異世界にゲームの姿でTS転生したので、従者と旅して回ることにしました。   作:愛枝ハル

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第51話 海鳥の城

 遠くに見える城の先っぽをアリアにも伝え、そっちに向かうように指示を出した後、何度か道を曲がると水色の大きな城が正面に現れた。おそらく、あれが海鳥の城というホテルだろう。

 確かに、あれなら見ればすぐにわかるな。名前の通り、まんま城の外観をしている。

 

 ホテルの目の前で馬車を停めると、白と水色の制服をピシリと着こなしたスタッフが近付いてきた。アリアがスタッフに、ホテルへ泊まりたい旨を伝えたところ、今は空き部屋に余裕があるらしい。

 よかった、見たところ格式高そうだったから、空きがあるか少し心配だったんだ。

 

 俺達が馬車を降りた後、スタッフが馬車を馬房のある場所まで移動していくのを見送ってからホテルの中に入った。

 この世界にも、代わりに駐車してくれるサービスがあるんだな…。

 

 

 受付へ着くと、女性のスタッフが物腰柔らかく頭を下げた。

 

 「ようこそ当ホテルへ。ご予約はしておりますでしょうか?」

 「予約はしてないんですが、大丈夫ですか?」

 

 まさか予約が必要だったのか? でも、それだったらカルロさんも勧めないよな…。

 

 「いえ、幸い今は交易シーズンではないので、予約は必要としておりません。本日は3名様でのご宿泊でしょうか?」

 スタッフが安心させるように微笑んで答えてくれた。

 ホッと一安心して3人で泊まることを伝えると、値は張ってしまうがデラックスルームが一部屋だけ空いているので、泊まってみてはどうかと勧められた。

 

 「窓からの景色は絶景だと評判のお部屋ですので、一生の思い出になりますよ」

 

 少し迷ったが、こういうのを体験していってこその旅だろう。この町へまた来るかもわからないからな。

 

 「じゃあ、その部屋をお願いします」

 

 支払いの時に言われた値段は、確かに目玉が飛び出そうな額だった。元の世界の俺じゃ、到底払えないだろうな…。でも、今の俺にはたんまりとお金があるんだ。こういう時に使ってこそだよな。

 

 「では、こちらがお部屋の鍵になります。あちらにあるレストランで鍵を見せて頂ければ、お食事は深夜以外ならいつでもご利用出来ますので、是非お楽しみください」

 

 港町にあるホテルの食事か、楽しみだな。こっちの世界に来てから肉ばかりで、干物を戻したものくらいしか魚を口にした記憶がないから、どんな料理が出てくるか楽しみだ。

 

 

 鍵を受け取った後は、3階にあるデラックスルームに向かうため階段を上がる。受付のあるエントランスでも思ったことだが、階段や床に敷いてある絨毯がフカフカだ。さすが高級ホテルと言ったところだろう。

 階段を上がりきると、長い廊下の両端と真ん中に扉があった。この3部屋がデラックスルームなのかな? というか、デラックスルームって3部屋しか無かったのか。たまたま空いていたのは本当にラッキーだったらしい。

 

 鍵穴に鍵を刺してガチャリと回す。静かにドアを開けると、デラックスルームの名に恥じない豪華な部屋が広がっていた。ベッドは3つだが、一人用のベッドとは思えないくらい大きい、試しに腰を下ろしてみると、ぽよんとしっかり跳ね返してくるのがわかった。

 

 「このベッド、もう少し大きければアバタールームにも欲しいですね…」

 

 俺と同じようにベッドに腰掛けたリリーが、ベッドの感触を確かめている。

 リリーの言うように、このベッドはアバタールームにあるベッドより良い物かも知れない。今まで色んな宿や貴族の屋敷に泊めさせてもらったが、ここまでしっかりしたベッドは初めてかも知れない。

 

 「スズ様、見てみてください。いい眺めですよ」

 

 一人バルコニーへ出ていたアリアに呼ばれたので、俺とリリーも外の景色を見るためにバルコニーへ出ると、そこからは海が一望できた。この町に到着した時よりも時間が経っていたのもあって、海が夕焼けに照らされて赤く染まっている。

 

 「うおー、キレー!」

 「本当に綺麗ですね…」

 

 海には何隻か船も見える。漁船か何かだろうか?

 それだけじゃなく、下を見ると市場のようなものが開かれていて人で賑わっている。あそこで水揚げされた魚を売ってるのかな? あ、でも買うならカルロさんのところでって言っちゃったしな。今度あの市場のことを聞いてみよう。

 

 さらに海を眺めていると、町の端のほうに人がいなさそうな砂浜を見つけた。あそこなら泳げたり出来そうじゃないか?と思い、「折角海に来たんだし、泳いだりしたいよな」と口にした途端、リリーとアリアの首が俺の方へグリンと向けられた。

 

 「泳ぐ、ということは水着になるということですよね?」

 「え? そ、そりゃあ泳ぐなら水着にならないとな」

 「いけません…、いけませんよスズ様。ただでさえ周囲を惹きつけているというのに、これ以上肌を晒すのは従者として看過出来ません」

 「もし水着を着られる際は、俺達の前で存分に見せつけて頂いて構いませんので、どうかここは自重して下さい」

 

 やけに目を怖くした2人に肩をガッチリと掴まれながら、強い説得を受けてしまったので、海水浴は断念することになった。いや、本当に目が怖くて…。

 

 「そうですスズ様。受付でこの部屋には大きなバスルームがあると言っていましたし、そこで水着になりましょう」

 「名案だなリリー、あそこなら風邪を引く心配も無い。さ、スズ様、バスルームはこちらですよ」

 「ちょ、おい! 海で泳がないなら水着になったって仕方ないだろ!」

 「いえいえ、そんなことはありませんよ。裸もいいですが、水着も乙なものですから」

 

 結局、2人に背中をグイグイと強引に押されてバスルームに連行された俺は、あらゆる水着コスチュームを着させられてしまった。自キャラのために水着コスを買い漁っていたのがこんなところで仇になるとは…。泡で隠すとか、そういうのはどこで覚えてくるんだ。ま、まぁ、アリアとリリー用の水着も着てもらったし、それはそれで良かったけど…。

 

 その後、俺を使った水着鑑賞会は、バスルームで行っていたせいで俺がすっかり逆上(のぼ)せてしまい、幕を閉じた。

 

 「申し訳ありません…、スズ様…」

 「つい夢中になってしまい…」

 

 俺をベッドに寝かせた2人が申し訳なさげに謝ってくるが、2人共俺のベッドに入ってきているせいで、あまり説得力がない。3つもベッドがあるんだから、そっちで寝なさいよ…。

 

 あ、そういえばレストランで食事するの忘れてたな。明日の朝でいいか…。

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