東方宿儺譚    作:雅之幻想

39 / 76
本当は宿儺と永琳に肉体関係をもたせる案もありましたが、却下しました。相性は良さそう。性格的にも肉体的にも。


33.髪

「随分と伸びたな。切らんのか?」

 

「切っても伸びるもの。切る余裕もないし。」

 

 

髪の毛を弄りながら、八意永琳はそうこぼす。

頭髪など、かれこれ1000年は切っていない。

尤もその殆どは、永遠の術式で伸びていない期間だが。

 

 

「しかし意外だったな。」

 

「何がよ。」

 

「お前が医者をやっている事が、だ。」

 

 

月の民というのは、地上の生物を道具としか思っていないような存在だ。勿論、八意もその一人だった。輝夜のように、地上に興味がある方がイレギュラーなのだ。その輝夜(イレギュラー)ですら、自分は地上の民とは違う存在だと認識していた。それほどまでに、月の都の教育というのは徹底していた。

 

 

「そうね。私も最初はこうじゃなかったわ。でも、あの日(永夜異変)から変わったの。私も姫もウドンゲも。地上で住むことを受け入れて、今がある。穢れのせいかしらね。」

 

「そうか。変わったのだな。蓬莱の薬を飲んで尚。」

 

「あら、知ってたの?」

 

「研究者が研究対象をよく知らん、などということがあってはならん。」

 

「でもあの時とは作り方も、力の内容も違うのよ。」

 

「どういう意味だ。不老不死ではないのか?」

 

「結果は一緒かもしれないけど、過程や副作用はあなたが作ったものとは違うわ。穢れの流出による不老不死ではなく、不変性の副作用による不老不死。あなたの言葉を借りるなら、器に溜まる穢れの量が変わらなくなるの。それこそが、私の作り上げた蓬莱の薬。」

 

 

その答えに、宿儺は関心した。逐一量を調節するのではなく、最初から穢れの量を固定してしまおうという訳か。理屈はわかるが、それを実現するためには障壁が多過ぎる気がする。特に穢れの生成と吸収。その2つはどうやって解決したのか。

 

 

「答えてあげましょうか?」

 

「やめろ。こういうのは自分で考えてこそだ...ナチュラルに人の心を読むな。」

 

 

ニコリと微笑む八意。ここまで来ると恐怖に近い感情を抱いてしまう。

 

 

「不変性があっても、髪は伸びるのだな。」

 

「髪は寄生虫のようなものよ。肉体であって、肉体ではない。神も汚れも煩悩も宿る、混沌とした人の心の象徴よ。」

 

 

一応聞いたが、宿儺もその結論には至っていた。日車寛見の『処刑人の剣』で髪を切られたにも関わらず、術式効果が発動しなかった。あれはそういうことなのだろう。

 

 

「頭皮は不変性を保つから、髪が抜ける事はないわよ。」

 

「その結果が白髪か。見た目は変わらずとも、中身は老い__」

 

 

そこで止めた。

八意の刺突が、宿儺の顔前で止まっていたからだ。

一体何処に隠し持っていたのやら。

 

 

「腕は落ちていないでしょう?何が『老いた』よ。次言ったら本気で刺すわね。」

 

「すんでで止めただろう。かつての同僚にそんな真似が出来るか?」

 

「あのまま頭を貫いても良かったのよ。」

 

「その時は、治すまでだ。」

 

 

やはり、八意は八意だ。その腕前がかつての八意と変わっていない事に、宿儺は安堵した。

 

 

「談笑中失礼します。お茶をお持ちしました。」

 

 

そう言って入って、うさぎ耳の少女が入ってきた。

 

 

「貴様、玉兎か?」

 

「あ、はい。鈴仙・優曇華院・イナバです。かつては月兎でした。今は地上の民です。玉兎の存在を知っているなんて、お客様は一体?」

 

「ウドンゲ、この人は月人よ。昔の私の同僚みたいなもの。」

 

「月人、ですか...。ここへは、私達を捕らえに?」

 

「貴様らを捕らえる気は毛頭ない。そもそも月の命令でここへ来た訳では無い。俺の意思で地上へ降りた。尤も貴様らと違い、穢れの影響を受けん俺はほぼ自由に地上と月を行き来できるがな。」

 

「そういえば、結界はどうなったの?あなたがいなきゃ機能しないんじゃ無かったの?」

 

「長い時を経て、結界の基盤が俺ではなく()()()()()になったらしい。かれこれ1000年、俺なしでも機能している。」

 

「あなた1000年前に抜け出したの?」

 

「貴様らが隠れた後だな。帝に聞いても『月に帰った』と言われて八方塞がりだった。まさか隠れた楽園(幻想郷)にいるとはな。」

 

「私達の存在が忘れられて、自然に流れ着いたのでしょうね。」

 

 

まあそんなところだろうとは思っていた。千年も生きる人間などいない。羂索や天元くらいだ。奴等が知らなければ、知っている人間など存在しないだろう。

 

 

「あら永琳。お客様?」

 

「あ、姫様。」

 

 

そう言ってやってきたのは、黒い髪で着物を着た少女だ。姫様と呼ばれているところから推測するに、彼女はおそらく...

 

 

「蓬莱山輝夜...だったか。」

 

「あら、私を知ってるの?」




妹紅の髪が白いのもそういう訳(なはず)です。
結界の話は堀川雷鼓の理屈に近い感じです。
理屈が解らない人はpixivの堀川雷鼓のページをお読み下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。