感想述べたいですがネタバレになりかねないので控えます。
そのうち親方や子方達の頁も出したいですね。
それでは、どうぞ。
「んー!はぁ……よし」
モデルとしての仕事と共に投資家としてのタスクも片付けて、漸く『シャンフロ』へとログイン出来たジョシュアはいつも通り『図書館』の休憩スペースにて目覚めて身体の調子を確かめる。
前回の買い物から外したままだった『北部ヂェーヴィチ協会6課』のコアページを装備し直しつつ、ステータスをチェックしながら今日の予定を整理し始めた。
「今日は……一旦サードレマに戻ろ。他のエリアボスの所にも幻想体居そうだし早速オルトと……」
「お目覚めかな」
早速相方を探しに行こうと歩を進めようとした瞬間に掛けられた声に身体がピタリと止まる。
ここ最近よく聞く声に振り返って見れば、休憩スペースの入り口からゆっくりとコチラに歩み寄るビナーの姿があった。
「どしたのビナー、この前包丁向けた事については謝る気は無いけど」
「構わないとも、お前が案外短気であると知れた良い機会だった。その時についでに成そうとした事があったのだが、ついあの舞台装置達を弄ぶのに夢中になってしまってな」
スンと澄ました顔をしつつも若干警戒心と戦意を向けてくるジョシュアに対して、ビナーは特に気に障った様子もなく口を動かす。
「兎も角、この場で行うには少々不相応だ。ついておいで」
「さて、ようこそと言うべきかな、私が司書として与えられた哲学の区域へ」
道中一切の会話無く連れられたのは空中に星のような物が浮いて瞬く、何処か不思議でシック、そして威圧的な雰囲気を漂わせる空間だった。
本棚の合間からは木の根らしき物が覗いており、雑多に本が高く積まれた総記エリア等と比較しても異質さが見て取れる。
「それで、何の用事でここまで連れてきたの?」
「ふふ、そう急く事も無かろう」
ジョシュアから送られる訝しげな目線も軽くいなし、徐に取り出したのは一冊の本。
表紙は黒を基調としたもので何処となく高級感を醸し出している。
しかしジョシュアが気になったのはその本が発する気配の方だった。
「幻想体の本?……でもなんか違うような」
「かの者達は謂わば続きを持たない、終わりを迎えた物語だ。それは誰に知られずとも世界に刻み込まれている、故にただ生きていただけの者達よりも存在を保っていた。より源に近いのだから希釈されないのも当前だがな……おっと」
そう言葉を綴っている最中、突如として本が震え始める。まるでそれ自体が意志を持つように、己を掴む手から逃れようとバタバタと暴れているかのように。
しかしながらそれを一瞥したビナーは動揺した様子もなく、何かを呟くと取り囲むように光で構成された文字が宙を舞いそのまま鎖のように連なった文字が本を縛り付けた。
本はブルブル震えて抵抗を見せたがガッチリと巻き付いた文字はびくともせず、そのまま諦めたかのように停止した。
「
そうして差し出される一冊の本。
「故に私はお前にコレを贈ろう。困難は有れどもお前の道行きに沿う共となるだろうな」
縛る文字は染み込むように消え、本には新たに金色の装飾が刻まれた。
「……うん、じゃあ、有り難く貰おうかな」
バッ
「ん?」
少し迷った後、出て来たシステムウィンドウの『YES』ボタンを押して本を受け取ったその瞬間、背後から聞き覚えの無い重い音が聞こえ振り返れば、枯れた木のような黒い何かで構成されたゲートが鎮座していた。
枠の内側は赤黒い渦巻きで満たされており、明らかにマズイ物であると見た目で語っている。
「ナニコレ」
「所謂「あらすじ」のようなものさ。お前は今からとある鳥達の末路を見ることになる」
戸惑う相手にそう雑に説明しながらも気配も悟らせずに背後に移動したビナーは、そのままジョシュアの襟を掴んで親に運ばれる子猫のように地面から足が離れる程に持ち上げた。
「え、ちょっ」
「読み解くのに要する時間は測れんが……まぁお前であればそう掛かることは無いだろう。では行って来い」
「色々と雑すg
何かを言い終わるその前に有無を言わさず投げ込まれ、その姿は門の中へと消えていく。
後に残るは先程よりも物々しい気配が薄くなった門と、それを愉快そうに見つめる調律者のみ。
「しかしまぁ面倒な手順を踏まされる物だな、世界を欺く行為というものは。あの都市を縛る頭の
ヒョイと指を振るえば忽ち近くにテーブルと椅子、そして紅茶の入ったティーポットとカップが独りでに動いて揃えられる。
そこに座ったビナーはポッドからカップへ茶を注ぎ、そのまま淹れたての香りを堪能し始めたのだった。
「っと……ここは」
一方投げ飛ばされたジョシュアはというと、門を越えた直後には既に図書館とはかけ離れた空間へと投げ出されており、何とか空中で姿勢を戻して着地していた。
いくら戦闘が関わらなければ温厚なジョシュアだとしてもあまりにも雑な扱いに文句の一つでも言いたくなるが、それよりも先にやるべきなのは現状把握である。
「森、ではあるんだろうけど………」
周囲を見回せばそこにあるのは一面の森林。特徴的なのは木々の全てが煤けた灰のように黒味がかっている事だろうか。
空を見れば太陽が沈んだばかり位の夕暮れ時で、僅かばに残された日光が木々の隙間を縫って照らしてよりこの森の暗さを際立たせていた。
「『
「おや、珍しい。この森にまだ来訪者が居たとは」
何とも不気味な森の中にポツンと立っていたジョシュアが探索に出向こうとしたその時何処からともなく声が掛かる。
その声の出処の方向を見ればいつの間にか現れたのか、ローブを纏いフードを深く被った人物がコチラへと歩み寄っていた。
「ん、どうも」
「これはこれは、どうもご丁寧に。貴方も旅の途中ですかな?」
「……まぁ、そんな所かな」
挨拶を返し、言葉を交わす。
特にこちらへ敵意や害意等は見受けられないものの何処となく得体の知れなさを感じて悟られない程度に警戒するジョシュアへ、ローブの人間は少し息を吐きながら憐れむように口を開いた。
「しかし貴方も運がない、目的地が何処か等は私は知りませんがこの森を訪れてしまうなんて」
「ん、何かしら事件でもあったの?」
「ふぅむ……どうやら貴方はご存知無い様子、ココは一つ私の世間話をお聞きになっては如何ですか?」
その提案に、ジョシュアは少しばかり考え込んだ後に頷き返して聞く姿勢に入る。
それを確認したローブの人間は一つ、胡散臭い笑みを浮かべると咳払いをして朗々と語り始めた。
「その昔、ここは多くの動物達が住む豊かな森でした………」
──────曰く、この森は今現在からは考えられないほど動物達の活気で満ちていた。
森を守るために働く献身的な鳥達がある日、この森を通ろうとしたものの、その怪しさ故に拒否された旅人が一つの予言を残した。
『やがてこの森に悲劇が訪れるだろう。
森は悪行と罪に染まり、争いが絶えぬだろう。
悲劇が終わるときは恐ろしい怪物が森に現れ、すべてを飲み込んだ時だ。
二度と森に太陽と月は昇らぬ。森は決して元の姿になることはないだろう』
無論、その予言の通りにさせないために守護者たる鳥達も努めて力を使った。
ある鳥はその嘴で罰を
ある鳥は罪を測る天秤で審判を
ある鳥は己が有する多対の瞳で監視を
しかしその努力も虚しく予言の時は訪れ、やがて森には冷え冷えとした真っ暗な夜だけが続くようになってしまった────
「…多くの者が怪物を目撃し、生物達は恐れをなしてこの森を離れてしまった。残されたはあの末恐ろしい怪物のみ……おそらく今もまだ、あの森を彷徨い続けているのでしょう」
悲しむ様な語り口だが見える口元は少しばかり口角が上がっており、それが元から漂っていた胡散臭さを加速させる。
だがしかし深く被ったフードからは口元しか見えず、その表情を伺う事は出来ない。
「私はもうすぐココを発ちます。貴方が怪物に飲み込まれない事を祈っておりますよ」
「うん、有難う」
「では私はこれで」
そう言って頭を下げた旅人はそのまま踵を返してジョシュアの横を通り過ぎで去ってゆく。
ボロボロの暗い灰色のローブはすぐに周囲の闇に紛れ、数分後にはその姿は完全に見えなくなってしまった。
その背中を最後まで見送っていたジョシュアは一つ息を吐いて、木々の密度が上がる森の奥へと向き直る。
「……『怪物』、か」
不意に先程語られた物語の中に出て来た存在が頭を過ぎる。
予言によって存在を示唆されただけのナニカ。
何故かは分からないが、少しばかり、その存在を他人事とは思えなかった。
※現時点で即死フラグを一つ回避してます。
質問返答
Q.五本指の中でどれが好きですか?
A.人差し指。ヤンとグローリア、あとソラちゃんが推しです。
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
-
いらない
-
セルマァ……