パエトーンのお兄ちゃんが、こんなにモテモテなわけがない!   作:雨あられ

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CHex.クリスマス修羅場短編

-エレン宅-

 

 

『エレン、クリスマスの夜、空いているかい?』

 

 

寝る前にパジャマに着替えてベッドの上で歯磨きをしていた時だった。

そうアキラからメッセージが飛んできたものだからあたしは思わずひっくり返ってベッドから転げ落ちた。

 

クリスマス……?

つまり、それって…………ソウイウコト?

 

……ここで自分から食いつくのは良くない。

バイトを頼みたいとか、そんなことかもしれないし……。

 

『……空いてる』

 

『って言ったら?』

 

そう曖昧な返信をすると、アキラからすぐに返事が返ってくる。

 

 

『エレンと過ごしたい』

 

 

ッ!!!??

ビーンと勢いよく立ち上がって全身を伸ばし、目を見開く!!?

 

ふ、フーン?まぁ…………アキラがどうしてもって言うなら……会ってあげないこともない。

 

そういうスタンスだったが、サメの尾ビレは素直に揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-新エリー都・郊外 ブレイズウッド 渓谷-

 

 

『お姫様、聖夜のご予定は?』

 

 

「は、はぁッ!?」

 

「隙あり!!キング・シーザーお命ちょうだ……ぶへッ!?」

 

「な、何考えてやがんだアキラのやつ……お、オレ様をお、お姫様だなんて!?」

 

「よそ見してんじゃ……ぐあ!」「ひでぶ!」「あべし!?」

 

アイツはすぐに尻がこそばゆくなるような恥ずかしいことを言ってくるんだ……。

オレ様はドギマギしながらスマホを両手に持って返事を打ち始める。

 

「お、おい。た、戦いの最中だってのにこっちを見もしねぇで携帯をいじり始めたぞ……」「な、何かわからねぇがチャンスだ!」

 

そろりそろりと残りの連中が近寄ってくるが知る由も無く……

 

「と、とくにねぇけど、っと……うお、もう返事が……」

 

 

『一緒に食事と映画でもどうかな?』

 

 

「聖夜に食事に映画……?つまり……ク、ククク!クリスマスデートの誘いってことじゃねぇかッ!!!?」

 

「「「「「うわああっ!!」」」」」

 

?なんか吹っ飛ばしたか?いや、こうしちゃいらんねぇ!!

相棒に跨りアクセルを握りしめてエンジンを吹かせる。

やっぱなんつーか、ヘンかもしれねぇ。

けど憧れてたんだよな……アイツと……へ、へへへっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-治安局 特務捜査班 作戦会議室-

 

 

『クリスマス、朱鳶さんと夜を過ごしたい』

 

 

「な、なななっ!!?」

 

アキラくんから唐突に送られてきたメッセージ。

思わず会議中に席を立って声を出してしまったものだから、みんなの視線が一挙に集中する。

 

「ム?朱鳶よ、何事か?」

 

「な、何でもありません!」

 

不思議そうに声を出す青衣先輩に慌ててそう弁明すると、身体でなるべく携帯端末を覆い隠し、動揺で震える手でプロキシさん……いえ、アキラくんへの返信を打つ。

 

『……わ、私で良いんですか?』

 

『朱鳶さんとが良いんだ』

 

ええっ!とまた声を上げそうになって慌てて自分の口を手で塞いだ。

胸の中が熱くなっていくのを感じる……。

 

『……私も、アキラくんと……ですが、クリスマスは事件が多くて最近もブラックアンカーの残党が不穏な動きを……』

『すみません、聞かなかったことに。大丈夫です、ええ、絶対に予定を空けて見せます!』

 

ふぅと息をついたのも束の間だった。

すぐにアキラくんから返事が来て……

 

『僕に手伝えることがあったら何でも言ってほしい……』

『どうしても朱鳶さんと一緒に楽しい夜を過ごしたいからね』

 

私が耳の先まで赤くなったところで、いつの間にか目の前に居た青衣先輩が呆れた様に目を細めて額を小突いた。

 

「朱鳶よ、お主の奇々怪々な百面相は中々に見物であったが……まずはこの作戦会議を終わらせるのが先決であろ」

 

……いつの間にか、皆の視線が再び集中していて、私は縮こまって消え入りそうな声ではい、と返事をするしかなかった。

 

ですが、是が非でも事件を解決しクリスマスには定時退社を……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アンビーに会いたいな』

 

『頼れる柳さんが来てくれたら……』

 

『ルーシー……君にしか頼めないんだ』

 

『雅さんに……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パエトーンのお兄ちゃんが、こんなにビデオ屋のゴミなわけがない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ルミナスクエア ホテル 昼-

 

「ジングルベール♪ジングルベール♪鈴が~なる~♩」「「「「「ン、ナナ~♪」」」」」

 

クリスマスソングを口ずさみながら赤いサンタクロースのコスチュームに身を包んだリンがツリーの飾りつけをしている。

それにコーラスするように続いているのはイアスにイアスのお友達、それから1ディニーボンプも手伝ってくれていて、飛んだり、跳ねたり、お尻を振ったり……ポヨポヨ、ンナンナ大騒ぎだ。

 

「お兄ちゃーん、上の方飾りつけるから手伝ってー!」

 

返事をして近寄ると、なんとリンは僕に肩車をしろと言ってきた。

……僕は彼女の太ももを肩に乗せた後、腰に渾身の力を入れて、立ち上がる……!

が……!リン……!間食のポテトチップスは控えるように言っているのに……!?

 

「ちょっと、お兄ちゃん。あんまり持ち上がってないけど、運動不足なんじゃない?」

 

自分のことを棚に上げてそう零すリンに、僕は少しばかり反論するか悩んだけれど、タダでは済まないだろうと考えて言葉を飲み込んだ。

……それに、楽しそうに歌を歌うリンに水を差したくなかったんだ。

 

「えへへ、お兄ちゃん、楽しみだね!クリスマスパーティ!」

 

そう、今日は件のエージェント大集合事件の打ち上げもかねて、ここ、ルミナスクエアの高級ホテルの一室を貸し切って僕ら主催のクリスマスパーティを開くことにしたんだ。

ロビーにはクロスのかかったテーブルに、みんなで観ようと厳選した映画、それからビンゴ大会用の景品まで用意してある。

 

「ンナンナ!(あの……こっちの飾りつけ、終わったからもう帰るね!)」

 

そう近づいてきたのはもちもちの白兎みたいな形をした1ディニーボンプだ。

たまたま街を歩いているのを見かけて、飾りつけを手伝ってもらうことにしたんだ。

ポヨポヨと背を向けて歩き出した1ディニーボンプに、上に居たリンがえぇ!?と僕の頭を叩いて慌てた声を上げる。

 

「パーティには出ないの!?1ディニーボンプ?」

 

「ンナ!?(え?ボクも出てもいいの……!?)」

 

「あったり前だよ!ね、お兄ちゃん?」

 

「あぁ、良かったらキミのお友達も誘っておいでよ」

 

「ン、ンナ~!(あ、ありがとう!ボク、クリスマスパーティなんて初めてで、とっても嬉しい!)」

 

そう言ってニコニコとする1ディニーボンプの健気さにリンがたまらなくなって僕から飛び降りると、走って抱きしめてナデナデしてあげている。

そして、次から次へとリンに撫でてもらおうと他のボンプ達が集まってくる。

 

「ンナ!(リン、僕も!)」「ンナナ(フン!撫でられてやってもいいぞ!)」「ン!ナナ~!(手伝い料としてすぐにニコの口座に100ディニー振り込んで!)」

 

「ちょっとみんな!?もう、そんなにいっぺんに撫でられないよ~!」

 

流石、妹はボンプからだって大人気だ!

痛めた首に手を当ててその光景を微笑ましく眺めていると、そう言えばと思い出したようにリンが口を開く。

 

「お兄ちゃん、みんなへの連絡ってちゃんとしてくれたんだよね~?」

 

「あぁ、もちろん。みんな楽しみにしてるって言ってくれたよ」

 

「なら良かった!よ~し、みんなのためにもう少しだけ頑張ろうね!」「「「ンナナ!!」」」

 

これは、今日は絶対楽しいパーティに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ルミナスクエア ホテル 夜-

 

「……」

「…………」

「………………」

 

空気が……重い!

 

僕が入口まで迎えに行ったとき、みんな、すごく嬉しそうにしてくれていたんだ。

オシャレな格好をしていて綺麗だって褒めたら少し照れたりもしてくれた。

けれど、会場についてパーティ会場を見回すと……あ、と何かを察したような声を出して、頭を抱えて落ち込んだり、プロキシさん……?と言って足を蹴ってきたり、ジト目で見た後無言で鳩尾を殴ってきたり……。

 

チラっと奥の方を見ると、リンにバーニス、アンドーさんたちにボンプたちが集まっていてとんでもなく盛り上がっている、炎が上がって火災警報器が鳴り響いて、盛り上がり過ぎているくらいだ。

ただ、向こうから楽しそうな笑い声が聞こえてくるたびに、こちらの一角、主にエレンや朱鳶さん、ルーシーたち女性陣の集まりはどこかジメジメしていて活気がないように思う……。

 

「……み、みんな映画でも観ないかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は、一縷の望みにかけて映画鑑賞をすることを選んだ、きっと楽しい映画を見れば、みんなも盛り上がってくれるはずだ。

プロジェクターを操作してスクリーンに投影して映画を再生すると、みんなから、おおと、少し驚いたような声が上がった。それもそのはずだ、だってこの部屋を借りたのも、この巨大スクリーンとスピーカーが魅力的だったからという理由もあるからね。

 

炭酸飲料とポップコーンは当然人数分用意している。

 

ジャンケンで勝ったリンの選んだアクション映画を再生し始めると、僕は端っこの方にあった赤いソファに腰かける…………すると、その膝の上に素早く何かが乗った。

 

雅さんだった。

 

「雅さん?えっと、どうかしたかい?」

 

「気にするな。今、アキラの膝の上に乗って映画を観る修行を始めたところだ」

 

なるほど……?

楽しいと言わんばかりに狐の黒耳をピコピコしている雅さん。

けれど、先ほどから四方八方から放たれる殺気の数々に何故か冷や汗が止まらない……。

 

「雅……!あなた、また修行を都合のいい口実に……!」

 

「……朱鳶、羨ましいのか?なら、まだ「アキラの隣で映画を観る修行」ならばできるが……」

 

「えっ!?」

 

バっと、皆の視線が集中した。

 

「アンビー、いつでもお隣可能よ」

 

「でしたら、課長のお世話も兼ねて私が……」

 

「お、オレ様に任せろ!て、手だってその繋いでも……」

 

「いや、あたしンだから」

 

どこかでガラスの割れる音がしたかと思えば、流れているアクション映画顔負けのバトルが目の前で展開され、氷が炎が雷が交錯する…!?

 

ある者は争いを止めようとして返り討ちにあい、

ある者はこの後店長と二人で抜け出そうと画策し、

ある者は僕の写真をプロマイドにして裏で取引して金儲けを始め……

 

僕の選択は完全に裏目だったようだ……。

 

「なんだか大変なことになっちゃったねお兄ちゃん」

 

ボスっと隣に腰かけたリンが他人事のようにそう言った。

 

「お兄ちゃんの隣は私の特等席なのにね?」

 

「……え?」

 

「ううん、何でもないよ!今日はみんなも居て、いつもよりすっごく楽しいよね!お兄ちゃん!」

 

「……ああ、そうだね……こんな騒がしくて楽しいクリスマスは初めてだよ。リン、メリークリスマス」

 

「うん、メリークリスマースお兄ちゃん!えへへ!」

 

……その後、僕は女性陣全員の機嫌を取るため必死に謝り、個別に感謝の言葉とあらかじめ用意していたプレゼントを渡し、次は2人きりで別のところに出かけるという約束を取り付けることで事なきを得たのだった……。

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