司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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ジョシュアくんは年下相手にはお兄ちゃんムーブしますが同年代や年上が相手だと若干子供っぽくなります。
可愛いですね。




それでは、どうぞ


約束を残して

「お客様、いかがなされましたか?」

 

ビナーが去った後、世界か正常に戻った……正しくは自分達の時間軸が元のスピードに戻った所でカウンター奥にいた蛇の林檎のマスターが若干戸惑ったように話しかけて来た。

まぁ先程までテーブルを囲んで話し合っていた客が何の音もなく突如として別の位置に移動してかつ抜き身の包丁を持っていたり何人かは床に膝を付いていたと考えれば傍から見て異常事態だと言うのが分かるだろう。

 

「しかし…凄まじいな」

 

代金と驚かせた迷惑料として倍位の金額を支払って店を出て人気のない路地裏に出ると共に騎士がポツリと呟く。

その視線の先には傷一つ無い己の手があった。

 

「先程の襲撃者に斬り飛ばされた手ががここまで完璧に元に戻るとは」

「大気中も彼の体内のマナにも揺らぎがありませんでした。一体どのような仕組みで……」

『ねぇ黒毛玉、さっきの何?』

「く、黒毛玉……っとと、コチラなのですね!」

 

そう言って取り出したのは1本のアンプルとそれを装填できる注射器。アンプルの容器の中は少しばかり発光してる緑色の液体で満たされている。

 

「コチラは嘗てあったとされる「都市」にて販売されていた、「再生アンプル」なのです!中の液体を対象に打ち込む事で、瞬く間に万全の状態へと身体を修復する代物なのです」

『………』

 

フフンと自慢げに件のアンプルを見せるオルトとは対照的に、ジゼルは苦々しげに出されたアンプルを見つめていた。

 

『馬鹿みたいな情報の塊ねこれ、生物に使っていいもんじゃないでしょ』

「確かに過剰に投与すると()()()()()ので取り扱いには注意が必要なのですが……薬は投与量を間違えれば毒にもなり得るのです。その逆もまた然り、なのです!」

 

嘗て「都市」にて分けられた区画内を実質的に統治していた「翼」、その一つが有する技術の代表とも言えるそれは確かに簡単に人を溶かす危険物だが、その効果は言うまでもなく有用だろう。

何せ、例え四肢が欠損しようと内臓を抉られようと生存した状態かつ投与量の管理さえしていれば万全の状態にまで戻せるのだ。

それに並び立てる代物は少なくとも今の世界では7桁程の値がする。

 

「しかし、そのような強力な薬剤ならば相当値の張る代物なのだろう?」

「ふむむ、必要リソースをマーニに換算すると……大体1本30万マーニ位だった筈なのです」

「成る程」

 

騎士は一つ頷くと何処からともなく中身が詰まった麻袋を取り出し、流れるようにオルトへと受け渡す。

あまりにもスムーズに受け渡されたことで思わず受け取ってしまったオルトが目をパチクリさせながら袋の中身を見た瞬間、ビシリと固まりワタワタと袋を突き返そうとし始めた。

 

「う、受け取れないのです!?」

「そう言わないでくれ、君の助けが無ければ治療の目処が立つまで暫くの間利き手を失った状態で過ごさなければならなかったんだ」

「と、とは言っても……」

 

グイグイと差し出そうとするオルトと微笑のまま押し返す騎士の間にある袋をジョシュアとシスターが中身を覗いてみれば、そこには大量の金貨が所狭しと詰め込まれていた。

 

「わぁ」

「まぁ」

「流石に100万マーニは多すぎるのです!?」

「一種の誠意の形だ」

 

思考回路が物騒とはいえ性根が善性のオルトは他者の大金を受け取るのに躊躇してしまうのだろう。

その拮抗した状況が続く中、ジョシュアはふと少し前の出来事が頭によぎった。

 

「……そういえば、蛇の林檎探す時に見かけた道具屋の魔導書、結構値が張ってたよね。大体80万だっけ?」

「ッ!!!!」

「おや、オルト殿は魔法も修めているのか?」

「いや、ただひたすらに本読むのが大好きなだけ。魔導書は内容の解読も含めて読み応えがあるから気に入ってるんだって」

『物好きね、中には読み解くだけで発狂しかねない物もある筈なのだけど』

 

因みに『図書館』には魔導書の類は少なかった為、オルトが兄弟を通して買い集めて揃えていたりする。

 

「あ、ありがたく、頂戴、するのです……!」

『そこまで苦悶の表情浮かべる位ならとっとと受け取ればいいのに』

「ふふ…では私からも何かお礼をしなくてはなりませんね、ジョシュア様は何かご要望はありますか?」

「ん?んー………」

 

一分程かけながら何とか納得して謝礼を受け取る事にしたオルトが躊躇いがちにインベントリに金貨を仕舞い込む横で、シスターもまたビナーから庇って貰った礼をしようと意気込むが、返ってきたのは金銭が絡まない物だった。

 

「じゃあ、2人とも友達になって。それでまたお茶しようよ」

「…友達、ですか?」

「うん、ダメだった?」

「い、いえ!そういう訳では…その、本当に大丈夫なのでしょうか?開拓者の方は貴重なアイテムをよくお求めになると聞いていたので……」

 

おずおずと問い掛けるシスターに対し、ジョシュアはんーと少し考え込む。

 

「…装備は満足してるし、別に金銭とかも稼ぐ手段あるからあんまり興味無い。強いて言うなら強い相手と存分に殺り合いたい位?」

「そ、そうなのですね……」

「ほう、君は鍛錬の相手をお求めか?」

「うん、騎士さん強そうだし1回手合わせしてみたい」

「ふむ……そういうことなら騎士団の訓練所の方に話を通しておこう。予定が合えば相手をさせてもらうよ」

「ん、やったぁ」

 

先程の『真鍮の雄牛』との戦いで存分に見せつけられた強さに疼いていたジョシュアはその提案を喜んで受け入れた。

一応訓練所を訪れた時に怪しまれないようにと身分証明となるペンダントを受け取りつつ、ジョシュアふと今まで忘れていた事を思い出す。

 

「そういえば2人の名前聞いてなかった。何て呼べばいい?」

 

コテンと首を傾げながらのその問いかけに、騎士とシスターは同時に横目で視線を合わせると数瞬だけ考えるような様子を見せた後に口を開いた。

 

「『アル』、私のことはアルと呼んでくれ、ジゼル共々宜しく頼む」

『ちょっと、私はこんな奴らとつるむ気なんて無いわよ?』

「偶には良いんじゃないか?君は私以外の人間への関わり方を学ぶべきだと思っているんだが……」

『興味なーい。私は貴方が居れば他はどうでもいいもの』

 

面倒そうに顔を背ける精霊に困ったように嗜める騎士。

しかしその効果はあまりないようだ。

 

「では、私の事は『ステラ』と呼んで下さいジョシュア様」

「別に様は要らないよ、友達だし」

「そ、そうですか?んっん……分かりました、宜しくお願いしますね、ジョシュア」

 

少し気恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに名前を告げるステラ。

その様子を見て、ジョシュアは満足そうに頷くと美しい笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ改めて宜しくね。アル、ステラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では私も持ち場に戻るとしよう」

「そうですね、私も他の者に何も告げずに来てしまったので気付かれる前に戻らなくては……」

 

流石にずっと幻想体の核を抱えたままだといつ復活するか分からないので名残惜しげに去っていたジョシュア達に手を振っていた2人も解散の気配を漂わせる。

 

「私、生まれてから初めて個人的な友達が出来たかもしれません」

「意外だな、貴女もそういった思いを抱くことがあるのか」

「特殊な出自ではありますが私とて一人の人間、友情というの物に憧れてたりするんですよ。貴方こそ、ジョシュアとの手合わせを楽しみにしてるのでしょう?」

「おや、バレていたか」

 

僅かばかりの談笑、この2人も共闘する前までは互いに存在を知っている程度の関係でしか無かったものの、こうしてジョシュアが間に挟まった結果軽く言葉を交わす位には仲を深めたようだ。

 

「それでは『アル』様、またいつか茶会の席を共にする日を楽しみにしております」

「あぁ、『ステラ』殿こそ、帰り道にはお気を付けて」

 

名前を強調するように別れの言葉を告げ、一礼した2人はそのまま踵を返して自身の在るべき場所へと戻って行く。

 

ここで結ばれた友情が、多くの人間に知れ渡り度肝を抜いたりすることになるのはまだ少し未来の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない、今戻った。報告はあるか?」

 

深く被っていたコートのフードを脱ぎながら一人の男が騎士団の本部の会議室へと入る。

言うまでもなく、先程までジョシュアと言葉を交わしていた『アル』と名乗っていた彼である。

 

()()!はっ、現在市民から「街中で戦闘音がした」「異常なまでに気温が上昇した」という通報が入った為調査隊を派遣し、第2、第3騎士団の方で鎮圧部隊の編成を進めております!」

「あぁ、ならば編成は必要無い。通常通りの巡回の配置に戻してくれ」

「はっ……は?な、何故ですか?」

 

男の指示に一瞬理解が追いつかず聞き返す女騎士に、報告を受けて状況を察していたアルは端的に理由を述べた。

 

「つい先程原因の存在と交戦し討伐した所だ。特殊なアイテムによって召喚されたようでな、再発する可能性も潰したからこれ以上の被害の心配は要らない。被害状況の調査と必要であれば人員の派遣」

「成る程……承知しました!聞いていたな?各部隊長は直ぐに待機中の騎士達に通達を、調査部隊は原因究明から被害状況の確認へ移行させろ」

「「はッ!直ちに!」」

 

女騎士の出した指示によって室内の他の騎士達が一斉に動き出し、文官のような装いの者達も忙しなく資料を纏め始める。

 

「しかし、この短時間で対処だけでなく原因究明と解決まで行ってしまうとは…………流石です、()()()()()()殿」

「今回に関してはジゼルが異変を察知してくれたお陰だ。それに、私は務めを果たしたに過ぎないとも」

 

部下からの賛辞も謙虚に受け止めつつもアル……エインヴルス王国第一騎士団団長である『アルブレヒト』は爽やかに微笑んだ。

 

「さぁ、私達も仕事に戻るぞ。後程訓練所にも顔を出そう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……礼拝に集中すると伝えておいたのは正解でした」

 

一方、ニーネスヒルにある大聖堂の一室、人気のない中々に広々とした空間の中に自身の気配を完全に消して己含めた数名しか存在の知らない裏口から入ったステラは中に鎮座する神像にペコリと一礼した後、自らの装いを変えた。

一般的に「シスター」と聞いて想像出来るような黒衣から一転、様々な意匠が施された白いドレスのような服を身に纏い、その銀髪も合わさり一目見ただけで神聖さを感じ取れる姿になった所でステラは部屋の扉を開ける。

 

()()()()()様、もう宜しいので?」

「えぇ、待たせてしまいましたねジョゼット。これから教皇様の元へ向かいます」

「承知致しました、お供致します」

 

扉の外で待機していた者達の中でも、最も強い気配を放つ女騎士を供にして大聖堂の中を歩く。

暫しの間無言で進んでいたステラだったが、ふと思い出したかのように自身の後方を歩くジョゼットと呼んだ女騎士に声をかけた。

 

「……ジョゼット、一つ宜しいですか?」

「いかがなさいましたか?」

「少し相談したい事がありまして……茶会、というのはどういった物を用意するのでしょうか?」

「と、いうと?」

 

予想外の問いかけだったのか一瞬固まったものの即座に再起動する女騎士に、ステラは少し気恥ずかしそうに告げる。

 

「実は、今までは茶の席というのは会議や報告を兼ねた物ばかりで……その、友達とする気楽なお茶会というものをした事がないのです。もし良かったら私にご教授して貰えませんか……?」

「ヴッ……え、えぇ、そういう理由でしたら後ほどでよろしければお付き合い致します」

「ありがとう御座います、ジョゼット。()()としての公務を終えた後、楽しみにしていますね?」

 

何故か一瞬だけ胸を押さえて苦しむような仕草を見せた女騎士に疑問を抱きつつも、ステラ……シャンフロ世界に広く信仰されている《三神教》の聖女を務める『イリステラ』は楽しそうにフワリと微笑んだ。

 

「さぁ、今日も頑張りましょう」




※ジョシュアくんは強そうなモンスター位しか検索しておらずNPCまで調べてないので2人の事は偶に居る一般強キャラNPCとしか思ってません。

剣一振りで幻想体斬り伏せたり世界に干渉してる奴らが一般の訳ねぇだろ、というのはスルーして下さい。





騎士さん改めアルブレヒト

エインヴルス王国の第一騎士団団長を務める騎士様。
王族暗殺を狙う開拓者への対策で配置されたNPCで、ほぼ専用職業になっている「王認勇士(キングスパラディン)」と王家直属騎士団伝来の「王盾クリスタルパラディン」及び「勇騎霊剣ジゼル」によって攻撃も防御も反則レベルの仕様になっている。
誰が呼んだか「公認チート」。
これでいて文武両道かつ品行方正で人望が滅茶苦茶あつい上、本人の性格も人格者という隙の無さ。

本来であればあまり公への露出度が高くないのだが、今回の場合は幻想体という特大の爆弾が突如として出現したのをアルブレヒトの夢女やってる『ジゼル』が察知した為即座に出動した。


この度、友達が出来た。



シスターさん改め聖女イリステラ

シャンフロ内の宗教「三神教」の聖女。
本職アイドルをねじ伏せる人気があり、プレイヤーからの(非公式)愛称は聖女ちゃん。
ユニークモンスターの呪いを含む全ての呪いを解除したり任意で未来視による予知を発動することができる。
彼女が作成した聖属性のアイテムは並大抵どころかエリアボスであろうとアンデット系やゴースト系のモンスターなら全部跡形もなく浄化出来たり。


本来「聖女」たる彼女は身分等ではなく危険度的な意味で軽々しく外に出られないのだが、幻想体という特大の爆弾が突如として出現したのを察知した為ちょっとお忍びで駆けつけた。


この度、初めて対等な友達が出来た。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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