目と腕が二対。腹にも口がある。
誰がどう見ても、紛れもない化け物。
本来なら、真っ先に殺すべきだ。包丁を手に取り、滅多刺しにし、命の灯火を消すべきだ。
勿論、そうした。目を潰し、腕を切り落とし、腹の口を焼き潰した。
双子でも育てようとした母親すら、宿儺を殺そうとした。
岩で圧し潰し、火炎に放り込み、首を切り落とした。
しかし翌日には、そのどれもが治っていた。
この噂は瞬く間に広がった。
腹に口があり、腕が四本ある化け物。
「__やっとか。」
当然、その噂は羂索の耳にも入った。
早速彼は身支度をし、宿儺を迎えに行った。
宿儺がいたのは、京都の中級貴族の家。
羂索の名前は天元とは違い、あまり広まっていない。
それでも「頭に縫い目がある呪術師」ということで、京都の中では顔が知られている。
ここの門番に事情を説明するとすんなり通してくれた。
案内された部屋ではちょうど、宿儺が水に沈められて死にかけていた。
とはいえ、死ぬことはないだろう。神が水に溺れて死ぬという話は聞いたことがない。
「ひょっとしたら、私が溺死する神を初めて伝える人間になるかもしれないな。」
「
「ああ、喋れたんだ。」
「
「赤ん坊だから呂律が回らないのかな?何を言ってるのか解らないよ。」
「
「勿論嘘さ。」
そう言うと羂索は、宿儺を水から引き上げた。
やけに重いと思ったが、足と四本の腕のそれぞれに重石が括り付けられていた。
「腕四本なら、重石を多く着けられるという利点があるのか。」
「欠点だろ、どう見ても」
「やる側にとっては利点なのさ。」
取り敢えず、宿儺に羽織っていた着物を渡した。
赤子には大きすぎるくらいのサイズだ。
「腕四本用の服は見つからなかったよ。」
「無いのが普通だ。」
宿儺は上の口を動かしていない。代わりに下の口を使って声を発していた。
「下の口は飾りじゃないんだ。」
「上の口はまだ歯も生えてないからな。うまく喋れんのだ。」
その見た目は紛れもない化け物だが、羂索にとっては興味の対象だった。
本当はもっと質問したかったが、奥方が来てしまったので後回しになった。
「__というわけで、この子は我々呪術師が預かります。」
「ええ、構いません。寧ろもらっていってください。」
「そうですか。」
と、あっさり譲渡が決まってしまった。
忌み子を抱え、離縁する話まで出ていたところに
羂索が引き取るという話が出たため、彼女として願ったり叶ったりだったそうだ。
一応宿儺にも確認したが、「一向に構わん」とのこと。引き取らない理由はない。
そうして羂索は宿儺を連れて、その場を後にした。
本家の羂索ならもっと美味いこと言うと思いますが、主の力ではこれが精一杯です。