東方宿儺譚    作:雅之幻想

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34.変心

「何やら楽しそうにしていたから来てみたの。永琳、その話って私も混ざっていいかしら?」

 

「ええ、いいわよ。宿儺は?」

 

「構わん。」

 

「やったあ♪」

 

 

輝夜は永琳の横の席に座った。

 

 

「一応紹介させて。彼女は蓬莱山輝夜。彼女の能力で、蓬莱の薬を作ったの。」

 

「永遠と須臾か。」

 

「正解。」

 

 

ウドンゲという月兎と違い、永琳と輝夜の両者から穢れの気配を感じない。穢れの力の上では、宿儺はこの二人を()()()()()()。勿論穢れの感覚以外の五感を使えば、二人の存在を認識することができるが。

 

 

「あなたの力も、これを前には無力でしょう?」

 

「の、ようだな...気づいていたのか。」

 

 

実は先刻から八意に穢れを与えているが、一向に変化がない。既に1000年分以上の穢れを送り込んでいるにも関わらず、何も起きない。穢れの力が効かない不変の存在。それこそが蓬莱人なのだと、宿儺は思い知った。

 

 

「だがいずれ超えてやろう。」

 

「その日を楽しみにしてるわね。」

 

 

日が落ち、夜になった。今宵は雲隠れして月が見えない。人間には辛い夜道となるだろう。

 

 

「暗くなったわね。泊まってくの?ベッドに空きはあるわよ。」

 

「そうだな。あの竹林をもう一度彷徨うのは御免だ。」

 

「彷徨った?あなた独力でこの竹林を抜けたの?」

 

「目印は付けつつな。中々混乱を招く地形だった。ここに来るまでに小一時間は要したぞ。」

 

「普通はここに案内してくれる人が居るのよ。」

 

 

時間を無駄にした気がする。

 

 

「ウドンゲ、筍あるかしら。筍ご飯がいいわ。」

 

「今からですか?うう...頑張ります...。」

 

「私もやるわ。久々に手料理作ってあげる。」

 

「師匠が料理ですか!?」

 

「何よウドンゲ。もしかして不満?」

 

「い、いえ!決してそんな...。」

 

「私もビックリだわ。永琳が料理なんて。」

 

「私だって料理くらいしてましたよ。」

 

「かつてのように毒物を仕込むなよ。」

 

「毒・・・?」

 

「何の話かしら?」

 

 

その後、永遠亭で初めて永琳の手料理が振る舞われ、その美味さに全員が舌鼓を打つ事となる。

 

                      

 

湯浴みを終え、宿儺は月を見ていた。雲は晴れ、立派な満月が天球に浮かんでいる。そこへ八意がお酒を片手にやってきた。

 

 

「月見?あなたもそういうことするのね。」

 

「俺とて、四六時中戦線に身を置いていた訳では無い。教養をつける時を設けたこともある。」

 

「閉じ込められて、誰にも会えなかったのに?」

 

「出てからだ。20年ちょっとの間だな。」

 

 

様々な知識や技術を身に着けた。弓・読書・料理(裏梅と出会い、丸投げするようになったが)...

 

 

「どうしたのよ。急に改まって。」

 

「何から何まで、世話になった。」

 

宿儺はしっかりと八意に向き合い、頭を下げた。

 

 

「あら感謝?昔はさも当然のように人の家に上がり込んで食事していった貴方が。」

 

「その食事に毒を仕込んでいたのは忘れてないからな。」

 

「二度と来ないように入れてたのよ。分かってたんなら来なければ良かったのに。」

 

「毒耐性をつけるには丁度良かった。」

 

 

週三位で通っていた気がする。

 

 

「・・・そんな貴方が随分変わったのね。こっちに来る前に何かあった?」

 

「あった。俺の身の丈では、生きていくのには不十分だった。故に幻想郷での生活で、俺の身の丈

を改める事に決めた。これはその、最初の一歩だ。」

 

 

自分の選んだ、かつての道とは違う道。幻想郷でなら、茨の道であろうとも歩める気がする。

 

 

「...本当に、あなたも変わったわね。」

 

 

そう言って永琳はお猪口に酒を注ぎ、宿儺に渡した。月明かりの下、二人は杯を交わした。




主の試験が近いので、暫く更新を止めさせていただきます。
更新は11月を予定していますので、首を長くしてお待ち下さい。
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