「へえ、八雲に連れられてねえ。」
「こっちの方が中々居心地が良さそうで、結果的には良かったと思っているがな。」
「それにしても、外の世界にもそんな力を持ったやつがいるんだな。一度戦ってみたいもんだ。」
「談笑中失礼します。ご入用のものをお持ちしました。」
「お、来たか。」
そう言って運び込まれてきたのは大きな樽と、星熊勇儀のものよりも一回り小さい盃。勇儀はその樽を片手で軽々と持ち上げ、持ってこられた盃に注いでいく。
「ほら飲め!今はアタシの奢りだ!」
「なら遠慮なく。」
差し出された盃を受け取り、中を見る。常人ならば、これを飲み切るだけで酔い潰れるだろう。酒に映った自分の顔は、
「んぐっ」
「おっ、景気が良いねえ」
自分の盃に酒を注いでいる勇儀がそう言う。
宿儺は常人ではない。そもそも人ではない。神なのだ。下戸な神など聞いたことがない。
「ぷはっ」
「やるねぇ。もう一杯いくよな?」
「当然」
再度盃に酒を注いでもらう。
酒に映った顔には笑みが浮かんでいた。
「アタシらの出会いに、
「
盃の中身を一気飲みする二人。その後も酒を飲み交わし、談笑を続けた。
「旧地獄ってなぁ閻魔による地獄のスリム化と言う名目で切り離された、地獄だったところだ。今はアタシらみたいな鬼や、地上で嫌われた妖怪が住んでんのさ。」
「外の世界の食事は中々変な味がしたな。
温泉の熱と酒の魔法は、二人の酔いを加速させた。
誰もいない温泉で、酔った男女二人。
何も起きないはずがなく...
「いくぞ、星熊勇儀!」
「受けてやる!どんとこい!」
「はあ...はあ...やるなぁアンタ...」
「貴様こそ...やるな...」
鬼と神による空中戦は周囲の地形を変えるほどの大戦だった。殆ど互角だったが、軍配は星熊勇儀の方に上がった。宿儺は十種と御厨子を一切使わなかったが、穢れによる身体強化はしていた。
「怪力乱神の二つ名は伊達ではないな。」
「いやいや、アンタも大したモンだよ。アタシ相手にここまでやるなんて。」
戦いを終えた二人は握手をし、絆を深めた。
「結構疲れたし、アタシはもうひとっ風呂いくよ。アンタはどうする?」
「俺も風呂だ。もう一杯呑み合おうじゃないか。」
「そうこなくっちゃねぇ。」
そうして二人は今一度温泉へ向かった。
夜はまだまだ明けない。明けるはずがない。
「・・・って、ちょっと!お客さん!勇儀の姐御!建物どうしてくれるんだい!」
「無理っすよ女将さん。聞こえちゃいないですって。それに反抗されても、俺らじゃ止められないじゃないっすか。」
このあと一週間ほど、魂温泉が休業したのはまた別のお話。