異世界にゲームの姿でTS転生したので、従者と旅して回ることにしました。   作:愛枝ハル

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第33話 玉虫

 ファンシーなベッドで目を覚ました俺は、相変わらず従者二人に絡みつかれていた。

 「スズ様、ついに王都に着きましたけど、これからどうなさるんですか?」

 リリーが絡みついたまま話しかけてくる。

 

 「まずは王都観光だな。それからは…、まだ決めてない。王都を回っていれば、そのうち次の目的地も見つかるだろう」

 

 タミアでさえ回り切るのに何日も掛かってしまったんだ。国の中心たる王都となれば、もっと長くかかるだろうし、回っている間に情報も集まれば行きたい場所も見つかるはずだ。

 

 「そろそろ放してくれるか? 早速王都観光に行こう」

 

 

 屋敷を出た俺達は、徒歩で貴族街を抜けて平民のいる区画に向かうことにした。

 マーサさんに馬車を出すか聞かれたが、小回りが効かなくなるので断った。一々乗り降りするのも面倒だし、馬車を置く場所の確保も案外大変だったりするのだ。

 

 

 

 貴族街の出入り口である門へ向かって歩いていると、前方からごてごての豪華な装飾をした馬車が俺達とすれ違うようにして走っていった。

 豪華な、と言ってもアリシアの乗っていたような物ではなく、付けられる装飾を付けるだけ付けたような印象だ。

 やっぱり、ああいう成金趣味みたいな貴族もいるんだなぁ。今まで会ってきた貴族達はみんな落ち着いていたから、新鮮に感じてしまう。

 

 

 「そこの冒険者!止まれ!」

 後ろで大きな声が聞こえたので、反射的に振り返ってしまったが、何故かリリーとアリアが視界をブロックしていて後ろが見えない。

 

 「私達は冒険者ではないので、人違いでしょう。さ、早く行きましょうスズ様」

 「ええ、俺達には関係のないことです」

 

 リリーとアリアが強引に前を向かせるので疑問に思いつつも歩き出すが、後方から聞こえてくる声は尚も呼びかけてくる。

 

 「そこの3人組の冒険者!トリスタン様がお呼びである!止まれ、不敬だぞ!」

 

 「なあ、やっぱり一回止まったほうがいいんじゃないか…?」

 俺がそう言うと、リリーとアリアは渋々といった表情ではあるが止まってくれた。

 

 俺達が止まると、後方で停まっていたらしい馬車はUターンして俺達の目の前まで来たところで止まった。

 御者が降りて馬車のドアを開け、中から出てきたのは、このゴテゴテした馬車にお似合いのじゃらじゃらとアクセサリーを身に着けた20代後半の男だった。

 

 「フン、やはり僕の目に狂いはなかったな。この高貴な場所になぜ冒険者がいるのかは知らんが、どれも粒揃いじゃないか。特にそこの神官、お前には特別に僕の寵愛を与えよう。冒険者では、まともな贅沢も出来なかろう。今すぐに僕の下へ来るがいい」

 

 「贅沢でしたらこれ以上無いほどしていますので。それに、玉虫の寵愛を受けるほど趣味は悪くありませんから」

 

 「わかったらさっさとそこを退け、スズ様の道を塞ぐな」

 男の誘いをリリーがバッサリ切り捨てると、男の顔がたちまち赤くなった。

 

 「玉虫…?! 僕を誰だと思ってる! 下手に出ていれば、調子に乗りおって…!まぁいい、野蛮な冒険者などいくら消えたところで誰も気にしない。ローマン、仕事だ!」

 

 男が馬車に向かって叫ぶと、中にはもう一人乗っていたようで、190cmはあるだろう大男がのっそりと降りてきた。

 

 「相変わらず人使いが荒いねぇ、トリスタンさんよ。ま、貰うもん貰えれば俺も文句はありませんがね」

 ローマンと呼ばれた大男は騎士風の服を着ているが、無精髭を生やしている上に雰囲気もなんだか気だるげだ。今まで見てきた規律を重んじる騎士の姿とは正反対の風貌をしている。

 

 「御託はいい!この3人に立場をわからせろ!顔は傷つけるんじゃないぞ!」

 

 「注文が多いねぇ…」

 大男は文句を言いながらも、腰に佩いた剣を抜き始めた。

 

 「スズ様、下がっていてください。ここは私が」

 アリアも剣を抜いて構えたのを見て、リリーは俺の肩を掴んで強引に下がらせた。

 

 お互い剣を構えた大男とアリアの睨み合いがしばし続いたあと、なぜか突然大男が剣を納めて馬車へ戻っていく。

 

 「何をしているローマン!仕事をしろ!」

 

 「トリスタンの旦那、ありゃ無理だ。俺の手には負えねぇよ。確かに俺は金さえあればなんでもやるが、さすがに命を売る気は無いんでね。どうしてもってんなら、他を当たるんだな」

 そう言うと、大男は馬車に乗り込んでしまった。

 

 「それで、どうするんだ? お前が直接戦うか?」

 

 「ぐっ…!ぐぅぅぅぅ…!」

 アリアが剣を貴族の男に向けると一瞬怖がる表情を見せたものの、顔中に悔しさを滲ませながら馬車に乗り込んで、走り去ってしまった。

 

 「申し訳ありません、スズ様。私のせいで…」

 

 「いやいやっ、リリーのせいじゃないだろ。そもそも、あの男は俺達3人とも手籠めにしようとしてたみたいだし」

 ライウッド侯爵に、王都は厄介な貴族が多くいるから気をつけるようにと言われていたが、こういうことか…。

 

 う~ん…、もう少し気ままに観光しようと思っていたけれど、今まで通り気楽に観光とはいかなそうだな…。

 

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