異世界にゲームの姿でTS転生したので、従者と旅して回ることにしました。   作:愛枝ハル

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第58話 野盗

 冒険者ギルドで換金してもらってから、1週間以上が経った。今いる街の門番によると、帝都まであと半分も来ていないらしい。帝国がどれだけ広いのかよく分かるな。

 

 だが大量の金貨を換金したかいもあって、お金にはかなり余裕がある。このまま行けば、お金を補充しなくても帝都まで行けそうだ。

 

 それと、換金したギルドで出会ったギルドマスター――コルさんというらしい――のような獣人は、帝都が近づくほどよく目に付くようになった。このままだと、帝都に着く頃には、そこらじゅうで獣人を見かけることになりそうだ。

 

 

 

 そして今日も、宿でゆっくりと体を休め、ここまで働き詰めの馬車馬にもしっかり餌をやった後は、帝都を目指してひたすらに歩を進めていく予定……だったのだが、街を出る寸前で、門番に引き止められてしまった。

 今まで入る時に止められたことはあったが、出る時に止められたのは初めてだったので、何か問題があったのかと門番に聞くと、最近この周辺の森に野盗が出るようになったらしい。

 

 「どうも野盗達は組織立って動いているみたいなんだ。私達としても捕まえたいのは山々なんだが、頻繁に姿を見せるわけじゃないし、森の中には魔物もいるせいで手を出せないんだ。もしこのまま帝都へ向かうなら、注意しておいたほうがいい。それこそ君たちのような若い女性がよく狙われるみたいだからね」

 

 「スズ様、どうされますか」

 

 「う~ん…。ここ以外に帝都へ向かう道は無いっぽいし、危なくても行くしかないだろう。野盗が捕まるまでこの街で足止めを食らうのは避けたい」

 

 本当にこのまま帝都へ向かうのか確認してきたアリアに、このまま進むことを伝えると、門番がある話を提案してきた。

 

 「なら、商隊に混ぜてもらうといい。ここ最近の野盗騒ぎで、商人達は出来るだけ集団で移動するようにしているからね。本来ならあまり推奨されない行為だが、今ならむしろ歓迎されるだろう」

 

 さすがに野盗なんかには負けないとも思うが、安全に行けるなら行けるに越したことは無いだろう。ここは無理にでも商隊に混ぜてもらおう。

 

 「出来るならそうしたいんですが、どうしたらいいですか?」

 

 「商隊の出発はちょうど明日だから、出発時に私から話を通しておこう。朝早く出発するから、寝過ごさないように気を付けてくれよ」

 

 「わかりました。わざわざありがとうございます」

 

 すっかり出鼻を挫かれてしまったが、安全に移動するためには仕方ない。

 

 

 

 

 翌朝、朝早く起きた俺達は予定通り門へ行くと、すでに大勢の商人達が集まってた。

 遠くに昨日忠告してくれた門番が誰かと談笑しているのが見えたので、馬車を降りて話しかけに行くことにした。

 

 「門番さん、あの~…」

 

 「あぁ、昨日の! こちらが商隊のリーダーのハオさんだよ。ハオさん、さっき話した例の美人達だよ」

 

 「確かにこれは物凄い別嬪ですな! 馬車一台で移動などしていたら、野盗達の格好の餌食でしょうな。お嬢さん方、話は門番から聞いておりますから、安心して商隊へ入って下され。そうだ、安全のため真ん中あたりに陣取って頂いて構いませんよ」

 

 商隊のリーダーとして紹介されたハオさんは優しそうな笑みを浮かべたおじさんで、例えるなら恵比寿様のような顔をしている。

 優しそうなのは見た目だけじゃないのか、部外者である俺達を安全な商隊の真ん中に置いてくれるとまで言ってくれた。俺達は戦力的に見ればかなり上なので少し悪い気もするが、ここはお言葉に甘えておこう。

 

 「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」

 

 俺がハオさんに頭を下げると、ハオさんはにんまりと笑みを深めた。

 

 「礼儀の正しいお嬢さんだ。準備で出発まではまだ時間が掛かりますから、それまでゆっくりしていて下さいね。出発時には合図がありますから、聞き逃さないように」

 

 

 

 

 ハオさん達と別れて30分もしないうちに、門のほうからからんからんと鐘の音がしてきた。恐らくはあれが合図なんだろう。

 鐘の音を聞いたアリアが前方の馬車についていくように馬車を進めると、後方から続々と馬車が連なって付いてくる。ハオさんの言っていた通り、本当に商隊の中団へ入れてくれたみたいだ。

 

 最初は草原の平地だった道も段々と起伏が激しくなり、いよいよ森に入るときが来た。門番は森の中と言っていたし、野盗達が住み着いているのはこのあたりなんだろう。

 

 「ん?」

 

 集団で移動しているとはいえ、襲われないという保証も無いので、念の為レーダーで周囲を確認しながら移動していると、敵対を意味する赤点の中で規則的に動く点がまばらに現れるようになった。

 今までちらほらと赤点は出てきてはいたが、距離が遠かったり、近づいてくる様子もなく遠ざかっていく点ばかりだった。だが、今確認した点は明らかに一定の距離を保ちつつ移動している。

 門番によると、野盗は組織立って行動しているらしい。もしかしたら…。

 

 「スズ様、どうされましたか?」

 

 レーダーを確認して顔を顰めた俺を見たリリーが、心配そうに聞いてきた。

 

 「さっきから一定の距離を保って移動してきてる集団がいる。例の野盗かもしれない」

 

 「本当ですか? アリア、野盗が現れました。注意して下さい」

 

 リリーが素早く小窓を開けて、アリアに注意を促した。

 

 「話は聞いている。俺の方でも、森の影で何か動いているのを確認しているので、野盗で間違いないでしょう。他の馬車へも注意を促しますか?」

 

 野盗が近づいているなら報告はしたほうが良いと思うが、ここで報告すれば野盗にも聞こえる可能性がある。それに、この長い商隊でパニックが起これば大変なことになる。そうなれば野盗の思う壺だろう。

 

 俺が野盗の情報を伝えるべきか悩んでいると、遥か前方、商隊の先頭の方から大きな音が聞こえてきた。まさに馬車が倒れたような音だ。

 ほんの数秒後、音が聞こえた方向から赤い閃光が上がった。

 

 「戦闘準備ッー!!!」

 

 護衛として雇われた大勢の冒険者が馬車から飛び降り、襲撃に備えて各々の武器を構える。さらに前方から少しずつ馬車の速度が落ち始め、ついには商隊は完全に止まってしまった。

 

 「うおおおおああああああッッッ!!!!」

 

 商隊が止まるのと同時にタイミングを見計らったかのように、左右の森の影から怒号を上げて野盗達が飛び出してきた。

 

 「スズ様はここでジッとしていて下さい。野盗共の対処は俺達がやります」

 

 小窓からアリアがそう言うと、御者席から離れて馬車の左側に陣取った。リリーも馬車を右側から飛び出して、二人で馬車を挟むように守りを固めた。

 

 

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