穢れの力により、大人になった宿儺。
「その姿になれるなら、最初からなってくれればよかったのに。君をおぶってここまで来るの大変だったんだよ?」
そう愚痴を言うのは羂索だ。
眼の前で赤子が大人になったというのに、動じる素振りも見せない。
その胆力は尊敬に値するだろう。
「ではこれで、君はもう穢れとやらの術式も使えないのだな?」
「完全に焼き切れた。もう使えん。」
驚きを隠しきれていない天元は声を震わせてそう聞いた。
正確には穢れは術式ではなく神格だが、ここではそういうことにしておく。
「君のことは追々知ることにしよう。改めてようこそ、呪術界へ。」
そう言って天元は出ていった。
「やっぱり人は穢れで成長するんだね。」
「量次第で毒にも薬にもなるのが穢れだ。」
「毒側のイメージしかなかったから、薬側は初めて見たよ。」
「まあ一気に接種すると死にやすいのは穢れも薬も一緒だ。俺以外は、得た穢れをそのまま成長に使える訳では無いからな。」
「でも君はもうそれを使えないと。」
「残ってた神格は完全に消えた。俺が人の身を脱するまで、穢れの力は使えん。」
「それは残念。頭だけでも若返らせて貰おうと思ったのに。」
「お前の頭は1000年経っても変わらんだろう。」
「じゃあ1000年経ったら確認しに来てよ。神の姿で。」
「それまでお前が生きていたら、な。」
あれから十年の月日が経った。これまでの大きな出来事は三つ。
一つ。蓬莱の薬は羂索に渡した。量が少ない上、元々処分する予定だったものだ。
一応一度くらいは死んでも復活すると考えてはいるが、自分が必要になる時は多分来ないだろう。
羂索はかなり喜んでいた。処分する手間が省けて有り難い。
一つ。羂索との約束である「帝と話す」は達成した。
尤も既に時が経ちすぎてしまい、羂索から話された以上の情報は得られなかった。
そしてもう一つ。
天元が結界を張りに行っている間に、俺は羂索と共に裏切った。
というのも、羂索は元々天元の下で働く気なかったのだ。
「君との契約である『帝と話す』は既に達成された。次は私のやりたいことをやるよ。」
「何をする気だ。」
「呪術による新たな世界の創造さ。」
「・・・本気か?」
「本気だとも。」
「出来るのか?お前に。」
「算段はある。君の力と天元があれば。」
「・・・同化か。」
「君には天元を守る者と戦って欲しいのさ。まあ殺しても構わないけどね。」
「何故俺が貴様の話に乗っかる前提なのだ?」
「乗っかってくれないと成功出来ないからね」
やらんとすることは理解できる。その実現にも興味がある。
何よりも__
「暇つぶしには丁度いい。」
意外とノリが良い宿儺さんですね。
興が乗れば結構いろいろ手伝ってくれそうなイメージ。