◇古聖堂・地下
「さぁ、先生・・・もう一度始めましょう。」
”くそっ!”
目の前のボンドルドは姿が変わると、先ほどとは全く違う戦闘スタイルで仕掛けてくる。
先ほどまではゆったりとした動きでこちらの攻撃に合わせた戦い方だったが、今の奴はこの広い空間を縦横無尽に飛び回っていた。
特に厄介なのが、その脚力だ。ヒエロニムスが余裕で入るこの地下空間を目にも止まらぬ速さで移動して一撃離脱を繰り返している。さすがのホシノも、その速さには着いて行けない為、防戦一方となってしまっている。
「さぁ、ここでなら、
「もっと見せて。もっと委ねて下さい。」
”どうやら、出し惜しみはできないみたいだね・・・”
先生が【大人のカード】を構えると、さらに光が増していく。
そして、そこにはさらに別の生徒が姿を現す。
姿を現したのは
「あぁ、素晴らしい。なんと素晴らしい。」
「こんなにも答えてくれるとは思いませんでした。」
「これで、また近づけます。」
ボンドルドは大きく手を広げると、感動したように拍手を繰り返す。
”悪いけど私も全力で行かせてもらうよ!”
先生の指揮の下、それぞれの生徒が己の武器を撃ち放つ。
遠方から密度の濃い弾幕を張るヒナ、接近し二丁のショットガンを振り回すツルギ、先ほどとは違い、仲間を守ることに徹するホシノ。それぞれが仲間の動きを阻害せずにカバーし合い、完璧なタイミングで攻撃を仕掛ける。
ボンドルドの攻撃はホシノに止められ、近づくとツルギが脅威となり、離れるとヒナに一方的に撃たれ続ける。
しかし、一方的になりつつある状況でもボンドルドの余裕は消えなかった。*1
「そこですね。」
ボンドルドはホシノが構えた盾を掴むと、尻尾を軸にして両足で盾ごとホシノを遠くへ蹴り飛ばす。ホシノが居なくなったことでツルギの被弾が増え、ヒナに対する妨害が苛烈になる。
飛ばされたホシノは
”いや、まだだよ。まだ手は残っている。”
ツルギを突き放し、ヒナをすり抜けてボンドルドは先生に接近する。
腕に生えたブレードを振りかざし、先生に向けて振り下ろす。
シッテムの箱の防御機能で防がれるが、すぐさま次を叩き込む。何度も攻撃を繰り返し、徐々にシッテムの箱のエネルギーを削っていく。
「やはりあなたは奇妙ですね。これだけの力を持ちながらも、その存在は揺らぐことが無い。」
”伊達に教師を名乗っては無いから・・・ねっ!”
シッテムの箱のありったけのエネルギーを使い、力場によりボンドルドを捕縛する。
その拘束は強力で、ボンドルドの力でもすぐには振りほどけなかった。
「この程度ではすぐに解除できますよ?」
”その一瞬で十分だよ!”
自信満々の先生の言葉に疑問を持つ。今の先生には武器を持っている様子も、使う素振りも見えない。先ほどの3人の生徒はまず間に合わない・・・3人?
「おやおや。」
”もう遅い、終わりだよ。”
ドオォォォン!
爆発的な発射音と共に巨大な光がボンドルドを襲う。
膨大な熱と質量が残った装甲を砕き、脆弱な体を抉る。
下半身が消し飛び、残った上半身は遠くへ吹き飛ばされる。
攻撃の飛んできた方向には
”ありがとう、アリス。”
先生は地面に転がるボンドルドに近づくと、懐から拳銃を取り出し構える。
”もう終わりだよ、ボンドルド。”
「・・・・まさか、伏兵がいたとは思いませんでした。」
「最初に気づくべきでしたね。戦力を小分けにしたのはこの為でしたか・・・」
”正解。まぁ、このカードの力を一度見たあなたに通用するかは半分賭けだったけどね。”
「素晴らしい・・・素晴らしい。」
”私を本気で攻撃した以上、こうなる覚悟はあったはずだ。”
「介錯があなたなら・・・本望ですね。」
”生徒は人殺しにできないからね。”
「ええ、あなたらしい・・・」
パァン、パァン、パァン!
ボンドルドに向け、先生は拳銃を撃つ。
放たれた弾丸は心臓や重要な臓器を破壊し、その体の機能を停止させた。
仮面から光が消え、糸が切れたように頭は力を無くし、後頭部と地面がぶつかる。
”これで・・・おわr「お父さん!」・・・ぁ・・・”
後ろから聞こえてくる悲鳴にも似た叫び声。ボンドルドの亡骸へと近寄る少女。
そう、彼女・・・ミツレは見ていた。最初から最後までの戦いを。自分の父親の最後を。
「いやだ・・・嫌だ嫌だ嫌だ!」
先生は後悔した。ボンドルドに気を取られ、ミツレのことを忘れてしまっていた事を。
遠くから見ている少女の家族を目の前で殺したことを・・・
「なんで?どうして?・・・ひどい、ひどいよぉ・・・」
死体に縋り付き、涙を流す少女にかける言葉が見つからない。
そもそも、声を掛ける資格などない。自分が殺したのだから。
”ごめんね・・・ごめんね。”
呟く様に謝ることしかできない。大の大人が、生徒を導く先生が情けない。
自分にできることは・・・もはや無い。
「お願い・・・返事をしてよ・・・また撫でてよ・・・」
やがて、ミツレの後ろにいた祈手が歩き出した。
ミツレの頭をなでると、ボンドルドの首にかけていた白笛を取り、眺め始める。
「・・・・・・・ッ!」
そいつは突然、ボンドルドの仮面を取り外すと自分の持っている黒笛と仮面を放り投げる。
”!何を・・・”
彼が仮面を被ると、仮面に紫の光が灯り、先ほどまで隠れてい居た尻尾が現れる。その姿はまるで・・・いや、ボンドルド本人の様だった。
”いや、ありえない・・・でも、まさか!”
「えぇ、あなたの考えてる通りですよ。」
祈手が・・・いや、ボンドルドが答える。
「私はもはや、決められた肉体は持ってません。」
「調印式の爆発、あの時も一人破壊されましたからね。」
”ボンドルド、もしかしてお前は・・・”
「ええ、そうですよ・・・・
今回はここまでです。
やっぱりアリスなんですよ!人にそっくりなロボットなのもレグに似てるし、めちゃめちゃ強力な武器も持ってる。性別以外全部似てるんですよねぇ・・・
次回、崩壊。
それではまた次回・・・
〇カードリッジ
ボンドルドの落とした箱。それは暖かく、また生き物のように鼓動している。
見るな、知るな、今すぐ捨てろ。