パエトーンのお兄ちゃんが、こんなにモテモテなわけがない!   作:雨あられ

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CH6.キング・シーザー

-新エリー都・郊外 旧油田エリア「ブレイズウッド」-

 

「おーい、ルーシー起きろ。なぁ、おいって!」

 

瞼を擦って時計を確認すると、時刻はまだ深夜に近い早朝。

騒音の主は、私が無視して二度寝しようとするのも構わずにあの馬鹿力で幾度となく部屋のドアをノックしていて、このままじゃ破壊されてしまうのも時間の問題だろう。

寝間着姿のままドアを開けると、纏わりついてくる空気が肌寒くて、視界に入った窓の外は暗い方が勝っているくらいの空模様……。

 

「うっさいですわねぇ……あなた、シーザー……!今何時だと思ってますの!?」

 

部屋の外に立っていたのは、寝ぐせたっぷりのヘアスタイルをしたキング・シーザー。彼女は私の苦言を物ともせずに腰に手を当てたままニッカリと笑った。

 

「悪い悪い。それよかほら、この前やってくれたアレやってくれよ。あの、爪キラキラするやつ「マニキュアですの……?」そう、それ、やってくれよ」

 

「……アホですのあなた?こんな朝っぱらから叩き起こされたと思ったらそんなことで……いえ、確認するまでもなく超が付くほどおバカでしたわね」

 

「あぁ?……良いから頼むって、なぁ~ルーシー」

 

「……はぁ~、もうしょうがないですわね……終わったらとっとと帰るんですのよ」

 

「おう!」

 

元気よく返事をした彼女を部屋に招き入れると、変なところを触って壊さないよう、くれぐれも周りのものを触らないようにと注意してからすぐ近くにあった椅子に座らせる。

シーザーは両手を椅子に乗せて落ち着きなく体を揺らした。

 

やけに大人しいですわね?

 

と。化粧台から「カーリッシュ」のリボンが巻かれたケースを取り出して、彼女の対面に座って準備を終えると、ん!と、ぶっきらぼうに彼女が右手を突き出した。

私はその手を取ると、大きく出そうな欠伸をかみ殺しながら、ネイルファイルで彼女の爪先を整え始める。

 

「~♪」

 

私が作業をしている間も鼻歌を歌い始めたご機嫌なシーザーを見て更に不気味だった。

以前、面白がって彼女にマニキュアをしてあげようとしたときなどには、彼女がジッとしていられなくてパイパーとバーニスが取り押さえてないと暴れだしそうなくらいだったというのに……

 

「シーザー、あなた今日はどこかへ行くんですの?」

 

「ん?お~……まぁな……」

 

「フ~ン?」

 

やけに歯切れの悪い返事。続いてスポンジバッファで爪を掃除し始めて爪がピカピカになっていくと、彼女はそれを見てヘヘッとニヤケ面を浮かべる。

……考えられるのはバーニスたちとツーリング……得意先との会食……いえ、最近彼女が見ていた少女漫画では主人公もマニキュアを塗っていた、そしてその後は……。

 

「……まさかデートですの?」

 

「ンナッ!!?」

 

ボンプのような素っ頓狂な声を出しゲホゲホ!と大きく咳き込み始める彼女を見て私の眠気が一気に吹き飛んだ。

 

まさか、あの単細胞ガキンチョのシーザーにそんな相手がいるなんて!?

 

「い、意外ですわね、あなたが……」

 

「べべべ、べつに良いだろ!?……オレ様だって、で、デートのひとつやふたつ……」

 

分かりやすいくらい赤面をして声がだんだん小さくなっていく彼女が可笑しくって私はクスクスと笑いがこみ上げてくる。

 

「悪いだなんて一言も言っていなくてよ……それで、どの色にしますの?」

 

え、そうだな……と顎に手を当てて真剣に悩み始めるシーザー。あの水で顔を洗っただけでスキンケアを終えるようなキング・シーザーが!

普段は決闘をしたり、怒らせるような行動ばかり取る彼女でも、同じ女性として恋愛事には素直に協力してあげたい気持ちになる。それと同時に、彼女に先を越された悔しさのようなものも交じって複雑な気持ち……。

 

そうだ、私も、今日はプロキシさんからデートに誘わせて……。

 

「「アキラ」はどの色が好きなんだろ……」

 

「……………………ハ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パエトーンのお兄ちゃんが、こんなにモテモテなわけがない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1日前……

 

-ルミナスクエア 商店街前 昼-

 

「だから、オレ様はやってねぇって!」

 

「あぁ?やってないって証拠はあるのか?見てた人もいないし、周りにも誰も居なかった。お前以外、やりようがなかったんだ!」

 

ルミナスクエアの運送会社に荷物を届けて、一仕事終えた後の事だった。

もう秋とはいえ、まだ少しばかり暑かったし喉がカラカラだったから、その辺の自販機で冷たいボムコーラを買うと、良い感じにあった木の机を背もたれにして一気に飲み干してノドを潤していた……そんな時だった。

 

ガチャン!と、何かが割れたような嫌な音が後ろから聞こえてきた。

 

振り返ってみると、どうやら後ろの机に乗っていたガラス瓶か何かが落ちて割れちまったらしい。同じように振り返った姿勢の持ち主らしき男が、顔を青くしてワッ!と短い悲鳴をあげていた。

 

こいつはご愁傷様だなと思っていたら、何を勘違いしたのか、男がオレ様に突っかかってきやがった。

 

「おい……あんたが割ったんだろ?これは、我が社の新商品だったんだぞ!」

 

「ハァ?そんなわけないだろ。オレ様はただ、ここで飲み物を飲んでただけだぜ?」

 

「しらばっくれるな!」

 

「……んだと!?」

 

初めは相手にしないつもりだったが、相手のチクチクした物言いに、やってもねぇのになんでそんな事責められねぇといけねぇのかって、段々とこちらも腹が立ってきた。

気が付いたら反論するこちらの語気も荒くなっていて、口喧嘩はヒートアップしていった。

 

「だ・か・ら・違うって言ってんだろ!?つーか、オレ様がやったって証拠はあるのかよ!」

 

「お前のその格好……郊外の出身だろ?知らないだろうから教えてやるが、新エリー都には器物損害罪って犯罪があって、治安局に引き渡すには十分な罪状になるんだよ!」

 

「チッ!?オマエ馬鹿にしてんのか!?」

 

「うわっ!な、ななな、殴るつもりか!?」

 

ついイライラしちまって相手の胸倉掴んだ後に、ハッとする、いつの間にか口喧嘩を聞きつけた野次馬が大勢集まり始めていたからだ。

相手があからさまに吹っ掛けにきている怪しい奴なら、相手の顔面にこのままグーをお見舞いすればそれで仕舞いだったのだが、どうにも相手の男も被害者で、オレ様がやったと勘違いしているだけみたいなのが厄介だ(口ぶりはムカつくが)。それにこの状況、こんなにたくさんの証人の前で殴ったりすれば今度は別の罪状が付くだろうし、自分が壊したって認めるようなもんだ。

 

「喧嘩?」「なんかあの女の人が壊したんでしょ……」「郊外とか聞こえたな」

 

!だから、オレ様は壊したりしてない!!

 

……壊したり……していないのは確かだが、何度もしつこく言われているうちに、オレ様自身、段々と自信がなくなってきた。もしかしたら後ろの肘で気付かないうちに小突いちまったのか?と、普段よく物を壊す経験からそんな考えまで浮かんでくる。

 

「フ、フン!さぁ、さっさと私を下ろしてくれ。今なら謝罪と弁償さえしてくれれば、大事にはしない」

 

「だ、だからオレ様は……」

 

クソ!気分が悪い。

逃げようのない重たい変な空気が、オレ様たちを中心にグルグル渦巻いていて、周りの声が全て耳障りで……心が押しつぶされそうだ……。

 

 

そんな時だった。

 

 

「シーザー?どうしたんだい」

 

「!!プロ……アキラ!」

 

野次馬をかき分けて顔を出したのは、伝説のプロキシ・パエトーンのアキラだった。

アキラはビデオ屋の仕事途中だったのか、段ボールの箱を持ったまま、こちらへと近づいてくる。少しズレたそれを持ち直すと、改めて声を掛けてくる。

 

「何があったんだい。それに、その今掴んでいる人は?」

 

「き、聞いてくれ、アキラ!オレ様は壊してないんだ!!何もやってないのに、こいつが言いがかりをつけてきて」「嘘だ!知り合いみたいだが、そうやって、情に訴えかけようたってそうはいかないぞ……それ、見ろ!この今にも殴りかかってくるような乱暴さが、あんたが壊した何よりの証拠だ!」「違う!!オレ様は!」

 

「大丈夫だよ、落ち着いて……。ゆっくりとその人を降ろして、僕に事情を説明してくれないかな」

 

 

 

 

 

「なるほど……」

 

興奮して、早口の拙い説明になってしまったがアキラはその間黙って聞いてくれていた。そして全てを聞き終わると、腕を組んで何か思案し始める。

 

ただ、改めて説明してみて今の状況のヤバさを再確認した。と言うのも、アキラが見てたのは、今まさに疑ってかかってくるあいつを殴ろうとしている自分の姿だ。状況証拠で言うと、圧倒的にオレ様が不利。周りの野次馬の大半も、きっと郊外から来た乱暴者のオレ様が壊したんだなとそう思っているだろう。それに話している間も記憶が正しいのか不安になってきて、「~だと思う」とか、「~だったかも知れねぇ」、なんて弱気な言葉が出ちまった。

 

「アキラ……」

 

「シーザー。この件、僕に任せてもらっていいかな?」

 

「!あ、ああ!もちろんだぜ!」

 

アキラがそう言ってくれた時、なんか、心がじわっとあったかくなって、体中が震えあがった。そして、気が付いたが、あの時感じてた嫌な気分は全くなくなっていて、心底安心していた。

 

やがてアキラは視線を動かすと、とある一つの雑貨屋の中に入っていった。

そのまま数分もしないうちに戻ってくると、抱えてきたのは店のボンプ……?

 

「そいつは……?」

 

「シーザー、君の無実の証人さ。お店の人に許可はもらったから、映像記録を映してみるよ」

 

アキラがボンプをいじると、ボンプの目が光って近くの壁に映像が投影され始める。

ボンプは向かいの店をじっと暇そうに見ていたようだが、アキラが視界の端っこを拡大すると、ついさっき、まさにオレ様が飲み物を買った時の後ろ姿と、相手のセールスマンの男が机に背を向けて座っている姿がバッチリと映っていた!

そして、問題のシーンに差し掛かった時、黒い影が瓶を倒した!その影が次に向かったのは……!

 

映像の通り、机の下をみんなで覗き込むと、容疑者はニャー。と、無邪気に鳴き声を上げて白状したようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に助かったぜ!ありがとな!アキラ!」

 

「大事にならなくてよかったよ」

 

改めて、プロキシのことをすげーやつだと見直した!

あの後、男はさっきまでの嫌な態度が嘘みたいにペコペコと謝ってくれた。まぁ、オレ様もカッカしちまって話をこじらせちまったからお互い様だってことにして手打ちにしたら、アキラは、器が大きいね、なんて冗談を交えながら褒めてくれた。

……けど、オレ様が笑って相手を許す余裕を持てたのは間違いなくアキラの機転のお陰だ。

 

「それにしても、どうしてあのボンプがオレ様たちを見てるって思ったんだ?」

 

「あぁ、確証はなかったけど僕もよくあの辺を通るからね。実はあのボンプは……」

 

ちょいちょいとアキラが手招きするので顔を寄せて耳を近づけると

 

 

「好きなんだよ」

 

 

「へ!?」

 

アキラに耳元で囁かれて、心臓がビクンって跳ねた。

 

「あの店員のボンプは向かいの店のボンプが好きなんだよ、だからいつも目で追って眺めているのを知っていて……?シーザー、大丈夫かい?」

 

「あ、あぁ、そうだったのか。けどあの一瞬でそこまで思いつくのは流石だぜ」

 

何とか誤魔化したが、まだ耳元にはアキラの吐息の感触が残っていて……フワフワしている。

 

「そう言えば、シーザー。彼がせめてもの詫びの気持ちといって、何か封筒を渡していたようだけれど……」

 

「あぁ……それならさっき確認したけど、そこの映画館のチケットらしいぜ」

 

「へぇ、良かったじゃないか。」

 

映画、と聞いて一瞬ピクリとアキラが反応したのをオレ様は見逃さなかった。

 

「……これはオマエにやるよ。オマエが居なきゃそもそも手に入んなかっただろうし」

 

「それは悪いよ…………ん?シーザー、封筒の中身は2枚?」

 

「なんだ、重なってたのか、気が付かなかったぜ」

 

「2枚あるなら、二人で観に行けるね」

 

「あ、ああ。そうだな!」

 

二人で。

そう言われた時に胸が弾んだ。つーか、さっきから心臓ドキドキしてて、滅茶苦茶。痛い!

アキラと二人で出かけるなんて、今に始まったことじゃない。2ケツでツーリングに行ったりとか、ゲーセンとかで遊んだりとか……それこそ、初めて二人でルミナスクエアに出かけたときだって、映画館にも行ったはずだ。

 

……なのにどうしてこんなに嬉しいんだ!?

 

「じゃあ、またノックノックで連絡するよ」

 

ハッとすると、いつの間にかいつも使っている駐車場付近まで来ていたらしい。

そのまま車に荷物を載せて行ってしまいそうなアキラになぁ!と声を掛ける。

 

「……アキラ。なんであの時オレ様がやったって疑わなかったんだ?こう言っちゃなんだが、結構言い逃れ出来ないような状況だったぜ?」

 

「ハハハ……まぁ、そうだね。でも……君が僕に嘘をつくわけないじゃないか」

 

そうアキラが振り返りながら流し目で微笑んでくれた瞬間、ギューッと胸が締め付けられて、頭が真っ白になった。

 

そして、自分でもわかるくらい顔が火照った。

無条件の信頼が、すげー嬉しくて、あり得ないくらい幸せで……最高の気分だった。

 

気が付くと、アキラは車を走らせて、居なくなっていた。

オレ様も白昼夢を見ているような、地に足つかないまま相棒に乗って郊外へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-新エリー都・郊外 旧油田エリア「ブレイズウッド」 夜-

 

シャワーから出て、そのままベッドに倒れ込むと枕に顔をうずめて、手足をバタつかせて身悶えする!

 

クソ!オレ様どうかしちまったのか!!?

 

体中がニトロフューエルを一気に飲み干したみたいに熱い。

昼間の出来事が、未だに脳裏にこびれついていて離れないのだ。

そして、それに連鎖するように、今までのアキラとの思い出が蘇ってくる。

 

チートピアの経営をやってくれって頼んだ時のあの困り顔に、ボンプを直したりしてるときの真剣な横顔、そして、今日の安心するような優しい笑顔……。

 

『好きなんだよ、だからいつも目で追って眺めている』

 

あの時耳元で囁かれたセリフを思い出して、また、体中がどうしようもなく熱くなってベッドの上を転げまわる!!

隣の部屋のルーシーが壁ドンしてきて何かワーギャー言っているが、そんなもの耳に入って来ない……。

 

アキラ……初めて会った時は体力もないし、本当にこいつで大丈夫か?ってほんの少し実力を疑っていたが、暫く交流していく内にそんなもんは杞憂だったとわかった。

 

プロキシとしての腕前は文句のつけようがないし、オレ様の苦手な頭脳労働や料理が得意で、何より、走り屋連盟の覇者代行だとか、カリュドーンの首領とか、そういうの関係なく、「ただのシーザー」として甘えられる。そう心から頼りになる相棒……。

 

だああああああ!!ダメだあああ!!切欠が無かっただけで、もしかしてオレ様って結構前からずっと目で追うほどアイツのこと!!?

 

ベッドをボスボス殴っていたら今度はバン!!と扉が開いて、金槌を持ったルーシーがその辺の壁に穴をあけて、次にやったら死刑ですわ!と宣告されてしまったので、何とか気持ちを落ち着けて静かにする。

 

と、そんなことを繰り返しているうちにアキラからメッセージが来た!?

 

内容は今日貰ったチケットに関することで、明日、早速観に行こうというで、「デートの誘い」だった!?

 

寝転がったまま足が揺れる、顔が無条件でニヤけちまう……。

 

そのまま、慣れない携帯と睨めっこしてタイピングに苦戦しながらもメッセージのやり取りを続けて、明日、早速ルミナスクエアで会えることになった。

 

おやすみ。って、最後のメッセージを送り合った後、ハァ、と、息をついて天井を見て、また、やり取りしてた携帯のメッセージを見直してニヤニヤして……

 

そこで、ふと、枕の下に手をやり、いつも読んでいる少女漫画を取り出した。

そうだった、ヒロインの奴らはデートの時には毎回アレをしている……!

 

オレ様は早速明日は朝からルーシーの部屋へ突撃することに決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ルミナスクエア グラビティシアター前 昼-

 

シーザーと約束していた待ち合わせ場所で彼女を待つ。

時間には結構余裕をもって出たおかげか、彼女よりは先に着いたようだ。

 

昨日の彼女は別れ際、少し様子がおかしかったように思う。

 

夜もいつも以上にタイプミスが目立ったし、もしかしたら、調子が悪いのかもしれない……。

 

「お、おう。アキラ。待たせたな」

 

と、そんな心配をしていると彼女が予定よりも早く到着したようだった。

 

「いや、僕も今来たところ……?」

 

そして僕は思わず面食らってしまった。

 

天使の輪っかが出来るほど艶々した緑白色の髪が風で靡き、元々端正な顔立ちのシーザーだったが、薄く化粧をしたことにより普段以上に美人になっており、もはや顔面の暴力だった。

オーバーサイズのジャケットに、ハイウエストのボトム。いつもリンが読んでいるファッション誌からそのまま飛び出してきたかのようなお洒落な服装。けれど、それに難なく着こなすほど美しいボディライン……。

 

彼女をじっと見ていたら、恥ずかしそうに頭を掻いた。

 

「ル、ルーシーのやつが敵に醤油を送るとか言って、無理やりさ、は、はは、似合わねぇだろ?」

 

僕はすぐに首を振って答える。

 

「そんなことないよ。シーザー、凄く似合っているよ」

 

僕の言葉を聞いて、視線を逸らしたシーザーの頬が瞬間的に赤く染まる。

 

「ほ、本当かよ?」

 

「ああ。元々君は美人だけど、今日は特に綺麗だ。それに爪も塗っているのかい?水色が今日のコーディネートと良いコントラストになっていてすごく可愛いよ」

 

「な!?ななな!せ、世辞なら要らねぇって!」

 

「本当のことを言っているだけさ。僕が君を騙したことがあるかい?」

 

誠意を伝えようと彼女の目をじっと見ていたら

 

「ふ」

 

「ふ?」

 

「ふにゃ~……」

 

ショートしたように目を回してその場で倒れそうになったので、慌てて彼女の腕を持って支える。

マズイ!顔は真っ赤で、身体も熔岩みたいに熱い!

やはり体調が優れなかったのだろうか?

 

いざとなったら連れ帰らないと、そう思ってその日は一日彼女の手を握って支えながら過ごすことに決めた。

 

……途中、パトロール中の治安官様をはじめ、偽造書類を持ち込もうとしていた邪兎屋や任務終わりのメイド様にも手つなぎ姿を目撃され、新たな修羅場を迎えることになるのだが……その時の僕が知る由も無かったのだった。

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