本当はこのまま終わらせるつもりだったのだけれど、
少し無視できない存在が現れちゃったから、霊子と封印することにしたわ。
だから悪いけどもう少しだけ、この章を続けるわね。
「君が明確に呪術界、ひいては人間の敵になったということを広めたかったんだ。
そうすることで天元は私よりも君への警戒を強めるからね。」
と、新しい身体になった羂索が新嘗祭終了後に言ってきた。
新嘗祭に呼ばれた理由と、自分に対して五穀豊穣を祈っている理由が全く解らなかったが、主催者が羂索と分かった途端に合点がいった。自分のことを神だと知っているのは羂索だけだからだ。
別に豊穣の神というわけではないのだが、この際良いだろう。
「それよりも、あの女は何だ。俺に抱きついてきた女は。」
「彼女は万だよ。どうやら君に一目惚れしたらしい。」
「正気か?」
「正気な状態で呪術師やってる方がおかしいとは思わないかい?」
「グーで殴りたい素晴らしい理論だな。」
「君を襲撃する少し前に、五虚将を出撃させないといけなかったんだけど返り討ちにされたんだ。
その返り討ちにした張本人が彼女だったって訳さ。」
「どおりで奴への術式の効きが悪かったわけだ。」
術を受けて生きているのは少しの強者達だけ。
五虚将を退けるほどの者なら、斬撃の効きが悪いのも納得である。
それにしても、五虚将は妙な術を使う連中の集まりだった。
呪術とはまた違うものだったが、あれが噂に聞く陰陽師という奴らだったのだろうか。
最近では呪術師と一緒くたにされることが多いそうだが、詳しくは知らない。
「ただでさえ呪術師と陰陽師は仲悪いからね。
ただ今後、陰陽師は呪術師とごっちゃになって認識されると思うよ。」
「人の心を読むな。」
「ごめんごめん。とはいえ、五虚将は選りすぐりの陰陽師たちで組まれた隊だ。そう簡単に補充できるわけじゃないから、こっちとしてはまあまあ痛手だったよ。」
「五虚将を俺にふっかけたのは貴様だろう。キレられても困る。」
「いや私は反対したんだけど、他の連中が五月蝿くてね。『会津の
「それで俺を討伐しに来たと。」
「まあ返り討ちにされることをはじめから想定していたってことで私の発言力は増したし、悪いとこばかりではなかったよ。」
そう言って羂索は手を叩いた。すると自分たちがいた部屋に茶菓子が運ばれてきた。
「それはさておき、天元の同化時期が大体決まった。」
饅頭が美味い。そういえば甘い物は久々な気がする。
「3年後を
茶も美味い。やや苦みが強いが、楽しめる範疇だ。
「宿儺聞いてる?」
「聞いている。3年後だろう。」
「ならいい。じゃあまた3年後に。」
そう言って羂索は部屋から出ていった。
茶菓子も食べ終わり、宿儺も帰る事にした。
帰りは万に後をつけられていたが、途中で撒いた。
にも関わらず、家を特定されたのは何故だろうか。
奴は「愛よ!愛!」などと言っていたが、どうせ残穢でも辿ったのだろう。
結局数回ほど食事を共にすることになった。
「と、あまり回想に浸る質ではなかったのだがな。」
「心でそう思っていても、いざそうなるとなってしまうのが人なのよ。」
完全に不意打ちだ。だがこれは俺が悪い訳では無い。
この女の空間を繋げる術にハマり、紅白の巫女に封印されてしまっただけだ。
「貴様は誰だ。」
「あら、まだ名乗ってなかったわね。」
「紫早くして!そろそろ閉じないと私が持たない!」
紫というのか。この女は。
人の様に見えるが、その気配は人とも呪霊とも異なるものだ。
「まさか妖怪か?」
「あら、当たりよ。」
「何故妖怪が俺を封じる?それも人間と結託して。」
「貴方の力が大き過ぎるのが原因ね。あ、霊ちゃんまだ持つ?」
「もう限界!」
バチッという音とともに、動きを封じていた鎖のようなものが解けた。
呪力とは異なる力が込められていた。五虚将と似たような力。
「まさか陰陽師か?」
「似たようなものよ。霊子、あとどのくらいで回復できる?」
「分からない。札とか使えば1度くらいは出来ると思う。」
「じゃあ回復するまで時間を稼ぐわね。」
「解」
呑気に話す二人に解を放つ。しかし、目に見えない何かに防がれた。
陰陽師の方は戦闘不能。挙動にだけ気を配れば問題ないはずだ。
問題は紫と呼ばれた女の方だ。
甘く見積もっても羂索と同等、天元ほどの力があっても不思議ではない。
「ややもすれば、俺以上か?」
「さあ、始めましょう。封印のための戦いを。」
__最強の戦いが、始まってしまった。
博麗霊子 博麗神社初代巫女。宿儺を封じたその実力は折り紙付き。
八雲紫により、章の境界が伸ばされました。平安編の引き伸ばしを行います。