色々忙しいもので。
「それにしても宿儺、何度も殺されたって本当かい?」
「ああ。会ったときの水もそうだが、何度も殺されかけた。」
「火に入れられ岩に潰され首を刎ねられ滅多刺しにされたとも聞いたけど、それも本当かい?」
「そうだ。崖から突き落とされたことも、山に放置されたこともある。」
「それをやる親も親だけど、それで生きてる君も相当だよ。」
「憑きたてだからな。まだ神の力が残っているのを感じる。これが1年続いたら危なかったがな。」
「そんな生命力、その見た目抜きにしても十分化け物だよ。」
そもそもまだ生後3ヶ月だ。神としての力と過去の記憶が残っていたとはいえ、そこまで殺されかけたら精神が崩壊するのが普通だ。
「まあ神に普通を求めるのもアレだけどね。」
「こんな異形になるなど想像できんだろう。事故だ事故。」
そう言ってはいるが、羂索はこれほどまで歪んだ人間を見たことがない。神が人の身体に入ってしまったことによる歪みなのだろうか。それともまた別の理由が?
「そういえばだが、俺の荷物は預かっているか?」
「私の部屋に置いてあるよ。変なものもあったけど、一応そのままにしておいているよ。」
「そのヘンなモノは粉の入った壺か?」
「ああ、そうだよ。粉と言っても、手のひらにほんの少し乗る程度だけどね。」
「その粉は蓬莱の薬だ。尤もあの量では効果を発揮できないだろうがな。」
羂索は目を丸くした。そんなモノが実在したとは。
蓬莱の薬といえば、かぐや姫が月に帰る際に、帝に手渡したとされる薬だ。
人を不老不死にすると言われているが、肝心の薬は富士山で焼かれてしまったはずだ。
「何故それを君が?」
「山で拾った。手がかりの一つだ。」
「手がかり?なんのだい?」
「人探しだ。」
「まさか君は、かぐや姫を探しているのかい?」
「正確に言えば、輝夜姫を迎えに行った俺の同僚だがな。」
「でもかぐや姫は月に帰ったはずだ。もうこの地上にはいないよ。」
「何?」
羂索とて呪術師。それなりの場数は踏んできている。
その上で、断言する。
宿儺は間違いなく、今まで出会ったどの術師よりも強い。
相手に対して恐怖し、一歩引いたのは初めてだったからだ。
「詳しく聞かせろ。俺の持っている話とすり合わせる。」
「あ、ああ。」
恐怖で冷えた肝が温まってない中、羂索は竹取物語の話をした。
竹から生まれたかぐや姫。それを育てた老夫婦。
結婚を求め、尽く玉砕した5人の貴族たち。彼等に出された5つの難題。
そして、かぐや姫の最後。
「__というわけで、この話が事実だとすれば、かぐや姫はもう月に帰ってるんだよ。」
「なるほどな...だが輝夜は月には帰っていないと言われた。よもや奴らが嘘を?」
無くはないだろう。だがそれでは復活したときに八意が来なかった理由が分からない。
「いや、今はあいつらを信じよう。」
そうなると地上で身を隠しているのだろう。
八意が本気で隠れているのなら、100年かけても見つけられないが。
「と、着いたよ。」
そうこうしているうちに、門前に着いた。
「ここが、我等呪術界の総本山。山国御陵だ。」
最初は『奈良で生まれた』ということにしていましたが、
『京都で生まれた』と変更します。その方が辻褄が合うので。