パエトーンのお兄ちゃんが、こんなにモテモテなわけがない!   作:雨あられ

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CH2.エレン・ジョー

フーン、結構いいじゃん。

 

 

それがプロキシを初めて見たときの率直な感想。

 

何ていうか、オーラ?

虫も殺せなさそうなお人よしの雰囲気で、顔も……割と好みな方。

あたしとプロキシはとある事件で一緒に任務をこなした後、連絡先を交換して毎日ノックノックでくだらないことをメッセージしたり、予定が会えばたまに遊んだりするような仲になった。

 

何でかな、波長が合うっていうか、気を遣わなくて良いっていうか……

とにかく……「アキラ」と居るのは悪い気分じゃなかった。

 

そして、今日も……自室のベッドでキャンディを舐めながらゴロゴロしているとノックノックがやってきた。

自然と笑みがこぼれる。尻尾が揺れる。

さ~て、今日はどんなショーもないことを送ってきたのやら……?

 

 

「あれ、リナから………………ハァッ!?」

 

 

舐めていた飴の棒がバキリと折れる。何故ならその送られてきたメッセージには……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-新エリー都 六分街・レンタルビデオ店「Random Play」-

 

朝、階段を降りていくと、ジュ~と妹がフライパンで焼くベーコンの匂いが部屋の中に充満している。

 

「おはよう!お兄ちゃん!今日は、意外と早起きだね!」

 

「おはよう、リン……暑くて目が覚めてしまったよ」

 

エプロン姿のリンが笑顔で振り返った後、パタパタとスリッパ姿で駆けまわる。

僕はその間におおよそソファの前に置かれていた雑誌やコップを片付けてから、二人分の食器を並べて準備する。

 

「ほら、どいたどいた、危ないよ~」

 

テレビをつけてニュースを観ていると、やがて、リンがフライパンを持ってきてお皿にベーコンをこそいでいく……いや、どうやら焼いていたのはベーコンだけではないらしい、ふわふわのスクランブルエッグも一緒だ。

丸いパンとサラダが乗ってご機嫌な熱々で出来立ての朝食が目の前に現れる。

 

「今日のは特に美味しそうだね」

 

「えへへ、ちょ~っと焦がしちゃった」

 

「苦みがスパイスになってちょうどいいさ。じゃあ、そろそろ……」

 

早速フォークを持って朝食にありつこうとしたとき、ドンドンと扉を叩く音が聞こえる。

聞こえないふりをしてまたフォークを動かそうとしたときにひと際オーバーパワー気味にノックが響く。

 

「……お兄ちゃん、誰か来たみたいだよ!」

 

「うん、そうみたいだね」

 

「お兄ちゃん!」

 

どうやらご飯を食べ始めた妹は出る気がサラサラないらしい。

朝食を作ってもらった手前僕に拒否権があるわけもなく……出てきた涎を飲み込むと席を立って玄関へと向かった。

 

 

「エレン。君だったのか」

 

黒い髪に赤いインナーメッシュ、スカートの後ろから伸びた大きなサメの尾ビレに特徴的なギザギザ歯。

扉の先に気怠そうに立って居たのはヴィクトリア家政のメイド服姿で立っているエレン・ジョーその人だ。

 

「…………おはよ、プロキシ……超暑い…………」

 

「ああ、とりあえず入ってくれ。だけど……今日はどうしたんだい、こんな朝から、それに仕事のメイド服まで着て……?」

 

ビデオ屋に足を踏み入れた、エレンからすれ違いざまにピッと一枚のチケット?を渡される。

 

「これは……専属メイド体験チケット……?」

 

尻尾がくるんと揺れてエレンは振り返ると、僕の手を持って上目遣いにこちらを見る。

 

「………………よろしくね、ご主人様?」

 

「なん……だって!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パエトーンのお兄ちゃんが、こんなにモテモテなわけがない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いいな~お兄ちゃん!あのヴィクトリア家政のメイドさんに一日ご奉仕してもらえるなんて!

 

予定があり、外へと出かけたリンに言われたのがつい先ほどのことだ。

リン……彼女がメイドとして真面目にご奉仕をするように見えるのかい?

一緒に朝ご飯を食べ終えたエレンは……

 

「ふわぁ~~」

 

早速僕の膝を枕代わりにして、ソファの上に寝ころんで欠伸を掻き、眠たそうに瞼をしょぼしょぼさせている。

これがご奉仕……?

 

「エレン、それがご主人様を前にしたメイドの正しい勤務態度なのかな?膝枕も、普通逆なんじゃないのかい?」

 

「ん~…………アリガトウゴザイマス、ゴシュジンサマ~」

 

そう言いながらも膝から動く気配はない。

 

全く……これではどちらが従者かわからない。

 

彼女が持ってきたのは専属メイド体験チケットという、文字通りエレンが時間いっぱい僕の専属メイドになってサービスしてくれるというものだ。

同じヴィクトリア家政のリナさんから与えられた任務で、サービスが完了したら、評価をつけて、☆4以上の評価をもらうように言われている。ということらしい。

説明を受けていた朝食中に、それは知り合いでも問題ないのかい?と僕が聞いたら、知り合いじゃダメなんてルールないし良いでしょ。とパンにサラダとベーコンを挟んで食べながらやる気のない返事をくれた。

 

彼女と僕は仲が良い。

 

いや、と言うよりも彼女がその不愛想な見た目に反して、不思議なくらい僕に懐いてくれているというべきだろうか。

基本的には面倒くさがり屋な雰囲気を受ける彼女だが、僕がヒマだと言って何かを誘った時に断られたことはないし、逆に彼女も暇さえあればウチに顔を出したり、近くでライブを見たりお腹が空いたときに、ラーメンを食べたりととにかく付き合いがいい。

 

今では僕にとって欠かせない友人の一人だ。

 

「も、もう良いって」

 

おっと、無意識のうちに、彼女の頭を妹にやるように撫でてしまっていたようだ。

エレンは身体を起こすと、ジト目で恨めしそうに僕の方を見た。よく見ると耳まで真っ赤で……少し怒っているのだろうか?

 

「……悔しいから、あたしもやる。はい」

 

「え?いや、僕は……」

 

「ん!」

 

ポンポンとスカートの上を叩いてから、赤い顔で両手を広げるエレン。

何を言っているのかわからないが、断ると恐ろしいことが起きそうな気配があるのは確かだった。少し恥ずかしかったけれど頭を倒して彼女の膝の上に乗せる。

柔らかくてふんわりとした生地が気持ち良くて、彼女の体温がクーラーで少し冷えていた身体には温かく感じられた。そのまま、赤いマニキュアを塗った手が僕の頭をゆっくりと撫で始める。

 

「よしよし……ね、どう?ご主人様、恥ずかしいでしょ?」

 

「確かにこれは少し……でも、信頼してるエレンの膝の上なら……安心感があって気持ちがいいよ」

 

「…………バカ」

 

こうも気持ちが良いと眠ってしまいそうだ……今日は僕が店番の日だというのに……。

心地良いリズムで僕を撫でる細い手と、彼女が呼吸をするたびに上下する膝のせいで、抗いがたい睡魔に見舞われる。このままじゃマズイ。

 

『マスター業務開始の時刻となりました。速やかに表のドアの看板を回転(開店)させる必要があるでしょう』

 

「……ははは、Fairy、うん、とても面白いよ……」

 

Fairyのアラートと寒いギャグで目が覚めた。

名残惜しいが、起き上がると身体が鳴るくらい背筋を伸ばして、少しクラっとした感覚がやってきた。

 

「で、何すればいい?」

 

「エレン、君には店番を任せても良いかい?」

 

「ま、いいよ」

 

と偉そうに足を組み、腰に手を当てて頷くエレン。なんて偉そうなメイド様なんだろうか。

僕はおかしくて少し噴き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

割としっくりくるかも……ビデオ屋の仕事って。

 

ビデオ屋さんの仕事はあたしの想像よりも、ヒマで、結構ノンビリしてた。

任されたことと言えば、店内の軽い掃除と、返却のあったビデオの巻き戻し作業。やってくるお客さんへのうたた寝しながらの接客……。飴を舐めたりしてても問題なし、それに……。

 

ピッタリと、背中を壁に付けると……後ろのスタッフルームからアキラのキーボードのタイピング音が聞こえてくる。それが裏か表か、どちらの仕事かはあたしにはわからない。

だけど、一緒の仕事場に居るのが何となく嬉しい。

 

リナからこの専属メイドの話を聞いたとき、面倒くさいとおもったけど……我ながら上手くやったものだと思う。

どこの誰とも知らない相手にサービスするだなんてまっぴらだが、相手が気心の知れたプロキシだっていうのなら話は別だ。

 

 

変わらないリズムのタイピング音、店内に流れる巻き戻しのビデオの音、窓から差し込んでくる木漏れ日……ゆったりした空間が心地良くて、あたしは再び眠りについた。

 

 

……と、寝てたらちっちゃなボンプに起こされた。18号っていうらしい、あたしより真面目だ。

 

「はいはい、わかってるから……起きるから……」

 

「ンナナ!ンナナ!」

 

「ん?」

 

「おい、ちゃんと、聞いてるのか!?」

 

「ハァ?……何?」

 

ぼんやりした目で見ると、どうも目がとんがったおじさんだった。

 

「ンナナ!ナンナ!」

 

「だから、このビデオがちっとも面白くなかったから返金しろって言ってるんだよ!全く、ビデオもつまらなければ、店員の態度も最悪だ!」

 

「あー……」

 

そういうこと。

つまり、クレームをつけにきたお客様。ってワケね。

商品のビデオを握りつぶしそうなくらい強く握って、さっきからわけのわかんないことを……。

あたしはツバを飛ばしながら話す柄シャツのお客様に向かって尻尾の先端を向ける。

 

「うっ!?な、何のつもりだ!?」

 

「……最後まで全部観たんでしょ?だったら、返金なんてするわけないし……良い大人がそんな当たり前のこともわかんないワケ?」

 

「な!?この……!」

 

「ッ!!」

 

お客様に強く尻尾を掴まれたので反射的に反撃してしまった!

お客様は勢いよくドアにぶつかって玄関の外まで吹っ飛んでしまった。

 

「あ……ヤバ……」

 

「エレン」

 

「!」

 

心臓が跳ねて、サッとあたしの血の気が引くのがわかった。

声を掛けてきたのは当然、騒ぎを聞きつけてスタッフルームから現れたアキラだ。

アキラの姿を見て、吹っ飛んだお客様がプルプルとこちらに指を差して怒りを露わにする。

 

「ちょ、ちょっと店長ッ!!?おたくのところの店員は一体どんな教育を受けているんだ!?わ、私はお客様だぞ!」

 

「あぁ……」

 

あたしと反対方向に空きっぱなしのドア。それと腰を抜かして地べたから大声を張り上げるお客様を見比べて状況を把握したらしいアキラ。

 

「……あーゴメン。つい」

 

……せっかく良い感じで、こんな迷惑かけるつもりじゃなかったのに……。

信頼されて仕事を任されていたのに、それを裏切ってしまったのが申し訳なくなり、俯いていると……

 

「気にしなくていいよ、エレン」

 

と頭をポンポンとされる。顔を上げるといつもみたいな優しい笑顔。

そして、アキラはあたしに背を向けるとお客様の方へと足を進める。

 

「大丈夫。話せばわかってもらえるよ……ねぇ、ダリルさん?」

 

「え?」「な!」

 

「ダリル・グレッグさん。ルミナスクエアで普段はタクシー運転手として生計を立てている46歳。独身。趣味はお酒の瓶の王冠集めで、仕事が上手くいかないと女性店員にクレームをつける習慣があるみたいだ。つい最近もHIAの職員に対して「ままま、待ってくれ!ど、どうしてそれを!?」」

 

ハっと、お客様が辺りを見渡し始める。

ざわざわと、いつの間にか周りに野次馬が集まり始めている。

お客様は顔を真っ青にして立ち上がると苦笑いを浮かべ始める。

 

「何事も、失敗や勘違いということはあるものだと思うけど」

 

「そ、その通りだ!だ、大丈夫だ。そう、これは何かの気のせいだったみたいだ……そ、それではー!」

 

そう言うと少しずつ後ずさりをして、最後にはとんでもない速さで走って逃げていく元・お客様。

あたしは開いた口がふさがらなかった。

 

「エレン、怪我はないかい?」

 

「え、あ、うん。というか……今の良かったの……?仮にもお客だったんでしょ?」

 

「うん?あぁ、ああいう困ったお客さんにはしつこく来られても困るからね。だから、寧ろスッとして助かったよ、エレン」

 

「ふふっ!何それ」

 

そう肩を竦めるアキラに、あたしは彼の優しさが頼もしくも、温かで、おかしくって笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の夕飯はあたしが作るから。

 

二人で昼食にラーメンを食べている最中、エレンがそう息巻いていたので一緒に夕飯の買い出しに行くことにした。彼女が料理をする姿はなんだかイマイチ想像できないが、何でも名誉挽回?の為らしい。彼女がリナさん並みの先鋭的な料理を作る危険性もあったけれど、ここはご主人様らしくどっしり構えてサービスを受けるべきだろう。

 

雑貨屋141はとても便利だ。いつでも新鮮な食材を買い付けることが出来るのだから。

 

買い物を終えて店へと戻ると途中、先ほどから何か言いたげにこちらをチラチラみながら歩いていたエレンから声がかかる。

 

「ね、今日は専用メイドだし、荷物くらい持つけど?」

 

「そうだね……じゃあ、半分こしようか」

 

「半分こ?」

 

「妹ともよくやるんだ」

 

そう言って、袋の持ち手を半分渡すとエレンは面食らっていた。

恐る恐ると言う風に、もう片側を持つエレン。やっぱり、一人よりも二人で持った方が軽くて良いよね。

 

「なんか、夫婦みたい……」

 

「え?」

 

「今のなし!」

 

そもそも、良く聞き取れなかったんだけ…………って、うわ!!

突然エレンが物凄いスピードで僕に体当たりをするように電柱の後ろに連れ込まれる。そのまま、彼女は手を壁について僕を挟む、所謂、壁ドン、という体制だ。

 

「え、エレン。突然、どうしたんだい?」

 

「っし!」

 

僕の口を手で覆うと周囲を見回して更に身体をこちらに寄せ…………!?

 

「もっと奥つめてよ……!」

 

「一体何が……」

 

すると、反対側の道から普段エレンが着ている制服と同じ服を着た少女が3人、こちらに向かって走ってくる。

なるほど、彼女はこの秘密のバイトのことをみんなには隠しているって言ってたっけ……僕もなるべく呼吸を止めて気配を殺そうとする……けど、エレンの頭がすぐ近くに来て、良い匂いが鼻腔をくすぐる。

 

「…………ふぅ、行ったみたい」

 

「はぁ、びっくりした」

 

「ゴメン、驚かせて。反対側から友達が来るのが見えて」

 

「ううん、大丈夫。わかってるさ。それにしても、すごく俊敏で噛みつかれるのかと思ったよ」

 

「……シリオンは誰かを無暗に噛んだりしないよ。噛んだりするときは特別怒ってるときか……特別気に入った相手だけ」

 

そう言ってエレンはギザギザの歯をイーっと見せて、僕達は同じ袋を持って再び帰路への道を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ……と、お腹をさすりながらベッドの上に腰を下ろす。

 

その後、何事もなく仕事を終わり、リンも帰ってきて、3人でエレンの夕食を食べたのだけれど……なかなかに噛み応えのある食事とボリュームだった。

エレンが作ったビーフシチューは、ゴロゴロとした巨大な野菜と肉塊に顎をこれでもかと使わなければ噛めないくらいボリュ―ミーだったからだ。

けれど、味は予想に反して美味しかった。ライカンさんから指導を受けたらしくて、ちょっとゲンナリしてたっけ。

けどお陰で美味しい食事にありつけたのだから彼には感謝しかない。

 

妹はお腹いっぱいになってさっさと寝てしまい、今2階の僕の部屋には僕と……エレンの二人きりだ。

そう彼女と僕は今…………なぜか同じベッドの上で寝ころんでいる。

 

「エレン、これはどういう状況なんだろう?これもメイドとしての業務の一環?」

 

「ん?違うけど?だってもう勤務外だし……眠いし……ふわぁ~」

 

天井を見ながら大きく口を開けて欠伸をするエレン。流石の僕もこの状況が些かマズイシチュエーションであることくらいは察している。

 

「エレン、君がこうやって心を開いてくれるのは嬉しいけれど……」「ね」

 

「その……今日どうだった?ちゃんとサービスできてた?」

 

……不安そうに聞くエレン。

僕は今日一日を改めて振り返る。

迷惑なお客さんを吹っ飛ばして、二人で物陰に隠れて、その後はゲームしたり、料理を食べたり。

 

「もちろん満点さ。とても楽しかったし、そうアンケートにも書いておくよ」

 

仕事を手伝ってもらったし、こうして夕食まで作ってくれたのだから、当然だろう。

しかし、ゴロンとひっくり返ったエレンは指で僕の頬っぺたをつっつく。

 

「そういうことじゃなくて、もっとなんか…………」

 

「後、嬉しかったよ。エレンが僕のために頑張ってくれたのが、すごく伝わってきたからね」

 

「!……そ、そういう恥ずかしいことサラッと言わない!」

 

う!彼女の尻尾が僕のお腹の上に重くのしかかってくる……というか前より少し太く……?

うわ!!心を読まれたのか、尻尾が更に強くのしかかってくる。

 

「エレン、苦しいよ……」

 

このままじゃ、さっき食べたビーフシチューが……

 

「…………」

 

「エレン……?」

 

「…………すぅ……」

 

……どうやら眠ってしまったらしい。

まぁ無理もないだろう。彼女は今日一日すごく頑張ってくれたのだから。

さて、ベッドは彼女に譲って、僕はソファにでも……。

 

「……う、動けない」

 

マズイ。

何だかこのお腹に乗った尻尾がすごく柔らかくて……段々とこの圧迫感も、眠く……。

理性で打ち勝とうと頑張ったのだが、隣から聞こえてくるエレンの寝息がまた、眠気を誘い……僕らはそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、起きたら。

 

エレンに噛まれていた。

 

どういう原理か、彼女は僕の身体を尻尾で拘束して、僕の首筋に噛みつきながら眠っているのだ。寝ぼけているのだろうか……

ただ、噛まれてはいるが、本気で嚙み千切られそうな感じじゃない。

歯を乗せてるという感じで、甘嚙みに近い。ちょっと痛いけど。

 

暫くどうすることもできずに動けずにいたがやがて、ん~と、エレンが気だるげに目を覚ます。

 

寝ぼけた赤い目と目が合う。

 

「……………」

 

「……………」

 

「お、おはよう、エレン」

 

エレンは僕から歯を離すと、次第に見たことがないほど顔を赤くして、嘘、夢じゃなかった……とか言いながら、無言でズルズルと布団の中へと籠ってしまった。

 

首と、それから手などにもついていたサメの歯型は、暫く消えず、不思議に思うリンを誤魔化すのに当分、苦心するのであった。

 

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