東方宿儺譚    作:雅之幻想

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今更ですがこの小説はPC推奨です。


15.神憑く化け物

目と腕が二対。腹にも口がある。

誰がどう見ても、紛れもない化け物。

本来なら、真っ先に殺すべきだ。包丁を手に取り、滅多刺しにし、命の灯火を消すべきだ。

勿論、そうした。目を潰し、腕を切り落とし、腹の口を焼き潰した。

双子でも育てようとした母親すら、宿儺を殺そうとした。

岩で圧し潰し、火炎に放り込み、首を切り落とした。

しかし翌日には、そのどれもが治っていた。

この噂は瞬く間に広がった。

腹に口があり、腕が四本ある化け物。

 

 

「__やっとか。」

 

 

当然、その噂は羂索の耳にも入った。

早速彼は身支度をし、宿儺を迎えに行った。

 

宿儺がいたのは、京都の中級貴族の家。

羂索の名前は天元とは違い、あまり広まっていない。

それでも「頭に縫い目がある呪術師」ということで、京都の中では顔が知られている。

ここの門番に事情を説明するとすんなり通してくれた。

案内された部屋ではちょうど、宿儺が水に沈められて死にかけていた。

とはいえ、死ぬことはないだろう。神が水に溺れて死ぬという話は聞いたことがない。

 

 

「ひょっとしたら、私が溺死する神を初めて伝える人間になるかもしれないな。」

 

ばばなごぼびっでばいでばずげろ(馬鹿なこと言ってないで助けろ)

 

「ああ、喋れたんだ。」

 

ばやぶびぼ、ぶべばいんばぼのびず(早くしろ、冷たいんだこの水)

 

「赤ん坊だから呂律が回らないのかな?何を言ってるのか解らないよ。」

 

ぶぼぶべ(嘘つけ)

 

「勿論嘘さ。」

 

 

そう言うと羂索は、宿儺を水から引き上げた。

やけに重いと思ったが、足と四本の腕のそれぞれに重石が括り付けられていた。

 

 

「腕四本なら、重石を多く着けられるという利点があるのか。」

 

「欠点だろ、どう見ても」

 

「やる側にとっては利点なのさ。」

 

 

取り敢えず、宿儺に羽織っていた着物を渡した。

赤子には大きすぎるくらいのサイズだ。

 

 

「腕四本用の服は見つからなかったよ。」

 

「無いのが普通だ。」

 

 

宿儺は上の口を動かしていない。代わりに下の口を使って声を発していた。

 

 

「下の口は飾りじゃないんだ。」

 

「上の口はまだ歯も生えてないからな。うまく喋れんのだ。」

 

 

その見た目は紛れもない化け物だが、羂索にとっては興味の対象だった。

本当はもっと質問したかったが、奥方が来てしまったので後回しになった。

 

 

「__というわけで、この子は我々呪術師が預かります。」

 

「ええ、構いません。寧ろもらっていってください。」

 

「そうですか。」

 

 

と、あっさり譲渡が決まってしまった。

忌み子を抱え、離縁する話まで出ていたところに

羂索が引き取るという話が出たため、彼女として願ったり叶ったりだったそうだ。

一応宿儺にも確認したが、「一向に構わん」とのこと。引き取らない理由はない。

 

そうして羂索は宿儺を連れて、その場を後にした。




本家の羂索ならもっと美味いこと言うと思いますが、主の力ではこれが精一杯です。
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