異世界にゲームの姿でTS転生したので、従者と旅して回ることにしました。   作:愛枝ハル

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ドラゴニア帝国
第56話 帝国へ


 朝食を摂ってから早々とチェックアウトを済ませた俺達は、シーアンを出て馬車を走らせていた。今向かっているのは、シーアンの一つ前の街。イーサンさんと出会った街だ。

 

 商業ギルドにシーワームの買い取り金を受け取りに行った時、たまたまエリオさんに出くわしたので帝国への行き方を聞いてみたところ、一度一つ前の街へ戻る必要があると教えてくれた。なんでも、エリオさんは帝国でも商売をしているらしく、帝国への行き方は熟知しているとのこと。街に戻った後は、帝国へ繋がる整備された道を進んでいくだけで、国境の門に辿り着くという。

 ただ、別れ際に「帝国は実力主義だから気をつけておくれよ。君達が粗暴な男たちに捕まるんじゃないかと思うと、気が気ではないよ…。シーワームを倒した君達には、要らない心配かもしれないがね」と何か不穏なことを言っていたのが気になる。

 

 

 エリオさんに言われた通りに街へ向かう道すがら、遠ざかっていく海を名残り惜しみつつも、これから赴く帝国への期待を膨らませて港町シーアンを去った。

 

 

 

 

 

 

 国境へ向かう道は舗装まではされていないが、きちんと整備されていて、シーアン出発して3日後の昼頃には、王国と帝国を繋ぐ国境へ着くことが出来た。

 国境の周りは街のようになっていて、いくつもの馬車が行き交っている。出店を眺めているだけでも、王国では見かけなかった果物やアクセサリーが並んでいた。

 

 

 「スズ様、どうしますか? このまま国境を越えますか」

 御者席のアリアが、小窓から顔を出して聞いてきた。

 

 「いや、ここまで楽に来れたとはいえ、ずっと馬車旅だったんだ。今日は一度休んで、明日の朝イチで出発しよう」

 道が整備されていたおかげで、国境まで3日で辿り着くことは出来たが、馬車旅というのは存外疲れる。御者をしているアリアは、尚更疲れているだろう。しっかり休んでから、万全な状態で国を渡りたい。

 

 「わかりました」

 

 

 

 安宿で一日休んだ次の日の朝。改めて馬車に乗り込み、いよいよ国境を越えるときが来た。国境らしき場所には大きな門と壁が設けられ、不法に国を越えるものがいないか、何人もの騎士が壁の上で目を光らせているのが見える。門は通行時のみ開かれるようになっているのか、今は閉められている。

 

 「止まれ!」

 門の前に来たところで、一人の騎士が馬車を制止してきた。

 

 「入国許可証を確認する」

 「許可証? そんな物は無い。帝国のセレーネ皇女とやらに招待されただけだからな」

 

 アリアがそう答えると、騎士の顔が険しくなった。

 

 「許可証が無いなら追い返すだけだが、皇族の名を騙るとなればそうはいかないぞ」

 

 一気にアリアと騎士の空気が剣呑なものになってしまったので、慌ててアリアにセレーネ皇女から貰った手紙を小窓から手渡す。

 

 「アリア、これを見せろ」

 「わかりました」

 

 アリアから手紙を見せられた騎士は半信半疑の様子だったが、手紙に使われている印璽を見つけると、態度を軟化させた。

 

 「少々お待ち頂けますか。上の者を呼んでまいります」

 

 上司を呼びに行ったのであろう騎士は、5分もしないうちに一人の男性を連れてきた。スーツを着て文官っぽい服装だが、それなりに歳を取っていてベテランと言った感じだ。

 

 騎士が連れてきた文官にもう一度手紙を見せると、中を(あらた)めていいか聞かれたので了承した。

 

 「確かに、印璽、そしてセレーネ皇女殿下のサインも本物ですな。私の部下が大変失礼をした。お詫びと言ってはなんだが、国境付近を出るまで警備を付けましょう。セレーネ皇女殿下のお客人を放ってはおけませんからな」

 

 「開門!!」

 

 騎士が開門を告げ、大きな門がガラガラと少しずつ開いていく。文官は専用の通用口から帝国側に回ったようだ。

 

 そして門が完全に開かれ、アリアが馬車を進めると、ついに帝国の地へ足を踏み入れることになった。

 

 門を潜った先には、文官の後ろに男性が四人立っていた。皆ガタイが良く、しっかりと鍛えられているのがわかる。

 

 「ようこそ、ドラゴニア帝国へ。歓迎致します。こちらの四人が、皆さんを警備してくれる国境警備隊の方です」

 

 文官に紹介された警備隊の四人は、俺達のほうへ軽く頭を下げた。

 

 「ここを出るまでの警備はお任せ下さい。ですが、馬車を私共からあまり離しすぎないようにお願いします」

 

 アリアが騎士の言葉を了承して、ゆっくりと馬車を進め始めたところで、警備隊の一人が話しかけてきた。

 

 「皇女殿下のお客人が、まさかこんな美女揃いだとは思いませんでしたよ。てっきりどこぞの武人かと。正直、貴方方のような女性たちが我が国に赴くのは、少々心配です」

 

 心配? エリオさんにも似たようなことを言われたが、やっぱり帝国には何かあるのか?

 馬車の窓を開けて、警備隊の人に思い切って聞いてみた。

 

 「他の人にも同じようなことを言われたんですが、何が心配なんですか?」

 

 「帝国は実力主義、力が全てなんだ。武力、知力、財力、とにかくなんでもね。だから、食い物にされてしまわないか心配なんです。皇女殿下のお客人に手を出す輩は少ないとは思いますが、居ないとも限りません。野盗なんかは問答無用で襲ってきますからね」

 

 知力…はわからないが、武力と財力は十分過ぎるほど持っているはずだ。でも、野盗が出るなんて聞いてないぞ…。これは王都に居たときよりも、気を張る必要がありそうだ。

 

 「忠告ありがとうございます。ですが、優秀な従者が付いてるので心配は要りませんよ」

 

 リリーが俺を安心させるように体を寄せながら、警備へそう返すと、「俺も居りますよ」とアリアも小窓から顔を出した。

 魔物の大群やらを相手にしてきたんだし、今更野盗なんかに怖がっていられないよな。もっとしっかりしないと。

 

 俺が一人決意を固めていると、また別の警備の人が話しかけてきた。

 

 「そういえば、皆さんはどういった目的で帝国へ? 皇女殿下が最近帰国したことと関係があるんですか?」

 

 警備の質問は少し突っ込み過ぎだったのか、他の警備に肘で突かれて咎められている。

 でも、確かに帝国へ来ることが目的になっていて、帝国で何をするかはまだ決めてなかったな…。王国でも王都に行ったんだし、帝都にも行ってみたいがどうやって行くんだろう。帝国に入ったばかりで、道なんか知らないぞ。

 

 「ただただ旅をしているだけですよ。これといった目的も無いので、とりあえず帝都へ行きたいんですが、帝都ってどこにあるんですか?」

 

 「それなら、()へ向かえばすぐに分かりますよ。帝都は森の近くにありますから」

 

 森? 森って俺達が目覚めたあの森か? あんな森の近くに首都なんか建てて、大丈夫なんだろうか…? それに、森の方角へ向かうだけでいいのは助かるが、今いる国境とは正反対の場所じゃないか。これはまた長い旅になりそうだ。

 

 警備隊の人達と話しているうちに、国境付近を囲む壁まで着いてしまった。警備隊の人達が付いてきてくれるのはここまでのようで、俺達の馬車を見送りながら「良い旅を!」と言って送り出してくれた。

 

 

 窓から見える風景は王国とそう変わらないのに、帝国に来たというだけでなんだか新鮮に感じる。ここからまた国を一から回るんだよな。不安なことも多々あるが、それよりも好奇心のほうが勝っている。

 帝国がどんな国で、どんな街があるのか、今から楽しみだ。

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