異世界にゲームの姿でTS転生したので、従者と旅して回ることにしました。   作:愛枝ハル

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第63話 出陣

 「そろそろ山近くの街に着きますが、ここから道が荒れてくるので気をつけてくださいね」

 

 御者をしてくれている騎士が街が近いことを教えてくれた。ドラゴンが住み着いている山が近いこともあってこの辺はあまり人が近寄らず、道も整備されていないため、道がガタガタになったままだそうだ。

 ここに来るまでの間でも時折整備されていない道があったが、その時とは比較にならないほど馬車が揺れているので、アリアにしがみついて座席から投げ出されないようにするのが精一杯だ。

 

 

 

 

 

 跳ねるように揺れる馬車のせいで俺の尻が限界に近づいてきた頃、ついに街に到着した。

 

 「ここまで護衛ご苦労じゃった。護衛の者達は宿でゆっくり休んでくれ。討伐に向かう者達は、妾と共にここの領主邸に来るのじゃ」

 

 この街はドラゴンの住む山の近くにあるため、ドラゴンの動向を監視する領主が常駐しているらしい。これからその領主邸に行って、山へ向かうための準備と打ち合わせをするそうだ。

 

 

 「お待ちしておりました、殿下」

 

 領主邸に向かうと、身なりをピシリと決めた一人の貴族が、恭しくセレーネ皇女に頭を下げた。

 

 「うむ、少しの間だが世話になるぞ。フレイン卿」

 

 領主邸の中に通された俺達は、ド真ん中に大きな丸テーブルが置かれた、まさに会議室のような部屋に案内された。ここでセレーネ皇女やその精鋭達と共に、対ドラゴン戦の作戦を練っていくんだろう。

 

 予想通りここで作戦会議をするようで、丸テーブルを皆で囲むように座る。どうやら、セレーネ皇女が選んだ精鋭は5人のようだ。全員が座ったのを確認したセレーネ皇女が会議の開始を宣言すると、一人の女騎士が手を上げた。

 

 「ん? なんじゃミンス」

 

 「協力者として、そこの女騎士と神官はわかります。ですが、そこの子供は本当に役に立つのですか? 差し出がましいようですが、凡そドラゴンとの戦闘についていけるとは思えません」

 

 「それに関しては私達も同意見です。なぜこのような子供まで連れて行く必要があるのですか? そこの二人だけで十分なのでは」

 

 ミンスと呼ばれた女騎士の言葉に、他の騎士達も同意している。その様子にアリアとリリーが露骨に苛ついているのがわかる。

 

 「スズ様を侮るならまず俺が相手になるぞ、三流騎士ども。お前たちこそスズ様の足を引っ張るなよ」

 

 アリアが言葉を返すと、従者二人と騎士達の間で剣呑な空気が流れ始めた。

 

 「アリア、ここは抑えて欲しいのじゃ。皆も和を乱すような真似はやめるのじゃ。スズ達の実力は妾が保証する、口を挟むことは許さん」

 

 「はっ、申し訳ありません殿下」

 

 セレーネ皇女が騎士達を抑えてくれたことでなんとかこの場は収まったが、それでも何人かの騎士は納得していない表情だ。

 始まる前から空気が最悪だよ…。

 

 「ぉほん! 改めて会議を始めるのじゃ」

 大きく咳をしたセレーネ皇女が、会議を仕切り直した。

 

 

 

 

 会議の内容はもっぱらドラゴンに遭遇するまでのことばかりで、対ドラゴン戦については、前中後衛を決めて後は臨機応変にという極めて大雑把な作戦だった。

 なんでも、ドラゴンと戦った記録は、初代皇帝が戦ったということ以外全くと言っていいほど存在せず、仮に綿密な作戦を立てたところで、それが通じず全てが無駄になるくらいなら、最初から作戦など立てないほうが思考の邪魔にならないだろうということらしい。

 

 ただ、各々の能力については開示しておいたほうが良いだろうと、騎士達の得意分野も教えてもらった。勿論、俺達3人もそれぞれの能力を共有したのだが、俺の持つ銃はこの世界で物珍しいらしく、「そんな小さな武器で何が出来るのか」という視線が騎士達からビシビシとぶつけられていた。

 

 仕方ないだろう。俺の持つ武器の中で、一番高威力が出せるのはこの愛用の二丁拳銃なんだから!

 

 

 

 

 その後、会議を終えた俺達はセレーネ皇女が取ってくれている宿――からアバタールームを繋いで風呂に入っていた。

 

 「はぁ~…。この街まで文字通り強行軍だったからな。こうしてゆっくり風呂に浸かるのも久しぶりだ」

 

 「そうですねぇ。私達もスズ様を摂取出来ずにいましたので、いい加減おかしくなりそうでした」

 

 俺を()()するというのがよくわからんが、リリーが休めているならいいかな…?

 

 「特に今日はひと暴れしてしまいそうでしたよ。スズ様のお力がわからぬとは、なんと愚かな…」

 

 アリアが拳を握りしめて憤っている。大方、会議で俺が詰められているのを思い出しているんだろう。

 

 「これから死地に赴くって時に、こんな子供がいたら不安にもなるさ。実際に戦闘になれば、評価も変わるよ」

 

 「む、そうですね。俺達が明日のドラゴン討伐で結果を出せば、スズ様へ向ける目も変わるでしょう。これは張り切らねばなりませんね」

 

 アリアはまた拳を握りしめるが、今度は決意を固めたような面持ちをしている。張り切るのはいいが、やり過ぎないでくれよ…。

 

 「そろそろ上がろうか。もう今日はしっかり寝て明日に備えよう」

 

 

 

 

 

 

 アバタールームのベッドでしっかりと英気を養った俺達は、セレーネ皇女のもとで出発を待っていた。アリアとリリーも、ベッドで俺を()()出来たそうで、肌の艶がいつにも増している気がする。

 

 しばらく待っていると、とうとう出発の時間をセレーネ皇女が告げた。

 

 「では、いざ出陣じゃ! 妾達が必ずやドラゴンを討ち倒し、忌々しい呪いを帝国から消し去るのじゃ!」

 

 俺達が出発する頃には街は大賑わいで、騎士だけじゃなく領民もセレーネ皇女の出陣を見送るために門へ押し寄せていた。まるでパレードのように民衆の中を馬車が進み、セレーネ皇女が歓声に応えながら、ついに俺達は街を出た。

 

 

 

 

 

 「あれが例の山か? 思ったより大きいな…」

 

 馬車を走らせて見えてきたのは、緑豊かな台形状の山だった。実は街を出発してからすぐに山を見つけてはいたのだが、いくら馬車を走らせども、山の大きさが変わらない。それだけ、大きな山ということだろう。

 

 さらに馬車を走らせ、ようやく山の大きさがわかってきたところで、馬車が止まった。

 

 「ここからは馬車ではなく、予定通り徒歩で行くことになるのじゃ。山には魔物もいるが、妾達なら問題ないじゃろう。目指すのは頂上にある平原、資料によればそこにドラゴンがいるはずじゃ。じゃが、妾達を見つけてあちらから仕掛けてくることも考えられるのじゃ。気を抜くなよ!」

 

 セレーネ皇女の呼びかけに騎士達が「応!」と応え、ついにドラゴン討伐が始まったのだ。

 

 

 

 




 次はさすがにドラゴン戦やります
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