司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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そろそろ原作に突入させたい所存。
最初はまだ要素は薄いですが、気長にお待ち下さい。


永劫続くは想いが故に
歩む先は広がっていく


「ん、テレビの仕事?」

 

明くる日の撮影スタジオ、今日の分の撮影も終えて片付けも終わって解散となった現場にて、休憩用の仮設ベンチに腰掛けた紫亜はマネージャーからの話に目を丸くしていた。

 

「そうなのよ、この間ハプニングで永遠ちゃんと一緒に出演したじゃない?その時の反響が凄かったらしくて今回正式にオファーが来たのよ」

「ふむむ……どんな内容?」

「今年の夏に発売される日焼け止めの紹介……テレビ番組というよりかはCMね。広告にも載るみたいだし、かなり大きな仕事になることは間違い無いわ」

「ん、なら頑張らないと」

 

フンス、と気合を入れ直してスマホの手帳に新たな予定を入れる。

一度ファッション雑誌の表紙を飾った事があるとは言え紫亜自身はまだ駆け出しなのである。ここから更に仕事の幅が広がると考えれば、その第一歩をしっかりと踏み出したいと考えるのは当たり前だろう。

 

「フフッ、そう今から緊張しなくても良いわよ♪なんせ……」

「ヤッホー、お疲れ紫亜ちゃん♪トキちゃんもお久〜」

 

自身がマネージメントを担当する、まだ若い青年が奮起する姿を見て漢女はクスリと笑う。

すると、いつの間にか背後から近づいていた美女が紫亜の頬を後ろからギュムッと両手で挟み込みながら笑いかけてきた。

 

「んみゅ、しぇんぱい(先輩)

「あら永遠ちゃんじゃない、元気だった?」

「元気元気〜。で、何の話してたの?」 

 

現れたのは世界に名を轟かせるトップモデル。

世の中の若者達を虜にするその美貌を煌めかせながらも浮かべる表情は雑誌に載るような洗練された美しさではなく非常にリラックスした物だった。

 

「遂に紫亜ちゃんにもCMのオファーが来たのよ。今はその予定のすり合わせね」

「やっと?私としてはもうちょっと早くても良かったとと思うんだけどな〜。ま、私も推薦した甲斐があったって奴だね〜」

「ん、しゅいしぇん(推薦)?」

 

されるがまま頬をモチモチされる紫亜が不思議そうに上を見上げれば、覗き込んできた永遠の顔が逆さまになって視界に入りその瞳と視線が合った。

自身の顔を見ても一切揺らいだ様子の無い後輩に若干嬉しそうにしながらもトップモデルは口を開く。

 

「そ、元々私の所に来たんだよねこのCMのオファー。それで私以外にもう1人起用するつもりですー、って言われたからなら紫亜ちゃんが良いって言ったんだよね〜」

「貴方相変わらず紫亜ちゃん大好きよねぇ」

「だって仕事するならそこらの奴より私の素顔知った上で純粋に慕ってくる弟分の方が良いんだもーん」

 

そんな軽い口調で引き続き後輩の頬をモチモチするトップモデル。そのモチモチされている当の本人はというと一切動揺等もせずされるがままいつも通りのスンとした真顔のままである。

尤もその真顔も頬を潰されて不格好なものになっているのだが。

 

何にせよ、男女の距離感としては些か近すぎる物なのは確かだろう、見かねたマネージャーか苦笑いしながら口に出す。

 

「仲がいいのは良いのだけど、そこまでベタベタしない方が良いんじゃないかしら?世間からすれば女の子同士の戯れとして映るんでしょうけど実際は異性同士なんだし……」

「あ、それは大丈夫。今更紫亜ちゃんのこと異性として一切見れないし、そもそも紫亜ちゃんはもう好きな人いるでしょ?」

「ん、先輩は先輩だしそういうの考えたことない」

「ね?」

「ね?、じゃないわよもう…」

「それに、先輩だってずっと初恋の人追っかけてるんでぽぴょっ」

 

紡がれた言葉が最後まで言い切られるその前に、ギュムッと頬を強く挟むように潰されて遮られる。

その背後に立つ永遠はというと、その美しい顔に微笑を浮かべながらも背後からドス黒いオーラを発するという器用な事をしながらひたすら後輩の頬をモチモチしながら静かに問い詰め始めた。

 

「紫亜ちゃ〜ん?誰がそんなこと宣ったのか教えてくれるかな〜?」

「ん、前先輩に20になった祝いって言って友達との飲み会に誘ってくれた時先に酔いつぶれてた先輩の元クラスメイトの人」

「モモちゃんかあの野郎ッ!」

「それを言うなら女郎じゃない?」

 

そろそろちゃんと喋りたいと思ったのか頬とそれに添えられた先輩の手の間に自身の手を滑り込ませて押し返す。

静かにモチモチキャンセルされた方は一発目の質問で浮上した犯人に頭を抱えており、やがて「後でイジり返そ」と諦めたように呟いたかと思えばようやっと紫亜の隣へと腰掛けた。

 

「というか先輩が百さんと知り合いだった事に驚いた。

同級生だったんだね」

「私としては紫亜ちゃんとモモちゃんが親戚で面識あったことの方が驚きだったんだけど?」

「ん、世間って狭いよね」

 

脳内に蘇るのは数ヶ月前に隣の先輩に連れられて入った居酒屋での一幕。

一応自分が20歳になった祝い、という名目だった筈だがいつの間にか先輩とその友人のサシ飲みに巻き込まれただけの構図となり、最終的には一滴もアルコールを摂取してなかった自分が酔っ払った2人を送る羽目になったのは記憶に新しい事だった。

 

若干遠い目をする紫亜を他所に、先程のやり取りの何かが引っかかったのか時成は少しだけ考え込むようなポースをとる。

 

「百ちゃん?……もしかしてその子、斎賀って名字だったりする?」

「そだよ〜多分時ちゃんからすれば義妹になるのかな」

「あらやっぱり!何回も顔を合わせたことあるししっかりしてそうだと思ってたんだけど…案外酒癖が悪かったのねあの子、意外だわぁ」

「モモちゃんの部屋着知ってる?学生時代のジャージだよ?というか最近まで軽い外出位ならそれで行ってたって聞いた時気絶するかと思ったんだけど……しかも学生時代に私が選んであげたやつ着る気まっっったく無かったし……」

「あらま、そこまでズボラなの?」

 

仕事の話題から二転三転、遂には仕事は全く無関係の人物の暴露話にまで繋がって転がっていった話だったが、その事に気が付いたトップモデルはコホンと咳払いを一つ溢す。

 

「まぁ兎に角!紫亜ちゃんのテレビデビューはあんな形だったけど、コレから更にテレビの仕事来るかもよ?」

「ん、新しいお仕事頑張らないと」

「けどまぁ、本来のモデルの仕事との兼ね合いもあるからそこら辺は慎重にしなきゃね」

「大食いとか体動かす系の奴なら迷わず受けるんだけどなぁ」

「モデルが受けるとは思えないラインナップ〜、いや紫亜ちゃんの体質を考えれば最適なんだろうし絵面もギャップあって………あれ?意外とイケるんじゃない……?」

「ホントプロデュースしがいがあるのよねぇこの子」

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば紫亜ちゃん、こないだ言ってた事間違い無いんだよね?」

「ん……あ、サンラクとカッツォの事?それなら本人達から連絡来たよ、ほら」

 

暫くの間、他愛のない世間話を交えていた最中、先輩からそう問われた紫亜はスマホのメールアプリを開いて2通のメールを見せる。

文面に多少違いは有れど、その内容は共通して「『シャンフロ』を始める」という物だった。

 

「OKOK!いやぁーカッツォくんは兎も角あの生粋のクソゲーハンターのサンラクくんが『シャンフロ』に目を付けるのかは賭けだったんだよねぇ。役者が揃いそうで良かった良かった!」

「ん、役者?」

「そ、役者。例の件、その2人を連れていきたいと思ってた所だったんだよね〜」

「モンスターか殺戮、どっち?」

「サンラクくん達を誘うのはモンスターの方だよ。殺戮の方はまた別の奴ら誘ってるから楽しみにしといて♪」

 

言葉尻に音符が付くほどに楽しそうにしているのは良いのだが、こういう場合の天音永遠は基本的にとんでもねぇ事を考えていると紫亜は知っている。

だがまぁ自分に対して損になるような事はしないと言う事も知っているので特に口を挟むことなく目だけで笑っておく。

紫亜ちゃんはかしこいのである。

 

「なんだか物騒な話してるわね?」

「あ、ゴメンね時ちゃん置いてけぼりにしちゃって」

「良いわ、2人が楽しそうで何よりよ。それより、貴方達()『シャンフロ』やってたのね」

「ん?時成さんもやってるの」

「あぁ、私は現実で身体を動かす方が性に合ってるから余りゲームはしないのよ、仙ちゃんもあまりゲームに興味は無い娘だし……その代わり、っていうのも何だけど私の両親がドハマリしてるのよね」

 

そう言いながらも時成は何かを思い出して深く溜息をつく。

 

「へぇ!時ちゃんの両親ってあの結婚式の時にいたダンディなオジサマと淑女ッ!って感じの御婦人だよね?ゲームとかには無縁そうな感じだったけど」

「それが2人とも中々のゲーマーでね。時々夜更かしし過ぎる事もあるって良く電話越しに聞いてるのだけど、もう結構な歳なんだから健康的にして欲しいわぁ……1回仙ちゃんに頼んで説教してもらおうかしら」

 

そんなボヤキを聞いて先輩後輩は目を見合わせる。

2人がかなり世話になっているこの漢女の両親の事はよく知らない一方で、この漢女の妻がどのような人物かは割とプライベートで交流がある為知っていた。

 

故に十中八九その古風な価値観を基準とした生活習慣チェックに引っかかるであろうその男女に静かに黙祷を捧げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば紫亜ちゃん、私一昨年から龍宮院家の正月の集まりに顔出してるのだけど貴方の事見かけた事無いのよね。運が悪かったのかしら?」

「ん、会うわけない。僕数年前から龍宮院家から出禁食らってるし」

「「何で!?」」

「ちょっと正月にヤンチャしちゃって……」




龍宮院家では正月に分家も勢揃いする集まりがあります。
その時、男女に分かれて武術による組手を負け抜けシステムでやってます。

そこにトラウマから復帰して元気とパワーが有り余っちゃってる上、弟と一緒に『幕末』にドハマリしたばかりの時期の紫亜ちゃんを放り込みます。

あとは、分かるね?



龍宮院家との繋がり

紫亜ちゃんの名字である「上条」はお父さんの空さんが実家を出奔した時から役所で変更して名乗っている、母方の旧姓です。
紫亜ちゃんの祖母の家系は龍宮院家の分家の一つであり、立場的には「斎賀」と同じような感じです。
ただ「上条」は結構前に権力を失って没落しており、龍宮院家を離れて空さんの実家である「院禪」家に実質取り込まれました。
そこで小間使いのように使い潰され、名家としての立場も失った末に純粋な後継者も居なくなって行きました。


そしてその全てをひっくり返して龍宮院家以上の権力を持っていた院禪家を個人で塵一つ残さずぶっ潰したのが紫亜ちゃんのお父さんである上条空さんです。
当人は普通に教師してますが、政財界等では話題にすることすら許されないレベルでタブーな存在扱いされてます。


え?どっかで聞いたことある感じの家の名前?
きっと気の所為です。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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