グノーシア時代のトピックス、4700字程。
「社長」
柴関を離れたあと、アビドスの襲撃の準備をしていた5人。
「? 何かしらカヨコ?」
「さっきのアイツら、アビドスだよ」
「アビドス……!な、なんですってー!?」
先程話していた人たちが襲撃先だなんて思ってもなかったのだろう、白目をむきながら驚いている。
「くふふ、やっぱりアルちゃん気付いてなかったんだー」
「じゃあ、セツたちが次のターゲットってことか……参ったな……なぁ社長。なんとかならねーか?あいつらは船をともにした仲間なんだ」
「……」
アルはアウトローを目指している。が、しかし、その内面はとても心優しい少女であり、シピから『仲間』なんて言葉を聞いて心が動かない訳がなかった。彼女も本心では「仕事とは言え心苦しい」「なんとかしてあげたい」と思っている。
「『情け無用』『お金さえもらえれば何でもやります』がうちのモットーでしょ?今更何を悩んでるの?」
ムツキが言う。そうだ、賽は投げられている。もう傭兵も位置につき、アビドスももう目の前。ここでの衝突は避けられない。
「……行くわよ。バイトを集めて!」
「……そうか、まぁ、もう今更変えることはできないとは思っていたが……俺が呼んでくるよ」
シピは少し黙った後に傭兵を集めに行く。
「……くふふ、アルちゃんなにか思いついたの?」
ムツキはあるが何か思いついたように感じ聞いてみる。
「まぁ、そうね」
ムツキの耳元でゴニョゴニョと考えた案を言ってみる。
「……!なるほど、さっすがアルちゃん!」
アルが何を思いついたのか、シピはまだ知らない。シピを除く便利屋の面々はアルの作戦を聞き、うなずく。
「なんだよ、遅かったじゃん。それにあの猫乗せた兄ちゃんもどっか行っちまったし。何かあったのか?」
シピは傭兵を呼んだあと、どこかへ行ってしまった。アルにとっては予想外で少し困惑していたが、作戦自体はなんとかなる
「大したことじゃないわ。それより準備はできてるわね……と言いたいところだけれど、1つ話を聞いてくれるかしら」
「?」
傭兵のリーダーらしき少女はあるに耳を傾け──
「そういうことか…わかった。ウチらにとっちゃ好都合。断る理由もない!」
「そう、じゃあ改めて。配置につきなさい」
傭兵たちは配置につき、視点はアビドスに移る。
「南15km地点付近で大規模な兵力を確認!」
アヤネが、いつにない大きな声で言う。
「まさか、ヘルメット団が?」
「ち、違います!ヘルメット団ではありません!……傭兵。おそらくは日雇いの傭兵です!」
「へぇー、傭兵かぁ。結構高いはずだけど」
「これ以上接近されるのは危険です!先生、出動命令を!」
"よし、みんな出動だ!"
そうしてアビドス対策委員会と便利屋68は本格的に対峙することになる。
『前方に傭兵を率いている集団を確認!』
「あれ……ラーメン屋さんの……?」
ノノミが気づく。以前、柴関で出会った便利屋に。
「……ッ」
アルはなんだか気まずそうな表情を浮かべている。
「誰かと思えばあんたたちだったのね!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」
セリカが声を張って言った。その言葉は、彼女の心に深く刺さる。
「あははは、その件はありがと。でも、それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」
「残念だけど、公私ははっきり区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」
「……なるほど。その仕事っていうのが、便利屋だったんだ。」
「もう!学生なら、他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」
セツと先生は内心(この子達も、大概なんだよなぁ)と思っていたが言わなかった。
「ちょ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書だってあるんだから!私が社長、あっちが室長で、こっちが課長……」
「はぁ、社長。ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが目立つ」
「誰の差し金?……いや答えるわけないか。力尽くで口を割らせるしか」
シロコは銃を構える。
「ふふふ、それはもちろん企業秘密よ?」
そう言った後、アルは告げる。
「総員!攻撃開始!」
銃撃戦が始まる。前線で戦うホシノ。その少し後方にいるノノミ、シロコ、セリカ。事態に応じて、アヤネがドローンで支援を行いつつ、モモが被弾した生徒の手当に向かう。先生の指揮を受けではいるが、対策委員会は5〜6倍はいるであろう傭兵に苦戦していた。長期戦も覚悟していたその時……
キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが鳴る。
「あ、チャイムが鳴った!撤収〜」
「今日の日当だとここまでね。みんな帰るわよ〜」
チャイムが鳴ったことに気づいた傭兵たちは瞬く間に帰っていく。僅か1時間、いや、30分にも満たない戦闘。拍子抜け、といった感じの対策委員会とシピ。シピは知っていた。本来、傭兵たちは夕方のチャイムまでが勤務時間となっている事に、そして気付く。
「……。私たちも帰るわよ」
「社長!待ってくれ。これは……」
思わずシピはあるに声を掛ける。
「これで、一応仕事はやったわ。まぁ、失敗という形だけど」
「!!!」
便利屋は元々、報酬を後払いで貰っていた。これは、もしもの時の為に仕事を降りられるようにする為だった。この依頼は失敗。報酬は無し。傭兵を雇うのにお金をすべて使ってしまってもアルはシピの感情を尊重したのだ。
「ありがとう」
シピは感謝の言葉を伝えた。
便利屋は感動的な感じになりながら帰っていった。
対策委員会の方はと言うと……。
「……あ、行っちゃいましたね」
「うへー、一体何がしたかったんだろうねー?」
『……詳しいことはわかりませんが、敵兵力の退勤……いえ、退却を確認……。困りましたね、妙な便利屋にまで狙われてるとは、先が思いやられます。一体何が起きているのでしょうか……』
「まぁ、少しずつ調べるとしよう。便利屋の身元を洗ってみたら何か出てくるよ、きっと」
ホシノが告げる。
なにはともあれ、対策委員会は目の前の脅威を追い払うことに成功した。……だが、モモは少し、違和感を覚えていた。
明らかに撤退が早すぎないか?
30分にも満たない戦闘時間。あっさりと退く便利屋。自分の持っている記憶とは似ている……が少し史実とは変わっている。
僕達が関わったことで何かストーリーに変化が起こったってことかな?アビドスには、僕を始め、しげみちやセツ。便利屋にはシピがいる。シピの性格から考えれば知り合いと対峙することあまり好まない。
十分あり得るな。
「次会った時にでも聞くか」
"どうしたの、モモ?みんな待っているよ"
「……なんでもない。すぐ行く」
この日は、他に襲撃が起こったわけでもなく、比較的平和だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
便利屋達の件が終わり、すっかり夜もふけ、町灯りに照らされた夜のアビドスの街を歩くモモ。考え事をするときに散歩をするのはモモのクセとなっていた。前世でまともに歩くことが無かったからか、はたまた他の乗員の特記事項を探すためか、そうしていくうちに自然と散歩をするようになったのだ。
アビドスの街並み。都市部はまだ店や人もいるようだけど……他の街よりかは少ないのかな……。
なんて思いながらも、本題に戻す。
ストーリーの改変、銀の鍵の不具合、増えた特記事項。話が進むに連れてわからない事だけが増えていく。やらないといけない事も同じ。
これから僕はどうすればいいのかな?
このまま話が進んでいったらいずれ、僕の知らない『エデン条約編』以降まで話が進む。そうなれば、僕は本来のストーリーに修正することも、出来なくなってしまう。
モモは『花のパヴァーヌ編1章』までのストーリーしか読んでいない。その後で知っているのは『もう一人の先生が出てくる事』『アリウスという学校が出てくること』『エデン条約は失敗すること』くらいだろう。
幸い、まだ致命的なやらかしはしていない。なんとかなる。……はず。
前向きな方向に考えようとする。が、内心、奥のさらに奥底ではモモは先の見えない恐怖に怯えていた。
『もし、銀の鍵が壊れたのなら、ループしないのなら、セツはしげみちはシピはみんなが死んでしまったのなら……』
今まではループする事ができた。だが、今は違うかもしれない。
人は死んでしまったら生き返らない。
「久しぶりですね?『M.OMO』」
突然、声をかけられた。声のした方向、背後を見る。
そこには二人。黒のスーツを着た全身が黒の異形の男と、そのとなりにいる見知った面影、黒の長髪にまるで日本人形のような整った顔立ち、そして、何人たりとも寄せ付けないような、引き込まれるような漆黒の瞳。間違いない。夕里子本人がそこにいた。
「夕里……子?それに……」
「貴女がモモさんですか。はじめまして、私は『ゲマトリア』の黒服と申します。ここではなんですから少し話ができるところへ行きましょうか」
「行かない。危害を加えるつもりならば、ここでお前たちを拘束する」
もちろんハッタリだ。この場で拘束する事自体は可能だろう。だが、仮に拘束したとして、今後の展開のことを考えると『拘束しない』のではなく『拘束できない』。ストーリーから大きく外れてしまう。
「いえ、私たちに危害を加えるつもりはありません。今回はあなたに1つ、『提案』をさせて頂きたく──」
「もういい、わかった。話は聞こう。私からも夕里子に話したいことがあったからな」
予期せぬ出会いではあったもののモモは大人しく夕里子と黒服についていくのだった。
「……で、話しがあるんだったか、手短に話してもらおうか」
モモは強気な口調を崩さず、ビルの一室で椅子に座りながら言う。
「ククク、そうですね。まずは改めて自己紹介を、私は黒服とでもお呼びください、本名ではありませんがこの呼び名を気に入りましてね、そして私たちは貴女方と同じキヴォトス外部の者……と言ってもモモさんや夕里子さんとは別次元からですが。それと私たちはあなたと敵対しようとは思っていません、これからする『提案』に乗っていただければ、ですが。貴女のことは夕里子さんから聞いています。彼女は貴女を『珍獣』と言っていました、確かに貴女には生徒の『神秘』に似た何かを持っている。キヴォトス外部の人間でありながら銃弾をものともせず、走る速さは自動車並み、そんな屈強な肉体の持ち主。単純な戦闘能力で言ったらキヴォトスの生徒よりも上の可能性すらある。そんなあなたに興味を持ちまして、『提案』を1つ」
黒服は一拍おいてから告げる。
「私たちの仲間になりませんか?」
「ならない」
「ふむ、即答ですか。メリットも聞かずに即答とはなにか考えがあってのことなのでしょうか?」
「私は勘がいい。お前が騙そうとしていることはわかっている。お前は騙そうとしていることがわかっていて罠にハマりに行く阿呆なのか?」
「……わかりました。ククク、やはり貴女は手強い。アビドス対策委員会の脅威は『シャーレの先生』だけだと考えていましたが……考えを改める必要があるようですね。」
「話は済んだか?なら、私は夕里子に聞くことがある」
「……」
夕里子の方を向く。夕里子はアルカイックスマイルを浮かべたまま何も言わない。それがまた不気味さを引き立てている。
「聞きたいことは二つ」
「まず1つ、夕里子はゲマトリアに属しているのか?」
「それなら私が、夕里子さんは私たちと同じゲマトリアに属しています。ゲマトリアは観察者であり、探求者であり研究者。夕里子さんも同じ志を持っている同志であループする。具体的に何をしているのかは私にはわかりませんがね」
「黒服、貴方のお喋りはそこまで。モモ、2つ目を言いなさい」
「はぁ、黒服と同じ問答をする羽目になるとは。夕里子、もし敵対する気が無いのなら協力して欲しい」
「断ります」
即答。そして、夕里子は少し口角を上げ話す。
「モモ、私との『余興』を忘れてはいないですか?」
「!? 何でその事を…!」
本来であればセツとモモがループしていることを知っている人はいない。だが、彼女の発言からは以前のLOOPの記憶があるとしか思えない。
しげみちは、シピは……LOOPの記憶があるようには思えなかった……なら、何故夕里子だけ……。
「ふふ、モモ。考え込んでもしょうがないですよ。この記憶のことも、何故ここにいるのかも。全てはお前が全て壊してしまったことが原因なのだから」
「!!!」
「お前があの日、世界を、宇宙を破壊した。その結果、は宇宙間を彷徨い、やがてここにたどり着いたのです」
「……」
「話を戻しましょう。『余興』この言葉の意味、お前ならわかりますね?」
「……会議で夕里子をコールドスリープさせることを条件にグノースの正体を聞く」
「……そうです」
「なら、夕里子はグノーシア?……いや、そんなはずは……」
「まぁ、そんなこと些細なことです。そうですね、今回の『余興』は……『キヴォトスの崩壊を防ぐ』にいたしましょうか」
「何!?」
モモは黒服の方を見る、黒服もモモと同じく動揺していることが見て取れた。
「期限は一年。お前がこの世界を守りきったのなら、私は素直にお前のもとにつき、協力することを誓いましょう」
「……わかった」
ループしていることは知っているが、『銀の鍵』のことまでは知らないらしい。となると、黒服もこの事は知らないと見ていいだろう。1年間、この世界を守りきれば、夕里子を仲間に引き入れることが出来る。
「話は終わった、私は帰る」
そう言い残し、この場を立ち去ろうとするモモに、夕里子が一言。
「健闘を祈ります。精々足掻きなさい、モモ」
夕里子の言葉には何も返さずに、その場を去った。
モモが去った黒服のオフィス。
「ククク、良かったのですか?『彼』のことを話さなくて」
黒服がその不気味な顔を夕里子に向けて話す。
「まだ、話すべきでは無いでしょう。モモはその存在すら覚えていないでしょうから」
──────────────────────
これは、モモたちがキヴォトスに来る前幾度となく繰り返してきた「グノーシア会議」のログを書いたもの。『銀の鍵』に囚われた一人の少女の物語。
LOOP1『目覚め』
「わかった?」
私が目を覚ましてから初めて聞いた声はセツの声だった。
「……確か、ルゥアンでグノーシア騒動が起こってそこから……何があったのか思い出せない」
今いる場所は船の中だろうか、あの騒動の前後の記憶が飛んでいる。……この人、
「……だろうね。こんな旧式の促成学習じゃ。言葉が通じるようになっただけでも、一歩前進かな」
「さあ、そろそろ行かないと。起きられる?」
「ああ、大丈夫。起きられる」
「問題ないみたいだね。じゃあメインコンソール室に行こう。そこで皆、話し合ってるから」
「まだ、何も分からないかもしれないけど……そのうち慣れるよ。気を楽に、ね」
「そうだ。一応聞いておくけど……」
「モモ。人類はこの宇宙から消滅すべきだと思う?」
「? 思わないが」
「だったら気を付けておいて。これから会う3人のうち、ひとりは人間じゃないから」
「…!それは……」
そうこう言っているうちにメインコンソール室の前まで来る。その先には人影が三つ。
「ああ、来たね本命が」
まるで孔雀を思わせるような色彩の豊かな服装の男が言った。
「お疲れ様、セツ。モモの記憶は戻った?」
紫髪の少し地味そうな女セツに聞く。
「大体の記憶は戻ったが、事件前後の記憶はここの医療ポットでは無理みたいだ」
「んー、じゃ手がかりゼロってこと?」
見た目完全にギャルな赤髪に頬にハートのペイントの入った女、SQが言った。
……これは……やはり……。
「やれやれ、さっきから言っているじゃないか。「事件前後の記憶がない」なんて、怪しい事この上ないだろう?ほぼ間違いなく、モモこそ――グノーシアさ。ハ、上手く人間になりおおせたつもりだろうが、残念だったね」
……ここは、ゲーム『グノーシア』の舞台だ。なんで今まで気が付かなかったんだろう。僕には前世の記憶があるというのに……これも記憶喪失が原因か?
「いや、逆に考えてみて欲しい。この状況で記憶喪失だなんて、それこそ怪しすぎるし目立ちすぎる。捕食者の擬態としては不自然だと思わないか?」
セツが庇ってくれている。
……なら、今日はループ1回目か。なら、グノーシアは……。
「それに私が知る限り、グノーシア汚染された者が記憶を失った振りをした、という例はない。モモが敵なら、もっと上手く周囲に溶け込んでいるはずだ」
「ありゃ、もう時間ないっスよ?ま、誰がグノーシアかなんて、どうせ分かんないんだし。パパッと投票しちゃおうZE!」
どうやら、もう時間がないようだ。今日の投票ではおそらくライトがコールドスリープするだろう。
「……何のつもり?君達、僕がグノーシアだとか本気で思ってるの?」
「ラキオ。結果は、結果」
やはりラキオがコールドスリープとなった。いちいち鼻につく喋り方でグチグチ言ってくるラキオ。それをいなすジナ。
「ハッ、言われるまでも無いさ。拒否権など無いンだろう? さっさとコールドスリープルームに行こうじゃ無いか。しかし、これじゃ僕がコールドスリープから目覚めるのは望み薄だね。この面子で僕が凍ってしまったら誰が理性的な判断を下すのかな?私情に囚われず冷静に結論を出すことなど君達には出来ないだろう?」
そこから僕達はコールドスリープ室へと向かった。
「これで空間転移が終わったら? グノーシアが誰かを襲い、僕が無実の罪を被ったことが分かるだろうね。みすみすグノーシアの暗躍を許すなんて歯がゆいことだ。ああ歯がゆい」
ゲームの頃、何度でも見たラキオのスリープ際の長文。リアルだといつもの口調の2倍ほどの速さで喋っている事がわかった。
「あーもう、ラキオうるさいなあ。早いとこ凍らせちゃおうZE」
SQはもう飽きたといった感じだ。
「ああ……もうすぐ空間転移の時間だし、ね」
「コールドスリープは私が見届けるから、皆は先に部屋に戻るといいよ」
「モモ、部屋分かる?」
「あ……そうか」
「LeVi、モモを部屋まで案内してあげて」
船からフォンという音がした後に、自身のいる廊下に矢印のようなものが現れる。どうやら事実までの道のりを誘導しているらしい。
自室は……ゲームと同じ、個室2が割り当てられている。……正直安心した。
というのも、私は身体としては女なのだが、前世が男だったために、「女子部屋で寝る」というのに抵抗感を覚えていた。だから、個室でよかった。
『はじめまして、(主人公)様。当船の擬知体であるLeviと申します。皆様の快適な船旅のために、案内役を務めさせていただきます』
部屋のスピーカーから流れてくる音声。やや機械じみている声でそう言った。続けて。
『当船は10分後に空間転移を行います。空間転移時には意識を保つことができませんので、怪我をしないよう、ベッドに横になっておいて下さいね』
「わかった。LeVi、ありがとう」
Levi『!…それでは失礼いたします。……あら、お客様がいらっしゃったようですよ?』
「モモ、いるー?」
SQか。
「ありゃ、ドア開いちゃった。んじゃ失礼してっと」
SQは扉が空いているのを確認した後に入ってくる。
「やほー。SQちゃんだよ」
「SQ……」
「……って、んー、モモはSQちゃんの事覚えてないのよね。ひょっとしてアノ夜のことも忘れちった?」
「アノ夜?そんなものないだろう」
「ありゃ、モモ記憶喪失なんだよNE?何でそんなことわかんの?」
「騒動前後の記憶がないだけだ。私は記憶にあるうちに君と会ったことはない。それに私はさっきまで医療ポットの中にいた。ならば、SQと関わる時間はほぼないと推測したまでだ。」
「ナルホドナルホド、こりゃ一本取られちまったZE!」
「ま、それはどうでもイイんだけど。モモさ、いきなりシリアスな場面に放り込まれたワケでしょ?大丈夫カナーって。ついて行けてる?」
「正直、まだ完全に飲み込めたわけじゃない」
「アハハ、SQちゃんもついて行けてないから大丈夫さっ!それにホラ、モモにはセツがいるし」
「優しくしてもらっている、それに議論でも庇ってくれた」
「そそ。そのセツのことだけどさ。ヤケに(主人公)に親切だよねー。なんか(主人公)のコト、よく知ってるみたいな感じだし」
「でもさあ、モモ、気をつけてねー。親切だからってムヤミに信じちゃダメよん? あのね……グノーシアって、嘘ついてヒトを騙したり、取り入ったりするんだって。だから中々やっつけらんないらしーんだけど」
SQがこちらに体いさを近づけ、まるで秘密事をいうかのような距離で言う。
「ひょっとしたら。セツがそのグノーシアかもしれないZE?」
『空間転移3分前です。モモ様、そろそろベッドに横になって下さいね』
LeViのアナウンスだ。
「おっと時間切れみたい。なんだったらモモ、一緒に寝ちゃう?」
『グノーシア対策規定上、それは認められません。SQ様、自室に戻って下さい』
「ちぇー、LeViセンセ厳しいの。はーい、おとなしく帰りますよう。んじゃ、モモ。生きてたらまた明日ねー」
そう、言い残してSQは彼女の眠る共同部屋に向かっていった。そして、空間転移の時間が来る。
『空間転移まで、カウントダウンをいたします。10、9、8、7、6、5、4……3、2……1……』
そのまま眠りにつき、2日目。モモは目を覚ました。消される恐怖心はない。今はまだ、消されない、凍らされないことをわかっているから。
『空間転移完了時にグノーシア反応を検出いたしました。乗員の皆様は上申された手続きに従い、グノーシア汚染者を排除して下さい。繰り返します。空間転移完了時にグノーシア反応を検出いたしました。乗員の皆様は……』
LeViのアナウンスだ。グノーシアはまだ生き残っている。
「モモ! そこにいる!?」
「大丈夫。生きている」
「モモ……」
セツが部屋に入ってきた。僕の安全を確認した途端、胸をなでおろした。
「あ、いや――むやみに騒いで悪かったね。うん、無事で良かったよ」
「……ああ、LeViの警告が止まったみたいだ。モモも聞いただろう?」
「ラキオはグノーシアじゃなかった」
「そう、ラキオはグノーシアに汚染されてはいなかったんだ。LeViの言う通り、敵はまだ残っている」
「ともかくメインコンソール室に行こう。全員……そこに集合するはずだ」
セツについて行き、メインコンソール室へと向かう。そこには、本来二人いるはずの乗員の一人しかいなかった。
「オハヨ、お二人さん。また会えたねー」
「SQ、か……」
そう、今回のグノーシアはSQだ。昨日あんなにもセツの危険性を説いてきた彼女自身がグノーシアだったのだ。
「あー、そっか……。二人が無事ってことは……アレかな?」
「LeVi、ジナの所在を確認して」
セツの言葉の後に、LeViはすぐに反応した。
『……船内に、ジナ様の反応はございません。ログを見る限り、空間転移直後にジナ様の反応が消失しております。恐らく……』
「グノーシアに……ヤられちゃった?」
そう、ジナはグノーシアに、SQによって消されてしまったのだ。
「そうだ。ジナは……この宇宙から、消されてしまった」
「SQ、モモ、そして私。この三人の中にいる――グノーシア汚染者に襲われて、ね」
「んー、ヤッパそういう話になっちゃうんだ……」
「ああ……始めようか。私たちが生き残るための、話し合いを」
話し合い…か。
「ちょっと、いい?」
「?どしたの?モモ」
「議論はする必要ない」
「どゆこと?」
「まず、SQとセツは互いに「コイツがグノーシアだ」と思っている。となると、二人は投票のときに互いに一票はいる。なら、私の決定次第ということになるだろう?」
「それが?」
「わからないのか?私はもう投票先を決めている。投票へと移ろう」
「!!!」
投票結果、SQがコールドスリープすることが決定した。
「ちぇー、ダメかぁ。イケると思ってたんだけどなー」
「ね、どうせダメなら逃げちゃうのってアリ?」
「……その場合、LeViが実力行使に出るだろう」
「だよねぇヤッパ。まあねー、大人しく凍っておくとしますか」
「SQのコールドスリープを確認した。これで、終わりだね……」
少ししてSQがコールドスリープしたことをセツが伝えてくれる。
「……そう、モモに。受け取って欲しいものがあるんだ」
「これを、持っていって」
「これは……」
「『疑うな。畏れるな。そして知れ。全ては知ることで救われる』」
間違いない、銀の鍵だ。
「私にこれをくれた人が、そう言っていたんだ。ずいぶん……昔のことだけどね」
「……」
「モモに必要になるだろうと思うから。今のうちに渡しておくよ」
「……ありがとう」
「あとは……そうだな。ふふ、何を話したらいいんだろう」
「……うん。改めて、自己紹介しようか。今まで慌ただしくて、ちゃんと名乗れなかったから。私の名前は、セツ。これから、よろしくね」
「『M.OMO』、モモだ。よろしく」
「……言うべきか否か迷っていたけど……やはり言っておくよ。モモはこれから、長い旅をすることになるんだ。だけど覚えておいて。私はできる限り、モモの味方だから」
その言葉の意図はわかっている。どのループでも同じ陣営とは限らない。敵対するときもあるだろう。でも、僕もセツの味方でありたいと思っているよ。
口には出さずに心のなかでとどめておく。
次第に宇宙が歪み始め、目の前が真っ黒に染まる。
染まりかけた最中、モモはセツに聞こえるか聞こえないかのギリギリの声で言った。
「これからよろしくね」
きっと、トゥルーエンドを迎えた時、モモとセツは同じ宇宙にはいないだろう。
決して同じ宇宙で生きられない二人。
長い夢物語。モモはそんな風に切り捨て、半ば諦めていた。……あの日が来るまでは。
グノーシア人物紹介
『夕里子』
年齢:19歳
性別:女
身長:159cm
出身:不明
ステータス
カリスマ:50
直感:45
ロジック:46
かわいげ:38
演技力:50
ステルス:25
肩まで伸びた綺麗な黒髪と威圧感のある口調と仄暗い瞳が特徴的な謎多き女性。
ゲーム『グノーシア』内では「ステルスを除き、全てのステータスが非常に高い。敵に回すと最も厄介な人物。なお、冷たく突き放すような性格のため味方でも安心できない」と評価されており、夕里子が会議中で攻撃されようものなら『反撃する』という「相手を殺すコマンド」を打ってくるし、「反論を封じる」なども使ってくるので、同調ばかりが目立ってしまい、夕里子に味方する人が増えていきます。
コメットがよく使う『人間だと言え』に反応しないこともある為、疑いの目を向けられてそのままコールドスリープする事もある。
モモからしたら「リアルでどうやって対抗すればいいんですか?」といった感じで、モモは「グノーシアをコールドスリープさせること」に特化しているのに対し、夕里子は「自分に害をなすものを排除すること」に特化している為、ほぼ夕里子が上位互換である。
仮に、モモと夕里子が正面で戦う(モモは乗員、夕里子はグノーシアとする)場合。高確率でモモが負けます。理由は『ステルス』差です。夕里子はステータスの中で最も低い25という数値ですが、モモは1(迫真)。モモが少し話せば『うるさい』が飛んでくるのに対して、夕里子はそれをうまく回避しながらモモに攻撃、または『反撃する』事ができる。(モモは直感、カリスマ、ロジックは高いがかわいげ、演技力、ステルスが低いので、『反撃する』『助けを呼ぶ』などが使えない悲しい人となっている)
なので、本編前では『なんとかしてセツかモモがエンジニア、グノーシアとなることを願った後に、真エンジニア認定を受けて夕里子に黒打ちする』という神頼み戦法に走ろうとしていた。
──────────────────────
正直、心情や人物の容姿、特徴を書くのが苦手です。例えばヒナの服装とか角の位置とか、どう形容すればいいのか。
パヴァーヌ編を書くか書かないか
-
書く
-
書かない