

「ん、なら腹拵えは後回し。こんな所で焦げ臭い匂いとか只事じゃないだろうし」

 

一先ず緊急事態だということに代わりはない為リキャストが終わっていたスキルを再び点火して移動を始める。

首元に掴まっているオルトはしきりに鼻をスンスンと動かし耳をピルピルはためかせて詳細を知ろうと努めていた。

 

 

キンッ、ガギンッ

 

 

「………むむっ!衝突音、9時の方向からなのです!」

「了解」

 

オルトの言葉と共に直ぐ様方向転換、建物同士の隙間を軽く飛び越せば目標はすぐそこに迫っていた。

 

「仕事だよポルードニツァ」

『了解、《デリバリーキャリア》戦闘モード起動』

 

肩に掛けていた次元鞄から機械音声が鳴り響き、駆動し始めたのかバチリと翡翠色のエネルギーを弾けさせる。

脚部の外骨格にもエネルギーが回り更に加速するジョシュアだったが、そのタイミングで正面から襲い来る物があった。

 

「ッ!?」

(あちゅ)いのですッ!?」

 

肌で感じとった異常に反射的に腕で顔を庇った次の瞬間、1人と1羽に対し熱波が襲い掛かる。

おおよそ町中で体験していいような物ではなく、ジョシュアは顔を顰めながら熱風に逆らいその震源地へと歩を進めること十秒ほど、

 

『あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ』

「シィッ!」

 

「!!」

 

すぐ下の裏通りから金属同士がぶつかる音と誰かの気合の入った声、そして苦しみ藻掻くような声にならない絶叫が響いて来た。

バッと屋根の端に立って下を覗き込めば、その声の主達は直ぐに見つかった。

 

「厄介な物だな。並のモンスターを軽く凌ぐ硬さとパワー、そして絶え間なく発される身を焼く熱……彼女が他の騎士に任せられないと言ったのも納得が行く」

 

そこに立つのは一人の青年。

精巧な鎧を身に付け、軽く纏められた金の長髪をたなびかせるその姿はまさしく物語に出てくる「騎士」そのものである。

 

『あつい……あつい……』

 

一方、その騎士と相対するのは全身から熱を絶え間なく発し続ける牛型のナニカ。

動きこそ暴れ回る牛なのだが、いかんせんその見た目は明らかに金属の光沢を有しており、更には人間のような声が発せられているのもより不気味さを際立たせる要因となっていた。

 

何度かぶつかり合った結果なのか戦場となった裏通りの状態はそれは酷いもので、地面の石畳は砕かれ中には溶けているような物まで見受けられる。

互いに睨み合う騎士と怪物だったが、不意にその場へと足を踏み入れる人物が一人。

 

「騎士様、周辺の人払いと侵入防止、共に完了致しました」

 

現れたのは修道女らしき少女。言葉から察するに、サポートに特化した魔法使いのような存在のようだ。

 

「あぁ、協力感謝する…ッ!」

 

『ああああッ!!』

 

騎士とシスターが軽く言葉を交わした所を隙だと判断したのか牛モドキは絶叫しながら駆け出してゆく。

向かう先にいる騎士は直ぐ様迎撃体勢を取り、深く腰を落として盾で受け止めんと構えた。

 

そして牛の突進と水晶のような盾がぶつかるであろうその瞬間、

 

 

「ん、まーぜーてー」 

 

 

そこにジョシュアは次元鞄を振りかぶりながらエントリーした。

 

「《スカルシェイカー》ッ!!」

『うあ!?』

 

屋根上からの奇襲は、対象の意識が眼前の敵へと集中していた為かその一撃は回避される事もなく頭部へとジャストで叩き込まれた。

突進の勢いも行き場を失って霧散し止まってしまった牛に対し、ジョシュアは追撃と言わんばかりに着地と同時に顔面目掛けで力任せのフルスイングを繰り出して下がらせる。

少しだけ怯んだのを確認した後、ジョシュアは改めて目を丸くしている2人へと顔を向ける。

 

「ん、どーも初めまして」

「は、初めまして……?」

「君は一体……?」

「自己紹介は後でいい?取り敢えずあの牛さん叩きのめさないと街がヤバそうだし」

「……そうだな、すまない。共闘を申し込みたいということでよろしいか?」

「うん、その認識で大丈夫。ごめんね驚かせて」

「気にしないでくれ、助太刀感謝する」

 

いつもの調子で挨拶するジョシュアに少々呆気にとられていたものの、騎士とシスターは直ぐに正気へと戻り乱入者の後ろで再び動き出そうとする怪物に意識を向けた。

 

「さてと……ホントはちゃんと戦いを楽しみたい所だけど」

『うあ……ぁ……』

 

苦しみ悶える声を発しながらもその牛の身体はどっしりと攻撃の構えを見せる。

突然の参入者であるジョシュアもまた脅威になり得る者だと判断したのか、熱波を放ちながら身をすくませるような敵意を差し向けた。

 

 

幻想体(アブノーマリティ)

『真鍮の雄牛に遭遇しました』

 

 

だがしかし、そんな怪物をまえにしてもジョシュアの表情に固さは無く、口元に浮かぶのはワクワクを隠しきれない好戦的な笑みである。

 

「さっさと終わらせるから覚悟してね」

 




幻想体は割と色んな所にいます。
牛くんは町中にいるイメージがありすぎてこうなりました。


あと今更ながら質問箱、リクエスト箱を用意致しました。些細な質問や世界観に至るまで明かせる範囲で後書き等で返信させていただきますので気軽に書き込んで頂けたら幸いです。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=333516&uid=364452

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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