異能持ちの不良、異世界でも不良を束ねて、いつか世界を救うらしい 作:melk
ちなみに、思い立って1話を書いてから、2話目を書くまで2年くらい経っている。(もちろん、投稿前に1話目の手直しは多少あった)
主人公のキャラが変わってないかが心配。
チーム“
眠い、非常に眠い。全員ボロボロのくせに夜中まで打ち上げとかイカれてやがる。オールでカラオケはマジでしんどかった。というか店員のお姉さんも、夜中に不良の集団が来てビビってたしな。受付した時の「ヒェ!」という声と引きつった笑顔はしばらく忘れられない。少し申し訳なかった。なぜか帰るときには満面の笑顔と連絡先が書かれたメモを俺に渡された。ホントに何でだ?
次の目標は関東一帯にまで勢力を広げること・・・の前に“虎武羅”から引き抜いたメンバーの教育だな。うちのチームは不良であっても悪には染まらないのだ。ご近所付き合いとかマジ大事。ちなみにいい笑顔と爽やかな挨拶が周りと仲良くするコツな!
授業が終わって帰路に就く。学校にいると声の出し方すら忘れそうだ。さすがに一年間この状況が続けば慣れてくる。教室の重い空気も、廊下から不意に飛んでくる俺の名前も、教室の前を通る奴から一瞬だけ向けられてはすぐに逸らされる視線も、俺にとっては日常の風景だ。居心地が良いとは言えないが、俺には“灼熱”のみんながいる。
家にも帰らず、真っ先にアジトにしている廃倉庫に向かう。隙間の時間に考えた新人の振り分けを伝えよう。今回は、班長になる奴と少し相性が悪そうな新人をあえて配置してみた。班長が四苦八苦しながら俺に泣き言を言いに来る姿が目に浮かぶ。新人とはいえ元敵チーム、最初は反抗心を隠そうともしない上に、「不良らしからぬ不良グループ」の在り方に従わず、すぐに近場でカツアゲとかしだすしな。班長が頑張った分だけ、新人の目つきが変わっていく、そこらのゴロツキから健全な不良へ。敵から友へ。
今からそれが楽しみで仕方ない。まずは今日発表した後の苦々し気な顔から楽しませてもらうか。
「やあ、遅かったね」
「!?」
所々白色の混じった髪は不自然に揺れ、後は目の下の隈が目に付く。髪と隈のせいで少し老けて見えるが、恐らく20代~30代くらいだろう。白衣を着ていることから学者か医者辺りじゃないかと勝手に推測する。
親し気に話してくるが、俺には見覚えがない。・・・警戒心は解かない。
「俺たちに何か用か?」
「いや、用があるのは君だけさ。君に用事があると言ったら彼らが通してくれてお茶まで出してくれたんだ。不良とは思えないほどよく教育されているね」
「・・・どんな用事だ?」
「君の“力”について」
「教えられることは何もねえな」
「教わることも何もないとも。むしろ君は何も知らないだろう?その力のルーツは何で、なぜ君が持っているのか、何に使うべきなのかも。逆だとも。僕は君に
「知っている、と?」
「僕の知っているのは『何に使うべきか』だけさ。自分のことは自分で見つける方が自然だろう?」
「利用しようってんならお断りだ。こっちも忙しい」
「まあまあ、『何に使うべきか』の詳細はまだ教えられないけど、とりあえずこの紙を渡しておくよ。それじゃ・・・はい!」
「は?」
メモ帳の一頁を丁寧に切り取り、隙間なくピッタリと折られた小さな紙を無理やりに渡され、学者風の男がそれまでの空気を壊すかのような明るさで手を叩く。
俺は見晴らしのいい
は?
どういうこと?
アジトは?
あいつらは?
夢?
しかし、夢じゃないことは手に持たされたメモが証明してしまっている。
何もわからない現状を知る術はこのメモ一枚しかない。あの胡散臭い顔を思い浮かべながら、指の先でつまんでメモ用紙を開く。とても綺麗な字とは裏腹に、受け入れがたい内容が記されていた。
『勝手で申し訳ないけど、君には異世界へと行ってもらう。目的は、強くなること。期間は帰ってこられるほどの強さを手にするまで。人数は君の他にもう二人と現地での協力者も数名いる。協力して生き残ってくれ。強くなった君たちの力がいずれ来る災厄を退ける鍵になる』
無駄を省き、言いたいことだけ詰め込んだような身勝手な内容に、ぶつけようのない怒りが湧いてくる。本人が目の前にいたら、とりあえずヘッドバットは食らわせてたね、間違いない。
異世界、異世界か・・・。生憎と読んだことはないが、そういうジャンルの小説やら漫画やらが流行ってたのは知ってる。まず異世界ってなんだ?他地域、他国、技術的な面を無視すれば他の惑星なんていうのならまあ理解はできる。じゃあ異世界とはどこだ?どうやって来た?
「くどくど考えても、来ちまったもんはしょうがねえ!おやつの時間も過ぎちまったし、腹すいてきた」
ぱっと見草木はいっぱいある。なら食べ物には困らないか。サバイバルの知識なんてものはないが、世界が変わればどうせ使い物にならないだろう。それよりも俺の頑丈な胃袋の方がよほど価値がある。
状況は全くと言っていいほど理解できていないが、当面の目標は俺と同じようにこの世界に来ているはずのあと二人と現地協力者とやらに会うことにしよう。一応舗装された道がある。それなら進めば人がいるだろう。話を聞けば多少なりとも情報が手に入るはずだ。
「あれ、よく考えたら何聞けばいいんだ?探し人について知らなさすぎて何聞けばいいかすらわからん」
一人で考えててもどうしようもないか。迷ったら即行動しかないよな。とりあえず歩こう。もう少し先に実のなった木らしきものもあるから腹ごしらえでもしながら。
「完全に紫って感じだけど毒じゃねえよな?」
手のひらよりも大きい毒々しい色の木の実は、持った感じではリンゴっぽい重さと感触だ。俺ならそうそう腹は壊さないと思うが・・・。とりあえず一口。と思ったところで辺りが急に暗くなった。さらに言えば手に持った木の実がズンと重くなった。
そして俺の上半身は木の実に喰われた。
「俺を逆に喰おうってか?だが鉄の胃袋はお持ちか、なッ!?」
木の実の歯に当たる部分が俺を貫通することはない。俺が口を強引にこじ開けるのを止めることもできない。俺が軽く力を籠めると爆発しない程度の強さの炎が木の実を内側から燃やしていく。しょうがない、生で食べようと思ってたが、中までしっかり火を通すか。
「負けを認めたら元の大きさに戻るのな」
うん、生のままの方がおいしいやつだなこれ。だが、まあ食べれなくはない。
30分後、少し大きめな村についたが何やら様子がおかしい。人が住んでいる気配はある。だが、どこにも人が見当たらねえ。幽霊が出る的なアレか?いや、今真昼間だが?異世界的には明るい時間こそ出るみたいな常識なの?
「おーい、誰かいませんかー?」
「おい、兄ちゃん。早く家の中にでも隠れといた方がいいぜ?もうじきソウレン衆との喧嘩が始まるからな」
「ほう、不良チーム同士の喧嘩!この世界の喧嘩、ワクワク!」
「いや、じゃなくて逃げろって」
「ああ、お気になさらず。邪魔にならないところで見てるので」
「巻き込まれるって、おい!そっちは危ないって!」
親切な人(角が生えてるちょっと悪魔っぽい見た目)に一礼をして、それっぽい場所を探す。やっぱり不良の喧嘩と言えば路地裏か廃墟か?それとも人数によっては広場とかで盛大にやるもんなのか?
「ソウム将よぉ、俺らのシマで随分楽しいことやってくれたらしいなぁ?」
「おいおい、これから元ソウレン衆になる方々が来たぜ?ちょっと新しいシマの下見ついでに掃除してやっただけじゃねえか。感謝されることはあっても、文句言われることはねえだろうよ」
「本当にゴミだけ掃除して帰る奴があるかよ!お陰で俺たちのアジトのごみ箱までスッカラカンになってたじゃねえか!もしあそこに大事な書類が入ってたらどうする気だコラァ!?」
「そんなのは掃除もできないトップのお前が悪いだけだろうが!むしろお前たちのシマの連中から感謝の手紙が届いたわ!」
「な、なんだと?あ、あの野郎共・・・」
「頭の精神状態(メンタル)に罅が!おのれ、小癪な真似を・・・」
「も、もう怒った!ソウム将、お前らは俺たちのプライドを傷つけた!ここでぶっ潰す!」
「上等だコラ!」
「「「「うぉおおおおおお!!」」」」
村の中心部の広場でそれは始まった。殴り、殴られ、蹴り、蹴られ。蹴られた人も舞い、殴られた人の血も舞う。両者の見た目はさっきの親切な人のような悪魔っぽい姿だが、一方は赤装束、もう一方は白装束なため、見ていても勢力がはっきりとわかる。
まだ始まったばかりなため、互角な戦いに見えるが、一方でソウム将と呼ばれていた赤装束の方が士気が高い。これが後々どう響いてくるか・・・。
ああ、良いな!最高に熱い戦いだ!何が良いって、お互いに己の身一つで喧嘩してるところだ!そうだよ、喧嘩に武器何て邪道だ!拳一つ持ち寄って誰が最強かを決める、そんな単純で馬鹿らしくてハチャメチャに熱い戦いが喧嘩ってもんだろ!あと大将らしき奴らが先頭に立ってるのもいい。
「ほら、そこだ!行け!もう一発!」
「そこの屋根上にいる奴、うるせーぞ!」
「ああ、お構いなく。ただのファンなので」
見てたら混ざりたくなっちまった!でもこれはこいつらの喧嘩。俺が行って引っ掻き回すのは美学に反する。我慢、我慢。
しかし、俺の熱い思いは、不意に感じ取った背筋がゾワリとする感覚によって一気に冷めた。喧嘩じゃない何かが始まる。どこだ?どこから来たこの予感は?臨戦態勢を取ったまま注意深く辺りを見回す。
喧嘩している奴らは?―気づいてない。
建物の影は?―何もない。そこじゃないと直感が言っている。
「世界が変わっても、こういうクズは蔓延るらしい」
気配は感じ取れなかったが、声がした。真上だ。おおよそ人がいるべきではない場所に立っている奴がいた。黒い髪、黒い瞳、色白で細身、ワイシャツとスーツの下・・・いや、学ランの上を除いただけで制服か?明らかに風貌でわかる。コイツは俺と同じ世界の奴だ。
皮肉なことに、異世界の屈強な不良共よりも、同郷の痩せた一人の男の方が危険だと感じている。
「いつも通りの掃除をしよう。ゴミはまとめて捨てるだけだ」
黒髪の奴が徐に右手を前に出し空を掴むと同時に、背を向けている方に押し出されるような感覚が走った。しかも、かなり強い!屋根を踏み抜いて足場を固定していなければ俺が押し負けてしまうかもしれないほどに。
ふと地上を見ると、あれだけ広がっていた不良たちが縄にでも括りつけられたかのように一か所にまとめられていた。
「うん?君は何だい?早く集まらないと捨てられないね」
「ぐっ!?」
俺を押し込む力がさらに強まった。マズイ、このままじゃこの建物の耐久力が持たない。屋根が崩れれば成す術なく引きずり落とされるしかない。だったらいっそ踏み込んで跳ぶか!
「いきなり出てきて邪魔すんじゃねえぞゴラァ!」
「!?」
見えない何かに防がれはしたものの、俺の拳は予想外だったらしい。大きく見開いた目がそう言っている。
「君、何者だい?」
「チーム“灼熱” 燈戦灼!多分お前と同じ世界の不良様だ覚えとけ、ドアホ!」
「チーム“灼熱”・・・あっちの世界にいれば明日掃除しに行こうと思っていたゴミ共か。君がそのリーダーなら、一日早いけど掃除しておこう」
「お前は名乗んねえのか?」
「ただの清掃業者さ。君たちみたいな息をしてるだけで迷惑なクズ専門のね」
「はいはい、男と男の喧嘩の邪魔をした挙句、人に名乗らせて自分は誤魔化す空気の読めない清掃業者さんね。とりあえずお前は空気読め男だ!」
「下品なネーミングセンスのゴミクズも1分後には駆除できる。何も問題ないね」
「やってみろや!一発ぶん殴って、男同士の喧嘩を邪魔したこと土下座で謝らせてやるよ!」
次回投稿は未定。何となくのアイデアはあるけど、それを形にするかは反応次第。