司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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もうそろそろ原作のストーリーを始められそうです。




それでは、どうぞ


妖精は無邪気に笑う

「……」

「……」

「あちゃー……まぁこうなるよな、メグは待ち戦法メインだしユグトライアもカウンター向けのキャラだから相性悪いんだよなぁ…」

 

『ギャラクシアヒーローズ:バースト』には、対戦やマッチングの待機するロビーとはまた別に観戦専用のスペースがある。現在進行系で行われるバトル空中に浮くモニターで様子を確認出来、中にはヒーローのカラースキンや装飾等を購入できるゲーム内通貨をBETしたりして賭け事を行うシステムもあったりする。

 

しかしながら今現在、その場にいる殆どの人間の視線は一つの画面に集中していた。

閲覧人数の増加に伴い拡大したモニターには、ユグトライアの放った蔓の鞭を花の杖で絡め取りそれを利用して接近したティンクル・ピクシーが顔面に膝蹴りを叩き込んで第一ラウンドを締めくくった瞬間が映されていた。

 

「……おいK、何だあれ」

「あれって何が?」

「あの動きだ、明らかに常軌を逸してるぞ」

 

一方的な試合展開で呆然としていた所から漸く復帰したケンが隣に座るチームメイトを問い詰める。

 

「さっきも言っただろー?「殺し合い」に於いてはアイツの右に出るものは居ないって」

「……まぁあんな殺意が滲み出てるコンボを見たからな、言わんとしてることは分かるが……」

「メグが何も出来ずに撲殺されてた。ティンクル・ピクシーの戦い方はもっと妨害メインの筈だけど、今の所かっ飛ばしたメグに追撃する為の足止めにしか使って無かったし」

「ステッキで狙った部位も人体の急所、人間が反射で動く部分が主だったな……いやそもそもあの妖精であそこまで動けるもんなのか?」

「見た目の華奢さとは裏腹にそこそこパワーあるからねぇ……流石にスピードとかはミーティアスとかには劣るし紙装甲だけどあんなふうに3次元的な動きが出来るのはピクシー特有でしょ」

 

スラスラとバトルスタイルの分析が口から溢れるのはプロゲーマーとしての性だろうか。見上げた先のモニターには次のラウンドが始まるまでの間先程のリプレイが流されていた。

 

「まぁ、あそこまで使いこなしてるなら相当ピクシーに入れ込んでるプレイヤーなのね」

「いや?確かに「一番自由に動き回れるから」って理由でピクシーをメインキャラにしてるけど別に他のキャラが無理とかそういうのは無いよ。というかアイツ全部のキャラ満遍なく使えるし、漏れなく全部で殺意増々のインファイトしてくるから」

「……飛び道具特化のPSY(サイ)ボーグ・ロードでもか?」

「普通に懐入り込んで殴って来るよ。なんだったら超能力で操作してる投げナイフ殴って軌道を急変させたり加速させたりしてくるから余計攻撃が読めなくなる」

 

中〜遠距離での立ち回りを得意とし本来であれば接近戦なんてしようものなら一方的にボコられるキャラであったとしても、ジョシュアは基本的に近接戦を仕掛けてるくる。

尚、別に近接以外が出来ない訳ではなく寧ろそこらのプロに負けないレベルの銃さばきを見せる為止める方法が本格的に無い。

 

「しかも更に手に負えない部分が幾つかあるんだよね。やってて楽しいっちゃ楽しいんだけど、正直シルヴィア・ゴールドバーグと同じレベルで敵に回したくない」

「……お前がそこまで言うレベルなのか?」

「あそこまでメグをボコボコにしておいて更に上があるの……?」

 

ため息混じりに零された一言に信じられないとバッと顔を向ける2人。

そんなチームメイトへ目線をモニターに戻すようジェスチャーで促しながら、求めているであろう情報を語りだした。

 

「まぁ2ラウンド目見てたら分かると思うけどまず一つ、

 

 

あいつは相手に慣れるまでが無茶苦茶早い」

 

 

 

 

 

 

 

(何よコレ!?さっきと全然動きが違う!)

 

第2ラウンドが始まってから数十秒、どうしようもない程の違和感に襲われていた。

先程自身を何もさせず打ちのめした苛烈な攻めから一転、立ち上がりは静かであったもののより動きが洗練されコチラの攻撃を無駄一つ無い動きで無力化していた。

 

「2秒後、次は回避先を潰す罠。だからそこに粉置くね?」

「ッ!?」

「はいここ」

「あグッ!?」

 

動き出しを潰され、接敵前に予めばら撒いてしていた蔓の槍の射出もいなされ、更にはその対処へ向かおうとした身体がスタンを起こす。

 

「顎がら空きだよ?」

「うっ、ぎっ!」

 

杖で腹を突かれてたたらを踏んだ次の瞬間に跳んできたサマーソルトキックをギリギリ身体を反らしてかすらせる程度にダメージを抑える。

痺れが取れた腕の植物を伸ばし、鞭のように撓らせて振り払うも宙を駆ける妖精はその隙間を縫って避けて少し離れた場所へ着地した。

 

「ほら、まだ出来るでしょ?もっと楽しもうね!」

「ッ!舐めないでッ!」

 

悪意が見られず期待を込められたキラキラとした笑みも、ずっと容赦のない猛攻を受けている側からすれば恐怖しか感じない。

身体を覆う植物を操作し、触腕のように動かして手数を増やして、コチラに突っ込んできた妖精の殴打を防ぎながらも植物魔人は好戦的にニヤリと笑う。

 

「ええ、上等よ!相手として不足は無いわ!」

 

先程のラウンドで目の前の相手の実力がトップクラスであることは理解しているが、プロゲーマーの矜持が自身を奮い立たせる。

ゲーマーとは往々にして負けず嫌いなもので、まるで壁のように立ちはだかる理不尽のような存在を前にしたとて諦めるという選択肢は現れない。

 

「《グリーン・グラウンド・ゼロ》ッ!」

 

自身から生える植物を束ねて振り払い、妖精に距離を取らせながら地面を殴りつける。

前ラウンドから溜まり続けていた技ゲージを全て吐いて発動した必殺技(ウルト)は、妖精の真下の地面を破りながら天を突くように聳え立つ大樹として現れた。

 

「コレで少しはダメージを……ッ!?」

 

しかし一息つく間もなく身体が硬直する。

 

「ばぁ♪」

「ッ!?」

(避けられた!?あの姿勢からどうやって…いえ、違う、コレはピクシーの……!)

 

「《ティンクルファントム》」

 

瞬間、大樹の影から更に3体の妖精が現れ一斉攻撃を仕掛けた。

硬直が解けると同時にNu2megはその対処に動き、多方面からの殴打やキックを器用に弾く。

多少HPは減らされたがそのラッシュを防ぎ切ったユグドライアは静かに降り立ったティンクルピクシーへと向き直る。

 

「ん、凌がれちゃった」

「ッ……残念ね、ピクシーのウルトはモーションがある程度固定されてるのよ。対処が間に合えばどうということは無いわ」

「慧も似たような事言ってた。やっぱりプロゲーマーは一味違うなぁ」

 

ウキウキが隠しきれない声色で微笑む妖精が己の得物である花の杖を構える。

仕切り直しは終わりのようだ。

 

「じゃあもう1段ギア入れて行くね?」

 

言外に「まだ本気じゃない」と告げられたが、それに衝撃を受ける暇などなくティンクル・ピクシーが宙を蹴って急接近する。

 

「ッ!」

 

相手の猛攻を何とか凌ぎつつ、意識を一瞬だけ向けたのは最初にばら撒いたトラップシード。

序盤に殆ど起動したものの、幾つかは不意打ちの為に残していた。

 

(あともう少し、コッチに引き付ければッ!)

 

植物の操作を行って気を引きながら、罠の位置を確認する。

狙うは大ダメージが狙える頭部、例え胴体へとぶつかったとしても拘束状態に持ち込んで一方的に殴り倒せる。

 

(そこから形勢を……!)

 

自身の必殺技に意識を割かせ、最初の罠を忘れさせる。端からそれを狙って動いてきた。

……途中、その奥の手を使う前に叩きのめされそうにはなったものの、それも意識を逸らす一因となったのであれば儲け物である。

 

そんな風に考えながら真正面から相手をして妖精の意識を己に向けさせる。

 

「これ以上好き勝手させないわよ!」

「!あははは!嬉しい、もっと張り切っちゃって良いよね!?」

「舐めるんじゃ、無いわよッ!!」

 

隙間を縫うように差し込まれる攻撃によって削られていくHPゲージの色が段々と赤色に変化していくのを感じながらも、反撃でコチラからインファイトに持ち込んで行く。

 

設置された種子はタイミングを見計らって急成長し、標的を貫かんと伸びて鋭い先端が空気を裂く。

 

 

そしてその凶刃は………

 

 

 

 

 

 

 

「あはっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首をヒョイ、と曲げた妖精の髪を僅かに掠めるだけだった。

 

 

 

 

「……は?」

「良いね、あそこまで的確にトラップシードを使える人は初めてかも」

 

必殺技を囮にしてまで放った渾身の一撃を難なく、どころか最初から分かっていたかのようにいなされた事で固まってしまう。

その僅かばかりの硬直は時間に直してもコンマ1秒も満たない程度ではあったが、目の前の相手にとっては致命的な程の隙を晒してしまった。

 

「楽しかった、またやろうね」

「ッ、やば」

 

植物魔人が何か言葉を発する前に妖精の粉をぶち撒けてスタンを引き起こし、止まったそその首を掴んで捉える。

そして復帰する前に素早く、

 

 

「ティンキー☆」

 

 

そんなポップな掛け声と共に逆手持ちにした杖の先を顔面へと突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、相っ変わらず人体破壊とに躊躇がないなーアイツ」

 

その美しい笑顔とは対照的に非常に残虐な決着の付け方を観て沈黙が包み込む観戦席を他所に、慧は1人その残虐ファイトといつも通りの友人の姿に笑みを浮かべる。

相手として立つ時は殴り勝つことだけに集中して意識から外しているが、その悪辣さ等が感じられないほど心底楽しそうに相手を叩きのめすその姿は、見ているだけで闘争欲が掻き立てられコチラまで楽しくなって来る。

少しばかり自分も疼いてきたのを抑えながら、慧はチラリと自分の両隣に座る友人達を見た。

 

「うっわ……」

「わぁ………」

「初めて見た時はビビるよなー、アイツの一番怖い部分がアレ」

 

他の観客同様、完膚なきまでの勝利に最早感想を漏らすことすら出来なくなった2人へ慧は苦笑いしながら優しく告げる。

 

「殺気に反応して即座に対処してくる先読み能力。フルオートかつ常時発動だから完全な意識外からの狙撃でも無い限り基本的に不意打ちは効かないし、アイツ曰く殺気の強さでフェイントであるかも見抜けるらしいんだよね。今の場合はメグが一瞬だけ意識反らしたから罠があるって気が付いてたパターンっぽい」

「人間なんだよな……?」

「やってる事がおおよそ裏ストーリーモードクリアした後に用意されてる理不尽AI搭載の裏ボスなんだけど……?」

「実際、別のゲームじゃ「ラスボスよりラスボスやってる」とか「向こうから突っ込んでくるタイプの裏ボス」だのなんだの言われてるからね〜」

 

あっはっは、と口から漏れ出した笑い声は乾いていた。彼もまた、あの理不尽の餌食になった1人なのだ。

 

「さて、お二人さん」

 

いつの間にか立ち上がりチームメイト達の肩にポン、と手を置く慧。

輪郭だけのアバター故に、どのような表情をしているか等は読み取れないが……

 

 

「今後の成長の為にも、1回ブチのめされにいってみようか?」

 

 

その声色は非常に弾んでおり、ワクワクと意地の悪さが隠しきれない様子だった。

 

尤も、その内容は告げられた2人にとっては死刑宣告に近しい何かに感じられたのだが。




ジョシュアくんの試合は基本的に短時間で終わります。

Q.何で短時間で終わるの?

A.全身全霊で相手を殴り殺す事だけ考えてるのでDPSが頭可笑しい状態になってるからです。
耐久型だろうと防御の隙間に無数の攻撃ねじ込んで殺しに来るので勝つにはコチラから速攻で殴り殺すしかありません。



戦ってる時のジョシュアくんを相手側から観た時のイメージソングは『BUTCHER VANITY』です。
一応カニバリズムの描写があるので聞く際ご注意下さい、謎の中毒性があります。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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