東方宿儺譚    作:雅之幻想

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東方伏魔殿という曲が2022年に出ていた事を最近知りました。一切関係ありません。


23.ラム

「あーあー、聞こえてる?」

 

 

急に耳元で声がした。治したての心臓に悪い。

 

 

「これが俺の幻聴であることを祈りたいな。」

 

「じゃあ幻聴を聞かせてあげる。」

 

 

チラと耳元に目を向けると、小さいスキマができていた。

 

 

「目の前のソイツは饕餮尤魔。今回の異変に関係あるっぽいから、生け捕りでお願い。」

 

 

そう言うと、スキマは消えた。全く奇妙な奴だ。嫌われる理由もよく分かる。

そう思いつつ、宿儺は今一度饕餮と向き合った。

いくらか攻略の仕方は考えている。生け捕りでも対応可能な攻略方法も勿論ある。

 

 

「どうした?一度引けとでも言われたか?」

 

「異変に関係あるから生け捕りにしろと言われた。」

 

「やっぱり石油の調査じゃないか。」

 

「尋問は八雲がやるのだろう。」

 

「お前にそこまで漕ぎ着けられるのか?傷もまだつけられていないお前に。」

 

「肉の下処理は料理の基本だ。」

 

 

捌こうと思えば、それもできるはずだ。

だが今回宿儺は下処理を任された。

ならば、それにあったやり方をやるだけだ。

 

 

「生肉は鮮度が命。穢すわけにはいかん。」

 

「沼の次は生肉か。腹が立つな。」

 

「ハチノスにはせんぞ。レアものだからな。」

 

 

そう言って宿儺は間合いを詰めた。

そして再び、腹へ拳を入れる。

 

 

「・・・げうッ」

 

「これなら通るか。」

 

 

吸収能力に胡座をかき、何も構えていなかった饕餮は身を以て宿儺の拳の威力を知った。

宿儺の本気はこんなものではないが、本気でやると風穴を開けてしまう。

 

 

「お前...何を...した...?」

 

「領域展延。術式が付与されていない領域を纏い、空いたスペースに相手の術式を流し込んで術式を中和するものだ。」

 

「私の...チカラが...中和された訳か...」

 

 

スポークを杖代わりにし、よろよろと立ち上がった饕餮。

その顔は苦悶の表情を浮かべていたが、目から闘気は消えていなかった。

 

 

「なら私も、チカラの出力を上げて抵抗してやる。」

 

 

展延で殴らなければ効果がないのは、後にも先にも同じこと。

その戦い方は、宿儺にとって忘れられない戦いに似ていた。

 

 

「五条悟。」

 

 

あの時代の紛れもなき最強。

その姿がふと、脳裏によぎった。

 

 

「ケヒッ」

 

 

楽しさに思わず笑い声が出た。あれほどの楽しさをまた味わえるとは思っていなかった。

 

 

「確か・・・饕餮尤魔・・・だったか?

 

 構えろ。肉弾戦といこう。」

 

 

無敗の剛欲同盟長 饕餮尤魔

呪いの王と呼ばれた者 宿儺

 

 

「いざ」

 

「尋常に」

 

「「勝負」」

 

 

そこからは一瞬だった。

宿儺が饕餮に近づくと同時に、饕餮は自らの能力を最大限開放。宿儺を飲み込まんと巨大化した。宿儺そのものを喰らいつくし、戦いに終止符を打つ。それは幻想郷の弾幕ごっこのように、ルールに則った公平なものではない。不意打ちは茶飯事。イカサマ上等。目的のためならば手段など選ばない。何でもありの殺し合いだ。それこそ、剛欲同盟の本来の在り方だ。だからこそ__

 

 

「完敗だ。私の負けだ。」

 

 

負けた落とし前はつけなければ。




「いざ」「尋常に」の部分はどっちがどっちとは決めてないです。
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